※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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アマテラスとのエロの為にどんどん話は進んで行きます。
今回もエロは無しですが。


アマテラス・淫堕ち3・契りの儀式編の陸

「……また此処に来る日が来るなんてな」

 

 『黄泉平坂』に繋がる洞窟前。

 其処には既に里から転移して来たカグツチが率いて来た軍と共に待機していた。

 目に映る神秘が溢れるネノクニでも伝説とされていた悪霊と亡者の巣窟である『黄泉平坂』へと繋がる洞窟を、カグツチは様々な感情が籠った目で見つめる。

 カグツチにとって『黄泉平坂』は、人間として最後に戦った場所。家族や友人達と分かれた場所。そして……実の母親であるイザナミの半身である邪神ヨモツオオカミと戦い、母であるイザナミを見送った場所なのだ。

 何時でも内部に入り込む事は出来るが、『黄泉平坂』は内部は広大で途轍もなく深いのだが、入り口自体は洞窟と言う都合上、馬などで行軍は出来ない。

 故に一度、馬から降りる必要があり、侵入は改めて準備を整えて思ったが……。

 

「カグツチ様! やはり先遣に出ていた者達は全滅です! 戦いの後が見つかりました!」

 

「っ!? ……そうか」

 

 事前に『黄泉平坂』に偵察を命じていた先遣に出ていた者達の全滅の報告に、カグツチは顔を険しく歪める。

 借りものだと言うように得た力に溺れて、仲間である兵士を傷つけた者達だが、それでもカグツチにとっては苦楽を共にして同じ戦場を駆け抜けた部下達。

 

(覚悟はしていたが、やっぱりキツイな)

 

 悪霊と亡者の巣窟である『黄泉平坂』に斥候に赴かせた以上、その者達には命を捨てさせるのも同然。

 だが、彼らが同じ里の仲間達に傷を負わせたのは赦されない罪。ましてやネノクニの為と譲り受けた精霊武具に溺れて、身勝手な考えで行なったのだ。

 普通ならばその場で死刑か、良くても里からの着の身着のままでの追放が妥当であり、斥候の任務を無事に果たせば里からの追放は無しと言うのは温情過ぎる。実際、青龍の出産と言う吉事が近い事が無ければ、アマテラスは里長として冷徹に判断を下していただろう。

 それでも亡くなった部下達にカグツチが静かに黙祷をしていると、何処か焦りを感じさせる顔を浮かべたツクヨミが近づいて来る。

 

「ヒカル!」

 

「ツクヨミ……どうだった?」

 

「駄目ね。『宝貝』での連絡は妨害されているわ」

 

「っ!?」

 

 ツクヨミの報告にカグツチは更に顔を険しくした。

 世界の隔たりさえも無視して通話を行なえる『宝貝』で連絡が取れないとなれば、それは何者かに妨害されているとしかありえない。

 

「そっちはどうなの?」

 

「……洞窟の入口に中に入って行く明らかに悪霊の足跡があった。それもかなりの数だ」

 

「そう……じゃあ、やっぱり」

 

「ああ……見つけられてしまったんだろうな」

 

 里に現れた『サヨ』の事からカグツチ達が考えていた最悪の可能性。

 即ち、ヒミコ側に『黄泉平坂』に隠されていたリンドの一族の遺産が見つけられてしまった。その可能性が現実味を増した事で、カグツチとツクヨミは強い危機感を感じずにはいられなかった。

 リンドの一族の遺産の恩恵をカグツチ達は既に受けている。故に、それがヒミコ側に渡ってしまう危険性は充分に理解している。

 

「里と連絡が取れないのは不味いが、一刻も早く『黄泉平坂』に入るしかない」

 

「ええ、まだ間に合う可能性はあるわ」

 

 『黄泉平坂』に繋がる洞窟の前の足跡は入るものしかなく、まだ真新しいもの。

 入ったばかりの可能性が高い以上、急いで後を追えば、奪われる前に間に合う可能性は高い。何よりも守護者である『サヨ』が居るのだ。リンドから相当な使い手だと聞いている上に、その『サヨ』本人もヒミコとの決戦を挑む為に知恵を借りる必要が相手。

