※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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今話から美由紀編となります。
取り敢えず導入部分で琴乃編と同じく方向性のエロを書きました。
ただ本番までは琴乃編と同じく暫らく掛かります。

アンケート、お気に入り、評価、感想ありがとうございました!


美由紀編 1

 パチィーン……パチィーン……

 

 夜。里の誰もが眠る時間帯に肌を打つ音が、里の外れにある家の中から鳴り響いていた。

 だが、その音は離れた場所にある家にまで届く事はなく、誰にも気づかれる事なく音は鳴り続けている。

 

 パチィン! パチィン!

 

「ああっ……うぅっ……」

 

 音の出どころの明かりがついた部屋の中に居たのは、1人の裸身を晒した少女だった。

 年頃の少女ならば秘したい美乳も、髪の毛と同じ色の陰毛が茂る秘所も晒されている。

 少女は部屋の天井から伸びている一本の木の蔦で腰と手を縛られて、両足にも足首に蔦が巻き付き僅かに足が開くような形で床に着くか着かないかギリギリのところで宙に浮かされていた。

 しなやかな手足は何らかの武芸を嗜んでいるのか、細いながらも力強さを感じさせるが、両手は背中で拘束され、足も拘束され宙に浮かされているせいで本来の力が発揮される事はない。

 しかも、少女は気が付いていないが、今部屋の中には『媚香』の空気が充満していて、強制的に発情状態にその身体は置かれている。

 その影響もあるのか顔を真っ赤に染めて息を吐いているが、拘束から逃れようとしている様子はなかった。

 

「はぁっ、はぁっ……あぁぁっ!」

 

 バチィンと一際強く肌を叩く音が、少女の晒しているお尻から鳴り響いた。

 本来ならば白い肌の筈のお尻は、既に何度も叩かれたのか真っ赤になっていた。それを間近で見ていた、添え木がされた右腕を首に掛けている長い布で支えている状態のリンドは、少女の秘裂から愛液が零れ出しているのを満足そうに眺めていた。

 しかし、それで満足しないと言うように無事な左腕を振り上げて少女のお尻を手の平でぱちんっと叩く。

 

「あぁぁぁっ!!」

 

 叩かれた少女は、お尻から走った痛みに苦鳴を洩らした。

 だが、逃げる事はしない。リンドから罰を与えられるのは当然だと認識(・・)している少女に、逃げるという選択肢はないのだから。

 

「ねえ、いい加減にちゃんと仲直りしたらどうなの?」

 

「あうっ……ご、ごめんなさい。で、でも……どうしても顔を見たら……」

 

「悪口ばかり言っているよね。でもさ、悪いのは美由紀(・・・)さんでしょう!」

 

 ばちぃぃーーん!!

 

「ああっ!!」

 

 今までで一番強く叩かれた少女-『塔馬美由紀』-は、僅かに前後に身体が揺れる。

 

「カグツチ様と仲直りしたいって言うから、僕と佐久夜お姉ちゃん、琴乃お姉さんが会える場を用意しても、美由紀さんは何時もカグツチ様の顔を見たら悪口ばかり! 他にもアマテラス様やツクヨミ様がカグツチ様の傍に居たら、睨んだりしてるよね?」

 

「ああっ……で、でも……嫌なの……違うって分かっていても……お兄ちゃんが私以外の女の人と仲良くしているのを見るのは……」

 

 目から涙を溢しながら美由紀は、本音を溢した。

 塔馬美由紀はカグツチを……いや、塔馬ヒカルを愛していた。兄妹としてではなく、1人の女性として。

 だが、2人はアシハラノクニで兄妹と言う間柄にいる関係。故に、2人が結ばれるどころか恋愛感情さえ抱く事はない筈だった。……一つの事実を美由紀が知るまでは。

 塔馬美由紀と塔馬ヒカルの間には、実は血の繋がりがなかったのだ。

 その事実を知ってしまった美由紀は、自らの感情を抑える事が出来ず、大きな過ちを犯していた。それを美由紀の口から聞き出していたリンドは、意地悪そうに笑う。

 

