宣言通り、司は尚武剣士会の道場に現れた。浩二と一緒に土井館長らに挨拶をして回った。その中には芳一もいた。
「珍しいね。正田さんが来るなんて」
「上段始めたんです。それで、指導を受けたいと思いました」
「なるほどね。浩二から聞いてると思うけど、ここには何人か上段の先生がいる。稽古を付けてもらうといい」
「はい!」
司は威勢よく返事をした。その威勢のまま、彼女は真っ先に面をつけ、土井のところまで一直線に飛んでいった。
(いい感じだ。気合入ってるな)
浩二は彼女のやる気を嬉しく思いながら、自分の稽古に気持ちを切り替えた。
***
稽古が終わり、着替えて浩二と司は並んで道場から出ると、外は真っ暗闇の中だった。
「正田はなにで来た?」
「歩きっス。大体二十分くらいですかね」
「自転車使わなかったの?」
「パンクしちゃいまして」
司は困ったように頰をかいた。この暗い夜道を女一人で帰らせるのは、浩二は男として良くないと感じた。
「正田。良かったら送ろうか?」
「悪いっスよ、そんなの」
「こんな夜中に女一人で歩かせられんよ」
浩二は心臓をバクバク鳴らしながら告げた。すると、司はしばらく考え込んで、顔を上げた。
「じゃあ、ご同行お願いします」
そう言った司の顔は、心なしか赤かった気がした。
その後、夜道を二人、剣道具を背負ったり引いたりして歩く。その間、何でもない雑談に興じていた。休みの日には何をしているとか、好きな番組、好きな曲。二言三言で話題はころころと変わる。いよいよ話が盛り上がってきた中で、雨が降り出した。その雨は、すぐに勢いを増し、シャワーを浴びせる勢いで二人に降り注いだ。
「先輩! 走りますよ!」
「おう!」
話を中断して、二人は全力で走った。司の家に着いた頃には、二人とも濡れ鼠になっていた。司の家はマンションだった。といってもこじんまりとしていて、アパートといっても違和感はない。
浩二は制服のまま来たが、そのおかげで学ランと、中のシャツがずぶ濡れで、二重に気持ちが悪かった。
司はシースルー素材の上着を着ていたお陰で、見た目がすごいことになっていた。雨で完全に体に張り付き、肌色がくっきりと見える。中のキャミソールも透けて、スポーツブラの灰色が見えている。それで、濡れた髪や顔から滴る雫が、より扇状的に見せていた。浩二は、下半身に血液が集中していく感じがした。それを必死に抑えようとしていると、司が声をかけてきた。
「先輩、上がってください。今夜は、お母さん仕事で帰ってきませんから」
「いや、流石にそれは」
「そのままじゃ風邪引きますよ。服乾かすだけでもいいですから」
今度は司の押しが強かった。結局、浩二は根負けして、司の家に立ち入った。
彼女の家は、随分と極端な内装だった。お洒落なものは一切無いが、洗濯機や風呂場は最新のものが使われている。見ていないが、ここがそうならキッチンなどもそうなのだろうと浩二は思った。
当初は服を乾かすだけ、という話だったが、浩二は他に着るものが無い。道着も防具袋の中に入れていたが、雨で濡れていた。そして、司の家が母子家庭で、男物の服が一切無いということだったのだ。それで、どうせ脱ぐならと司が風呂に入ることを提案したのだった。
「正田が先に風呂入れよ」
「いやいや、先輩が」
譲り合いが発生してしまった。どちらかが引くか押し切るかしなければ決まらなさそうだ。しかし、その均衡を破る発言を司がした。
「じゃあ、一緒に入ります?」
その魅力的極まりない提案に、浩二は生唾を飲み込んだ。ただでさえ、自分の獣を理性で押さえ込んでいる今、そんなことをしたらどうなるか分かったものでは無かった。それに、普通に考えたら冗談だとすぐに分かる。しかし、今この瞬間の浩二の本能は、理性を完全に凌駕してしまっていた。