 里に現れたもう一人の『サヨ』が、何時目を覚ますかも分からない。

 一刻の猶予もないと思ったカグツチは腰に差している鞘から剣を引き抜き、『黄泉平坂』の繋がる洞窟を示す。

 

「行くぞ、皆! 絶対にヒミコ達の思惑通りにはしない!!」

 

『オオオオォォォォッ!!!』

 

 カグツチの号令に従うように兵達も腕を振り上げて、『黄泉平坂』へと向かって行った。

 その先でカグツチとツクヨミは二度と会う事は無いと思っていた相手と再会する事になるとも知らずに、そして自分達が『黄泉平坂』から出る事が出来なくなってしまうなど、夢にも思ってなかったのだった。

 

 

「龍破斬っ!!」

 

 鉄や黒曜石と言った鉱物とは明らかに違う何か別の物で鍛えられた黒剣が振るわれると共に、龍の形をした衝撃波が動揺するオオナムジ達に向かって放たれた。

 いきなりの奇襲に動揺するオオナムジ達だったが、彼らも数多くの戦場を乗り越えて来た者達。ましてや今、この場にはネノクニ最強の精霊である麒麟もいた。

 

「重力壁!!」

 

 自分達に向かって迫る龍の衝撃波に対し、麒麟は瞬時に己の力を発動させて重力を歪めて壁の形にした防壁を張った。

 此れこそが麒麟がネノクニ最強の精霊と呼ばれる所以。『土』属性の極みと言うべき重力を麒麟は自在に操れるのだ。

 重力を自在に操れる麒麟の前では、どれだけ早く動ける相手も自らの重さを上げられて身動きが取れなくなり、空に浮かんで攻撃しようとしても麒麟が操る重力に囚われて地面に叩きつけられるか、そのまま押し潰されてしまう。

 防御にしても麒麟の力で発生された重力は、全ての属性の攻撃を呑み込み消滅させてしまう。

 それらを打ち破る為には、麒麟を超える力を発揮して打ち破るか、或いは『夢を紡ぐ力』など特異な力以外に方法はない。

 

(この隙に態勢を整えねば!)

 

 麒麟の防御を信じてオオナムジは牡丹や露草を始めとした配下達に指示を出そうとする。だが……。

 

「なにっ!?」

 

 龍の形の衝撃波は口を大きく開く形態を取ると共に重力壁に喰らいつき、そのまま呑み込んで麒麟に襲い掛かった。

 

「麟!?」

 

 龍の衝撃波に呑み込まれ、そのまま壁へと叩きつけられた麒麟を見たオオナムジは叫ぶ。

 その様子を見たサヨは、手に握る黒剣を軽く振り払うと共に呟く。

 

「ネノクニ最強の精霊……とんだ誇張のようね」

 

「……誇張かどうか思い知るが良い!!」

 

 舞い上がる土煙の中から麒麟が飛び出し、サヨに向かって両手を突き出す。

 

「食らえ! 重力砲!!」

 

「はぁっ!」

 

 麒麟の突き出した漆黒の閃光に対し、サヨは呪力を纏わせた黒剣を両手で構え直すと共に一閃した。

 一閃と共に漆黒の閃光は切り裂かれて、消滅してしまう。だが、己の技が破られたにも関わらず、麒麟は口元を笑みで歪める。

 

「馬鹿め! 敵は私だけではないぞ!」

 

「ぬおおぉぉぉぉっ!!」

 

「おおおぉぉぉっ!!」

 

 麒麟の言葉に応じるように、サヨの左右から牡丹がその剛腕を振り抜き、露草が戦斧を振り下ろした。

 ぐちゃっと何かが砕け散る音と破砕音が響き渡る。それを聞いたオオナムジは追い打ちを掛けるように印を組み、巨大な矛を顕現させて振り下ろす。

 

