※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

144 / 174
琴乃編ではなくて申し訳ありません。
何処までヤルか悩んでしまって。次こそは琴乃編を必ず終わりします。

現在のアンケートは二月中までとさせて頂きます。
またアンケートの票が多い順から攻略していく予定です。


アマテラス・淫堕ち3・契りの儀式編の肆

「………青龍……今の話は……」

 

『信じられない気持ちは分かります……いえ、私も未だ信じられない思いはありますが……事実なのでしょう。黄泉平坂にあるリンド様の一族の遺産が隠されている空間の中に……先代のネノクニの神であるイザナミが眠り、そして目覚めようと、或いは既に目覚めているとのことです』

 

「そんな……まさか……」

 

 出雲学園にいる巫女達に預けている『宝貝』と繋がっている『宝貝』から聞こえて来た深刻さに満ちた青龍の声に、アマテラスは身体を震わせるしかなかった。

 先代のネノクニの神であるイザナミ。二千年以上、ネノクニを守護し続けたカグツチの実の母親。同時に邪神ヨモツオオカミの半身でもあった。

 十数年前に邪神ヨモツオオカミをカグツチとアマテラス、そして四聖獣を含めた仲間達と共に倒した事によって、カグツチとアマテラスに己の神として権能である『支える力』と『祈る力』を渡して旅だった筈。

 そのイザナミが『黄泉平坂』に存在しているリンドの一族の遺産が隠された空間にいるばかりか、生(・)き(・)て(・)い(・)て(・)目(・)覚(・)め(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 信じられないような話にアマテラスの胸中は、驚愕と困惑に満ちていた。

 

(リンドではなく、青龍からの緊急の通信と聞き、何事かと思いましたが……)

 

 知らされた事実はアマテラスにとって、天地がひっくり返ったも同然の内容だった。

 イザナミの存命。しかも目覚めようと、或いは既に目覚めているかも知れない。到底信じられるような話ではない。

 何よりもアマテラスは直接目にして感じたのだ。役目を終えて、旅立ったイザナミを。だが……。

 

(まさか!? 昼間のあの感覚はイザナミ様が目覚めた事を知らせるものだったのでは!?)

 

 アマテラスは思い出す。

 昼間の渚との会話後に胸の奥で強い鼓動のようなものを感じた事を。

 

『詳細は、『サヨ』様がお話になるそうです』

 

『改めて初めまして新たなネノクニ神であるアマテラス……私は『サヨ』。遥か昔にこのネノクニの陰である一族に嫁いだ『呪』を司る精霊にして、『黄泉平坂』にある一族の遺産の番人をしていた者です』

 

 青龍に代わって、『サヨ』の声が『宝貝』から聞こえて来る。

 未だ一族を継ぐ者であるリンドが、蔓の出産に専念している為に青龍と白虎は一先ず事の次第をアマテラスと行軍中のツクヨミに連絡を入れる事にした。

 事前にリンドから何か緊急事態が起きた時は、青龍と白虎の判断に任せると言われていたので、二人は即座に動き出した。だが、行軍の最中なのか、ツクヨミとの連絡は繋がらず、こうしてアマテラスに連絡を入れたのである。

 

「現在のネノクニの神であるアマテラスです」

 

『直接会うべきなのでしょうが、何分無理をし過ぎてしまい、全く身体が動かない状況なので『宝貝』越しでの会話を許して下さい』

 

「ええ、構いません。それでイザナミ様の存命の話は……」

 

『事実です……十数年前、貴女とその夫がイザナミから役目を引き継いだ時、私は遥か昔にサギリお婆様達から託された役目を果たしたのです』

 

「それはつまり……」

 

『ええ……一族とヨモツオオカミとの盟約によって干渉は出来ませんでしたが、貴女達の戦いは放った式神を通して見ていました』

 

(あの時に!?)

 

 十数年前の邪神ヨモツオオカミとアマテラス、カグツチ達の決戦。

 それを『サヨ』は自らが潜む空間の外に放った式神を通して見ていた。遥か昔に交わされた盟約故に、ヨモツオオカミとは敵対も協力もしないが、覗き見る事は出来ていた。

 サヨが戦いを見ていたのは、二つの世界の行く末を外敵から守護する為に戦っている一族の者達の代わりに見届ける為でもあったが、同時に一族の者でも当主とその伴侶の身しか伝えられない秘事を成し遂げる為。

 

『あの時こそが長きに渡る一族の悲願を叶える時。『イザナミの蘇生』の時だと私は確信しました』

 

