IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜 作:イズモ
ただ次回は確りと本番在りのエロをやります!
お気に入り、アンケート、評価してくれた皆様ありがとうございます!
因みに佐久夜編から1年ほど経過しているので、既に産まれています。
「あ、あのどういう事なんですか? 生者の世界アシハラノクニ? 死者の世界ネノクニって一体?」
いきなり言われた言葉に、琴乃は面を食らって混乱した。
実際、いきなり生者や死者の世界と言われたら混乱するのは当たり前の事だ。
話した佐久夜も分かっているのか頷き、暗い廊下を警戒するように見回しているリンドに声を掛ける。
「リンド。悪霊の気配はどう?」
「……うん。佐久夜さ……じゃなくて佐久夜お姉ちゃん」
据わった目で睨まれたリンドは、慌てて言い直して佐久夜に報告する。
「あ、悪霊の気配は少なくなってるよ。多分、桃花様と蔓様が動いてくれているんだと思う」
「……うん。そうみたいだね」
頼もしい2人の精霊が動いてくれている事に、同じように気配を探って確認した佐久夜は安心したように息を吐いた。
(いきなり床が揺れたと思ったら、悪霊の気配が沢山現れるだもん……おかげでリンドとデキなかった!)
思い出したら怒りが沸き上がって来たのか、佐久夜は歯軋りしてしまいそうな自分を必死に堪える。
そもそも何故隠れ里で暮らしている筈の佐久夜とリンドが、ネノクニの人々に『アシハラノクノの学び舎』と呼ばれている出雲学園にいるのかと言うと、一年ほど前に『妖かしの森』で戦った烏天狗が口走った『救世主を呼ぶ』と言う言葉が原因だった。
悪霊の言葉を鵜呑みにするのは大変危険だが、アマテラスとカグツチには烏天狗の言葉を聞き流せなかったのだ。
何故ならばカグツチは嘗てアシハラノクニで暮らし、アマテラスに『救世主』として呼び出された者。
そう言った前例がある以上、考え難いところがあっても放置しておく事も出来ない問題としてアマテラス達は手を打つ事にした。
具体的には、アシハラノクニから人間を一月の中で最も呼びやすい数日間の間、出雲学園に人員を配置。加えて『妖かしの森』の精霊である桃花と、出雲学園を守る樹木の精霊『蔓』との協力体制の構築。
後者に関しては元々桃花と蔓は、アマテラス達の味方だったので問題は無い。
問題になったのは、寧ろ出雲学園に配置する人員だった。
現在、アマテラス達の里は戦時下に置かれている。幾ら精霊が二体いるとは言え、低級の悪霊達が出現する出雲学園に人員を送れる余裕は余りない。
兵士達は当然として、里の護りとして巫女達も必要。
其処でアマテラス達は、修業中の佐久夜とリンドに白羽の矢を立てた。低級の悪霊達ならば、桃花と蔓の2人に援護して貰えれば見習いの2人でも倒せる。
以前ならともかく、今はアマテラスとカグツチは佐久夜もある程度戦いを経験する必要があると認識し、リンドにもまた幼いながらも実戦の経験を積ませる必要があると思い、2人の派遣が決まった。
それはもう何ヶ月前からも続き、慣れて来てしまった佐久夜にとって、出雲学園とは、お泊りしてリンドと気兼ねなく
「あ、あの~……」
「あっ、ごめんなさい。とにかく一緒に来て。詳しい話は安全な場所でするから」
「は、はい……」
訳が分からないながらも、自分が異常な状況に置かれている事だけは認識できた琴乃は、素直に佐久夜についていく。
その後ろを周囲を警戒するリンドが続く。三人は先ず階段を降りて下へと向かって行く。
その途中で琴乃は何かがギシギシと動く音を耳にする。
「……あ、あの、この音は?」
「この音? ああ、私とリンドは慣れたけど、知らない人は気になるよね」
「この音は蔓様が周囲を警戒している音です」
「蔓様?」
「うん、リンドの言う通り。ほら、そっちの道を見てみて」
「そっちの廊下? ……ああっ!?」
佐久夜の示した廊下の方を見た瞬間、琴乃は息を呑んで口元を押さえた。
