※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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前話の柒の話を改定して再投稿しました。
具体的には麒麟の事と、設定上のサヨならば絶対に見過ごせない事があったのに気づいたからです。詳細は前話を改めて読んでください。

現在のアンケートの期限は、日曜日の0時までとさせて頂きます。


アマテラス・淫堕ち3・契りの儀式編の捌

『……と言う事があったわ』

 

『………』

 

 アマテラスが持つ三(・)日(・)ぶりに繋がった『宝貝』から聞こえて来るツクヨミの報告に、会議の場に集まっていた一同は言葉を失うしかなかった。

 イザナミの生存と目覚め、そして『黄泉平坂』で密かに蘇り、ヒミコ側に与していた『黄泉平坂の番人』である牛頭と馬頭から役目を奪い暗躍していたサヨの話を、此方側にいるもう一人の『サヨ』の話を聞いてからずっと繋がらなくなっていた『宝貝』と漸く繋がってから聞かされたツクヨミの報告は最悪としか言えなかった。

 『黄泉平坂』に遠征に出ていた里の兵達が事実上全滅にされ、カグツチとツクヨミも里に戻って来れないと告げられたのだから当然だった。

 

『何とかヒカルと私だけは、封印が発動する直前にサギリが受け継がせてくれた空間に逃げる事で封印されるのを免れたけど、『黄泉平坂』の出入り口が無くなっていたから出るに出れないわ』

 

「お、伯母様!? 転移の術はどうなの!?」

 

 大好きな父親と伯母が苦境に追い込まれたかもしれないと知って、会議の場に参加していた佐久夜はアマテラスが震える手で持っている『宝貝』に問いかけた。

 会議の場に集まっているのは里長であるアマテラスは勿論、父や伯母、そして里の兵達の安否が気になった佐久夜、巫女頭である葉子、そして出雲学園から単身急いで里に戻って来たリンドだった。

 青龍と青蘭は出雲学園に残った。と言うのも、リンドが出雲学園を出た時間帯は夜遅かった上に、今の青蘭は産まれた時から、或いは産まれる前から繋がっていた社との繋がりが切れてしまった事で、何時泣き出してもおかしくない状態。

 そして青蘭が泣き出せば、制御し切れない力が風と成って荒れ狂い周囲を吹き飛ばしかねない。母親である青龍でも抑えきれない可能性あるので、里の安全を考慮して出雲学園で暫らく暮らす事になった。

 青蘭が好きな琴乃の笛に関しては、『宝貝』越しで聞かせればいい。とにかく『理性』を失ってネノクニへの影響など構わずに復讐鬼と化してしまったサヨの本体が動き出している以上、最大の警戒でも足りない程に警戒しなければならないのだ。

 

『転移も無理よ。『黄泉平坂』は今、外界、つまりネノクニへの移動は遮断されているわ。ただネノクニ側から死者だけは来るみたいね』

 

「……では、姉さん。封印の要にされた精霊麒麟と鬼を解放するのはどうなのですか?」

 

 サヨが『蟲毒』をかけて存在を変質させて生み出した鬼とヒミコの側近中の側近である麒麟を解放するのは危険だが、この際そんな事は言っていられない。

 里の主だった戦力である封印されてしまった兵達と、大切な夫と姉を解放する為ならばとアマテラスは思う。

 それに鬼はともかく、麒麟の方は重傷を負っているのだから無力化は容易い。そう思ってアマテラスは祈るように姉の言葉を待つが……。

 

『無理ね。試してみたけど、解放しようとしても『黄泉平坂』の外部から流れ込んで来る力で阻害されてすぐに術式が構築しなおされてしまうわ』

 

「外部って、伯母様……もしかして流れ込んで来るって力って……」

 

『この状況なら一つしかないでしょう。四聖獣の四つの社が管理している霊脈よ。一応調べたけど、これはかなり昔に構築された術式を改めて敷き直しって感じね』

 