「八千矛ノ音!!」

 

 牡丹と露草を巻き込みかねないにも関わらず躊躇いなく振り下ろされた巨大な矛の一撃は、『黄泉平坂』の空間を轟かせた。

 

「これならばどうだ」

 

 かの一族との経験しているが故に、オオナムジは最大の警戒を持って攻撃した。

 更に戦いが終わっていない事を示すように、オオナムジは自身の周囲の虚空に剣や斧、槍、弓など様々な武具を召喚する。

 それを目撃した配下の悪霊達も油断なく、周囲を取り囲むようにして陣形を取っていく。

 麒麟もサヨが飛び出してくれば、すぐに撃ち落とせるように重力球を造り上げて警戒する。それらの布陣は見事なものだった。

 だが、惜しむらくは……今、麒麟とオオナムジ達が相手をしているのはかの一族の中で『最恐』の称号を得ていた存在だった事だった。

 

「■■■■■■■っ!!!!」

 

『っ!?』

 

 上がったのは『咆哮』。

 ただ大きな叫び声を上げただけだと侮ってはいけない。呪力を込められたその『咆哮』は、最早必殺の一撃と呼ぶのに相応しく、サヨ、牡丹、露草がいる場所に近づいていた悪霊達は吹き飛ばされてしまう。

 同時に紅い体躯と蒼い体躯がオオナムジと麒麟の傍に落下してきた。

 

「っ!? 牡丹! 露草!」

 

「あががっ……う、腕が……」

 

「ぐおぉぉぉっ……」

 

 地面にしたたかに身体を打ち付けられた牡丹の右腕はひしゃげ、露草は腹部に深々と黒剣が突き刺さっている。それだけではなく、露草が持っていた戦斧は割れて砕けている。

 

(馬鹿な!? 攻撃した側である筈の牡丹の剛腕と露草の斧の方が砕けているだと!?)

 

 目の前の光景に流石のオオナムジも目を見開く。

 二人の事を良く知っているからこそ、オオナムジは驚愕するしかなかった。鬼の中でも最上位に近い牡丹と露草が繰り出す一撃は、大きな岩を跡形もなく砕け散らせるどころか山を揺るがすほどの威力が込められている。

 にも拘らず、砕けたのは牡丹の拳と露草の斧。

 

(我らは誘いこまれたか!?)

 

 此処に居たり、オオナムジは自分達が誘いこまれた事を悟った。

 かの一族の遺産を牛頭と馬頭が見つけたと言うヒミコへの連絡も、サヨが仕組んだもの。全ては『黄泉平坂』に誘き寄せる為の罠。

 そう悟ったオオナムジは、満々と誘いこまれた事に怒りを覚える。だが、その間にも、舞い上がって視界が何時までも晴れない土煙の向こう側から配下の悪霊達の断末魔が響く。

 

『いぎゃぁぁぁぁっ!!!』

 

『マテ! ナゼオマエガ!? グガァァァァッ!?」

 

『何なのだ此れは!? 一体何が起きて!? ひぎゃぁぁぁぁっ!?』

 

『オオナムジ様!? 麟様!? 何かご指示を!?』

 

『バカナ! バカナァァァッ!!』

 

『何故貴女様が、ぐぎゃぁぁぁぁっ!!』

 

 煙の中で上がり続ける悪霊達の断末魔。

 後方にいたおかげでオオナムジと麒麟は、一向に晴れない呪力を纏った土煙の外側にいるので、土煙の中で何が起きているのかは分からない。

 だが、これが全て仕組まれたものだと悟った麒麟は、オオナムジに顔を向けて叫ぶ。

 

「オオナムジ!? 貴方は退きなさい!?」

 

「麟!? 何を!?」

 

「この敵の目的が私達を『黄泉平坂』に誘い出す事ならば、ヒミコ様の方にも手が及ぶかも知れません! 一刻も早くヒミコ様に報告をするのです! 精霊とは言え、かの一族の生き残りがいるという事も……」