琴乃の視線の先にあるのは、夜とは言え慣れ親しんだ出雲学園の廊下が広がっている筈。だが、琴乃の目の前にある廊下には、ギシギシと音を立てて木の枝が動き、先ほど襲われた鼠や蜘蛛の悪霊を捕らえて絞め殺していた。
『ヂュギャっ!』
『ギィッ!」
「ひっ! ……あ、ああっ……」
「あ、安心して! 蔓様と桃花様は悪霊にしか手を出さないから……(でも? 此処まで念入りに動くなんて)」
怯える琴乃を慰めながらも、佐久夜本人も若干違和感のようなものを感じていた。
「さ、佐久夜お姉ちゃん。早く行こう」
「……うん。行こうか」
僅かに脅えが混じりながらも、進言して来たリンドに頷き、三人は学園を進んで行く。
そして一階にあるとある部屋の前で、佐久夜は立ち止まった。
「此処は……保健室?」
「うん。そう呼ばれているってお父さんから聞いてるよ。此処に入って。この部屋は私とリンドがいた場所だから、無事な悪霊封じの札が張られてるから、安全だよ」
「悪霊封じ?」
「とにかく入って。リンドは最後に一応この辺りに張った札が無事なのか、確認ね」
「うん」
佐久夜の指示にリンドは頷き、周囲を警戒しながら離れて行く、
札の確認だけだからすぐに戻って来ると思い、佐久夜は琴乃を連れて保健室へと入った。
入ってみると其処には、琴乃が知っている出雲学園の保健室が広がっていた。外から見た時に気づいていたが電気も点いていて、暗い廊下ばかり歩いていた琴乃は安堵の息を吐く。
(良かった。電気は点くのね。保健室の中も変わりはないみたいだし……あら?)
保健室の中を見回していた琴乃は気がついた。
確かに保健室の中にはベットが置かれていて、学生や教師が怪我をしたときに使う包帯や薬も棚に並べられている。だが……。
(配置が私の知っている場所と違うし、ベットも古い物のような?)
不安に駆られて、琴乃は思わず保険医の先生が座る机に近寄る。
「……ごめんなさい」
謝りながら琴乃は保険医の先生が書いたと思われる書類に手を伸ばした。其処に書かれている名前が、自分の知る保険医の先生である事を願って。だが……。
「そ、そんな!? どうしてこの名前が!?」
置かれていた書類には確かに保険医の名前が書かれていた。
『保険医、橘綾香』
「どうしてお母さんの名前が旧姓で!?」
良く見れば、書類の紙の色も本来の白い紙から黄ばんだ色をしている。少なくとも数十年。ずっと放置されていたという様子だ。
「……この建物はね。数十年前にお父さんがネノクニにやって来た時に現れたんだって」
「えっ?」
琴乃は背後を振り返り、沈痛な表情をしている佐久夜を見つめる。
「さっきも言ったけど、此処は貴女が過ごしていたアシハラノクニじゃないの。此処はネノクニ。貴女達から見ると別の世界」
「別の世界? ……そんなまさか……」
「取り敢えず落ち着いて。詳しい話はちゃんとするから。ただ朝まで此処から出ない方が良いよ。今は出現した悪霊も徘徊してるし、外には狼の群れだっているから」
「狼の……群れ?」
琴乃の認識では、日本に狼がいたのは遥か昔の話。
だが、佐久夜の目は偽りを言っている色はなく、本気で言ってるのだと琴乃は悟った。
(私、一体どうなるの? お母さん、明日香……猛さん)
「……それじゃあ話すね。このネノクニの事に関して」
佐久夜は呆然として椅子に座っている琴乃に話し出すのだった。
月明かりに照らされている廊下を、佐久夜と琴乃と離れたリンドは真っ直ぐに進む。
其処かしこで動く木々の枝に絞め殺されて断末魔の叫びを上げる悪霊達の姿が見えるが、気にした様子はなかった。
リンドには何故桃花と蔓が容赦なく悪霊を殺すのか理解できている。
(それにしても、アシハラノクニから誰かが呼ばれるとこうなるのか。実際、凄く世界が揺れたからなあ)
『世界の理を紡いだ一族』の末裔故か、或いは今はアマテラスの手にある宝珠の正式な所有者故なのか、リンドは世界の変動に対してかなり敏感になっている。
今殺されている悪霊達は、その反動で出現した者達。どうやら低級の悪霊しかいないようだと、リンドは安堵する。
(桃花と蔓も凄く過激になってるなあ。
寧ろ2人がしていなかったら、自分がしていたとリンドは確信していた。