「フフッ、そうだよね。美由紀さんはお兄さんの事が、とっても悪い事をしてしまうぐらい好きなんだよね」

 

「い、いや、言わないで!!」

 

 必死に美由紀は顔を横に振るう。

 自らが犯した許されない過ち。もう二度と許して貰う事が出来ない罪過が、美由紀の心を苛む。

 しかし、言葉で責め立てる度に濡れていく美由紀の秘所がリンドには見えていた。

 

(フフッ、あのカグツチ様を投げ飛ばした人が僕の前じゃ可愛くなって来たね)

 

 目の前で自らが操る木の蔦に吊るされながら泣く美由紀に、リンドの嗜虐心は満たされていく。

 別に美由紀に対してリンドは思うところはない。何せ怪我が治った後には、自らの武術の師になって貰う相手なのだから。

 しかし、それと厭らしい事は別なのだ。

 

(昼間は厳しい師匠で、夜や僕が厭らしい事をする時は素直に従うようになるってのも興奮するよね)

 

 その方針の為にお仕置きする形で厭らしい事をする方針で進めていたが、どうやらその方針は当たっていたのか美由紀に被虐願望を植え付ける事に成功しつつある。

 本人も罪だと認識している事がありながら、美由紀の事を知るカグツチもアマテラスも、現在の境遇を考えてキツイ事を言えずにいる。それが逆に美由紀を責めてていた。

 その隙をリンドは突き、折れた腕の一件もあって美由紀の罪悪感を煽り続け、今ではこうしてアシハラノクニで言うSMプレイに近い事を興じる事が出来るまで認識を変えた。

 

(このまま進めて、僕に奉仕する事が罪の意識から解放される事だって認識するようにしてあげるよ。ツクヨミ様からも頼まれてるしね)

 

 美由紀の事で気に病むカグツチを早く安心させたいのか、美由紀に関しては早急に堕とすように言われている。

 最も。カグツチに新たに近づく女性である美由紀を排除したいという気持ちが多分に混じっているのだが、リンドとしては問題ない。

 

(フフッ、言われなくても堕とすつもりでしたから安心して下さい、ツクヨミ様)

 

 鍛えられたしなやかな手足。細い腰つきに綺麗な臀部。豊満とは言えないが、それでも程よい大きさの双丘。勝気さと優しさが見える綺麗な顔立ち。

 琴乃や佐久夜とは違う美少女を前にして、リンドの雄が我慢できる筈がない。

 

(こっちの美由紀さんは、もう結婚して娘もいるそうだけど、この美由紀さんには……)

 

「あっ……だ、だめぇ!」

 

 リンドの顔が自身の股の間に近づいているのに気が付いた美由紀は慌てて身体を揺する。

 だが、逃さないと言うように動く左手で美由紀の臀部を掴み、拘束している蔦にも力を込めて身動きを封じる。

 

(僕の子供を産んでもらうよ……レロ)

 

「あっ! い、いやぁ、そんなところ舐めたら、だ、だめっ」

 

 聞こえて来るぺちゃぺちゃと舐める水音と、秘所から伝わってくる甘い痺れを否定するように美由紀は動く首を必死に横に動かす。

 しかし、叩かれた痛みで膠着していた身体は、美由紀の意思に反して秘所を舐められる事で得られる甘い痺れを甘受してしまう。舐められる端から愛液が秘所から零れ、リンドの口を濡らしていく。

 淫靡な水音に美由紀の顔は羞恥で真っ赤に染まる。

 

(ど、どうしてこんなに気持ち良いの! お、お兄ちゃんを想ってシていた時だって、こんなに気持ち良くなったことなんて……はぁぁぁんっ♥ 凄い♥)

 

 自らを苛む罪の意識を忘れてしまいそうな快感に、弱っている美由紀の心は溺れていく。

 蔦に縛られ、強調するように盛り上げられている美乳の頂点では乳首が立ち始めていた。必死に振っていた首の動きも何時の間にか止まり、顔を赤くして目を閉じて甘い吐息を吐く。

 