 

「フフッ、それは違うわね」

 

『っ!?』

 

 背後から聞こえて来た声に麒麟とオオナムジが身構えながら振り向いてみると、其処には右手を腰に当てたサヨが立っていた。

 

「私が精霊? いえ、もう精霊ですらないわ。この身は、怨霊の類。貴方達に我が血を引く一族の者を根絶やしにされた事を知って、蘇った怨霊。それこそが私」

 

「なるほど……我らを憎む怨霊か」

 

 怨霊も悪霊の類に分類されるが、サヨの標的はあくまでヒミコとソレに付き従う者達を根絶やしにするまで殺し尽くす事。

 

(一族が我らに滅ぼされた事を牛頭と馬頭から知り、何らかの方法でネノクニに舞い戻ったという事か)

 

 知勇兼備と称されているだけに、サヨの発言からオオナムジは考えを巡らせる。

 勿論、サヨの発言を全て鵜呑みにする気など無いが、その身から発せられている悪霊よりも禍々しい。それこそ今はヒミコの手によって完全に滅ぼされた神話級の悪霊であるヤマタノオロチか、或いは邪神ヨモツオオカミに匹敵する禍々しい呪力は、とても精霊が発するものとは思えない。

 

「……堕ちたと言う訳ですか」

 

「フフッ、笑えるわ……一族を滅ぼし、ネノクニも滅ぼそうとしている愚か者に与している貴女に堕ちたなんて言われる理由はないわね」

 

「ヒミコ様を愚弄するな! あの方は二つの世界の行く末を心から案じ為されているのだ!」

 

「……下らない」

 

 心底どうでも良さそうに、いや嫌悪に満ちた声音でサヨは呟いた。

 サヨは知っている。ヒミコの望む理想など、どうあっても叶わないという事を。

 

「崇高だとかは高い理想だとかは、私にはもうどうでも良いの。何よりも重要なのは、貴方達が私の大切な末裔達を滅ぼしたという事。言ったでしょう? 貴方達には死よりも恐ろしい恐怖を味合わせた果てに……コロシツクス」

 

『っ!?』

 

 憎悪しか感じられない声と共に、黒い巫女服から覗き見えるサヨの素肌が鱗に覆いつくされた。

 オオナムジや麒麟は知らないが、サヨの本性は青龍と同じ『龍』。その鱗は如何なる刃も通さず、打撃を加えれば行なった方が壊れてしまう強靭さと頑強さを誇っている。

 先ほどまで振るっていた黒剣は、サヨが自らの鱗を術で加工したもの。

 湧き上がる憎悪に駆られて、サヨは更なる追撃を行なおうとしたが、その動きは何か気付いたように止まった。

 

「そしてもう一つ。さっきの『咆哮』だけど……アレは此処にいるって伝える為のものよ」

 

「伝える? 一体誰に……」

 

「私達じゃないかしらね」

 

『っ!?』

 

 新たに聞こえた声にオオナムジと麒麟が目を見開いた瞬間、虚空から刀が出現してオオナムジの右腕を肩口から斬り落とした。

 

「ぐはぁぁぁっ!?」

 

「オオナムジ!? 貴様は!?」

 

 右腕を斬り落とされたオオナムジの苦痛の叫びに麒麟は慌てて駆け寄って支えながら、新たな襲撃者を睨みつける。

 その襲撃者は自らが斬り落としたオオナムジの腕に向かって炎の術を放ち、焼き尽くしてしまう。

 最上位の悪霊であり、卓越した術師でもオオナムジならば、斬り落とした腕を繋ぎ直す事も可能。故にそうさせない為に右腕を完全に焼失させた襲撃者は、手に持つ刀を構えながら呟く。

 

「御機嫌よう、オオナムジに精霊麒麟。息子を封印してくれた借りを、少し返させて貰ったわよ」

 

「ツクヨミ!?」

 