「その封印に関しては、嘗て関わった青龍の話では、姉さんの言う通りです……遥か昔、まだ姉さんがヨモツオオカミに仕えるずっと昔にネノクニの守護神となった四聖獣に加え、先代のネノクニの神であるイザナミ様と共に執り行った『黄泉平坂』に邪神ヨモツオオカミを封印した大儀式封印。四つの社とその社が司る属性に一致する四(・)聖(・)獣(・)に(・)匹(・)敵(・)す(・)る(・)力(・)を(・)持(・)っ(・)た(・)者(・)達(・)で(・)も(・)執(・)り(・)行(・)え(・)る(・)封(・)印(・)だそうです」

 

 遥か昔、イザナミが自由に動け、かの一族の計略でヨモツオオカミが大きく弱体化してもその身を倒す訳には行かなかった。

 表裏一体である以上、ヨモツオオカミを倒せばイザナミも死んでしまう。故にヨモツオオカミを本拠地であった悪霊と亡者の世界である『黄泉平坂』ごと封印する術をイザナミ達は編み出した。

 無論、死者の通り道でもある『黄泉平坂』を完全に閉ざす訳には行かないので、死者だけは変わらずに通れるが、悪霊やもしも其処に生者が居れば水晶に覆われて意識も失い封印が解けるまで眠りについてしまう。

 

『やっぱりそうなのね……私も昔にヨモツオオカミ様から聞いた事があったけど、まさか、再び行なわれるなんて……』

 

『アマテラス……四聖の社の方はどうなんだ? 青龍は里にいたからともかくとして、残る玄武、白虎、朱雀の社には皆戻っていた筈だ』

 

 ツクヨミと変わったのか険しいカグツチの声が『宝貝』から聞こえて来た。

 改めて夫の無事である事が分かったアマテラスは安堵しながら、巫女頭である葉子に顔を向ける。

 

「葉子、報告をお願いします」

 

「はい。アマテラス様より命じられて四聖獣様の社を『千里眼の術』で私を含めた数名の巫女達でそれぞれ確認したところ、先ず朱雀様の社ですが……地獄と化してしました」

 

『地獄だって!? 一体どんな状況に!?』

 

「朱雀様の社こそ無事ですが、あのネノクニで最も美しかった湖が……溶岩とマグマに変わり果てて灼熱地獄と言った様相なのです」

 

『っ!?』

 

 ツクヨミとカグツチは葉子から聞かされた朱雀の社の変わり果てた報告に息を呑んだ。

 葉子の報告が事実だとすれば、朱雀の社は本当に何者かに奪われて、守護をしていた筈の朱雀も敗北。囚われの身となっている可能性が高い事を示していた。

 

「四聖獣最強の朱雀様が負けるなんて」

 

 普段はともかく、戦いとなれば四聖獣の中では朱雀こそが最強であり、まともに戦えば悪霊側の将であるミナカタやオオナムジでも勝てるとは言い切れず、ヒミコや麒麟が表立って戦わなければならない。

 その朱雀が敗れたとなれば、相手は紛れもなく手練れ。

 

『ううぅ~……間違いなくあ(・)の(・)子(・)です。きっと他の社にはあ(・)の(・)子(・)達(・)が……』

 

 この場にある、出雲学園と繋がっている方の『宝貝』の向こう側から『サヨ』の呻くような声が聞こえて来た。

 朱雀の社を占拠した者に心当たりがあるのだと、全員分かったが、一先ずその質問よりも他の四聖の社の現状を知る為に話を葉子は進める。

 

「次の白虎様の社ですが、此方は社そのものを包むように竜巻が発生し、その周囲の大地から次々と切り立った柱のような物が出現し続け、社に近づく事も難しくなっています。放置すれば地形が変わり、堅牢な護りが出来てしまうかもしれません」

 

『竜巻? おかしいですね……後半の方はあ(・)の(・)子(・)なら可能ですが、竜巻などを発生させる力はないはずですけど……』

 

『……もしや……『天目一箇』が……』

 

「青龍? 何か知っているのですか?」

 

『ええ、アマテラス。『天目一箇』。台風の化身の精霊で、属性こそ『木』属性で風を操る力を持っている事から、本来ならば私の眷属になるべきなのですが、彼女を発見したのが白虎だったのもあって、『天目一箇』は白虎を姉のように慕っているのです。ヒミコの件もあって、戦いが終わるまでは隠れているように白虎が言っていた筈ですが、寂しくなって会いに行ったところで社の襲撃者に囚われて利用されているのかも知れません』

 

