※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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お待たせしました。
出来れば年内にもう一、二話を投稿したいですがどうなるかは未定です。

誤字報告ありがとうございました!


神の娘・佐久夜番堕ち編 9

 シュパパパパパパパパッ!!

 

 桃花、青龍、蔓、白虎、そして子供達の目の前で目に止まらないと言う言葉が相応しい光景が映っていた。

 子供達はまだ赤子なので仕方がないが、母親である精霊達でさえ正確に動きを捉える事が出来ないでいる。青龍や白虎でさえ残像を捉える事が精一杯だった。その光景を作り上げている狼の耳と尻尾を持った少女-『弓』は、両手に持った裁(・)縫(・)道(・)具(・)を巧みに扱い、遺産が保管されている地下の空間から持って来た生地を縫っていく。

 動作に淀みが無い事から慣れた動きである事は明らか。だからこそ、桃花、青龍、蔓、白虎は困惑していた。

 『弓』は蘇った経緯はともかく、精霊であり狼の耳と尻尾を持っている事から獣の類の精霊である事は明らか。なのに明らかに裁縫が上手では済まないどころか、匠の腕前を披露しているのだ。

 道具が優れているとかではない。『弓』自身の持つ裁縫の腕前が本職の精霊並みに達しているのだ。

 そしてその匠の腕前によって完成した十(・)個(・)の(・)愛(・)ら(・)し(・)い(・)縫(・)い(・)ぐ(・)る(・)み(・)を『弓』は机の上に丁寧に並べ終えると、すぐ傍で宙に浮かんでいる小夜に目を向ける。

 

「ん。義母様、終わった」

 

「流石ですね、本職の織物の精霊にも負けない出来ですよ」

 

「当然。必死に家族から習った。それに道具に望まれた」

 

 言いながら『弓』は、裁縫道具の数々が入っていた箱に一つ一つ丁寧に使った道具を戻していく。

 その裁縫道具は、『精霊武具』ではないが、嘗て一族にいた織物を扱う類の精霊が遺した由緒ある道具。縫いぐるみに使われた生地も精霊か或いはその力に目覚めた者が編んだ物。

 伝えるべき事と知る必要がある事を話し終えたところで、『弓』は地下から自分を呼ぶ声がある事に気付き小夜達に事情を説明した。

 青龍、桃花は最初はまさか地下にある『精霊武具』が『弓』を呼んだのかと危機感を感じたが、呼んでいたのは裁縫道具の類。

 その道具の意志を感じた『弓』は、裁縫道具と共に置かれていた霊布を用いて子供達にぬいぐるみを作ったのだ。

 机に置かれている縫いるぐるみはこの場に子供達の母親を模して作られた物に加え、玄(・)武(・)と(・)朱(・)雀(・)を(・)含(・)め(・)た(・)番(・)候(・)補(・)達の縫いぐるみもあった。

 『弓』が会った事もない縫いぐるみに関しては、『転写の術』で紙に姿を描いて貰って製作した。

 その可愛らしくデフォルメされた十(・)個(・)の(・)縫(・)い(・)ぐ(・)る(・)み(・)の前に小夜は降り立ち、即座に術式を一つ一つに丁寧に施していく。

 

「はい、完成しましたよ。これで霊力を通せば、汚れても綺麗になりますし、解れたりしても修復されます」

 

(他にも緊急時に発動する『帰還術』に加え、『身代わりの術』も施しておきました)

 

 人形に使われている生地は霊布。術を施すにはこれ以上にないほどの触媒。

 一見すれば、ただの縫いぐるみに見えるが、所持している相手を護る術式が次々と小夜に施されても壊れる様子は無かった。

 

「流石は義母様。あっちの義母様と別れたのに、術式の腕が落ちてない」

 

 無論、縫いぐるみを作った『弓』は、小夜が施した術式を全て見抜いていたが、それら全てが渡す子供達を護る為の術式だと分かっているので賞賛した。

 

