※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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アマテラスとの契りの儀式の為にサクサクと進めて行きます。
エロはもう暫らくお待ち下さい。
今回の話はアマテラスメインなので、他のエロもありません。

今回でリメイク版では三女になってしまったあの子が漸く産まれます。


アマテラス・淫堕ち3・契りの儀式編の伍

 おぎゃあっ! おぎゃぁっ!!

 

 出雲学園の地下室で新たな命を産まれた事を告げる産声が上がっていた。

 

「はぁっ……はぁっ……はぁぁっ」

 

 その命を産み落とし、母と成った蔓は荒い息を吐き続けていた。

 出産の間ずっと握って気を送って励まし続けていたリンドは、手渡された布で蔓の顔に流れる汗を丁寧に拭っていく。

 

「ご苦労様、蔓。僕の子を産んでくれて、本当にありがとう」

 

「は、はい、主様」

 

 目から涙まで流して喜ぶリンドに、蔓も心から嬉しそうに微笑んだ。

 本来ならば精霊と言う存在が決して得る事が出来ない『子を為す』と言う幸福。それを与えてくれた相手も心から喜んでくれている事に蔓は幸せを感じずにはいられなかった。

 

「蔓さん。この女の子が貴女と旦那様の娘ですよ」

 

 産まれた赤子を産湯に浸からせ終えて、丁寧に身体を洗い終えた桃花は産着を着させ終えた蔓と同じ深緑色の髪の元気に泣いている赤ん坊を大切に抱えながら話しかけた。

 

「ああ、この子が……私と主様の……」

 

 元気よく泣き続けている赤ん坊に、蔓は顔を綻ばせながら手を伸ばして桃花から受け取りそっと抱き締める。

 

「女の子ですが、もう名前は決めているんですよね」

 

「ええ……」

 

「うん、勿論だよ」

 

 ちゃんと事前にリンドと蔓は話をして、産まれる子供の名前は決めていた。

 この名前に関しては決める時に、桃花に席を外して貰って決めた。無論、桃花の時も青龍と蔓の二人と『真の契りの儀式』を結ぶ前に男児と女児両方の子供の名前は決めて、産まれるまで秘密にしていた。

 青龍も同じであり、子供の名前に関しては家(・)族(・)でも産まれるまで父親であるリンドとその子の母親の間だけの秘密にしていた。

 

「この子の名前は『樹理』。私が樹木の精霊である事と、主様が理に関わる一族の出という事で、女の子ですから『樹理』と決めていました」

 

 未だ泣き止まない『樹理』を大切に抱えながら、蔓はその名を告げた。

 すると、泣き続けていた樹理が漸く泣き止み、安心したように口元を綻ばせる。

 

「樹理。本当に産まれて来てくれてありがとう」

 

 青蘭の時ほど難産では無かったが、それでも無事に蔓との我が子が産まれた事をリンドは涙を流しながら心から喜んでいた。

 自分以外の一族の家(・)族(・)達が死んだ後、自らが涙を流す時は大切な我が子が産まれた時とリンドは決めていた。流石に泣き声までは出さないが、それでも嬉しくて仕方が無かった。

 

「皆もご苦労様。おかげで蔓が無事に出産できたよ」

 

 蔓の出産を桃花と共に手伝ってくれた雌犬巫女達を労う。

 労われた雌犬巫女達は恐縮した様子を見せながらも、蔓が抱いている樹理を羨望に満ちた目で見ていた。

 リンドに身も心も堕とされている彼女達にとって、今の蔓の姿は羨望してやまない姿。幾人かの巫女は『孕める』事を許されているが、彼女達はまだ『孕む』事を許されていない者達。

 何時か自分もと気迫を募らせている雌犬巫女達の様子に、リンドは満足そうに内心で頷きながら口を開く。

 

「さて、片付けが終わったら今日はもう休んで良いよ。見回りの方も、僕が居るから今日はしなくて良いから」

 

『分かりました、ご主人様。では、失礼いたします』

 

 家族の時間を大切にしたいのだと察した雌犬巫女達は、手早く後片付けを終えて地上に戻っていく。

 其処には蔑ろにされているような悲壮感はない。自分達の立場をちゃんと弁えている雌犬巫女達の様子にもリンドは満足そうにする。

 

(でも、蔓の出産を助けてくれたお礼に、後で何か果物でもあげよう。苺が良いかな? それとも林檎。或いは桃や葡萄とかでも良いかも)