 青龍の推論は当たっている。

 だが、どちらにしても今から白虎の社に向かったところで既に占拠されているばかりか、防衛目的で変わり続けている地形に巻き込まれかねないので手遅れ。

 

「次に玄武様の社ですが、此方は占拠した相手の姿を捉える事に成功しました」

 

『どんな相手なの?』

 

「両手に『扇』を持った優美な服と飾りを纏った見目麗しい女性です……『千里眼の術』を行なった霧がハッキリとその姿を見ましたが……霧は……死(・)に(・)か(・)け(・)ま(・)し(・)た(・)」

 

『っ!?』

 

「『千里眼の術』を同時に行なわせていたのが幸いと言う他ありませんでした。社ではなく、相手の姿を確認した冷静になった霧の話では、相手は優美な舞を踊り、一目でその舞に魅入ってしまい、霊力を吸われ続けているにも気づかずにいたそうです。周りの者が様子が可笑しい霧に気がついて、慌てて気絶させましたが、意識が戻っても『千里眼の術』を発動させようとし、周りが止めようとすれば暴れ出しました……里に戻って来たリンドが事情を聞き、治療してくれなければ……霧は死ぬまで相手の舞を見続けていたでしょう」

 

『……恐ろしい話だ』

 

『ええ……魅(・)入(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)んでしょうね』

 

 佐久夜の舞が見る者の心を暖かくしたり、希望を抱かせるように鼓舞する正の舞ならば、今、玄武の社を占拠している者は真逆。見る者の心を捕らえて、己に全てを捧げさせてしまうような負の舞の使い手。

 己の異変に気がつかず、それでいて尚も求めてしまう。

 そんな恐ろしい状態に出来る玄武の社に居る何者かにカグツチとツクヨミは戦慄を覚える。

 

(『扇』って……もしかして?)

 

 敵の正体がリンドの一族に関わる者ならばと佐久夜は一つの可能性に気がつくが、今はそれどころではないと首を振って考えを振り払う。

 

「最後に青龍様の社ですが……此方は発(・)見(・)で(・)き(・)ま(・)せ(・)ん(・)でした」

 

『発見できなかった? 葉子さん、それはどう言う事だ?』

 

 アマテラスの持つ『宝貝』からカグツチの疑問の声が聞こえた。

 青龍の社は里から一番近く、川を下れば半日で辿り着けるのだ。にも関わらず『千里眼の術』で見つけられなかった事はおかしい。

 

「詳細は分かりませんが、青龍様の社を捉えようとすると急に『千里眼の術』で見えなくなってしまうのです。直接赴いての確認として、丁度里に戻って来ていた桂香を向かわせましたが……川をいかだで下って向かった筈なのに、気づいたら里の上流の川にいて、里に戻って来ました」

 

『川を下ったのに上流にいた? ……いや、もしかしてソレは……』

 

 意味不明な説明のように思えたカグツチだが、似たような事を過去に経験し、今はそれを利用した移動手段も使っているのですぐに気がついた。

 

『つまり、青龍の社を中心にした桃花の『妖やかしの森』みたいな事が起きてるのね?』

 

「その通りだと思います。しかも、かなり里に近い位置まで影響が起きているのか、歩いての移動でも気がつけば里の前に戻って来てしまいます」

 

 無事に戻って来れる時点で、青龍の社を占拠している者には敵対意思は無いように思えるがそれで済ませられるような事でもない。

 四聖の社を解放し、『黄泉平坂』の封印を解かなければカグツチとツクヨミは里に戻れず、兵達も封印されたままなのだから。他にアマテラス達が浮かぶ方法があるとすれば……『八尺瓊』による封印の解除。

 

『リンド……確認するが、『八尺瓊』ならどうなんだ?』

 

 『宝貝』の向こう側からカグツチの確認する問いが聞こえた。

 だが、それは雌犬巫女頭に堕ちている葉子を除いたアマテラスと佐久夜も同じ気持ち。

 理に明確に関われる『八尺瓊』ならばとカグツチ、アマテラス、佐久夜は思うが……リンドは悔しそうに告げる。

 

「コレが『黄泉平坂』に居たサヨご先祖様が実行した事ならば、『八尺瓊』で封印は解けます……ですが、もしイザナミ様が行なわれた封印ならば……『八尺瓊』でも封印は解けません。何故なら、『八尺瓊』はイザナミ様の行ないには干渉出来ないからです」