「ふふっ、確かに本体と完全に切り離されて、九分九厘あっちに力は言っていますが、今の私の依り代は覚醒した末裔が自分の霊木を掘って作ってくれた最高位の物ですからね! それなりの力は戻りました!」

 

「むっ、ズルい。私達の依り代なんて『ヨモツシコメ』なのに」

 

「仕方がないでしょう! 蘇(・)り(・)の(・)類(・)に最適な物は、『ヨモツシコメ』に変わりないんですから! さっ、それよりも待っていますから貴女から早く子供達に渡して上げなさい」

 

「むぅぅ……分かった」

 

 不満そうな声を溢しながらも『弓』は完成した十個の内から四つの縫いぐるみを抱え、目を輝かせて待っている李花と青蘭、そして揺り籠の中で自身を見つめている樹理の下に向かう。

 先ずは長女である李花からだと言うように、桃花を模した縫いぐるみを差し出す。

 

「ん。受け取って欲しい」

 

「あいっ!」

 

 差し出された母である桃花の面影がある縫いぐるみを李花は嬉しそうに受け取って抱えた。

 

「ははっ! も、もらふぇたっ!?」

 

「良かったですね、李花。さぁ、お礼を言いましょう」

 

「あいっ!! ありふぁとう!!」

 

 目を輝かせながら李花は、受け取ったギュッと縫いぐるみを抱き締めて渡してくれた『弓』に礼を告げた。

 微笑ましいその姿と拙いながらも言葉で礼を言ってくれた李花に、縫いぐるみを編んだ『弓』は嬉しそうに尻尾を振りながら喜ぶ。

 

「ん。偉い」

 

 微笑ましく思いながら、次に『弓』は青龍の腕の中で李花と同じように目を輝かせている青蘭に母である青龍を模した縫いぐるみを差し出す。

 

「貴女にした事へのお詫びには足らないけど、受け取って」

 

「きゃぅ……うぅっ」

 

 『弓』が差し出した縫いぐるみを掴もうとした直前、その動きは止まり悩むような声を出した。

 新たな四聖としての自覚が青蘭の中にはある為に、自身との繋がりのある社を奪った『弓』から受け取って良いのかと言う赤ん坊が抱くべきではない葛藤を抱いてしまっているのだ。

 そんな娘の様子に誇らしさと愛らしさを感じながら、青龍が優しく声を掛ける。

 

「受け取って良いのですよ、青蘭……その縫いぐるみは貴女の親族が心を込めて作ってくれた贈り物なのですから」

 

「……きゃうっ!」

 

 母の優しく説き伏せる言葉を青蘭は受け入れ、『弓』が差し出していた縫いぐるみを大切に抱えた。

 青龍は娘の微笑ましい姿に笑みを浮かべながら、『弓』に礼を言う。

 

「青蘭に代わって礼を言います。ありがとうございます」

 

「お詫びの一部……どうしても必要だったからと言って、私達が社を奪った事実は変わらない……その子が立派な四聖になるまで、守ってあげて……」

 

「はい」

 

 『弓』が、いやサヨに与する者達が四聖獣の社を全て奪った事実は変わらない。

 だが、ある程度話を聞き、本当にサヨ側も自らの血を引くリンド達を想って行動しているのだと分かってしまった。

 

(出来る事ならば、リンド様の為にも止まって欲しいのですが……それが出来ない事も分かってしまった)

 

 サヨ達を言葉で止める事は出来ない。力を持って止めるしかない。

 それがリンドや此方側にいる小夜にとってどれだけ辛い事なのか分かりながらも、青龍達にはどうする事も出来なかった。

 複雑な気持ちを青龍が抱く中、『弓』は次に蔓に勧められて揺り籠の中で自身を見つめている樹理の横に蔓を模した縫いぐるみを入れた。

 

「あぅ~」

 

「樹理。縫いぐるみですよ。大切にしましょうね」

 

 そう蔓が言うと横に置かれた縫いぐるみの手に樹理の小さな手が重なり、安心したかのように目を閉じて眠りについた。

 

「ん。まだ寝るのがこの子のすべきこと。ゆっくり大きくなって」

 

