※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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お久しぶりです。
覚えてくれている方が居たらうれしいです。
アマテラスがどうしても思うようにいかず、代わりに白虎が番堕ちする話になりました。

アマテラスを期待してくれていた方々は本当に申し訳ありません。


四聖獣・白虎番堕ち編2

 出雲学園で宴会が開かれている頃。

 アマテラスが治める里の屋敷の中。リンドが過ごしている部屋の中に歪みが出現した。

 その歪みの中から大切な我が子である李花を抱いた桃花と身重である蔓が現れた。

 

「蔓さん、大丈夫ですか?」

 

「あぅ?」

 

 部屋の中に到着すると即座に桃花は蔓の状態を確認した。

 その腕の中に抱かれている李花も心配するように、もう一人の母として認識している蔓に小さな手を伸ばす。

 

「ええ、問題はありません、桃花、李花」

 

 蔓は微笑むと、安心させる為に小さな手を伸ばしている李花に指を差し出して握らせた。

 すると李花は安心したように笑い、桃花と蔓はその愛らしい様子に微笑みを深める。

 

(ああ、本当に愛らしい。早く私もこの子を……この手に抱きたい)

 

 李花に握られている別の手で蔓は、自らの子が宿っている腹部を撫でる。

 訪れた屋敷の一室から出る事さえも困難になっている青龍同様に、蔓も出産の次期が近い。

 本来ならば霊地として優れている出雲学園から離れるべきではないが、今はアマテラス達に加えて四聖獣達もいる。

 その上に宴会まで開くとなれば巻き込まれる可能性もあったので、こうしてリンドの部屋にある出雲学園と里を繋ぐ道を通って避難して来たのだ。勿論それだけではなく、他にも理由がある。

 

「待ってたよ、桃花、蔓、そして李花」

 

「旦那様♥」

 

「主様♥」

 

「あぅ~!」

 

 部屋の障子を開けてみると、其処には三人が来る事を知っていたリンドが笑顔を浮かべて出迎えた。

 桃花と蔓は愛しい番の雄の姿に顔を綻ばせ、娘である李花は父親であるリンドに向かって手を伸ばす。

 リンドは手を伸ばす娘を微笑まし気に見つめながら手を伸ばし、桃花から受け取って抱える。

 

「李花。数日ぶりだね。お父さんだよ」

 

「あぅあぅっ!」

 

 久々の父親の腕の中ではしゃいでいるのか、李花は喜びの声を上げた。

 同時に微かに李花から放たれる力の気配をリンドは感じ、目を見開いて我が子を凝視する。

 

「……っ!? ………桃花。何時から?」

 

「つい先日旦那様がご自身の固有呪法をお使いになられてからです。急に李花が大喜びしたと思えば、周囲の地面から草木が伸び始めました。地下であってもです」

 

「……そう。僕と違って精霊の血が濃い影響だね」

 

 李花が無意識に発する力。それは紛れもなく精霊の力だった。

 精霊の血が薄れてしまったリンドと違い、母親が精霊である李花の精霊としての血は半人半精であるニニギよりも僅かに濃い。

 そして切っ掛けを得てしまった事で、李花は産まれてまだ数ヶ月だと言うのに精霊としての力に目覚めてしまった。

 

(植物の精霊にとって影響が強い『樹界降誕』の発動もあったからか。そうなると李花は間違いなく植物系の精霊としての力を引き継いでいる)

 

「李花は凄いね。お父さん嬉しいよ」

 

「あうぅぅっ! だあだあっ!」

 

 誇るようにリンドは李花を誉めながら頭を優しく撫でる。

 撫でられる感触が気持ち良いのか嬉しそうに李花は喜んでいる。少しの間父と子の交流をリンドは楽しむが、ある程度のところで桃花の腕の中に戻す。

 

「李花。お父様に遊んで貰えて良かったわね」

 

「あうぅ~」

 

 母親である桃花の腕の中に戻った李花だが、少し寂しげにリンドに手を伸ばしていた。

 我が子の愛らしい姿にリンドも顔をほころばせるが、李花だけに構っている訳にはいかない。この場にはもう一人、大切な血の繋がった子を宿している相手がいるのだから。

 

「蔓。夜に行けなくてごめんね」

 

「いえ、大丈夫です、主様。私はこの里よりも優れた霊地で過ごしていますし、この子も大人しいですから」

 