「はぁっ♥ はぁっ♥ んんぅっ♥」

 

(フフッ、美由紀さんはかなりのやきもち焼きだから、ちゃんと理解させないとね。そして一度(・・)本来の世界に戻っても、こっちに戻ってくるように僕から離れられないようにしてあげるよ)

 

 愛液を流す美由紀の蜜壺に舌を挿し入れながら、リンドは決意を新たにする。

 何故『塔馬美由紀』が、この世界にいるのか。それは二週間前に起きた悪霊『迷い人』との戦いにまで遡る。

 

 

 早朝。

 その日は朝から物々しい気配に里は包まれていた。何故なら此処二ヶ月の間、里を警戒させていた悪霊『迷い人』が出現する日が判明したのだ。

 既に軍の出陣の準備は終わり、後は里長であるアマテラスとカグツチが出立を宣言すれば出られる準備は終えている。

 その宣言をする前に、アマテラス、カグツチ、ツクヨミは最後の打ち合わせを行なっていた。

 

「『迷い人』が来るのは明日(・・)か」

 

「ええ、貴方。早朝にリンドが伝えてくれました」

 

「何とか秋前に現れてくれて良かったわね。もしこれが冬だったら、厄介な事になってたわよ」

 

 ツクヨミの言葉に、カグツチとアマテラスは揃って頷いた。

 冬の寒さの中で戦うのは人間にとっては辛い。ヒミコ軍も冬の時期には戦うのを控えている。

 だが、『迷い人』や発生する悪霊には関係ない。故に秋前に『迷い人』と戦うのは、カグツチ達も望むところだった。

 

「ただ坊やの話だと確実とは言えないそうよ。あくまで明日が一番来る可能性が高いって話だし……遅れるか早まるかは、『迷い人』次第ってところね」

 

 カグツチとアマテラスは頷いた。

 何せ『迷い人』に関しては、今だにアマテラスとカグツチも出現の兆候が掴めず、出雲学園に直接行っているツクヨミさえも、穴があると教えられているグラウンドの上空を見ても何にも感じられない。

 里の者達の中には、子供の世迷言ではないかと言う者さえ出てきている。

 それでも軍が動くのは、リンドが里に多大に貢献したからだ。

 

(佐久夜を狙っているリンドが、これまでの功績を全部無駄にするような事をする筈がないんだから、間違いなく『迷い人』は来るでしょうね……蔓の出産は間に合わなかったわね)

 

 臨月こそ迎えている蔓だが、まだ陣痛は起きていない。

 しかし、出産の時は近づいているので、精霊としての力が弱ってしまっている。戦うのは無理だと人知れず溜め息をツクヨミは吐き、別の話題を出す。

 

「そう言えば、アマテラス。琴乃の方はどうなの?」

 

 姉の質問に、アマテラスは複雑そうに顔を歪めた。

 

「……琴乃さんにはギリギリまで私と一緒に居て貰う事にしました」

 

「琴乃ちゃんか………出来る事なら、戦いになんて参加させたくなかった」

 

 琴乃は遂に決断を下した。

 自らも動く事を……即ち悪霊との戦いに参戦する決意を琴乃は固めた。無論、告げられた時はカグツチもアマテラスも反対した。

 大切な友人である綾香の娘である琴乃を危険な悪霊との戦いに参加させたいと思うはずがない。だが、以前ツクヨミが言った通り、琴乃本人の心も限界に近い事を理解しているので……苦渋の決断の末に受け入れた。

 そして改めて琴乃が持つ横笛を検証した結果……以前は判明しなかった効果が存在する事が分かったのだ。

 それはアマテラス達にとってとても助けになる力で、悪霊にとっては最悪な力。更に言えば、『迷い人』が出現する予定よりも早く現れ、軍の編成が間に合わなくなってしまいそうになった時に、琴乃が頑張れば編成する時間を稼ぐことができる。

 その力が、アマテラス達も琴乃の提案を受け入れる最後の一押しになった。なってしまった。

 

(……綾香さん。すみません)

 