 

『っ!?』

 

 告げられた事実は、ネノクニに於いて絶対的な力である筈の『八尺瓊』の敗北だった。

 だが、ソレは当然だった。理に干渉出来る力を秘めた『八尺瓊』。

 その力を以てしても、イザナミは宿命から解放されず、半身であるヨモツオオカミもどうする事も出来なかったのだから。

 リンドの説明に続くように、別の『宝貝』から『サヨ』の声が響く。

 

『私の本体も当然『八尺瓊』の事は詳しく知っています。自身の行ないを『八尺瓊』が知れば、自分が消滅対象になる事も当然分かっていますから、怨敵達を滅ぼすまでそうならないように準備をしていた筈です』

 

『……つまり、貴女を切り離してから今日まで表立って動かなかったのはその準備とヒミコ達への復讐の準備をしていたから。そして準備が終わって、貴女とリンドの一族の遺産が『黄泉平坂』にある事をヒミコ側に伝えて誘き寄せた訳ね』

 

『その通りでしょう……ただ本体としては貴女達と怨敵の一党を争わせた隙に、『黄泉平坂』からイザナミの御方と脱出して封印を実行するつもりだったと思います』

 

 別れたとは言え、自分だからこそ『サヨ』はもう一人のサヨが何を考えているのか分かった。

 実際、当初の予定では今、『サヨ』が話した通りの策。封印の要となる物は別に用意していた。それが変わったのは、改めて怨敵達の姿を見て我慢できなくなったのと、目覚めたばかりのイザナミが己の調子を確かめる為。

 そして……成長した息子であるカグツチに会いたいと思っていたイザナミの願いを叶える為だった。

 

『新たなネノクニの神にしてイザナミの御方の息子、カグツチ』

 

 カグツチの真の名が『ヒカル』である事は、嘗ての最後のヨモツオオカミの決戦を見ていた『サヨ』も知っているが、敢えてその名は言わずに声を出す。

 

『イザナミの御方の件は、末裔は本当に何も知りませんでした……責められべきはこの身です』

 

「『サヨ』ご先祖様、それは……」

 

『末裔。良いのです。本体がどのような形にしても、安らかに眠られていたイザナミの御方を起こし、己の復讐に加担させているのですから』

 

『……いや、貴女とリンドを責めるつもりはありません……貴女が、いや、リンドの一族の先祖達のおかげで母さんは生き返る事が出来たんですから……息子として心から感謝しています』

 

 ずっと心の奥にあった悲しみと苦しみに包まれていた実の母親を殺める事しか出来なかった罪悪感。

 その母が生きている。しかも今度は止める事さえ出来れば、共に過ごす事も可能。

 

(じっちゃんにだって母さんを会わせる事が出来るんだ)

 

 その未来の為にも、今はリンドやもう一人の『サヨ』を責めるよりも現状を何とかする事にカグツチは意識を向ける事にした。

 カグツチの意志を感じたリンドは無言で深々と見えなくても繋がっている『宝貝』に頭を下げる。

 その様子を見ていたアマテラスは頷くと、『サヨ』に向かって問いかける。

 

「では、『サヨ』さん。四つの社の解放以外に私達がすべき事と、それともう一人のサヨさんは今後どう動くのか、参考までに聞かせて頂けますか?」

 

『……先ずは『黄泉平坂』には中心となっている要石と化した物以外にも、複数の予備の要石が隠されている筈です。これらを破壊しておかなければ、社を解放し、要石を何とかしても封印が維持されるでしょう。私ならやります』

 

『とことんまで用意周到ね……分かったわ。私とヒカルで何とかその予備の要石を探し出して破壊するわ。幸いにも安全な拠点としてサギリが残してくれた空間には入れるから問題は無いわ』

 

「あっ!? 伯母様! それじゃあ、前に里に出入り口が繋がった時みたいな事は出来ないの!?」

 

『無理よ、佐久夜。アレはサギリの影が司っていた『空間』のおかげで出来た事であって、私には出来ないの』

 