 この場に新たに現れたのは、その手に精霊武具である刀を構えたツクヨミだった。

 その様子を見ていたサヨは、ほんの一瞬だけ憎しみに染まった龍眼に温かな光が差し、懐かしそうにツクヨミが握る刀を見つめた。だが、それもほんの一瞬のみ、次の瞬間にはその視線は、ツクヨミから外れて未だに悪霊達の断末魔が上がり続ける土煙の方に向いた。

 ツクヨミはそんなサヨの様子に気がつかずに、右腕を失ったオオナムジとそれを庇う麒麟に刃を向ける。

 

「片腕が無くなれば、もう両手を組む類の術は使えない。術師としての力は半減ね」

 

「くっ!? ツクヨミ! ……何故貴様が再び力を……」

 

 軍師としてはともかく、ツクヨミはその力を失っていたはず。

 その事をオオナムジ達はカグツチ達の戦の中で知っていた。にも拘らず、今現れたツクヨミからは四聖獣に匹敵、或いは凌駕しているのでと思ってしまう程の力をオオナムジと麒麟は感じていた。

 それに加えて、ツクヨミが構えている刀に麒麟が凝視する。

 

「青龍からの伝言よ。『二千年前の徐福との私達への裏切り。決して許しません』だそうよ」

 

「っ!? ……そうですか。四聖獣達はあの事も知ったのですね」

 

 ツクヨミの言葉を聞いた麒麟は、二千年前の裏切りを知られた事を悟った。

 一瞬だけ目を瞑るが、すぐに目は開き、その視線はツクヨミが持つ刀。自分達が求めていた物の一つである精霊武具に向く。

 

「その刀……なるほど、どういう経緯かは分かりませんが、既にかの一族の遺産は貴方達……アマテラスの下にあるという事ですね……そしてそれによって貴女も力を取り戻した」

 

「ふふっ、さあ、どうかしらね」

 

 麒麟の問いにはぐらかすようにツクヨミは微笑んだ。

 

(と言うよりも、こっちも困惑してるのよね)

 

 『黄泉平坂』に侵入して、襲い掛かって来る悪霊や亡者を相手にしながら進んでいた時に、突然奥の方から聞こえて来た『咆哮』。

 明らかに何か起きている事を悟ったツクヨミは、カグツチに一言言って、一足先にこの場に先行して来たのだ。

 何せ『黄泉平坂』は、ツクヨミにとって我が家も同然。幸いにも悪霊時代に敷いていた移動手段は使えたので、『咆哮』が轟いたと思わしき場所に来てみれば、其処にはオオナムジ達と対峙するサヨがいたのだ。

 

(どうして精霊の影の筈の、サヨが居るのかしら?)

 

 精霊の影は特異な空間でしか存在できない、

 なのに、今背後には精霊の影であるべきサヨが実体を持って存在している。容姿に関しては、里に現れた『サヨ』の方は可愛らしくデフォルメされているが、共通点が多いので間違いなく同一の存在。

 それならば、何故特異な空間から出て存在を保っているのか理由が分からず、ツクヨミは一先ず背後にいるサヨも警戒しながら、オオナムジ達を睨む。

 すると、沢山の足音が洞窟の入り口側の方から響いて来て、その先頭には兵を率いて来たカグツチがいた。

 途中で元々『黄泉平坂』に居た悪霊や亡者と戦闘をしていたが、兵達は全員無事で、カグツチも疲弊した様子はない。

 

「オオナムジ!? それに!?」

 

 右腕を失っている戦場で幾度も戦ったオオナムジの姿にカグツチは驚き、次に麒麟に目を向けた。

 

「お前が……青龍達の嘗ての仲間だったって言う麒麟か」

 

「くっ!? カグツチっ!?」

 

 此処に来て最大の敵であるカグツチが現れた事に、流石の麒麟も焦りを感じる。

 

(不味い!? オオナムジは右腕を失い、牡丹と露草も傷が深い!? 他の配下達は今も背後で……待て?)