「どれどれ」

 

「あっ♥」

 

 着物越しにリンドの手が蔓の膨らんだ腹部に触れた。

 すると着物越しでも分かる程に力強い鼓動と微かに蔓の体内で動く子の気配が伝わって来た。

 

「フフッ、この子も元気そうで良かったよ」

 

「はい。時々強くお腹を蹴られますが、それが嬉しく感じます」

 

「そのお気持ちは分かります。私も李花がお腹の中に居た時は、その重さと鼓動を感じる度に幸せでしたから」

 

「そうだね……じゃあ、もう二(・)人(・)の家族のところに行こうか」

 

『はい、旦那様(主様)♥』

 

 屋敷の通路を先に進むリンドの後を桃花と蔓はついていく。

 無論、身重の蔓を気遣った速さで歩いて行く。途中で屋敷に残っている巫女達とすれ違うが、全員が廊下の端の寄って平伏する。

 既にアマテラスに仕えていた巫女達は、巫女頭の葉子を始めとして全員がリンドに仕える雌犬巫女に堕とされている。

 そんな彼女達にとってリンドの番の雌である桃花と蔓、その子供である李花は忠誠を向ける仕えるべき存在となっていた。

 

「お待ちしていました、桃花様、蔓様、そして李花様」

 

 青龍が暮らしている部屋の前で雌犬巫女頭である葉子が、桃花達に平伏して深々と頭を下げた。

 アマテラスとカグツチも知らない李花の存在を、葉子や巫女達は知っている。そしてその事を葉子達が本来仕えていたアマテラス達に伝える事は無い。

 心身ともに彼女達はリンドと言う雄に堕とされて隷属しているからだ。

 

「葉子。多分アマテラス様から連絡が来ると思っているけど」

 

「分かっております。連絡が来た時は誤魔化しておきますので、どうぞご家族の皆様とお過ごし下さい、ご主人様」

 

 リンドは頷くと、部屋の扉を開けて中に入る。

 桃花と蔓もその後に続き、部屋の中を見て目を見開いた。

 

「こ、これは……」

 

「ああ……」

 

 部屋の中には小さな若木のようなものが光る葉を茂らせて立っていた。

 その若木を見た瞬間、桃花と蔓の胸に抱いた思いは郷愁のような思いだった。知らない筈なのに、知っていると不可思議な思いが湧き上がって来る。

 その若木の正体はリンドが出力を調整して発動させた『樹界降誕』によって顕現した木。

 幻想的な木を見た桃花と蔓が思わず呆然とする中、桃花の腕の中に居た李花が木に向かって手を伸ばし出す。

 

「あぅあぅあぅぅっ」

 

「っ!? 李花!?」

 

 急に身を乗り出した李花に桃花は慌てて抱き直そうとする。

 だが、李花は母親である桃花に逆らい、腕の中から抜け出しかけてしまう。しかし、そんな李花の動きを遮るように優しく柔らかな風が部屋の中だと言うのに吹いた。

 

「あうぅぅ」

 

 柔らかな風は、まるでクッションのように桃花の腕の中から抜け出そうとしていた李花を支える。

 慌てて桃花が李花を抱え直すと、風は吹き抜ける。その風を吹かせた者は、安堵の息を溢しながら呟く。

 

「やはりこの木は植物の精霊達にとって大きな意味があるようですね」

 

『青(・)龍(・)さ(・)ん(・)』

 

 声の聞こえた方に目を向けて見ると、若木に背を預けるようにゆったりとした着物を着た青龍が、自らの大きく膨らんだお腹を撫でながら桃花と蔓、そして李花に向かって微笑んだ

 

「桃花、蔓、久しぶりですね。そして初めまして李花。私も貴女の家族ですよ」

 

 会えたことが嬉しいと心から思いながら、青龍は桃花と蔓に向かって微笑んだ。

 二人は頷き、青龍の傍に近寄る。青龍と桃花と蔓が出会うのは、数ヵ月ぶりだった。

 お腹に宿す子の影響で、青龍はこの部屋から出ることが出来ず、リンドに大量の気を送って貰わなければ、存在の維持さえも危ぶまれる危険な状態。

 今はリンドが『樹界降誕』を限定的に発動させているので、僅かながらも力を使えるほどに回復している。

 