 姉代わりだった人にカグツチは心の中で謝罪する。

 アマテラスも同じ気持ちなのか、顔を俯かせていた。だが、アマテラスもカグツチも外界からの敵と戦うのはこれが初めて。

 不測の事態が起こらないと言い切れない。そうなった時の為に、琴乃の横笛の力はどうしても必要だった。

 

「アマテラス……琴乃ちゃんの事を頼む」

 

「ええ。琴乃さんは何があっても護って見せます。貴方の方も佐久夜とリンドの事を宜しくお願いします」

 

「ああ、2人の事は必ず護って見せるさ」

 

「……では、これを」

 

 アマテラスは懐から小さな小箱を取り出し、カグツチに差し出した。

 その小箱をカグツチは受け取り、険しい眼差しで手の中にある小箱を見つめる。

 

「……重いな」

 

 小さな小箱。しかし、その中に入っているのは『世界の理を整える』力を秘めた虹色の宝珠。

 使う日が来る事など無い事を願っていながらも、使わなければならない日が来た。無言のままカグツチは自身の懐に小箱を仕舞う。

 

「そう言えばリンドは?」

 

「あの子でしたら、気が落ち着かないので時間が来るまで精神鍛錬用に部屋で心を落ち着けたいと言っていたので、今はあの部屋にこもっています」

 

 影で年齢に合わない行動ばかりしているリンドだが、今回の『迷い人』の討伐には緊張していた。

 本来ならばリンド以外の一族の者も一緒に戦わなければならないほどの戦い。だが、リンド以外の一族は全員死んでいる。

 失敗は許されない戦いに、リンドも緊張しているのだとカグツチは悟って頷く。

 

「そうか。じゃあ、もう少ししたら佐久夜か琴乃ちゃんに呼びに行かせよう」

 

「そうですね。ギリギリまでは、あの子のさせたいようにしてあげましょう」

 

 今回はこれまでの低級の悪霊の討伐ではなく、最上級の悪霊と思われる『迷い人』に加え、中級以上の悪霊も多数出現する。

 出雲学園に向かう前に精神を落ちつかせるのは必要だとカグツチも納得し、アマテラスとツクヨミを伴って屋敷の中を歩いて行くのだった。

 

 

 精神鍛錬用の部屋の中。

 その場所は影でアマテラスに厭らしい事をする場所でもあったが、今日この日だけは真面目にリンドは座禅を組んで精神集中を行なっていた。

 

(『迷い人』が現れる場所は、李花と妊娠している蔓がいる『アシハラノクニの学び舎』。絶対に『迷い人』を倒して、2人の安全を守らないと)

 

 複数の女性に手を出して厭らしい事をしているリンドだが、父親として自覚はちゃんと持っていた。

 状況的に離れて暮らし、母親である桃花に子育てを任せきりだが、それでも我が子に危険が及ぶのは見過ごせない。

 現状に護りを固めてはいても、『迷い人』が相手では不安は隠せない。

 

(お母様とお父様……そして一族の皆はもう誰もいない)

 

 リンドの脳裏に、両親と家族と呼べる一族の者達の姿が浮かんだ。

 突然襲い掛かって来たヒミコ軍と戦い、全員が死んだ。リンドが生き残れたのは、何があっても自分達の血を絶やしてはならないという使命の下、最後の攻勢の時に精霊の親族達がその身に宿る全ての力を用いてヒミコ軍から逃してくれたからだ。

 血に宿る呪詛が発動すれば、幼くとも子を為せる。だが、女子では血を繋げるのに時間が掛かる。故に当主の息子と言う立場にあったリンドを逃がす事が一族の中で決まったのだ。他の子供達を逃がす余裕はなかった。

 ヒミコはリンドの一族を誰一人として逃がさないように、強力な結界を張り巡らしていたからだ。

 現在は弱っているが、弱る前のヒミコは、アマテラス、カグツチ、そして四聖獣の四人が一度に相手をしなければ、勝てる見込みはないと言われるほどに強かった。

 其処に加えて大攻勢の悪霊の軍団に襲い掛かられては、流石のリンドの一族も勝てる見込みはなかった。

 宝珠を使えば可能性はあったが……下手に使ってヒミコの手に渡るのだけは避けねばならない。故に宝珠も、戦いの中でヒミコに不満を持っている悪霊を見つけ、その悪霊が手にするように促した。