 蔓の許しを貰っている『弓』は、優し気な眼差しをしながら樹理の緑髪を撫でた。

 そして最後と言うように白虎を模した縫いぐるみを、白虎本人に手渡す。

 

「産まれたら渡して上げて」

 

「うむ……しかし、良い縫いぐるみだ」

 

「ん。昔頑張って織物を得意とする家族から学んだ。貴女も学べば良い」

 

「出来るだろうか?」

 

 戦いならばともかく、生産的方面に関しては長く存在していても学んだ事が無い白虎は不安そうに声を漏らした。

 そんな白虎を安心させるように『弓』は諭すように微笑みながら告げる。

 

「出来る。私も最初は苦手だった。義母様なんて長男の義兄様が産まれるまでは、洗濯も食事も全部義父様に任せきりだったのに、産まれてからは出来るようになったって義父様が言っていた」

 

「『弓』っ!? そんな昔の事を言わなくて良いんです! ちゃんと両方とも出来るように成れたんですから!」

 

「出来るように成るまで、家の物を壊したり、食材を黒焦げにしていたって義父様が晩酌の時に私の番に愚痴を溢していた」

 

「くぅっ! みなせ! 余計な事を言って!」

 

 知らないところで自身の伴侶が不平も漏らしていた事実に、小夜は憤る。

 しかし、義理の娘である『弓』は気にせずに、白虎の許しを貰ってまだ目立った変化がない、しかし、その内で確かに命を育んでいる腹部を撫でる。

 

「体格の事で不安になる時期が来るかも知れないけど、大丈夫。ちゃんと産める」

 

 『弓』の体格は丁度白虎と同じぐらい。

 無事に子を出産できた桃花、青龍、蔓と違い、幼い少女の容姿をしている自分が無事に子を出産できるか不安だった白虎にとって実例がある事は心の支えになった。

 

「何より『お産婆の龍』の義母様がいる……不安に感じたらすぐに相談すれば良い」

 

 そう白虎に告げると、『弓』は触れていた手を離した。

 小夜はそれを見て、『弓』が去る気なのだと察して声を掛ける。

 

「『弓』……見て通り、私には本体や貴女達四人を止める事は出来ません。主導権を本体に奪われた私に出来るのは、末裔の補助ぐらいです」

 

「ん……もう一人の義母様……その補助を頑張って……もう行く……さようなら」

 

 その言葉と共に室内に風が吹き、次の瞬間には『弓』の姿は何処にも無かった。

 

『………うぅ……うえぇぇぇぇん!!! えぇぇん!!』

 

 何かを察したように李花、青蘭、そして眠っていた筈の樹理は同時に泣き出した。

 もう『弓』と言う自分達の事を想ってくれている親族に二度と会う事は無い。直感的にそう感じた三人の赤子は、温かな温もりが籠っている縫いぐるみを抱きながら母の腕の中で泣いた。

 そして李花達が感じた通り、『弓』が再び彼女達の前にその姿を見せる事は無かったのだった。

 

 

『ぶぎぃぃぃぃっ!!』

 

 咆哮を上げながら巨漢の猪が獲物を見つけたと言わんばかりに襲い掛かってきた。

 猪が突進する先に居るのは、森の中を探索していたいぶき、なずな、佐久夜、リンドだった。

 体格が優れている巨漢の猪が襲い掛かってくれば、アシハラノクニの人々ならば慌てるものだが、過酷な自然の中で生きている彼らにとっては脅威ではなく、寧ろ獲物が来たと言わんばかりにいぶきとなずなが手に持つ武器を構える。

 しかし、その二人を制するように佐久夜が声を掛けた。

 

「二人とも下がって。私がやるよ」

 

 その言葉にいぶきとなずなは素直に従い、迫って来ている猪を避けるように左右に下がった。

 標的が逃げたと猪は思ったが、一度走り出してしまえば急な方向転換は出来ず、いぶきとなずなの背後にいた扇を両手に構えている佐久夜に向かって突進する。

 猪が凄まじい速さで迫ってくる中、佐久夜は慌てることなく両手に扇を持ちながら舞った。

 