 

 密かに育てている果物に関してリンドは考えを巡らせる。

 

「産まれたようだぞ、李花」

 

「あうぅ~」

 

 地上に戻った雌犬巫女達と入れ替わるように、片手で李花を抱え、もう片方の手に揺り籠を持った白虎が地下に入って来た。

 

「李花」

 

「あぅぅっ!!」

 

 大好きな母の声に李花は反応して白虎の服を引っ張る。

 その意味を悟った白虎は、結界用の刀剣類が突き刺さっている辺りを超えたところで腰を屈めて李花を床に降ろす。

 降ろされた李花はハイハイを始めて、桃花の下へと向かって行く。

 これが最近の李花の好きな事で、誰かに抱えられて相手の下に行くよりも、自分でその相手のところに辿り着くのがお気に入りだった。

 勿論、刀剣類がある場所に行こうとする時は止めるが、それ以外では李花の思うように桃花達はさせていた。

 母親達に見守られる中、李花はしゃがんで待っていてくれた桃花の下に辿り着く。

 

「あいっ!!」

 

「李花。頑張りましたね。偉いですよ」

 

 愛らしい愛娘の姿に桃花は微笑みながら、自分の下に来た李花を抱える。

 

「ほら、李花……貴女のもう一人の妹が産まれましたよ」

 

「あぅぅ?」

 

 首を傾げるような顔をしながら、李花は蔓の腕に抱かれている樹理に気がつく。

 

「李花。この子は樹理。青蘭に続く貴女の妹。仲良くするのですよ」

 

「あぅ~……あい!」

 

 まだ産まれたばかりの樹理を李花はジッと見つめる。

 すると樹理の口元が微かに微笑むように緩み、李花も血の繋がりようなもの感じたのか桃花の腕の中で嬉しそうに微笑んだ。

 そんな姉妹の出会いの光景をリンドが『転写の術』で紙に記録していると、神妙な顔をした白虎が近づいて来る。

 

「主人様……少し良いだろうか?」

 

「うん、良いよ」

 

 白虎の様子からすぐさま何か起きた事を悟ったリンドは頷き、二人で桃花達から少し離れた場所に移動する。

 更に繋がりから内緒の話をしたいのだという事も察したリンドは、風を操って桃花達に声が聞こえないようにする。

 

「それで何があったの? 青龍や青蘭が一緒に来なかったのも何かあったからでしょう?」

 

「うむ、そうだ」

 

(流石は主人様だ。此方の事情を瞬時に見抜くとは)

 

 すぐさま状況を理解する子供らしからぬ判断力に白虎は内心ときめきながらも、今はそれどころではないと事情を話し出す。

 

「実は『サヨ』殿が目覚めて……」

 

 白虎は『サヨ』から聞いた事情をリンドに説明していく。

 『黄泉平坂』にいる『サヨ』が精霊の影ではなく、このネノクニに蘇ったばかりか問題を引き起こした牛頭と馬頭から『黄泉平坂の番人』の役割を奪って暗躍をしていた事。

 『サヨ』が番人をしていた遺産の空間の中に、リンドの母親と父親と『サヨ』しか知らなかった先代のネノクニの神であるイザナミの生存。

 そして桃花に掛けられた視覚と聴覚を共有する術。

 

「……『サヨ』ご先祖様……」

 

 聞き終えたリンドは思わず呻くような声を出しながら顔を引き攣らせた。

 

(イザナミ様の生存に関しては聞かされていないのは仕方がないけど、桃花に『呪』を掛けていたなんて!)

 

 イザナミの生存が秘匿されていた事に関しては、リンドは文句はない。

 幾ら一族の次期当主候補筆頭と言う立場だったとはいえ、一族に関わる重大事。しかも当主とその伴侶の身に伝え聞く秘事となれば、幾らその当主と伴侶の子供とは言え、教えるはずがないとわかっているからだ。

 現状は『八尺瓊』の補助のおかげで知識の面は大丈夫だが、先代のネノクニの存命など幾ら当主の実子だとしても教えられる訳が無い事も納得出来る。

 だが、番の雌である桃花に『呪』を掛けた事だけは別だ。

 

(この事に関しては後で必ずこっちの『サヨ』ご先祖様に謝罪して貰って、他のご先祖様の影の方々に説教を受けて貰うけど……問題は『黄泉平坂』の方のサヨご先祖様だ)