 ツクヨミが出来るのはあくまで自分がいる場所とその空間を繋げる事だけ。

 もしもサギリの影が出来た事をツクヨミが出来れば、もっと早くヒミコ討伐に乗り出す事も出来た。

 あてが外れた事に佐久夜は落ち込んで、残念そうに顔を俯けた。

 

『次に本体の行動ですが、目覚めたばかりで万全ではないイザナミの御方が回復するまでは、怨敵を大きくは攻めない筈です。四つの社を支配下に置いているあ(・)の(・)子(・)達(・)も、完全に封印を維持する術式が定着するまでは社から離れないでしょう……後、本体が奪っていったと言うサギリお婆様の影の下にあった精霊武具の手入れもあるでしょうから』

 

『その辺りは耳が痛いわね』

 

 一応精霊武具の手入れの仕方は、サギリの影が残してくれた遺産の中にあった巻物に書かれているのだが、扱い方を教えられるリンドの一族ならばともかく、特殊な武具である精霊武具の手入れがアマテラス達の里ではまだ拙いやり方しか出来なかった。

 その為に尚更にサヨの怒りを買ってしまったのだが、皮肉なことにソレのおかげでサヨはイザナミの回復を待ちながら今は回収した精霊武具の手入れに勤しんでいた。

 

「では、残る問題は……ヒミコ側の動きですね」

 

 アマテラスが危惧するのは、ヒミコ側と本格的なサヨ達とイザナミの激突だった。

 リンドの一族と戦う前よりも弱っているとは言え、二千年前からの側近中の側近である麒麟の封印には流石のヒミコも表立って動き出す筈。

 他にも里長として戻って来れなくなった兵達やカグツチ、ツクヨミに関する里の者達への説明とやるべき事の多さに頭を悩ませながら深夜近くまで話し合いは続いたのだった。

 

 

 一先ずの話し合いが終わった後、自室として宛がわれている部屋に戻ったリンドは敷かれていた布団に横になる事はせずに座っていた。

 話し合いが終わった後に佐久夜は一緒に居たそうにしたが、少し強(・)め(・)に(・)言(・)い(・)つ(・)け(・)て(・)琴乃と穂乃香が待っている部屋に戻らせた。

 以前ならば佐久夜の頼みに素直に従っていたリンドだが、今では立場は真逆になっている。無論、言いつけられて落ち込む佐久夜の胸やお尻に巫女服越しに触って軽い愛撫をしながら優しい言葉を掛け直してキスをすれば、喜んで従う程に佐久夜はリンドと言う雄に堕ちている。

 真実を告げて、番の雌の一員に佐久夜がなるのも後もう少しだとリンドは確信していた。

 そんな中、布団の上に置いてあったツクヨミと繋がっている『宝貝』が震える。それを手に取って通信を繋げた。

 

『上手くいった筈よ。後はアンタ次第ね、リンド』

 

「ありがとうございます、ツクヨミ様」

 

 主語を介していない会話だが、それだけでリンドとツクヨミは問題は無かった。

 何故ならば二人は昨(・)晩(・)の内に互いの状況を話し合い、それを持って自分達が望む状況を造り上げる事を決めたからだ。

 

「カグツチ様のご様子はどうですか?」

 

『今は休んでいるわ。イザナミ様の件はヒカルも色々と思い悩んでいるから……妻として私が支えてあげないと♥』

 

「では、例の至宝はもう口にされたんですか?」

 

『まだよ。口にするのはヒカルと一緒に見つけた事を装ってからね……でも、まさか、あのサヨから渡された物がとんでもない物だって、そっちの『サヨ』から知らされた時は言葉を失ったわ」

 

「ええ、僕も驚きました……まさか、母(・)様(・)がその至宝を得てサヨご先祖様に預けていたなんて」

 

 ツクヨミが『黄泉平坂』でサヨから渡された小箱の中に入っていたのは、白桃だった。

 強い神秘を感じるが、果物の桃でしかない物が至宝と言われている事にツクヨミは首を傾げて、昨晩繋がったリンドと話し合って『サヨ』に問い詰めた。

 そして判明したのは、その白桃がまさに至宝と呼ぶに相応しいものだったと言う事実。

 何せ、その白桃を『真の契りの儀式』を結んだ精霊が口にすれば、百年の負担が一瞬で癒えて再び子を為せるようになると言う果実だった。

 