「青(・)龍(・)さ(・)ん(・)。李花を助けてくれて本当に感謝します」

 

「気にしないで下さい。その子も私にとっては娘のようなものなのですから」

 

 以前まではネノクニの守護神の一角であったが故に、上位の存在として敬称付けで青龍の事を呼んでいた桃花と蔓だったが、今では対等な立場で接していた。

 それは己の零落が始まったことだと青龍は、自覚しているが気にしてはいなかった。

 

「では、抱いてあげて下さい」

 

「ええ」

 

 桃花から李花を差し出された青龍は、優しく腕の中に抱く。

 

「あうぅ」

 

 初めて会う青龍に李花は僅かに眉根を寄せた。

 だが、青龍は優しく、そして幸せそうに微笑む。

 

(不思議なものです……リンド様と『真の契りの儀式』を交わすまでは、赤子を見ても余り感情が動かなかったのに、今はお腹の子もこの子も、そして蔓の子も愛しく感じてしまう)

 

「あぅあぅっ!」

 

 微笑む青龍を見て安心したのか李花は小さな手を伸ばす。

 その愛らしい姿に桃花、青龍、蔓は嬉しそうに笑った。そしてもう1人。この場にいる子供達の父親であるリンドも決意を新たにする。

 

(絶対にこの新しい家族を守らないと!)

 

 己とネノクニの各地に隠されている遺産以外の全てをリンドは失った。

 大切な両親に一族の家族達。そして……産(・)ま(・)れ(・)て(・)来(・)る(・)筈(・)だ(・)っ(・)た(・)弟(・)か(・)妹(・)。

 

(母様が万全……いや、僕がもっと早く今のように『樹界降誕』を扱えるようになっていれば!)

 

 『樹界降誕』は、最強の結界型の防衛呪法。

 だが、『樹界降誕』の使い手はリンドの一族の中で最大二人まで。それも世代交代を意味する形でしか発現しない呪法。

 数多くの精霊の血を引いているからなど関係なく、一世代に必ず一人は『樹界降誕』が発現するが、次の世代交代の時まで新たな『樹界降誕』の使い手は現れない。

 故にリンドの一族は『樹界降誕』を受け継いだ者が次代の長である習わしが決まっている。

 それは自らの一族の始まりにして祖である存在への敬意もあるが、『樹界降誕』ほど護りに秀でた防衛と守護の呪法が存在していないからだった。

 しかし、精霊の血が薄まってしまった影響でリンドは『樹界降誕』を自らの呪法と分かりながらも、使用できなかった。これは他の子供達も同じであり、十五の歳まで精霊としての固有呪法を扱えなくなってしまっていた。

 今、リンドが『樹界降誕』を限定的ながらも使用できているのは、相性の良い精霊である桃花と蔓、そして元(・)四(・)聖(・)獣(・)である青龍と『真の契りの儀式』を結んだ事で精霊としての側面が活性化して目覚めたから。

 

(だからもう絶対にこの新しい家族は失わない。そして新しい家族になってくれる人達も、必ず僕の番の雌にする!)

 

 己が壊れている自覚がありながらも、リンドは止まらない。

 『一族の再興』と言う目的の為に何処までも鬼畜な所業を行ない、例え現在のネノクニの神であるアマテラスだろうと『契りの儀式』を結び、娘である佐久夜と共に番の雌に堕とし己の子を孕ませる。

 勿論、それは今は記憶を封印している琴乃も、そして残る三人の四聖獣達もリンドは孕ませるつもりでいる。

 

(勝負はカグツチ様がツクヨミ様と兵達と共に黄泉平坂に長期遠征に行く時だ。フフッ、先ずは仕込んでおいた白虎から孕ませないとね………んっ? 『八尺瓊(やさかに)』?)