 

 影であり、協力する味方がいないと言う前提が全て崩れてしまった。

 それどころか先代のネノクニの神と言う破格の味方までついてしまった可能性が高い。

 『呪』と言う破格のものを司る荒ぶる龍の化身の復活に加えて、先代のネノクニの神。敵対するなど考えたくもない両者が揃ってしまっている。

 

(予想外どころの騒ぎじゃない……ヒミコがどうなると構わないけど、今だけは本当に不味いんだ)

 

 不倶戴天の仇であるヒミコがどうなろうと、リンドは本気でどうでも良い。

 だが、そのヒミコのやらかしによって未来から召喚された琴乃の事は別。加えて今ヒミコを討伐してしまえば、アシハラノクニとネノクニの崩壊の危機が発生してしまう。

 

(つまり、僕らはヒミコを討伐されない為に、サヨご先祖様とイザナミ様を戦ってでも止めないといけない……吐き気がしそう)

 

 冗談抜きでリンドは気分が悪くなっていた。

 何が悲しくて、先祖と偉大な先代のネノクニの神から一族を滅ぼした怨敵を護るためにと動かなければならないのだと心から嘆いていた。

 

「……ツクヨミ様には連絡が繋がらなかったんだよね?」

 

「うむ。恐らく行軍中なのだろう。青龍はアマテラスに連絡をとって、『サヨ』殿と共に説明をしている筈だ。主人様達には事後承諾になってしまったが……」

 

「それは構わないよ。寧ろ僕の判断を聞くよりも先に動いてくれて助かったよ」

 

(それでも間に合わないかも知れないけど……)

 

 白虎の話では『サヨ』が本格的に動き出したのは、凡そ一ヶ月近く前。

 琴乃のアシハラノクニへの帰還が失敗に終わった頃。それまでも桃花の視覚と聴覚から情報を得ていたのは明らかであり、動き出したと言う事は方針が本格的に決まったと言う事だとリンドは察していた。

 だが、それでも一ヶ月近く表立った動きはない。それはリンドが知る『サヨ』ならばあり得ない。

 何よりも『ネノクニを護る』と言う『理性』の部分が、『黄泉平坂にいるサヨ』には無いのだ。

 

(それでも動かなかったのは‥…多分、『黄泉平坂のサヨ』ご先祖様は何かを待っていたに違いない)

 

 イザナミの復活に関する事なのか、それとも他に理由があるのか。とにかく、何らかの目論見があるのは間違いないとリンドは確信していた。

 ただでさえ時間を与えてしまい、リンド側の情報が全て知られてしまっているのだ。その上に、リンドも知らなかったイザナミの事や精霊の影を蘇らせる手段まで『サヨ』は持っている。

 

(それに牛頭と馬頭の役割だった『黄泉平坂の番人』を得ている以上……『八尺瓊』を使用しての『サヨ』ご先祖様の消滅は出来ない)

 

 強力過ぎるが故に『八尺瓊』の使用には細心の注意を払わなければならない。

 確かにリンドの一族ならば、本来ならば役目を放棄した牛頭と馬頭から『番人』の座を剥奪できるが、その為には直接赴く必要がある。

 加えて言えば、『八尺瓊』が秘める『理を紡ぐ力』と『理を整える力』は、本来はイザナミが持っていた力。

 つまり、遥か昔にリンドの一族に預けた力をイザナミはその身に戻す事も出来るのだ。

 

(不味い……きっとイザナミ様にはヒミコのやらかしは話さない筈だ……とにかく、詳しく地上にいる『サヨ』ご先祖様の方に話を聞かないと!)

 

「……白虎。青龍がアマテラス様と連絡をしているなら、此処で桃花達と待っていて。地上には僕が向かうから」

 

「うむ、分かった」

 

 リンドと『真の契りの儀式』を秘匿している状況で、自分がリンドの傍に居るのをアマテラスに知られるのは不味いと分かっている白虎は問題無いと言うように頷いた。

 

「それと李花と樹理が眠るまでは、桃花に掛けられた術は解かないようにお願い」

 

 出来るならば今すぐに解いて、これ以上の情報が流れてしまうのは避けたいが、術を解いた時に桃花が調子が悪くなる様子をリンドは李花に見せたくなかった。

 繋がりから伝わって来るリンドの想いと子を宿し、李花と接し続けた事で母性に目覚めている白虎は、此方も心得たと言うように頷く。

 

(主人様の言う通り、李花に見られるのは不味い……っ!?)