進めていた足を止めて、とある学園の空き教室の扉をリンドは開けた。
そのまま扉を閉めて、何かを確認するように床に触れていく。
(あったあった)
取っ掛かりのような物に触れたリンドは、それを引っ張る。
すると、教室内の床が動き、地下へと続く階段が現れた。もしこの場にカグツチがいれば思い出すだろう。
自身がネノクニにやって来た日の事を。
(桃花と蔓はもう行ってるかな)
リンドが階段を降りていくと、その先には広々とした地下空間が広がっていた。
同時に清浄に満ちた空気が溢れていた。それだけではなく、広い地下空間には、幾つもの大きな箱が沢山置かれ、地面には強力な霊力や神気を放っている剣、刀、槍、薙刀などの刀剣類が数十に及ぶ数で突き刺さっていた。
それらは全て桃花に頼んで回収して貰ったリンドの一族の隠し財宝の数々。
アシハラノクニとネノクニの2つの世界が誕生してからずっと蓄えられ続けていた財宝は莫大。箱の中に入っている大量の『勾玉』に加え、滅多に手に入らない『魂』までも数えきれない程に入っている。他にも遠くに離れた相手と会話出来る『宝貝』など、貴重且つネノクニでも伝説と言われるほどの呪具が箱には沢山入っている。
刀剣類に関しても、伝説級の武具。もしアマテラスがこの場を見れば失神してしまう程の宝の山が、此処にはあった。
(実際、隠し財産の一部をカグツチ様達と一緒に見つけた時は言葉を失ってたからね)
この一年、リンドはアマテラス達との修業や佐久夜、桃花といやらしい事をしている傍らに、人生の目標となってしまった『一族再興』の為に動き続けた。
その為に隠し財産の凡そ三割をアマテラス達の里が得るようにまでした。おかげで現在のアマテラス達の里の戦力は以前の比ではないほどに上がり、一族の秘術の一部を記載した巻物も財宝の中に加え、リンドが本当に『世界の理』に関わる一族の末裔だと認めざる得ない証拠もあった。しかも渡した財宝は全てお世話になった里の為に使ってくれと言ったので、里長のアマテラスは勿論、カグツチを加えた里の上役達の信頼も獲得した。
上役達の中では、流れる血と齎した恩恵で佐久夜の婚約者候補にどうかと言う声も出るほどに、リンドは里内での地位を獲得した。
無論、リンドと一線を越えた佐久夜は表面上は反対しながらも、内心では婚約者となる事に喜んでいた。だが……。
(おっと、そんな事よりも今は急がないと)
思い出に更けている場合ではないと気がついたリンドは、急いで奥の方へと進む。
地下空間は術か何か使われているのか明るく、置かれている宝の山に躓く事無く進む事が出来た。そしてある程度進んでいると……。
「主様。やっぱり来られましたね」
長く美しい緑色の髪に、緑色系の彩りの着物を着た美女がリンドに声を掛けて来た。
呼ばれたリンドは、美女の胸に優しく飛び込む。美女は嫌がる事無く、いや、寧ろ嬉しそうに飛び込んで来たリンドを抱き締めた。
そのままリンドは着物の上から美女の胸を弄る。
「あん♥ 危ないですよ、主様♥」
「フフッ、そう言いながらも僕を嬉しそうに受け止めたよね、
「そ、それは……あっ♥」
着物の合わせ目から内側に入って来たリンドの手の感触に、蔓は顔を赤らめる。
だが、嫌がる様子は見せず、胸を弄り回すリンドの為すがままだった。やがて、リンドは蔓の胸の頂点で立つ乳首を探り当てて笑みを浮かべる。
「ほら、蔓も期待していたんでしょう?」
「んっ♥ ……は、はい、主様が触ってくれることを……き、期待しておりました。あの、きょ、今日こそは……」
「んー……まだ駄目だね」
胸を触っている手とは別の手で、リンドは蔓の腹部に触れた。
着物で分かり難いが、蔓のお腹は僅かに膨れている。その理由を知っているリンドは、僅かに残念そうなため息を吐いて蔓から離れる。
「あっ……あ、主様」
離れた事と今日もシて貰えない事に、蔓は悲しそうな顔をした。
美女である蔓の泣き顔はとても魅力的で、すぐにでも元気にしてあげたいと思うが……それは出来なかった。何故なら……。
「駄目だよ、蔓。精霊の場合、本当に安定期に入らないで行為をするのは危険なんだ。僕は、君と僕の子を殺したくないんだよ」