 

 今後の計画を考えていたリンドの脳裏に、突如として今はアマテラスの手元にある『八尺瓊(やさかに)』の意思が語り掛けて来た。凄まじい怒気を宿して。

 

(何をそんなに怒って……えっ? いや、待って。幾らなんでもそれは……玄武の発言に怒るのは分かるけど……いやだからね……分かったよ……はぁ~)

 

 怒りに満ちている『八尺瓊(やさかに)』の思念に頭を痛めながら、リンドは部屋の隅に置いておいた木の揺り籠を運んで来る。

 

「李花。お父さんからの贈り物だよ」

 

「あぅっ! だぁだぁっ!」

 

 揺り籠を見た瞬間、李花は大はしゃぎをして青龍の腕の中で手を伸ばす。

 その様子に青龍は微笑むが、桃花と蔓は揺り籠を見て目を見開いた。二人は一瞬で悟ったのだ。

 木の揺り籠から発せられる身に覚えのある清廉な霊力に。

 

「だ、旦那様。それはまさか?」

 

「ああ、コレ。僕が発生させた木を加工した物だよ」

 

 何でもないように平然とリンドは告げ、青龍から李花を受け取り揺り籠に入れる。

 

「きゃぅきゃぅぅっ!!」

 

「気に入ったみたいだね」

 

 揺り籠の中に敷かれていた藁の上で李花は大喜びし、リンドは微笑ましそうに眺める。

 

「主様。大丈夫なのですか? ご自身が発生させた木とは言え、それを加工するのはかなりの霊力を消費する筈ですが?」

 

 同じ植物を司るが故に、リンドが行なった事の難易度が分かっている蔓は心配になって質問した。

 

「大丈夫だよ。これが『豊穣』を司る側面だからね。青龍と蔓の子の分も、もう用意してあるから安心してね」

 

 『豊穣と守護』。

 それを司った存在を祖に持つが故に、リンドはあらゆる植物を発生させられる上に、瞬時に成長させるどころか品種改良の類も行なえ、新たな植物を生み出す事さえも出来てしまう。

 現に今里で好まれるようになった茶葉は、リンドが新たに発生させた植物だった。

 それらと此処数日青龍が住んでいる部屋の中にいたリンドは、暇潰しがてら揺り籠の製作を行なっていた。無論、大半の時間は青龍と気の受け渡しと言う交尾をしていたのは言うまでもない。

 

(改めて聞かされましたが、旦那様のお力は私や蔓さんを遥かに超えています)

 

(古に、それこそ私や桃花でさえ知らない遥か昔の全ての植物の祖。それこそが主様の一族の始まりとなったもの……主様に惹かれるのは当然ですね)

 

 ただでさえリンドの一族は精霊を伴侶に出来る上に惹かれさせてしまう特性を持っている。

 その上に植物の精霊の祖と呼べる存在の特性と力をリンドは発現している。その存在に見初められてしまった桃花と蔓が、最初から抗える筈は無かったのだ。

 リンドは李花が入っている揺り籠を桃花の傍に置き、そのまま床に正座をする。

 

「さて、こうして家族が集まった以上……今後の僕らの方針を改めて話し合うからね」

 

 桃花、青龍、蔓は頷く。

 他の三人の四聖獣が居る宴会に巻き込まれて李花と妊娠している蔓の存在を露見させないために、『出雲学園』から離れた。

 それだけではなくアマテラス達が居ない里の屋敷に桃花と蔓を呼んだのは、今後の方針に関しての話し合う為もあった。

 

「先ずヒミコの目論見は絶対に阻止する。これはもう確定だ」

 

 アシハラノクニとネノクニを一つに戻すなど、リンドからすれば暴挙以外のなにものでもない。

 ヒミコの目論見は、何としても阻止しなければならない最優先の重要事項となった。

 

「恐らくですが、ヒミコ、いえ、徐福は封印されている二千年の間にイザナギやイザナミ以外に、どれだけ数多くの神が発生してしまった事を知らないのでしょう」

 

「だろうね。神秘が薄れてしまったアシハラノクニで神が顕在出来る筈がない。大抵は眠りについているし、他のネノクニを狙っている連中は自身か、或いは仕えているより強大な神が創り上げた異空間にいるだろうから、ちょっとアシハラノクニを覗いただけじゃ気付けるはずがないよ」

 

 二千年の間に変わったのは何も人の営みだけではない。

 神と人の関係も変わり、そして世界も変わった。ヒミコがその変化を何処まで認識できているのかは現状では不明だが、どちらにしてもアシハラノクニとネノクニを一つに戻すなどさせる訳にはいかない。

 その果てに待っているのはいつ終わるかも分からない神々の争いと、それに駆り出される力を持った人間達。そして力を持たない人間達が死に絶えていく世界なのだから。

 

「ヒミコの討伐には全面的にアマテラス様達への協力を惜しまない。皆いいね?」

 

 三人は深く頷く。

 元々ネノクニを護ると言う意志は三人とも持っていたが、子を為した事でその想いはさらに強まっていた。

 特に青龍はその想いが強く、嘗て人だった頃に仕えていたとしても、ヒミコを討伐する事に躊躇いは無かった。

 

(この子はネノクニの守護神である新たな四聖獣となる子……ネノクニの崩壊はこの子の死を意味する! そのような事は絶対にさせてはならない!)