「ああ、そうするか」
言ってしまった、と浩二は息を呑んだ。恐る恐る司の反応を伺うと、顔を真っ赤にしていた。やっぱり無しで、と浩二が言いかけたその時、司は服を脱ぎ始めた。衣摺れの音が、やけに大きく思えた。
「な、何を!?」
「い、一緒に入るんスよね。だったら、服、脱ぐでしょう」
顔を赤くしたまま、司は強い口調で告げた。この瞬間、浩二はもうやり直しがきかないことを察した。
***
二人で互いの体を見ないようにして、背中合わせに湯船に浸かる。狭い湯船なので、浩二の背中にピッタリと司の柔らかい背中がくっついた。このような状況で理性を保てるはずもなく、浩二のペニスは最大限に勃起していた。湯の暖かささえも、浩二にはよく分からなかった。
「先輩、お風呂でも義手付けてるんですね」
「ん、ああ。そうだな」
浩二は助かったと思った。違う話をしていれば、気が紛れる。
「何で剣道の時はしないんですか?」
「日常動作は義手で出来るけど、剣道みたいな格闘は無理だよ。片手でやった方が強い」
「へー、凄いなあ」
「何でだ」
「私だったら、片手失ったら剣道やめちゃいそうですもん」
「剣道が好きだった。それだけのことだよ」
「それだけのことが凄いんですよ。本気で好きなんだなって思います」
「正田は剣道嫌いか?」
「好きですよ。でも、先輩ほど好きではないと思います」
その司の答えに対する返事を考えていると、不意に司が切り出した。
「先輩。顔、見たいです」
「へ?」
剣道の話題から逸れて、せっかくおさまっていたペニスの勃起が完全に復活した。浩二が惑っている間に、水の音と、背中が離れる感覚があった。多分立ち上がったのだろう。
「剣道を語る先輩、きっと素敵な顔をしているだ、ろ、う……?」
司が固まった。浩二は上を見上げてみると、司が控えめな胸と股間を手で隠しながら、真顔で見下ろしている。その視線の先には、浩二のペニスがあった。
「あ、いやこれは」
「先輩」
真顔のまま、司が声を発する。終わった——浩二は自分の本能を呪っていると、突然司の表情が変わり出した。何だか、目が輝いている気がした。
「このまま、ベッド行きましょう?」
***
裸のまま、浩二は半ば連れていかれるようにして司の部屋に入り、ベッドに座った。この時にはもう司も体を隠しておらず、小ぶりな胸の割には大きい乳輪を持つ乳首や、陰毛に覆われた股間を晒している。部屋の電気は付いているので、じっくりとそれらを観察できた。
最早部屋の内装になど目がいかなかった。浩二の目は司の
体に釘付けだった。
「これが、おちんちん。改めて見ると、凄いです……」
一方の司は、ペニスの前にしゃがみ込み、荒い息をペニスに吹きかけていた。それがくすぐったくて、ピクピクと肉棒が揺れる。
「凄い。よく別の生き物って表現されるけど、本当にそんな感じ」
おっかなびっくりといった感じで、司はペニスの色々なところをペタペタと触れた。
「先っぽは柔らかいのに、他はこんなに硬いんだ。それに熱い」
ごく弱い刺激が、断続的に襲ってくる。浩二の理性は、その刺激を前に完全に崩れ去った。
「正田。その、ちんこ握って、上下に動かしてくれ」
「先輩。私だって性知識あるんですよ。あわよくばセックスしたいって思ってるでしょう」
「う……」
完全に図星だった。既に先輩後輩の関係を逸脱した行為をしているのだ。このままなし崩しに、などと考えるのは邪だっただろう。ごめん、と言おうとしたところで、頰を染めたままの司が、ポロリと漏らした。
「その、私も興味ありますから」
「え?」
「興味ありますから、それに、先輩なら処女捧げてもいいかもって思えますし。しましょう、セックス」