「イザナミ様の……蘇生……」

 

 それは多くの者が願いながらも、決して叶わなかった望み。

 その望みを果たす事が出来ず、多くの者が嘆いて来た。だが、『サヨ』は二千年の時の果てに、その望みを遂に果たしたのだ。

 

『ええ……順を追って話しますが、私が一族に嫁入りする前。時期で言えば、アシハラノクニとネノクニが二つの世界に別れる前、サギリお婆様達はそもそも『イザナミの蘇生』を目的として動いていました』

 

 遥か昔、リンドの一族の先祖はクーデターによって追われたイザナギとイザナミの救出の為に動いていた。

 自分達を狙った者達も返り討ちにし、急いで二人の救援に向かったが、辿り着いた時に見つけたのは事切れたイ(・)ザ(・)ナ(・)ミ(・)の(・)肉(・)体(・)だけだった。

 

『そのイザナミの身体をサギリお婆様達は再生しました。イザナミが真の意味で蘇生する為には、その肉体が何よりも必要だったからです』

 

 幾ら当時、ネノクニとアシハラノクニが行き来できるとは言え、ネノクニから連れ出した相手は仮の肉体でしかない。アシハラノクニ側で完全に蘇生させる為には、必ず本人の肉体が必要。だからこそ、サギリ達はイザナミの肉体を治したのだ。

 尤もお腹にいた子の方は残念ながら酷い損傷で再生させる事は出来なかった。

 

『肉体の再生も終わり、イザナギがネノクニへと繋がる場所へと向かった事を知ったサギリお婆様達はすぐさま向かいました……その後は貴女も知っての通り、愚か者達のせいでネノクニとアシハラノクニは別たれ、イザナミはネノクニの神となりました……仮の身体で』

 

「っ!?」

 

 ハッとしたようにアマテラスは目を見開いた。

 そう、イザナミが神となった時、その身体はネノクニへと渡る為の仮の肉体。『ヨモツシコメ』の肉体だった。

 『ヨモツシコメ』の肉体は、アシハラノクニで死した者がネノクニで転生する前の仮の肉体だが、普通の肉体よりも強固な肉体。

 イザナミは『ヨモツシコメ』の仮の肉体のままネノクニの神となった。

 

『それ故にサギリお婆様達が再生させた人(・)の(・)身(・)のイザナミの肉体は、そのまま魂亡き肉体となってしまいました。そして『呪』を司る私ならば、イザナミが役目を解放された時に人の身の肉体に魂を戻せる秘術を編み出せると思った。そして私は……その秘術を編み出し、影(・)に役目を引き継がせたのです』

 

「……では、あの時旅立たれたイザナミ様は、その肉体に戻(・)ら(・)れ(・)た(・)」

 

『ええ、その通りです……後は、一族の当主が『反魂の術』を用いて、アシハラノクニにいるイザナギの下にイザナミを送る……それでサギリお婆様達が望まれた悲願は果たせる筈でした……ですが、術が成功してもイザナミは目覚めませんでした。二千年の労苦によって彼女の魂と心は疲弊し切っていたからです』

 

 此ればかりはかの一族の者でも、『呪』を司るサヨでも治療できなかった。

 自然にイザナミが目覚めるのを待つしかなく、『黄泉平坂』にある『サヨ』がいる空間の中でリンドの母親である当主とその夫以外誰にも知られずに匿われていた。

 

『古きネノクニの神の存命は、新しいネノクニの神となった貴女と夫の今後に影響が出ます。ましてや何時目覚めるかも分からない眠りについたイザナミを、混乱しているネノクニの情勢で外部に知られるのは危険でしたから』

 

「……確かにその通りですね」

 

 ヨモツオオカミと言う脅威が去ってから、すぐにアマテラス達もネノクニの平定に動けたわけではない。

 平定に動くまでの間、里同士の争い、鳴りを潜めていた蛮族の襲来、支配していた長の消失による悪霊の暴走など様々な混乱が起きた。

 リンドの一族にしても漸くネノクニの維持から解放されたが、それまでにあった外敵であるアシハラノクニの神々の迎撃で疲弊し切っていたので余裕など一切なかった。

 

『何れ目覚めた時、密かに貴女とイザナミの息子、そして姉には会わせて、そのままアシハラノクニに送る算段でした』

 

「では……何故急にイザナミ様がお目覚めに?」

 

『此処からは私(・)の話に繋がりますが、眠るイザナミと遺産の守護をしていたところで、急に一族の里に繋がる転移陣が使用不可能になったので慌てました』

 