 

 最早青龍にとって間もなく産まれる我が子は、自身よりも大切な存在。

 その存在を脅かそうとするならば、嘗ての仲間であるヒミコと麒麟を討つ覚悟は出来ていた。

 

「そして次にだけど……黄泉平坂の件を利用してツクヨミ様に例の報酬に当たる遺産を渡そうと思う」

 

「それは旦那様の判断で構いませんが……黄泉平坂となると……あのお方の下にツクヨミ様達を向かわせるのですか?」

 

 この場で唯一桃花だけは、一族の遺産が隠されている場所に全て訪れている。

 当然その遺産の守護者であるリンドの先祖の精霊の影達とも会っている。そして黄泉平坂にもあるのだ。

 青龍、カグツチ、ツクヨミが訪れたと同じ、リンドの一族の遺産が隠されている空間が。

 

「まさか、あの黄泉平坂にリンド様の一族の遺産が隠された場所があるとは思っていませんでした」

 

 今は違うが、黄泉平坂は嘗て邪神ヨモツオオカミが支配していた地。

 全てを憎み、世界を崩壊させようとしていたヨモツオオカミ。幾ら嘗ては共に戦い地を平定したとは言え、半身であるイザナミ側にいたリンドの一族の先祖を見逃すとは青龍には思えない。

 

「実を言えば、僕らの一族はヨモツオオカミとある盟約を結んでいたんだよ」

 

「っ!? あのヨモツオオカミと盟約を!?」

 

 それは青龍でさえ知らなかった事実。

 まさか、イザナミ側に居た筈のかの一族がヨモツオオカミ側とも繋がりを持っていたとは思ってなかったのだ。

 

(いえ、よくよく考えてみれば、半身であるイザナミの変化をヨモツオオカミが気付かない筈がない。己から神の権能である『理を紡ぐ力と整える力』の消失を感じれば探そうとしたはず。ですが、ヨモツオオカミは探そうとしなかった)

 

 『理を紡ぐ力と整える力』をヨモツオオカミが取り戻せば、二つの世界を完全に切り離すと言う回りくどいやり方をする必要が無い。

 それこそ望むままにネノクニの理を作り替え、二つの世界の消失さえ可能だった。

 

「当時、イザナミ様が『八尺瓊』を創り上げ、ネノクニの安定を強固にする過程でどうしても身動きが取れない時期があった。その時期こそが青龍達がヨモツオオカミに挑んだ時期なんだよ」

 

 別たれたばかりの頃のヨモツオオカミは確かに強かったが、それでもイザナミの方が優勢だった。

 だが、ネノクニの安定を強固にする過程で表立って動けない時期が存在し、その時期こそがヨモツオオカミが躍進を果たしていた時期。

 『闘神スサノオ』を産み、ヨモツオオカミは憎しみのままにネノクニの人々を殺し続けていた。

 しかし、ある時を境にヨモツオオカミは急に躍進を止めた。

 スサノオと言う息子であり強力な悪霊の将がいながら。その理由の一つこそがかの一族との盟約。

 その盟約とは……。

 

「イザナミ様……いや、ヨモツオオカミが当時この世で最も憎んでいた者達の引き渡し。それによって、ヨモツオオカミは己を支える憎しみが弱まってしまったんだよ」

 

『っ!?』

 

 ハッとしたように桃花、青龍、蔓は顔を見合わせた。

 そう。リンドの一族が当初外敵だと判断していた者達は、他ならぬ反逆しイザナミを殺してアシハラノクニとネノクニを分けた者達。

 当然ながらイザナミの半身であるヨモツオオカミにとっても怨敵の中の怨敵。沸き上がる憎しみからネノクニの人々を殺し続けていたヨモツオオカミの前に、リンドの一族の祖先は外敵として襲い掛かって来た者達を捕らえ、そのままヨモツオオカミに引き渡したのだ。