司の意志の固さが、上目遣いのその目から伝わってきた。その目で見られて、断れるほど浩二の意思は強くなかった。
***
浩二は一旦家に友達の家に泊まると連絡を入れたのち、財布からコンドームを取り出して、司の部屋に戻った。
「持ってるんですね、ゴム」
「男子高校生は財布の中に忍ばせておくもんなんだよ」
そう言いつつ、浩二はコンドームを一旦脇に置いた。それから、二人並んでベッドに座ると、そっと司を抱き寄せた。
「正田」
「ベッド上くらい、名前で呼んでください」
膨れっ面の司は、それだけで大変にチャーミングだった。
「……司」
「こ、浩二さん」
照れながらお互いに名前を呼び合うと、二人の唇が、磁石のように引き寄せられ、一つに重なった。柔らかい感触があった。もっと、もっとという衝動に突き動かされ、浩二は彼女の口に舌を入れた。最初は驚いた司だったが、やがて彼女の方からも舌を絡ませてきた。
「ん、ちゅ……れろ……」
浩二は十秒くらいしか経っていないのに、それ以上の時間をキスして過ごした気がした。唇を離すと、司は顔をすっかり蕩けさせていた。その表情で、また浩二のペニスは硬くなった。
「ぷは。ファーストキスだったんスよ。それがいきなりディープキスだなんて」
「俺だってそうだよ」
浩二はそう言いながら、次は司の首筋に吸い付いた。すると、司の体がびくりと跳ねた。
「ん、やあ……くすぐったい。それに、跡ついちゃう」
「跡つけてんだよ」
浩二は、義手で司の体を支えながらゆっくりと押し倒した。司は震えている。涙目で息も荒げていたが、それでも浩二をまっすぐ見つめていた。
「義手、冷たいんスね」
「機械だからな」
「私は、浩二さんの温かさを知りたいです」
「そうか、じゃあ」
今度は、浩二は左手の指先で司の体をなぞっていき、最後は彼女の陰毛に隠された秘部に触れ、指を中に挿れた。なぞっている途中、息を漏らしながら体を捩らせる彼女が、かなり官能的だった。
「ふ、あ」
「きっつ……まだ濡れてないな。普段どんなオナニーしてる?」
尋ねると、司は「ふえっ」と素っ頓狂な声を上げて、急に股を閉じた。しかし顔ははにかんでいて、嫌では無さそうだった。
「答えてよ」
「何でですか? 恥ずかしいっスよ」
「俺も初めてだし、感じなかったらお互いに嫌だろうなって」
その言葉を聞いて、司は再び股を軽く開いた。そして、浩二から目を逸らしながらボソボソと話し始めた。
「今浩二さんが指入れてるとこ、もうちょっと奥まで入れてください」
「ん、こうか?」
指示された通り、指を少し押し込む。すると、今までで一番大きく喘ぎ声を出した。
「そ、それで、指を出し入れしながら、中を指で掻き回す感じ、で」
「わかった」
言われた通り、司の膣内で指を動かす。その度、司は体をくねらせ、扇情的な嬌声を上げる。
「ん、あ、あ、やぁ! 上手、上手ですよぉ、浩二さ、ん、んんー!」
段々と、指に肉が絡みつき、愛液に濡らされるのを浩二は感じていた。しかし、まだ物足りぬ気がして、指を膣に入れたまま、起こしていた体を司の隣に寝そべらせた。
「浩二、さん?」
「おっぱい、舐めるよ」
「え、そんな急に——んあ!?」
司の小ぶりで可愛らしい胸。その頂上の、貧乳と不釣り合いに大きい乳輪を持つ乳首に、浩二は吸い付いた。少ししょっぱいその味を堪能しながら、甘く噛んでみたり、舌で乳首の先を転がす。
「あ、ああ。気持ち、いい。気持ち、いいれすぅ」
呂律の回らない甘い声を可愛いと思いながら、彼女の膣内を指で掻き回し、口で乳首を弄ぶ。
「ねえ、浩二さん、わ、私も、私もぉ」
「私も?」
「私も、浩二さんを、気持ちよく、さ、させてあげたい、ですぅ」
目を潤ませて、揺れる瞳で司は浩二を見つめる。そのように見つめられて、嫌と言うことは不可能だった。