 

「んくっ!?」

 

「白虎!?」

 

 突然白虎が額を押さえて呻くような声を上げ、慌ててリンドは支えた。

 支えられた白虎は自身に関わる重要なものとの繋がりが断たれた事に、身体を震わせる。

 

「しゅ、主人様……社との繋がりが断たれた」

 

「なっ!?」

 

 白虎の報告に流石のリンドも目を見開いて驚く。

 嘘から出た真のような状況になった。だが、問題はそれだけでは済まない。

 

『っ!?』

 

 地下に居た産まれたばかりの樹理を除いた全員が頭上を見上げる。

 見上げた者達は感じたのだ。地上で荒れ狂う強大な精霊の力を。

 

「青蘭! クッ!! 皆は此処にいて!?」

 

 青蘭の暴走を悟ったリンドは、白虎達に言葉を発すると共に地上に向かって行く。

 地上に戻ったリンドはそのまま止まる事無く廊下を駆け抜け、子供部屋用に使っている教室の一室に向かって行く。

 そしてその教室に辿り着くと、先に地上に戻っていた巫女達が既に集まっていて、結界の術式を発動させて教室内から漏れ出ようとしている力を必死に押さえていた。

 

「『御琴』! 状況を話して!」

 

「は、はい!」

 

 リンドの呼びかけにどこかほんわかした雰囲気を纏っている紅い鉢巻に左右に花の髪飾りを付けた巫女-『御琴』が返事を返した。

 

「青龍様に蔓様のお子が産まれた事をお伝えしようとしたら、突然青蘭様が泣き出すお声が聞こえた事で結界を皆で張っているところです!」

 

「ありがとう!」

 

 報告を聞いたリンドは扉が閉まっている教室に目を向ける。

 

(どうする!? 迂闊にこの部屋を開けたりすれば、内部に溜まっている青蘭が起こした風が漏れ出てしまう!?)

 

 教室の扉の向こう側から感じられる青蘭の力は、文字通り暴走している。

 それを抑えようとする青龍の力も感じていた。しかし、まだ産まれてから半月ほどしか経っていない青蘭の力を、無理やり抑えてしまえばどんな悪影響が出るか分からない。

 

(青蘭が泣き止むまで待つ? ……いや、もし白虎と同じように社との繋がりが切れた事で泣いているんだとしたら、暫らくは泣き止まないどころかずっと泣き続けるかも……)

 

 産まれた時、或いは青龍のお腹の中にいた頃からの繋がりが突然切れたのだ。

 その衝撃は精霊としての側面が強くても、赤子の青蘭がすぐに落ち着けるものではない。だが、力を使い果たすまで泣かせ続けるなど出来る筈もない。

 

(こうなったら、僕も風を纏って部屋の中に入って青蘭をあやすしか……ん?)

 

「えっ? これって?」

 

「笛の音?」

 

 教室の外にいるリンド達の耳に、綺麗な笛の音色が聴こえて来た。

 同時に感じていた青蘭の力の暴走が治まって行くのをリンドは感じる。やがて教室内に入っても問題ないほどに力の気配が消えたのを感じたリンドは、御琴を始めとした結界を張っていた雌犬巫女達に向かって頷く。

 主人の意を察した雌犬巫女達は張っていた結界を解く。

 結界が解かれると共に、ゆっくりとリンドは扉に手を掛けて開ける。

 教室内は青蘭が引き起こした風と青龍の風がぶつかりあったのか、物が倒れたり壊れたりしていた。

 とは言っても、まだ子供部屋に使うと決めたばかりで物は余り置いてなかったのが幸いし、壊れた物は少ない。

 結界を張っていたおかげで窓ガラスが割れた様子はなく、一先ずホッと一息ついたリンドは、笛の音が聴こえてくる『宝貝』を手に持って安らかな寝顔を浮かべている青蘭を抱えた青龍の下に向かう。

 

「すぅ~……すぅ~……」

 

「良かった。何とか落ち着いてくれたんだね」

 

「ええ、『宝貝』でアマテラスと連絡を取っていたのが幸いでした」

 