『人間が口にすれば不老長寿になれる実。『蟠桃(ばんとう)』……私だって言い伝えにしか聞いた事が無い果実が、これだったなんてね』

 

 精霊で永遠の命を持つツクヨミには無用な代物だと思えるが、ニニギ以外の子を宿せるようになるならば喉から手が出るどころか、何が何でも手に入れたいと欲して止まない果実。

 その蟠桃が手の中にある事に隠しきれない喜びが、『宝貝』越しのツクヨミの声から伝わって来る。

 

(母様が蟠桃を『サヨ』ご先祖様に預けたなんて聞いた時は驚いたなぁ)

 

 『サヨ』から蟠桃を手に入れた経緯を聞いたところ、十数年前のアシハラノクニの神々との戦いの中で『天帝』が住まう『天界』と言う異空間に侵入したリンドの父親が破壊活動の序でに沢山の桃の木がなっていた場所から一番熟して実っていた蟠桃を奪って来たらしい。

 当然、『天帝』は怒り狂ったが、そもそも侵攻を掛けているのはアシハラノクニ側の神々なので痛くも痒くもないどころかよくやった状態。しかも怒り狂った『天帝』が他のアシハラノクニ側の神の勢力まで巻き込むような行動に出たので内輪もめまで発生した。

 無論、それを狙っての一族の行動。宿敵であるが故に、相手に何すれば怒り狂うのか長年の経験で分かっていた。危険ではあったが、目論見は成功し、手に入れた蟠桃は何れリンドの代から迎えられる予定の精霊の伴侶にお祝いの品として保管されていた。

 その蟠桃が今、ツクヨミの手の中にある。勿論、蟠桃の事は桃花、青龍、蔓、そして子を宿したばかりの白虎にも秘密にしている。

 

(あのサヨの言う通り、此れの事が桃花達に知られたら不味いわ。だから、私の物よ!)

 

 後八十年以上かかると思っていた子を孕む機会が、すぐに得られる。

 本来ならば知った次の瞬間に口にしてもおかしくないが、それでは一緒にいるカグツチに怪しまれてしまう。

 

(焦らずにジックリと、今度はちゃんとヒカルに孕む事を伝えてから宿すわね、私の子)

 

 『宝貝』越しからでも、伝わって来るツクヨミの喜びの気配。

 それをリンドが感じていると、自身の部屋に近づいてくる気配を察する。

 

「来たみたいです」

 

『分かったわ……此処まで来たんだから失敗は赦さないわよ。ちゃんと試練を突破して『契り』を交わしなさい』

 

「ええ、勿論です」

 

 通話が終えた『宝貝』を部屋の中に隠したリンドは素早く布団に潜り込む。

 自分の心臓が早鐘を打つ音と微かに床を歩く足音がリンドの耳に聞こえて来る。既に覚悟を決め、そうなるようにツクヨミに頼んで動いて貰った。

 だが、それでも里(・)を(・)ヒ(・)ミ(・)コ(・)一(・)党(・)に(・)襲(・)わ(・)れ(・)て(・)以(・)来(・)の(・)明(・)確(・)な(・)命(・)を(・)賭(・)け(・)た(・)事には緊張と恐怖を覚える。

 

(大丈夫なんて流石に言えない……今回ばかりは僕も死ぬかもしれない)

 

 望む結果を得る為には下手な小細工は出来ない。

 文字通り全身全霊で挑み、全てを上手くこなした果てにしかリンドが望む結果は得られない。薄氷を渡るようなその難易度をリンドはこれから幾度もこなさなければならない。

 だが、それでもリンドの目には迷いはない。命を賭けるだけの価値はこれ以上ないほどあり、今は『サヨ』が出雲学園にいる。己に何かあっても一族の知識を、赤子の李花、青蘭、蔓、そして白虎のお腹に宿る子に伝えられる者はいる。

 狂気的な考えだが、それほどの覚悟を持たねば出来ない事をリンドはこれから部屋に来る者と行なうつもりだった。

 部屋に近づいていた足音が扉の前で止まった。いよいよその時が来たのだと、リンドは拳を握って部屋の前にいる相手の言葉を待つ。

 

「起きていますね、リンド」

 