「は、はい……申し訳ありませんでした」
顔を赤らめながら蔓は謝罪して、大切そうに自身の腹部を撫でる。
(ごめんなさい。アナタの事を忘れた訳じゃないのよ)
自らの子宮内に宿っている命の鼓動を感じて、蔓は落ち着きを取り戻した。
彼女は樹木の精霊であり、『アシハラノクニの学び舎』と呼ばれているこの出雲学園の守護を担っていた精霊。しかし、今はリンドと『真の契りの儀式』を交わし、その体に子を宿していた。
蔓が落ち着きを取り戻すと共に、更に奥から別の女性の声が響く。
「蔓さんの気持ちは分かります。私も安定期に行くまで、何度も旦那様に窘められましたから」
「桃花さん」
「桃花。それに……」
奥からやって来た桃花と、その腕の中で安らかに眠っている母親と同じで紫色の髪をした赤子の姿にリンドは安堵した。
「先ほどまでは少しぐずっていたのですよ、旦那様」
「ごめんね、来るのが遅れて、『李花』」
桃花から受け取った赤子を、リンドは大切そうに抱きかかえる。
その赤子-『李花』-こそ、1年前に出来た桃花とリンドの娘であり、半人半霊の子供。生後二、三ヶ月のその赤子は、この清浄な空気に満ち溢れている地下で蔓とある人物に手伝って貰って桃花が産んだ。
今、腕の中にいる赤ん坊は、まだ佐久夜も知らないリンドの実子だった。
「フフッ、それにしても2人とも少し過激すぎだよ。佐久夜お姉ちゃんも不思議がってたよ」
「申し訳ありません。ですが、もし低級とは言え悪霊の手がこの子に伸びたらと思うと」
「私も……お腹の子に影響が出たらと不安に思って……悪霊達に容赦出来ませんでした」
昼間はともかく、李花が夜に過ごすこの地下空間は清浄な空気で満ち溢れているために低級の悪霊では入るどころか、一瞬で消滅してしまうのだが、母親となった桃花と、これから母親になる蔓にとっては我が子達の安全が何よりも優先。
その気持ちはリンドも良く分かる。腕の中で健やかに眠る李花の安全の為なら、悪霊を排除する事に躊躇いはない。
「でも、余り派手にやらかすのは不味いでしょう」
其処に新たな女性の声が響いた。
桃花と蔓は、突然の声にリンドと李花を守るように立つ。しかし、守られているリンドは警戒した様子もなく、何時の間にか置かれている箱の上にアマテラスよりも若いよく似た顔立ちの女性が座っていた。
相手を確認した桃花と蔓は安堵の息を吐き、リンドは李花を抱えながら女性に挨拶をする。
「こんばんは、ツクヨミ様」
「ええ、こんばんは、リンド」
女性-アマテラスの双子の姉にして、今は精霊であるツクヨミ-は挨拶を返した。
「此方に来られたのはアマテラス様とカグツチ様に頼まれたからですか?」
「そうよ。流石にアレだけ世界が揺らいだら、神となったあの2人なら気付くわよ。それで……来たの?」
「はい。アシハラノクニの女性と思わしき人を一人保護しました」
「そう。で、貴方の見立てはどう?」
ツクヨミは桃花と蔓を除いて、里の中で唯一リンドの本性と真の実力を知っている。故に、偽りは許さないと言うように視線を強めて問い質す。
対してリンドも、ツクヨミに偽りなく自身の見立てを告げる。
「多分、違いますね。直接ツクヨミ様も見れば分かると思いますけど、あのお姉さん。生命力が強くないんですよ。少し長い距離を移動しただけで倒れそうなぐらいに」
幾ら『一族再興』と言う目標と、綺麗な女性に目がないリンドとは言え、悪霊に対する怒りと憎しみはその内の奥底に宿っている。だからこそ、自身の立場の向上の打算もあったが、アマテラス達の里に三割もの一族の隠し財産を渡したのだ。
故に、悪霊の『救世主』となりかねない存在には最大の警戒を持っている。……佐久夜とシたい気持ちは勿論あるが、この任務に自分が入るよう
リンドの答えに偽りがない事を確信したツクヨミは頷く。
「まっ、貴方がそう言うのならそうなんでしょうね。困った子供だけど、里の人間に被害は及ぼさないみたいだし。尤も、別の方面では手を出しているけどね」
「ハハッ、すみません」
「別に良いわよ。私の今の目的にも協力してくれているんだから……ただ