 安らかな我が子の寝顔を見つめながら安堵の息を溢す青龍。

 青蘭が泣くと共に力の暴走を察したアマテラスは、すぐさま『宝貝』の向こう側で笛を奏でている琴乃を呼んだ。

 元々リンド達が青蘭を伴って出雲学園に向かうと決まってから、『宝貝』越しに青蘭には琴乃の笛の音色を聴かせる事が決まっていた。と言うのも青蘭は琴乃の笛の音色が大好きなので、聴かせないと不機嫌になって風を起こそうとするのだ。

 

「……うぅ……まさか……あの『横笛』が認めるほどの使い手が現れるなんて……絶対に認められるほどの音の使い手はいないと思っていました……」

 

「っ!? サヨご先祖様!?」

 

 聞こえて来たサヨの声に、リンドが顔を向けて見ると部屋の端の方に『サヨ』が入っていた揺り籠が倒れていた。

 慌ててリンドは駆け寄り、揺り籠を退かしてみると床にうつ伏せになって倒れている『サヨ』がいた。

 

「だ、大丈夫ですか! ご先祖様!!」

 

「ゆ、指一本も動かせませんから……ま、末裔、お願いします」

 

「は、はい!」

 

 『サヨ』には苦手意識があるリンドだが、先祖の一人であり、青龍の危機に駆け付けてくれて救ってくれたのだ。

 勿論、桃花に『呪』を掛けた事は後で詳しく聞き出すが、今はそれどころではない言うように『サヨ』を抱えて揺り籠に丁寧に入れる。

 

「ふぅ~……青蘭ちゃん以外の末裔の子供を見るまでは、死んでも死に切れません」

 

「……やっぱり、サヨご先祖様ですね」

 

 自分が知る『サヨ』よりも理性的だが、一族の者を愛する心は変わっていないと、リンドは目尻に涙が浮かびそうになる。

 

「末裔……前にも言いましたが、改めて言います……よく頑張りましたね」

 

「い、いえ……僕は……」

 

「……とにかく、色々と備える必要があります。末裔、その伴侶たる青龍……そして『宝貝』の向こう側にいる新たなネノクニの神、アマテラス……先代のネノクニの神に加えて、四聖が司る社が奪われたのならば、その目的は分かりました。『黄泉平坂』にいる本体はアレを行なうつもりです」

 

「アレとはなんですか? 『黄泉平坂』にいるもう一人の『サヨ』ご先祖様は一体何をしようとしているんですか?」

 

「……嘗て青龍も関わった大儀式封印……『黄泉平坂』に呼び寄せている筈の一族を滅ぼした悪霊どもが、『黄泉平坂』ごと封(・)印(・)さ(・)れ(・)ま(・)す(・)」

 

『っ!?』

 

 語られた『黄泉平坂』にいるもう一人の『サヨ』の目的に、リンド達は言葉を失ってしまう。

 それがどれほど不味い事なのか知りながらも、時すでに遅く、動き出してしまっていた事態は更なる出来事としてリンド達に襲い掛かるのだった。

 

 

 『黄泉平坂』

 ネノクニでさえアマテラス達がその行き方を見つけるまでは、伝説とされた悪霊と亡者の世界。

 其処はアシハラノクニとネノクニ、双方に繋がっていて、その中心こそが嘗て悪霊の長であった邪神ヨモツオオカミが本拠地としていたヨミノクニ。

 迂闊に生者が入り込めば、瞬く間に四方八方から悪霊と亡者に襲われて亡者の仲間にされてしまうだろう。

 その悪霊と亡者の世界にネノクニ側から入り込んだ新たな悪霊の長であるヒミコに仕える軍師である『八千矛の神』とも呼ばれているオオナムジと、ネノクニ最強の精霊である麒麟が、悪霊の手勢を引き連れて奥へと急いでいた。

 

「急ぐぞ! カグツチ達が来るやもしれん以上、一刻も牛頭と馬頭と合流し、かの一族の遺産がある場所に向かうのだ!」

 

 何時になく険しい声を上げながら、オオナムジは暗く、それでいて広大な険しい道を急ぐ。

 入口こそ洞窟のように見えるが、『黄泉平坂』の内部は独立した一つの世界と呼んで良いほどに広大。一件真っ直ぐな道のようでいて、実は入り組んでいて死者がアシハラノクニやネノクニに戻らないようにされている。

 だからこそ、死者が『黄泉平坂』から抜け出すのは試練であり、それを達成した者は不完全ながらも復活する事が出来るのだ。尤も既にその仮の復活を支えられない程に神秘が薄れてしまったアシハラノクニでは、辿り着いた瞬間に死者に与えられる仮の肉体である『ヨモツシコメ』の肉体は消滅してしまうので、最早アシハラノクニ側では試練として成り立っていないのだが。

 

(急がなければ! 万が一にもカグツチ達にかの一族の遺産を渡す訳には行かん!)