 問題は多いが、『サヨ』のいる空間も緊急時の避難場所の一つ。

 其処と一族の里を繋ぐ転移陣の繋がりが消えたという事は、一族に何かあったとすぐに『サヨ』は察した。

 だが、影(・)の身では当然外に直接出る事は出来ない。

 

『故に私は式神を空間の外に放って一族に何が起きたのかを知ろうとしました……そして……『黄泉平坂』の番人でありながらも、一族を滅ぼした者に与する奴らの会話を聞いて一族が滅んだ事を知りました』

 

 実際には訪れた桃花から詳細を聞いて知ったのだが、どちらにしても牛頭と馬頭を喰らって得た記憶にもヒミコから説明を受けた事があるので嘘ではない。

 

『それを知った私(・)は怒りと憎しみに支配されました……そしてあの愚かな番人どもが行なっていた享楽を利用して、弄ばれているヨモツシコメの肉体に与えられた無垢な魂を式神を利用して私がいる空間に招いたんです』

 

「っ……まさか……『サヨ』さん‥‥…貴女は……」

 

 アマテラスは気がついた。

 かの一族には劣るが、アマテラスもこのネノクニに伝わる多くの術や在り方などの知識を有する者。

 それに加えて『サヨ』が話した『ヨモツシコメ』の肉体の可能性。その上に、無(・)垢(・)な(・)魂(・)。

 これだけの材料が揃えば、『黄泉平坂』に居る『サヨ』の本体が何をしたのか分かる。

 

『ヨモツシコメと言う肉体と無垢な魂を得た『私』と言う影は、その二つに自らの存在を上書きしてこの世に蘇ったんです』

 

『っ!?』

 

 アマテラスと『宝貝』の向こう側にいる青龍は驚愕の余り息を呑んだ。

 だが、二人は自らの知識と『サヨ』の説明を聞き……可(・)能(・)だと気がつく。

 『ヨモツシコメ』の肉体は、イザナミの件から仮の身体だと言うのに神へと至った。加えて言えば邪神ヨモツオオカミの肉体も広義的にはヨモツシコメの肉体。その肉体は依り代とするに充分。

 後は核となる『無垢な魂』。これが無垢ではなく人生を充分に経験した魂では、影としての自分に影響が出てしまう。或いは『憑依』と言う形になってしまう。

 しかし、牛頭と馬頭の愚かな行為によって『サヨ』は得たのだ。ヨモツシコメの肉体と無垢な魂を。

 

『蘇った私は、すぐさま愚かな番人どもに報いを与えて、その役割である『黄泉平坂の番人』を奪いました。全ては私の血を引く子孫達を殺した者達を殺し尽くす為。その為に蘇った『私』は動き出し、不要な部分である私を切り捨てたんです』

 

「不要な部分とは?」

 

『……ネ(・)ノ(・)ク(・)ニ(・)を(・)守(・)護(・)し(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)と言う想い。言うなれば、『理性』的な部分の感情が私(・)です』

 

『ま、待って下さい!? では、『黄泉平坂』にいるもう一人の『サヨ』様の方は!?』

 

『……ネノクニにどれほど危険が及ぼうとも構わずに、一族を滅ぼした者達を悉く殺し尽くす為に動き出しているでしょう』

 

『っっ!?』

 

 アマテラスと青龍は愕然とした。

 今のところ唯一、様々な力の集合体と化しているヒミコに対処出来る者が、寄りにも寄ってヒミコを討伐する為に動き出している。

 ヒミコの討伐自体はアマテラスと青龍も必ず果たさなければならないと思っているが……。

 

(今だけは不味いのです!!)

 

 未来のヒミコが現在に琴乃をアシハラノクニからネノクニに呼び寄せた事がある以上、ヒミコを討伐する訳には行かない。

 もしも討伐が成功してしまえば、その瞬間に解消できない世界の矛盾が発生してしまい、アシハラノクニとネノクニは消滅の危機に陥ってしまう。

 

『そしてイザナミの御方が目覚める理由ですが……私(・)が吸収した愚かな番人どもの記憶から、イザナミの御方が目覚めるに足る情報があったからです。それを告げれば、イザナミの御方が目覚めると確信できる新たな悪霊の長の企み』

 

「それは一体?」

 

『……息(・)子(・)を殺したばかりか、その来世の魂まで利用しようとしている事を赦せる親はいません』

 

「息子? 夫は今も無事に……っ!?」

 