言葉と共にツクヨミは殺気こそ放っていないが、本気で言っている意思を込めてリンドに忠告した。
桃花と蔓は思わず2人の間に割って入りそうになるが、リンドが視線で遮り、桃花に李花を渡す。渡された桃花はリンドと李花の両方に視線を彷徨わせる。
その桃花に向かってリンドは強く頷く事で安心させる。
「大丈夫ですよ、カグツチ様には本当に何もしませんから」
「ええ、そうよ。アマテラスは好きにしても良いけど、ヒカルだけは駄目。彼は……私のものなんだから」
アマテラスの双子の姉とは思えない言葉だが、そもそもツクヨミとアマテラスは生まれてすぐに引き離された姉妹。
双子は災いを呼ぶという迷信が当たり前に通じる世界であるネノクニ。その迷信に従ってツクヨミは里から捨てられ、邪神ヨモツオオカミに仕える将となっていた。戦いの中でアマテラスとツクヨミは再会し、紆余曲折へてアマテラスは神に、ツクヨミは精霊となり、共にネノクニをカグツチと共に守って来た。
だが、アマテラスもツクヨミも、そしてカグツチも気付いていなかったが、ツクヨミが精霊となる経緯で一つの重大な出来事が三人の気付かぬうちに起きていた。
その証拠が、ツクヨミのカグツチの子供の妊娠だった。三人はツクヨミが人間から精霊となる時に偶然排卵を迎えていて、それが原因で子供が出来たと思っていた。
子を作れない精霊が子を為すにはそれしか原因はないと思っていたからだ。
だが、実際は違う。偶然にも、ツクヨミとカグツチは精霊が子を為せる儀式である『真の契りの儀式』を不完全ながら行なっていたのだ。
(まさか、精霊が子を為せる儀式があったなんて……しかも、私とヒカルがそれを不完全に行なっていたなんて夢にも思ってなかったわ)
『真の契りの儀式』は、『契りの儀式』と言う精霊にとって安全な儀式が存在しているおかげで現在のネノクニでは知識として失われていた。
唯一知っていたのは、遥か昔に精霊と結ばれたリンドの一族のみ。
ツクヨミとカグツチが『真の契りの儀式』を不完全ながら結んでいたのは、本当に偶然だった。だが、あくまでも不完全な儀式。奇跡の代償は、ツクヨミを蝕んでいた。
そもそも『真の契りの儀式』が精霊と契約者に決して離れる事が出来ない強固な結びつきを施すのは、不変の存在である精霊が、子を為すという奇跡の代償からその身を護る為の繋がり。
不完全、或いは『契りの儀式』程度の結びつきでは、子を為すという奇跡の代償を支えるにはどうやっても足りない。故に、ツクヨミと言う存在は消滅の道を進んでいた。
(それでも良いと思ってた。ヨモツオオカミ様率いる悪霊の将として、世界を脅かし続けた私に子を宿す奇跡が起きて、曲がりなりにもその子を育てる時間はあったのだから、それで良いと私は覚悟していた)
少しずつ自身の存在が薄れて行く事に恐怖がなかった訳でない。
だが、ツクヨミに後悔はない。彼女は悪霊の将であった事にも後悔はない。ただ自分のやりたいことをやり通す。それがツクヨミの生き方。
精霊となってもそれは変わらない。妹よりも先にカグツチの子供を孕んでしまった事に申し訳ない気持ちがない訳ではないが、ある意味事故なので仕方がないし。このネノクニでは、現代社会のように出来た子供を堕ろすという考えもない。
ましてや子を為せない存在である精霊が子を為すという奇跡が起きたのだから、アマテラスも最終的に受け入れるしかなかった。
(まあ、ちょっとかわいがり過ぎて困った子になってしまったけどね)
愛情を持ってツクヨミは、自らの息子であるニニギを育てた。
そのニニギが悪霊達の手によって封印されたと聞いた時は、残り少ない時間を全て使ってでも解放しようとしていた。
だが、悪霊達がニニギに施した封印は力が弱まったツクヨミではどうやっても解く事が出来ず、アマテラスとカグツチでも解く事が出来ないほどの強固な封印だった。
(だから、アマテラスの手にある『世界の理に関わる宝珠』とリンドを狙おうとしたんだけど……まさか、こんなとんでもない本性を隠している子供だとは思ってなかったわ)