 扉の向こう側から聞こえたのはアマテラスの声。

 だが、その声からは普段のアマテラスから感じられる一切の柔らかな気配が消え、まるで戦場に立っているかのような鋭い気配が扉越しからでの伝わって来た。

 

「戦いの準備をして、四半時後に天の岩戸の前に来なさい。其処で貴方を待っています」

 

 有無を言わさないような鋭い気迫に満ちたアマテラスの声音。

 夫を迎え、娘を産んでからは柔らかな雰囲気を纏うようになっていたが、カグツチや渚達と会った頃のアマテラスは常在戦場。常に臨戦態勢で寝ている時でさえも戦っていると言わんばかりの戦巫女だった。

 そのアマテラスが今、扉を挟んだ向こう側にいる。

 言う事を告げ終えたアマテラスの気配は、扉の前から去っていく。リンドの返事も聞かずに去って行ったアマテラス。

 ゆっくりと布団から起き上がったリンドは、アマテラスの冷たい声音を聞いても動揺した様子はなく、手早く戦いの準備を済ませていく。

 勾玉を五つ嵌められる具足の装身具に、記憶を取り戻した事で与えられた遺産の中にあった織物の精霊の先祖が編んでくれた衣から作られた神官服。武具としてはまだ格闘術を学び始めたばかりだが、篭手の類。

 そして先祖の精霊達が遺してくれた力の結晶である魂を武具や防具、装身具に開いている専用の穴に嵌め、呪符の類も懐に仕舞っていく。

 戦闘態勢を整え終えたリンドは部屋から出て、屋敷の出入り口に向かって行く。すると、出入り口の前には屋敷の警備を行なっている巫女達が左右に並び、深々と平伏していた。

 それだけではなく、巫女達は上半身に白衣を纏わずに裸で、背に書かれている『雌犬』の文字を晒している。

 リンドに命じられたからそうしているのではなく、巫女達は自分達の真の主人となった者に雌(・)犬(・)巫(・)女(・)である事を示したのだ。

 当然、雌犬巫女頭である葉子も、左右に穂乃香と桂香を付き従えて上半身を裸のまま背の『雌犬』の文字を晒しながら出入り口前の床に平伏していた。

 

「アマテラス様、お先にお出になりました」

 

「そう……皆、見送りをありがとう」

 

 見送りと言うには酷く淫靡ではあるが、鬼畜な雄であるリンドにとって最高の見送りだった。

 

「大丈夫。ちゃんとアマテラス様を従(・)え(・)て(・)戻って来るよ」

 

 本来であれば、リンドの発言は不敬すぎる言葉。

 イザナミの後を継ぎ、ネノクニを統べる神となったアマテラスを従えるなど不敬極まりない。

 リンドに堕とされる以前の葉子ならば、その不敬極まりない発言を聞いた瞬間に、発言した相手を問答無用で手討ちにしただろう。他の巫女達も同様の事をしていた。

 だが、彼女達は既にリンドと言う鬼畜な雄に堕とされた雌犬巫女衆。

 

『ああっ♥ とても素敵です、ご主人様♥』

 

 雌犬巫女全員が自分達と同じようにリンドに従うアマテラスの姿を想像して、恍惚した顔を浮かべた。

 

「フフッ、佐久夜を番の雌に堕とした後は母娘で媚(・)び(・)の(・)舞(・)を琴乃の演奏で踊らせるつもりだから、確りと雌巫女としての修業を琴乃にさせるんだよ、穂乃香、桂香」

 

「勿論です、ご主人様♥」

 

「今度は絶対に失敗いたしません!」

 

 二人の雌犬巫女の言葉に満足そうにリンドは頷くと、扉に手を掛けて開き、外に出てアマテラスが待つ天の岩戸の前へと向かって行く。

 その背中を雌犬巫女達は平伏しながら見送り、無事に自分達の主がアマテラスを従えて戻って来る事を祈るのだった。




次話でアマテラスとの『契りの儀式』開始です。
結末は壱で明らかになっていますが、詳細をお待ち下さい。
因みにリンドは子を宿してくれた相手を正式な番の雌として見るので、子を暫らく宿せないアマテラス、佐久夜、琴乃の扱いは子を宿す前の白虎と同じ扱いです。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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