 

 麒麟は其処で強い違和感を感じて、自分達の背後で未だ晴れない土煙を見ているサヨに目を向けた。

 

(何故奴があそこにいて、私達の背後で配下達の悲鳴が上がっている?)

 

 その事実に麒麟が行きついた瞬間、配下達の悲鳴が聞こえなくなり、サヨが突然その場に片膝をついた。

 

『っ!?』

 

 突然のサヨの動きにその場にいる全員が驚愕する。

 サヨの取った姿勢は、明らかに臣下が主に向かって取るような姿勢。つまり、この場にはサヨが臣下の姿勢を向けるような相手がいるという事を示す証。

 一体何者が居るのだと、麒麟とオオナムジはカグツチ達がいるにも関わらず、背後に視線を向ける。すると、一つの足音が土煙の向こう側から聞こえて来る。

 

 ザッ、ザッ!

 

「な、何だコレは? 震えが止まらん」

 

 負傷ではない、もっと別の何かから来る身体の震えに、オオナムジは困惑する。

 

 カタカタカタ!

 

「な、何だ? 剣が震える」

 

 手に持つ剣が勝手に震えだした事にカグツチもまた、困惑して足音がなる土煙に目を向けると、其処には誰かの影が映っていた。

 その影はゆっくりと土煙の中から足を踏み出した。着ているのはネノクニで霊力を扱う女性が着る白衣と緋袴の巫女服。額には紅い鉢巻を巻いて、その容姿は何処かこの場にいるツクヨミ、そして今は里にいるアマテラスを思わせる容姿をしていた。

 カグツチの背後にいる兵達は、その女性に困惑して顔を見合わせる。

 彼らからすれば、何故ツクヨミやアマテラスと似た容姿をした女性が『黄泉平坂』に居るのかと困惑するしかないからだ。

 しかし、それは誤り。現れた女性がツクヨミやアマテラスに似ているのではない。

 

 ツ(・)ク(・)ヨ(・)ミ(・)と(・)ア(・)マ(・)テ(・)ラ(・)ス(・)が(・)女(・)性(・)に(・)似(・)て(・)い(・)る(・)の(・)だ(・)

 

 だが、本来ならばすぐに判断を下して動き出すべきカグツチは……女性を見て固まって震えていた。

 

「な、なんで……」

 

 居るはずがない。もうこの世に居るはずがない者が、今カグツチの前に現れた。

 それはその女性の事を知っているオオナムジ、麒麟、そしてツクヨミも同じだった。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「な、何故!? 今もこのネノクニに存在している!?」

 

「ま、まさか……こんな事って……」

 

 オオナムジと麒麟の声は悲鳴に近かった。

 当然だ。完全にネノクニから消えた筈の者が、その姿を現した。それは自分達が仕える主にとって凶報以外に何者でもない。

 ツクヨミにしても、流石に動揺が隠しきれない。現れた女性の名を知っていても、その名を口に出来ない。

 口にすれば現実だと認識してしまう。其処に宿る想いは形は違えど、現実だと認識する事を畏れるが故に、その名をカグツチ達は口に出来ない。

 だが、現実だと認識させるが故に片膝を着いた姿勢のままサヨが遂にその名を口にする。

 

「調子のお確かめは終わりましたか……イ(・)ザ(・)ナ(・)ミ(・)の(・)御(・)方(・)」

 

「ええ、終わりましたよ、サヨ」

 

 此処に先代のネノクニの神であるイザナミは、十数年ぶりにその姿をネノクニの者達の前に現したのだった。




一年近く先でヒミコが反魂の術の禁忌に手を出さなければならないので、どんどんヒミコ側は主要メンバーは死ななくても追い込まれて行きます。

そして次回は遂にカグツチ達が封印されてしまいます。
ただし、ツクヨミにはとても嬉しい幸福が訪れる予定です。十ヶ月以上時間が在ればね。
妹も第二子を孕むんですから、彼女も姉としてね。

方法の詳細は次回をお待ち下さい

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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