「葉隠れの舞」

 

 次の瞬間、佐久夜は舞に合わせるように突進していた猪はあらぬ方向に受け流され、その先にあった木に激突した。

 

「流石だね、佐久夜」

 

 着ている巫女服に土汚れ一つ付けずに、猪を見事撃退した佐久夜を賞賛しながら木に激突した猪を確認する。

 猪は頭から血を流してピクピクと痙攣を繰り返していた。明らかな致命傷。

 それを確認したリンドは止めを刺す為に何処からともなく鋭く尖った木の先を、猪の首筋に向かって突き刺す。

 

『ぶぎぎぃぃっ!?』

 

 猪は断末魔の悲鳴を上げて完全に息絶えた。

 その猪の両足にやはり何処からともなく伸びて来た蔦が絡みつき、そのまま激突した木に吊るされて血が流れ落ちていく。

 本来ならば血抜きは川などですべきなのだが、迷宮と化している森では何処に川があるか分からないで血の匂いを他の獣に嗅ぎ取られないようにするために風を吹かせて匂いを誤魔化す。

 

「それじゃあ、この猪の血が抜けるまでは休憩にしようか」

 

「ええですよ」

 

「構いません」

 

 佐久夜の提案にいぶきとなずなも同意して頷いた。

 勇と護の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』と遭遇した層からは移動していないが、それでも元々森に住み着いていた獣や穢れによって悪霊と化していた魔物に加え、悪霊の影との遭遇戦は何度かあった。

 無論、今の佐久夜達にとっては倒すのは苦でもない相手だが、地面に仕掛けられている呪法の罠の警戒などもあって体力的にも精神的にも疲れが出始めていた。

 その中で貴重な食材となる猪を狩れたので、丁度休憩にする事にしたのだ。

 それぞれ地面に倒れていた木を椅子代わりに座りながら、持って来た荷物の中から竹を水筒代わりにして水を淹れた物を取り出して飲んで行く。

 

「んくんく……はぁ~、生き返るわ」

 

「『水魂』で発生させた氷を溶かして水に出来るからって、時間が掛かる作業なんだからあんまり飲み過ぎないようにしなさいよ」

 

「分かっとるよ……でも、何処に次の層に移動する為の『道祖』はあるんやろ?」

 

「結構歩いたけど見つからないよね」

 

「……そう簡単には見つけられないと思う。『道祖』自体は霊力を発しているけど、それを感知されないように妨害も張られているからね」

 

 限定的とはいえ、転移と言う事象を引き起こす『道祖』が発する霊力はかなりのものなので探知系の術を使えば探すことが出来る。

 だが、試練を張ったのが『惑わし』も司っている『弓』である為か、或いはそう言う試練の在り方を決められているのかは分からないが、その類の術が発動出来ずにいた。

 風を操れ、植物の祖として覚醒したリンドでも『道祖』を見つけられずにいる。完全に精霊としての側面に覚醒したリンドは本来ならば植物の多い場所では有利になる筈なのだが、青龍の社が管理する霊脈の後押しも受けているのか、周囲の木や草などを植物を操ったり声を聞いたりする事は出来なかった。

 無論、アマテラスの時のように『夢を紡ぐ力』を使えば別ではあるが……。

 

(アマテラスの時は『天岩戸』内部で済んだけど、空間が別々になっているこの場所だと一層ごとにしか、影響を及ぼす事が出来ない。幾ら何でも疲弊し過ぎるから無理だ)

 

 体力の方は桃花の加護で大丈夫だが、霊力の方は即座に回復しない。

 精霊としての側面が完全に覚醒したとはいえ、霊力の方が先に尽きるのは目に見えているのでアマテラスの時と同じ事は今の空間では出来ない。

 

「一番良いのは、『成り代わり(ドッペルゲンガー)』を捕まえる事だよ。連中は『弓』のご先祖様の配下として認められているから、罠の配置は当然として……」

 

「『道祖』の位置も知っているかもしれないんだね」

 