 当然引き渡された者達はヨモツオオカミの憎しみの全てを向けられ、言葉では表現する事さえ躊躇う程の程の地獄の果てに魂さえも無になった。

 無論、リンドの一族の祖先は気にしなかった。イザナギとイザナミを裏切った者達には当然の報いとさえ思っていたし、連中はリンドの一族の祖先にさえ仕掛けて来たのだから赦す筈が無かった。

 

(確かにあの当時、私達が四聖獣と成り、イザナミが表立って動き出すと同時にヨモツオオカミの動きは急に衰えた。アレはヨモツオオカミの憎しみが薄れたからだったのですね)

 

 過去を思い出し、青龍は納得を得た。

 当時のヨモツオオカミの勢力は、スサノオと言う強大な力を持つ息子もいたので、幾らイザナミとは言え簡単には抑えられない。だが、ヨモツオオカミを支えているのは憎しみ。

 その対象を引き渡し、自らの手で屠る機会を得たヨモツオオカミは嬉々して反逆者達を滅ぼす事に集中した。

 それによって四聖獣と言う守護神も加わった事でヨモツオオカミを黄泉平坂にイザナミは封じることが出来た。

 尤も変わりゆく世界の流れにイザナミが耐えきれなくなった事で、ヨモツオオカミは再び勢力と力を取り戻してしまったのだが、どちらにしてもヨモツオオカミは反逆者達を引き渡す時に交わした盟約によって、『理を紡ぐ力と整える力』を持ったリンドの一族には手を出せなくなってしまっていた。

 

「それで丁度良いからとご先祖様の一人が其処に遺産を隠して、自分の影を置いたんだよ」

 

「私もお会いしましたが、自由に外に出ることが出来れば、ヒミコに対して危険極まりない呪詛を施しかねないお方でした」

 

 出会った時の事を思い出しているのか、桃花は肩を震わせる。

 黄泉平坂にいるリンドの先祖である精霊の影には問題があるのだ。具体的に言えば……愛が重すぎるのだ。

 アシハラノクニで言うところのヤンデレに分類され、桃花が訪れて真実を伝えた時は嘆き悲しみ、そのまま出られないのにも関わらず異空間から外に出てヒミコを呪殺しようとまでし、桃花が帰る時は引き留めて李花が産まれるまで、いや産まれた後も異空間で過ごさせようとした。

 事前に訪れていた他の遺産の守護者達が持たせていた『宝貝』のおかげで、連絡を貰って何とか説得できたが、それが無ければ桃花はリンドの下に帰還できなかったほどだ。

 

「そのような方もリンド様の一族の中にはいたのですね?」

 

「青龍さんも知らなかったのですか?」

 

「ええ、蔓……サギリのように古の時代の頃に会った者ならともかく、ネノクニの陰になってからは交流も殆どしませんでしたから。それ以降に迎えた精霊なのでしょう」

 

 アシハラノクニとネノクニの二つの世界に分かたれるまで交流があったとはいえ、それはあくまでイザナギとイザナミが治めていた国での事。

 青龍達はリンドの一族が治めていた里の中に訪れた事は無い。当時からその血の特異性があった為に、下手に外部に血が渡るのを恐れたからこそ遠方の国から訪れた青龍達を警戒していたのだ。

 尤もそれはあくまで女性側で男性側は当時から美女で強かった青龍達を妻にしようとしていたが、当然ながら女性陣にしばかれた。

 

「だけど、あのご先祖様ならヒミコへの対処に有効な手を教えてくれるかもしれない」

 

 ヒミコを討伐する上で一番厄介なのは、その身に吸収したヤマタノオロチを含めたネノクニ中の力ある悪霊や人間などの力の存在。

 その力が迂闊に解放されれば、アシハラノクニにいるヤマタノオロチの転生体である汀のように力が戻って惨事を引き起こしかねず、或いはネノクニで新たな強大な悪霊が発生しかねない。

 それがあったからこそ、リンドの一族も襲われながらもヒミコを迂闊に討伐出来なかった。何せその力の結晶と呼べる存在が、アシハラノクニにそのまま渡れば、間違いなくネノクニを狙っている神々は手に入れようとする。

 そして手に入れられてしまえば、将来の戦いでリンド達は不利になるどころの騒ぎでは済まない。

 

「あのご先祖様は『呪』を司る方だ。僕らの里の呪に関わる術は、あのご先祖様が編み出してくれたものだしね」

 