どうやってアマテラス達を出し抜こうと考えていたツクヨミの前に、リンドはあっさりやって来た。
そしてツクヨミが消滅を免れる方法を提示し、失敗してもニニギを復活させるという契約を交わすことで、彼らは協力関係となった。
(ヒカルに最後に抱かれるのも悪くないと思ったのもあるし)
そしてカグツチとツクヨミは『真の契りの儀式』を交わすことに成功。
ツクヨミは消滅を免れた。だが、同時にツクヨミは『真の契りの儀式』の悪影響を受けた事で目覚めてしまった。カグツチを、いや『塔馬ヒカル』を欲する女の感情に。
(ごめんなさいね、アマテラス……けど、私はもうこの感情を抑えきれないの……フフッ、精霊がこんな感情に支配されるなんて。『真の契りの儀式』が隠されるのも仕方がないわね)
ツクヨミはもう止まらないし、止まる事が出来ない。カグツチの全てを手にするその時まで。
「……ところで佐久夜にはまだ話さないの?」
「うーん、本当は佐久夜お姉ちゃんと婚約関係になったら話すつもりだったんですけどね」
「ニニギの件で保留になったのよね。その話」
この一年で佐久夜とリンドの関係は深まった。
桃花と蔓のように本性を見せても、佐久夜はリンドから離れる事は出来ない。だが、此処で問題となったのは今は封印されているカグツチとツクヨミの子供で、佐久夜の異母兄であるニニギの存在だった。
このニニギ。実力は里の中でアマテラスとカグツチ、そしてツクヨミに次ぐ実質里の中で四番目に強いという半人半霊なのだが……性格にとても問題があった。
異母妹である佐久夜の自称婚約者を名乗り、佐久夜に近づく男性を決して許さない。その上、とにかく自分勝手な性格で戦場でも傍に仕えていた軍師の言葉も聞かず、結果、ヒミコ達の罠にまんまと嵌まって今は封印されている。佐久夜もニニギの事で大変迷惑を被っているで、決して兄とは呼ばず、『あいつ』か『ニニギ』と呼ぶほどに嫌っている。
実力はカグツチとツクヨミの息子で、半人半霊でもあるので本当に凄いのだが、それを加えても問題ばかり引き起こす里一番の問題児。
それこそ里に多大な利益を促し、『世界の理を守護する一族』の末裔だとしても、リンドが佐久夜と深い仲にあるとすれば、迷う事無くニニギは剣を向けるだろう。
佐久夜との婚約話が保留になったのも、里の上役の1人がニニギに命を狙われかねないと進言したからに他ならない。
アマテラスとカグツチ、そしてツクヨミもこれに関しては同意を示した。
因みにリンドとの婚約話の成功を望んでいた佐久夜は、ニニギ1人のせいで話が保留になったで、ますますニニギが嫌いになっていた。
「はぁ~、我が子ながらあの子の性格には私も困っているのよね。桃花と蔓も、初めての子で気持ちは分かるけど、あんまりその子達を甘やかさない方が良いわよ」
「そ、そう言われましても」
「……その……自信がありませんね」
ニニギの事は勿論桃花と蔓も知ってはいる。
……知ってはいるのだが、ツクヨミよりも長い時を精霊として過ごして来た2人には我が子をどうしても甘やかしてしまいそうだった。
これは2人も自身と同じ失敗を繰り返しそうだと、ツクヨミはため息を吐く。
「……さて、そろそろ戻らないといけないかな」
「あっ、では、此方を持って行って下さい、主様」
蔓は自身が操る木の枝の先に括られている袋を差し出した。
「悪霊達が消滅した事で出現した勾玉です。佐久夜様への言い訳にお使いください」
リンドはそれを受け取り、ズボンに巻く。これで佐久夜に戻るのが遅れた言い訳が出来た。
「ツクヨミ様は?」
「一緒に行くわ。リンドの話を信じていない訳じゃないけど、やっぱりこの目で直接新しくやって来たアシハラノクニの人間を確認したいからね」
「じゃあ、行きましょうか。桃花と蔓は、此処で李花の事をお願いね」
「かしこまりました、旦那様」
「どうかお気をつけて」
(まっ、この2人からすれば佐久夜との婚約話が保留になった事は嬉しいでしょうけどね)
ツクヨミは桃花と蔓の本心を知っているが、それを口に出す事なくリンドと共に地上に戻った。