 アマテラスは気がついた。

 イザナミにとってカグツチ以外にもう一人。息子と呼べる者がいた事を。

 

「スサノオッ!?」

 

『愛していましたよ、だから私も……貴方の事を愛してますよ、スサノオ』

 

 アマテラスの脳裏に、自分達の前からイザナミが去る前に半身であったヨモツオオカミの息子であったスサノオに告げた言葉が浮かんだ。

 

(確かにイザナミ様はスサノオの事も大切に想われていた……それにヨモツオオカミは夫の事を気にかけていたとスサノオが言っていた)

 

 イザナミとヨモツオオカミは表裏一体の関係にあった。

 故に互いの想いも共感しあっていた。ヨモツオオカミがカグツチの事を気に掛けていたのもそれであり、イザナミがスサノオを息子のように想っていたのも互いの気持ちを共有しあっていたから。

 その息子のように想っていたスサノオが殺されたばかりか、来世にまでその魔の手が伸びようとしている。

 ヒミコがどのような想いをスサノオに向けていようとイザナミには関係ない。

 平穏に生きるスサノオの来世を護る為に、目覚めて動き出すには充分な理由だった。

 

『アマテラス! すぐにカグツチ達に連絡を!』

 

「ええっ!?」

 

 青龍の声にすぐさまアマテラスは応じ、カグツチとツクヨミに繋がる『宝貝』を取り出した。

 『宝貝』は世界を隔てても通信が出来る呪具。『黄泉平坂』は特殊な場所だが、問題なく『宝貝』の通信は繋がり、加えてまだ時間的にはカグツチ達は辿り着いていない筈なのだ。

 

(『黄泉平坂』に繋がる場所にあの人や姉さん、皆はまだついていない! 今ならば戦いの最中という事もない筈です!)

 

 実を言えば、『黄泉平坂』に行くだけならば転移の術を使えば行くことが出来る。

 何せアマテラス達は嘗て『黄泉平坂』に行った事があり、ツクヨミはその『黄泉平坂』に拠点を構えていた悪霊の将だったのだ。

 だが、転移の術では少人数しか送れないので、『黄泉平坂』の遠征が決まってから里からある程度離れた場所に大規模な移動用の転移場を用意していた。カグツチ達はその転移場を通って、『黄泉平坂』に向かっている。

 今ならば間に合うとアマテラスは『宝貝』を繋いでカグツチ達と連絡を取ろうとするが……。

 

 ザーッ! ザーザーッ!!

 

「っ!? ……『宝貝』が……繋がらない」

 

『まさか!?』

 

 アマテラスの震える声に、青龍が別の『宝貝』の向こう側から声を上げた。

 世界を隔てても会話を行なう事が出来る『宝貝』が繋がらない。それが意味する事は一つ。

 

 何(・)者(・)か(・)に(・)よ(・)る(・)妨(・)害(・)。

 

『ザーザーッ……ジャマハ、シナイデ……』

 

『っ!?』

 

 雑音のような音に混じり、確かに何者かの声が聞こえると共にカグツチが所持している筈の『宝貝』と繋がる貝が何も音を発しなくなった。

 驚愕でアマテラスと青龍が言葉を失う中、『サヨ』が叫ぶ。

 

『今の声は!? 本体!? やっぱり、あの子達も蘇らせましたか!?』

 

『サヨ様!? 今の声の主に心当たりがあるのですか!?』

 

『ええ! 雑音交じりでも、義(・)娘(・)の声を間違えません!』

 

『義(・)娘(・)!?』

 

 更なる事実の発覚にアマテラスと青龍は思わず叫ぶ。

 だが、本当のネノクニの混乱は此処から始まった。

 

『あくぅっ!!』

 

『っ!? ……うええぇぇぇぇぇん!! ええええんっ!?』

 

『きゃあぁぁぁぁっ!! 青蘭ちゃん! 泣かないで下さい! おぐぅっ!』

 

 青龍の呻くような声に続き、突然青蘭が大きな声で泣き出し、それに慌てた『サヨ』の声と何かが倒れるような物音が『宝貝』から聞こえて来る。

 

「青龍!? どうしました!?」

 

 ただ事では何かが起きたと悟ったアマテラスは、慌てて青龍に質問した。

 

『……アマテラス……社が奪われました!?』

 

「っ!?」

 

 告げられた事実は途轍もなく重く、『宝貝』の向こう側で青蘭の泣き声が上がり続けるのだった。

 

 