「うん。『道祖』の位置さえ分かれば、旨くすれば早く目的地にも辿り着けるよ」

 

 この迷宮と化した空間において、一番重要なのは出口である『道祖』のある場所。

 最短距離で『道祖』に辿り着いて、転移を繰り返していけば目的地に辿り着ける。

 

「あっ。そう言えば言い忘れていたけど、迷宮の最後の出口の『道祖』は少し金色に輝いているんだ」

 

「私達は、その『道祖』を目指せばいいのね」

 

「せやけど、まだうち等がおるの二層目なんよね。『成り代わり(ドッペルゲンガー)』達も全然出てこんし」

 

 いぶきの言葉に全員が頭を悩ませる。

 一番の近道となるのは『成り代わり(ドッペルゲンガー)』の捕獲。だが、肝心の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』も事情が分かっているのか出て来る様子はない。

 

「可能性があるとすれば、私達が疲れるのを待っているのかも知れないわね。いぶきと私は『精霊武具』も扱っているし、リンドは精霊の力。そして佐久夜様はアマテラス様が霊力を込めた扇を所持しているから迂闊に攻めて来ないでしょうね」

 

 どう言う訳か、相手側は呪力を使って武器に見せかけている訳ではなく、本物の武器や装飾品を所持しているようだが、それでも武器の優劣は先ほどの戦闘で明らかになっている。

 しかし、その為に『成り代わり(ドッペルゲンガー)』達は警戒心を強めてしまい、迂闊にはリンド達に手を出さないようにして来ている。残念ながら地道に今は『道祖』の探索を行なうしか無いのが現状だった。

 

(今日はもう仕掛けて来ないつもりか? 或いは何かを狙っているのか? こうしている間にも青蘭が! だから早く『弓』のご先祖様のところに辿り着きたいのにっ!?)

 

 既に青蘭は偏在によって現れた『弓』の手によって社との繋がりを取り戻せて安定しているのだが、その事を知らないリンドは焦っていた。

 年齢にそぐわない精神性とそれに伴った頭脳を持つリンド。だが、大切な娘がこうしている間も力が不安定になっている事実に父親として焦らない筈がない。それは明確な隙だった。

 その隙を虎視眈々と潜んでいた相手は見抜き、即座に行動を開始した。

 

「……っ……ご、ごめん。ちょっと離れるね」

 

 急に佐久夜は身体を震わせると共に立ち上がった。

 

「離れるって佐久夜様……それは……」

 

「いぶき。察しなさい」

 

「……ああ。そう言う事やね」

 

 何処か内股気味になっている佐久夜に気がつき、話を聞いていたリンドもいぶきと同様に納得して頷く。

 

「あんまり離れないでね」

 

「うん……じゃあ、行って来るね」

 

 恥ずかしそうにしながら佐久夜は草木を掻き分けて、太い木の裏側に姿を隠した。

 

(遮音の術を発動させてと)

 

 乙女の嗜みとして音を聞かれないように佐久夜は術を発動させた。

 術の発動の気配をリンド達は感じたが、佐久夜のものだと察して動かずにいる。

 緋袴の裾に佐久夜が手を掛けようとしたところで……。

 

(あれ?)

 

 催していた感覚を佐久夜は感じなくなった。

 

「なんで? ……ん?」

 

 戸惑いの声を上げる佐久夜の耳に微かに声が聞こえたような気がした。

 草木に身を潜めながら、恐る恐る声の聞こえた方に移動すると、その先には探していた『道祖』が存在していた。

 

「あっ! 皆! 『道祖』があったよ!!」

 

 探し求めていた『道祖』が以外にもすぐ近くに会った事に驚きながらも、佐久夜は声を上げながら振り返り、リンド達を呼んだ。

 だが、遮音の術を張ったままなので佐久夜の声は届かず、急いで術を解こうとする。

 

「術を解かないと!」

 

『……駄目だよ、私(・)』

 

「えっ!? んぐぅっ!?」

 

 突然背後から聞こえた自(・)分(・)の(・)声(・)に佐久夜が驚いて振り向こうとした瞬間、背後から伸びて来た手によって口を防がれた。

 

「んんっ! んんっ!!」

 

 佐久夜は暴れて拘束を振り払おうとする。

 容姿からは想像も出来ないが、佐久夜はアマテラス譲りの怪力だった。そうでなければ重たい鉄扇を軽々しく両手で扱ったりは出来ない。

 男顔負けの怪力を持って佐久夜は背後にいる相手を振り払おうとするが、予想外があった。背後にいる相手は佐久夜と同じく怪(・)力(・)を持った相手だったと言う予想外が。

 

(ふ、振り払えない!)