「確かに今のツクヨミ達には必要な存在ですね」

 

 因みにリンドが『宝貝』を使って、相手に連絡は出来ない。

 繋がりを作れば、其処から呪を使われて自身の下に来るようにされかねないからだ。

 

「ご先祖様の事は一先ず置いておくとして話の続きね……『八尺瓊(やさかに)』が玄武の発言にキレた」

 

『っ!?』

 

 リンドの発言に桃花、蔓、青龍は愕然とした顔を浮かべた。

 『八尺瓊(やさかに)』が意識を持っている事は、三人も知っている。何せリンドに子を為して一族再興を早期に行なうように促しているのは、他ならぬ『八尺瓊(やさかに)』なのだ。

 そして青龍、桃花、蔓も一族として迎えられ加護も与えられたので、その意思を感じ取ることが出来る。

 

「桃花。試しに『八尺瓊(やさかに)』に意思を繋いでみて。青龍と蔓は駄目だよ。お腹の子に影響が出かねないから。あと、繋いでもすぐに切るんだよ。呑まれるからね」

 

「わ、分かりました……では……っ!?」

 

 『八尺瓊(やさかに)』に意思を繋いだ瞬間、桃花は感じた。

 凄まじいまでの『八尺瓊(やさかに)』の激怒を。その意思は繋がった桃花に容赦なく襲い掛かろうとする。

 慌てて桃花はリンドの言う通り、『八尺瓊(やさかに)』との繋がりを切った。

 

「はぁっ! はぁっ! はぁっ!!」

 

「桃花!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 床に手を置いて荒い息を吐きながら顔を下に向けている桃花を心配して、蔓と青龍が声を掛けた。

 

「はぁっ……は、はい……旦那様の言う通りです。今の『八尺瓊(やさかに)』に……青龍さんと蔓さんは意思を繋いではいけません……子に悪影響が起きかねません……ハッ! 旦那様!? 李花は!?」

 

 リンドの血を引いている李花も、『八尺瓊(やさかに)』を扱える後継者。

 当然、『八尺瓊(やさかに)』の意思を感じ取る事が出来る。それに気が付いた桃花は、慌てて揺り籠の中にいる李花を確認する。

 

「……ああっ……良かった」

 

 揺り籠に入れた李花は、余程居心地が良かったのか、スヤスヤと眠っていた。

 桃花はその事に心の底から安堵し、目尻に浮かんでいた涙を拭って眠る李花の顔を優しく撫でる。

 青龍と蔓も李花の無事に安堵するが、事は治まっていない。何とか『八尺瓊(やさかに)』の怒りを納めなければ、何れ限界を迎えて繋がりがある者全員に怒りの思念を送りかねない。

 そうなれば精神が幼いどころか自我すら曖昧な李花の精神は崩壊し、青龍と蔓のお腹の子達にまで危険だ。

 

「玄武っ!!」

 

 迂闊な発言で『八尺瓊(やさかに)』を激怒させてしまった玄武に、青龍は声を荒げずにはいられなかった。

 蔓も同じ気持ちで在り、お腹にいる我が子を護るように両手で抱えながらリンドに顔を向ける。

 

「では、主様。玄武様を堕とすのですか?」

 

 リンドに更なる番の雌ができる事に多分に不満はあっても呑み込むしかない。

 我が子の安全には変えられないのだから。青龍と桃花も、不満を呑み込んでリンドに顔を向ける。

 事が終わったら、玄武に沢山の不満の愚痴を言う事を内心で桃花、青龍、蔓は決めながら、リンドの言葉を待つ。

 

「いや、玄武は狙わないよ。幾ら元凶でも、いや、元凶だからこそ『真の契りの儀式』を結んで急に態度を変えられるのは不味いからね。皆と違って玄武と朱雀は顔に出やすそうだし」

 

 その意見に桃花、青龍、蔓は頷くしかなかった。

 玄武と朱雀なら確かに酔った勢いでなどでポロっと本音を言いかねない。

 そうなると残る相手は1人だけ。

 

(運が無かったね、白虎。仕込みはしたけど、多分今夜で孕むのは無理……でも、こっちも李花や青龍、蔓のお腹の子達の為にも番の雌に堕とすからね)

 

 こうして白虎の知らないところで、彼女の運命は決まったのだった。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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