 同時刻の朱雀の社。

 澄んだ湖の上の建っている朱雀の社は、ネノクニで最も美しい神殿と言われている。

 悪霊に支配された頃でも美しかった神殿は、解放された今では本来の美しさと荘厳さを取り戻していた。

 しかも、ただ美しいだけではなく内部は迷路のように入り組んでいて、朱雀を祀る祭壇までには容易に辿り着くことが出来ない。

 しかし、今、ネノクニで最も美しいとされていた神殿は……地獄に変わり果てていた。

 澄んでいた湖は煮えたぎるマグマへと変わり果て、近づく者に灼熱の地獄を味合わせる場所へと変わり果てていた。

 神殿こそ霊的な力で護られているのでマグマによって焼け落ちる事は無いが、それでも灼熱地獄としか言えない場所と化してしまっていた。

 

「んくんくっ! ぷはぁっ!! 良い酒だねぇ! 今のアシハラノクニの酒はこんなに旨いのかい!」

 

 本来ならば朱雀が祀られている祭壇がある最奥の部屋。

 其処には神殿の主である朱雀ではなく、見目麗しい赤髪の美女が酒を飲んでいた。

 その両手に荘厳さを感じさせる『篭手』を身に付け、まるで一仕事終わったような雰囲気を発していた。

 実際、彼女は自らの与えられた役割を終えたのだ。

 

『朱雀の社を制圧し、守護していた朱雀を捕らえると言う役目を』。

 

「ゴクゴク……ああ、旨い筈なのに、全然気分が良くならないねぇ」

 

 最初こそ味わった事が無い酒の味を楽しんでいた女性だったが、すぐにその顔は悲しみに染まった。

 

「……一人を残して皆逝っちまうなんてさ……ああっ、嫌な事ばかりが頭に浮かんで仕方がないねぇ……さっさとぶっ殺しに行きたいよ……アンタが昔仕えていたって言う徐福って女をさ」

 

 そう呟く女性の背後の壁には、鳳凰が描かれた紅いチャイナドレスが無残にも破られ、豊満な胸を露わにされて肌に軽い火(・)傷(・)を負って気を失っている朱雀が大の字になるように壁に磔にされているのだった。

 

 『朱雀の社陥落。四聖獣朱雀捕獲』

 

 

 四聖獣白虎の社。

 本来ならばその社は、他の四聖獣同様に堅牢な社である筈だった。だが、ネノクニとアシハラノクニが繋がってしまった影響なのか、或いは他にも理由があったのか定かではないが、その社はアシハラノクニの建物へと変化してしまった。

 変化した影響によって、本来の堅牢さは失われるどころか、内部に入って真っ直ぐに進みに、その先にある中庭の噴水に辿り着くだけで白虎の祭壇に到達してしまうと言う、最も攻略が容易い社となってしまったのだ。

 

「……話には聞いていましたが、これほど酷い状態になっているなんて」

 

 銀色に輝く長髪の美女は頭が痛そうに額に手を当てていた。

 既に祭壇と成っている噴水に据えられている宝玉に触れて、社を支配下に置いたが、余りにも簡単すぎた。

 自らの手に握る『薙刀』を振るう事もなく、ただ真っ直ぐに歩くだけで辿り着いてしまった。無論、侵入者である女性を感知した悪霊を模した影が襲い掛かって来たが、それらは女性に触れることなく消滅していった。

 

「こんなにも簡単では、次代の子が苦労してしまう……手を加える必要がありますね」

 

 そう呟きながら女性が手に持つ薙刀を逆手に持って地面に突き刺そうする。

 だが、突き刺す直前に青空だった筈の上空がすぐに曇天の空へと変貌した。

 

「ん? これは……」

 

 曇天の空へと変貌すると共に風が急速に吹き始め、それは瞬く間に大嵐し、台風へと変わった。

 

「これほどの風? 末裔が番にしたと言う青龍のもの? いえ、義母の話では青龍は子を産み終えて間もない筈……では、この風は?」

 

 吹き荒れる台風に晒されながらも、女性は平然とした様子でその場に立ち続け、台風を引き起こした者の正体を探ろうとする。

 すると、何処からともなく吹き荒れる風に紛れて声が聞こえて来る。

 

『びゃっこ姉の御家から出て行け―!! ここはびゃっこ姉のお家だー!』

 

「びゃっこ姉? 風となれば青龍の眷属の類では?」

 

『イッコはびゃっこ姉の妹なのー! びゃっこ姉の代わりにお家を護るのー! だから出ていけー!』

 