「それにしても、貴方の見立てが正しいんだったら、どうして悪霊達はわざわざアシハラノクニの娘を呼んだのかしらね?」
「さあ、それは僕にも。ただ帰すつもりはないみたいですよ。あの人には
「へえ……」
興味深い話を聞けたとツクヨミは笑みを深める。
(わざわざ呪いまで掛けるなんて。悪霊達はどういうつもりかしらね。いえ、それ以上にどうやって呪いをかけられたのかも気になるわね……それに)
会話の中でリンドの声に僅かに喜びが混じっているのをツクヨミは見抜いていた。
(その娘も狙っているという事ね。厭らしい坊やだこと)
まだ見ぬアシハラノクニの娘の未来は、ほぼ決まったとツクヨミは察していた。
だが、ソレに対して何かをツクヨミが言う事も、する事もない。リンドの目標は結果的に世界の安寧を促す事だと分かっているからだ。
(佐久夜も頑張って、この子の手綱を握れるようにならないとね)
ツクヨミがそう考えている間に、2人は保健室に辿り着いた。
恐る恐るリンドが扉を開けると、案の定佐久夜は怒っていた。
「リンド! 遅い! 一体何をして……って!? 伯母様!?」
里にいる筈のツクヨミが、リンドの傍にいる事に佐久夜は心から驚いた。
「佐久夜。余りこの子を怒らないでね。此処に戻る途中で私と会って、話をしてたから遅くなったの。ね?」
「う、うん。ごめんなさい、佐久夜お姉ちゃん。それとコレ。桃花様と蔓様から渡された勾玉だよ」
「……そうだったんだ。うん、怒ったりしてごめんね、リンド」
「良いよ、佐久夜お姉ちゃん」
(全く、演技が上手い事)
本性を知っているツクヨミからすれば茶番だが、何も知らない佐久夜は事情を受け入れた。
「それでアシハラノクニから来た娘はどうしてるの?」
「え~と、取り敢えずある程度の世界の説明と、帰る為にはお母さんに会って、『反魂の術』を使って貰うしかないって話しました」
「そう。まあ、佐久夜が使うよりもアマテラスが『反魂の術』を使った方が確実でしょうね」
人間がネノクニからアシハラノクニに帰還する事が出来る『反魂の術』。
とても難易度の高い術。佐久夜も使えるには使えるが、過去に使用したことがあるアマテラスの方がより成功率は高い。
佐久夜も分かっているのか、ツクヨミの意見に反論はなかった。
「それで疲れたのか、琴乃さんは今は眠っています」
「琴乃と言うのね、その娘は?」
「あっ、はい。白鳥琴乃さんです」
「ふぅーん」
興味深そうにツクヨミは、保健室に置かれているベットの上で眠る琴乃を見つめた。
「……さて、今日はもう遅いから、あなた達も明日に備えて寝なさい。此処の見張りは私がしておくから」
「……分かりました。行こう、リンド」
「えっ? 佐久夜お姉ちゃん」
いきなり手を引っ張られたリンドは、佐久夜と共に保健室を出て行った。
「あらあら、佐久夜も積極的ね」
これから何が2人の間で起きるのか察しながらも、ツクヨミは何もせず、ゆっくりとベットの上で今は安らかに眠っている琴乃に視線を向ける。
「貴女も頑張りなさいね」
「……んっ……猛さん」
これからその身に襲い掛かる出来事を知らず、白鳥琴乃は安らかな表情で眠り続けるのだった。
ツクヨミは既にカグツチと『真の契りの儀式』を結んでいます。
なので、悪霊時代の感情が目覚めています。
リンド達とはあくまで協力関係。リンド達の行ないで許しなく、カグツチに傷つけたら即戦う事になります。
蔓編は既に終えている状態なので、蔓もリンドと『真の契りの儀式』を結んで、当然子供を妊娠中。
そして桃花とリンドの娘の名前は『李花』になりました。
ニニギと言う問題児の事もあって、桃花は厳しく育てたいと思っているのですが、初めての子なのでどうなるか。因みにリンドの一族の血を引いているで、当然呪縛も受け継いでしまっています。
蔓を孕ませたのは、娘に呪縛を発現させない為なのもあります。
アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。
-
琴乃が堕ちた段階で孕ませる
-
四聖の社全て攻略後に孕ませる
-
サヨ関連終了後に孕ませる
-
イザナミも加え、四人そろって孕ませる