 

 直接戦い、そしてその戦いの傷跡が癒えていない現状で、最大の敵にして目標であるカグツチとアマテラス、そしてそれらが率いる軍勢にかの一族の遺産が渡ってしまう事をオオナムジは軍師として何よりも恐れていた。

 主君と定めているヒミコの大願が遠退くどころの騒ぎでは済まない。

 

(下手をすれば、我らの敗北が決まってしまいかねない! ヒミコ様の為にも、必ずや遺産を手にしなければ!)

 

 強い決意を抱きながらオオナムジは共に志を同じにする麒麟、そして確実性を高めるためにヒミコが派遣してくれた鬼の牡丹と露草を始めとした手勢の悪霊達を率いて、『黄泉平坂』の奥へ奥へと進んで行く。

 其処かしこから『黄泉平坂』に元々いた悪霊や亡者の呻き声が聞こえて来るが、悪霊であるオオナムジ達には関係なく、精霊である麒麟にしてもその身から発せられる強大な力に恐れをなして襲い掛かって来る者はいない。

 

「しかし、牛頭と馬頭はどうしたのだ?」

 

「うむ、そろそろ合流しても良さそうだが?」

 

 オオナムジと麒麟の後をついて来ている牡丹と露草は、一向に姿を現さない牛頭と馬頭の事を訝しんだ。

 勿論、二人も牛頭と馬頭がヒミコの配下である事は秘密にされている事は知っているが、既に『黄泉平坂』に入ってから最深部に近い場所まで入り込んでいる。

 いい加減に出て来てもおかしくない筈だと牡丹と露草は訝しみ、聴いていたオオナムジと麟も顔を見合わせる。

 

「確かに……牡丹と露草の言う通りだ」

 

「かの一族の遺産が隠されていると言う入口を見張っているのでは?」

 

「うむ……その可能性もあるが」

 

「……マテ」

 

 オオナムジと麒麟の会話に割り込むように、サルの顔を持ち、胴体は狸に四肢は虎で尻尾は蛇を持つ悪霊『鵺(ぬえ)』が声を出した。

 

「……キコエル……牛頭ト馬頭ノコエダ……オクカラキコエル」

 

「そうか。では、案内を頼む」

 

「ワカッタ」

 

 鵺は頷くと先行して進んで行く。

 オオナムジ達は警戒しながらその後をついていく。そして鵺が声の出所に辿り着くと、其処には……。

 

『アガァァ……シ、シナセテクレ……モウ、シナセテクレェッ……』

 

『っ!?』

 

 彼らの仲間である筈の牛頭と馬頭が、首(・)だ(・)け(・)となって地面に転がっていた。

 

「牛頭!? 馬頭!?」

 

「っ!! 鵺! 下がれ!!」

 

 無残な姿の牛頭と馬頭に叫ぶ鵺に、何かに気がついたオオナムジが叫んだ。

 だが、既に時遅く、次の瞬間、鵺の頭上から何者かが落下して、その身は押し潰された。

 

 ドゴン!!

 

『っ!?』

 

 凄まじい落下音と共に土煙が舞い上がる。

 オオナムジ達が瞬時に戦闘態勢に入る中、煙の中から声が聞こえて来る。

 

「さあ、始めましょう。一族を滅ぼした貴方達全員、死よりも恐ろしい恐怖を味合わせながら殺し尽くしてあげるわ!」

 

 何処までも深い悲しみと怒り、そして憎悪を宿した声を発しながら、土煙の中からどす黒い黒衣と血のように真っ赤な緋袴を纏った銀髪の美女が飛び出した。

 蘇った『呪』を司る龍の化身である人ならざる龍眼を煌めかせながらサヨは、その手に持った黒剣で己が引き起こした土煙を拭き散らして憎んでも憎み足りない怨敵達に襲い掛かったのだった




次回は戦闘シーンばかりとなります。
今の勢いのままアマテラスとの契りの儀式まで進めるように頑張ります。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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