 幼い声が叫ぶと共に台風は強烈さを増し、雷光も駆け巡って行く。

 台風と言う自然の災害。人ではその災害の前に、嵐が過ぎ去るのを待つしかない脅威。だが、その脅威は……。

 

「不出来……」

 

 『薙刀』が一閃されると共に、台風は消え去った。

 

「……えっ?」

 

 吹き荒れる台風に身を潜めていたのは、まだ幼い少女だった。

 厚手の着物を着ているその少女の名は『天目一箇(てんもくいっこ)』。属性的には青龍の眷属になるのだが、白虎を姉として慕っている。台風と言う自然の驚異の化身である精霊の為に、その力は四聖獣に匹敵する。

 だが、精神的に幼いが故にその力を全く制御し切れていない。制御し切れていない力ゆえに、力ある者にとっては脅威ではないのだ。

 

「びゃっこ……ねえ……」

 

 ドサッとイッコは地面に落下した。

 台風を消し去った一閃と共に、届いた衝撃に力は破格でも幼いイッコは耐えられなかったのだ。

 残心を終えた女性は、ゆっくりと地面に落ちて気絶しているイッコの傍に歩いて行く。

 

「この子……使(・)え(・)ま(・)す(・)ね(・)」

 

 『白虎の社陥落。精霊天目一箇捕獲』

 

 

 玄武の社。

 『黒曜石の城塞』と言われるその場所は、四聖の社の中で最も堅牢な社だった。

 内部は床まで磨かれて滑りやすく、水を司る四聖獣が祀られているだけに水路なども通っている。ただ内部は洞窟ほどではないが薄暗く、灯されている松明の明かりを頼りにしか歩けない。

 その城塞の最奥に四聖獣玄武が祀られている祭壇がある。

 だが、その祭壇がある部屋の中は氷に覆われ尽くしていた。その氷の中心では、本来の主である玄武ではなく、両手に『扇』を持った黒髪の美女が舞を踊っていた。

 何処か物悲しさを見る者に感じさせる舞を一頻り踊り終えた女性は、ゆっくりと頭上を見上げる。

 

「末裔……貴方は私達を止めに来るでしょう。それで良いのです。でも、私達も止まらない。貴方は貴方の悲願のままに動きなさい。私はただ皆と共に動きながら舞いましょう。鎮魂の舞を」

 

 そう呟く女性の背後には、一際大きな氷の塊が存在していた。

 その氷の塊には社の守護神にして水を司り氷を操る筈の玄武が、豊満な乳房をまろびださせられたボンテージだけを纏った姿で両手と下半身を氷の塊の中に入れられながら顔を俯かせて目を閉じて気を失っていた。

 まるで飾られるような姿で晒されている玄武の綺麗な肌には、無数の打たれた後が赤く刻まれているのだった。

 

 『玄武の社陥落。四聖獣玄武捕獲』

 

 

 青龍の社。

 地下まで届く深い洞窟の奥深くにある祭壇の前に、背中に『弓』を背負った蒼髪の美少女が立っていた。

 その手には風が吹き荒れ、何かを妨害する術を行使していた。

 

「んっ……これで『宝貝』……繋がらない」

 

 アマテラスが所持するカグツチと繋がる『宝貝』と、リンド達が所持するツクヨミが持つ『宝貝』と連絡が繋がらないようにしていたのは青龍の社を支配下に置いた少女だった。

 

(皆も上手く行った……後は、義母様の指示が来るのを待つだけ)

 

 アマテラスが治める里に最も近い青龍の社がある洞窟に密かに侵入していた少女は、『黄泉平坂』に義理の母親であるサヨから妨害をするように命じられていた。

 そして誰にも気づかれる事なく、妨害の陣をアマテラスの里付近に敷き終えていた。

 

(主要な戦力が居なくなれば、大規模な動きはもう出来ない……私達の邪魔はさせない)

 

 全ては自分達の血を引く一族を滅ぼした者達に報いを与える為。

 その行動を阻もうとする筈のカグツチ達には動けなくなって貰う必要がある。

 

「嘗て四つの社が完成し、守護神である四聖獣が先代のネノクニと共に使用したとされる大封印……それを私達が行なう……末裔。その後は頑張って」

 

 『青龍の社陥落』

 

 こうして四聖獣が守護する四つの社は陥落した。

 ネノクニにとって重大事。だが、それさえもこれから始まる出来事の序章に過ぎないのだった。




アマテラス編の次は漸く蔓の子であるあの子の登場です。
そして黄泉平坂での話になります。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。