 

『『勇』!? 早く片付けて!』

 

『承った!!」

 

「っ!?」

 

 佐久夜を羽交い絞めにする相手の声に応じるように、木の影が盛り上がった瞬間、潜んでいた『勇』の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』が出現した。

 

(勇の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』!? じゃあ、私の後ろに居るのは!?)

 

『ごめん!!』

 

 佐久夜が背後にいる相手の正体に気がつくと同時に、『勇』の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』が的確に篭(・)手(・)を装着した拳で腹部を殴りつけた。

 

「んぐぅっ! ……んんっ……」

 

 腹部を殴られた衝撃とそれに伴って襲い掛かった強烈な眠気に、佐久夜は意識が保てなくなる。

 

(あ、あれって……『夢玉』……)

 

 意識が途切れる直前に佐久夜が目にしたのは、『勇』が装着している篭手に嵌められた『夢玉』が砕ける光景だった。

 そして佐久夜の意識が途切れたのを確認した羽交い絞めにしていた相手と、『勇』の行動は素早かった。

 頭の両側に付けている花の飾りと金の髪飾りを外し、装飾品である腕輪も外し、扇も取り上げて地面に放り捨てる。更には佐久夜が着ている巫女服まで手に掛けて脱がしたばかりか、足袋まで脱がして一糸纏わぬ裸にしていく。

 これは勇の記憶を持つが故に、リンドと言う雄が番候補である佐久夜の居所を見つける為に仕掛けていると分かっているが故に判断。実際、佐久夜が身(・)に(・)付(・)け(・)て(・)い(・)る(・)物(・)には位置察知の術が刻まれていた。唯一刻まれていないのは、アマテラスの霊力が込められている扇だけ。

 しかし、その術も全て脱がされて裸のまま連れていかれてしまえば意味がなく、アマテラスの霊力が宿っている扇もこの場に残されてしまえば、目印には使えない。

 完全に無防備になったところで、二体の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』は眠っている佐久夜を担いで『道祖』に急ぐ。

 

「佐久夜様、何時まで掛かって……っ!? ま、待ちなさい!!」

 

 戻って来るのが遅いと思って心配して様子を見に来たなずなは一瞬驚いたが、すぐさま佐久夜が連れ去られようとしている事に気がつき、足止めの為に呪法を発動させようとする。

 だが、なずなが呪法を発動させる前に空を裂く音と共に飛来した霊力で作られた矢が腹部に突き刺さった。

 

「かはっ!」

 

『二人とも急いで下さい!!』

 

 なずなを矢で射抜いたのは、潜んでいた弓を構えた『護』の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』だった。

 

『分かっている!!』

 

 援護を受けた二体の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』は、佐久夜を連れて『道祖』に急ぐ。

 

「くっ! に、逃がさない!」

 

 装飾品に付けている『産魂』のおかげで致命傷を負う事を免れ、傷が癒えていくのを感じながらなずなは立ち上がる。

 だが、既に『護』の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』合流を果たした二体の『成り代わり(ドッペルゲンガー)』は全員が触れながら『道祖』に触った。

 次の瞬間、『道祖』は光を発し、なずなの目の前で裸で眠っている佐久夜と共に『成り代わり(ドッペルゲンガー)』達は姿を消したのだった。




次回は佐久夜の本番無しのエロ回ですが、これまで地の分でしか書いていなかった一番最初に弄ばれた日を書いてからドッペルゲンガー達に弄ばれます。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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