 流石のヒミコも、まさか仲間だと思っている悪霊が宝珠に支配され、何食わぬ顔で軍に戻っているとは見抜けなかった。

 

(内側から同じような不満を持っている悪霊達を煽り、後は頃合いを見てヒミコ軍から離脱してカグツチ様達に討伐。そして佐久夜お姉ちゃんとも繋がれたし、桃花とも『真の契りの儀式』を結べて李花を授かれた)

 

 もしヒミコ軍の軍師であるオオナムジが、この事実を知れば絶句するだろう。

 お膳立てはあったにしても、年端もゆかない少年と宝珠に手玉に取られていたのだから。

 

(今度は必ず護って見せる! 二度と大切な人達を失うもんか!)

 

 リンドの昂ぶりに鼓音するように、霊力、気、そして精霊の力が高まっていく。

 

(感覚的に精霊の力を最大に使えば、お母様のアレが一度は使える筈)

 

 リンドの母もまた植物を司る精霊の力を発揮していた女傑だった。

 

(桃花、蔓の2人と『真の契りの儀式』も結んで力も強まっているんだから、幼い僕でも規模は小さくても出来る筈だ……後はカグツチ様とツクヨミ様に任せるしかないのが悔しいけど……仕方がない)

 

 己の力量をリンドは見誤ってはいない。無理をして大切な者達を失うぐらいなら、誰かに頼った方が良い。

 決意を固めて精神を集中させるリンドの耳に、部屋の扉を叩く音が2人分聞こえて来る。

 

「リンド! お父さんとお母さんが、そろそろ出立の演説を始めるらしいよ!」

 

「リンド君。出てきてくれないかしら」

 

(……良し! 行こう!)

 

 充分に鍛錬できたと思い、リンドは立ちあがる。

 そのまま先が見通せない闇の中でも迷わず扉の方に向かって歩き、扉の先で待っていた佐久夜と琴乃と共にカグツチ達の下に向かった。

 

 

 季節は夏を終えてそろそろ秋前。

 カグツチ達の軍は、里から見て出雲学園がある方向に陣を敷く様に行軍していた。未だ『迷い人』が現れる兆候も見えない長閑な景色が広がっている。兵士の中には、本当に悪霊の大群が出現するのかと訝しんでいる者もいる。

 だが、それでも動くのは今回の行軍にはカグツチだけではなく、里長であるアマテラスも加わっている事が大きい。

 里の方に関してはアマテラスの配下の巫女達が護りに就き、結界もリンドの一族が残してくれた巻物に書かれていた、より強力な結界に変わっているのでそう簡単には悪霊達も破れず、発見する事も更に困難になっている。

 アマテラスまでも出陣するとなれば、嫌でも身を引き締めるしかない。

 今回の『迷い人』への策として、先ずアマテラスとカグツチは何よりも里を護る事に力を入れる事にした。

 先ず軍は二つの軍勢に分けて、少ない方の軍勢を『妖やかしの森』の方に。多い軍勢を里と出雲学園が繋がる道に配置する事にした。

 『妖やかしの森』には桃花が張っている結界と事前に大量に設置した罠が張られているので、少ない軍でも戦えるという判断だ。

 逆に分かり難くても、そう言った護りがない道の方に戦力を集中させ悪霊の軍勢を迎え撃った方が良い。

 相手は最低でも中級の悪霊。幾らヒミコ軍と戦い続けている精強なカグツチが率いる兵達とは言え、兵の数は決まっている。『妖やかしの森』と言う広大な森に囲まれている出雲学園を円状にして囲むように配置できない。

 ならば、里を護る事を優先する陣形をカグツチ達は選んだ。

 向かう途中で一部の軍が『妖やかしの森』の方面に向かい、アマテラス率いる軍がカグツチ達と共に途中まで向かう。

 そして別れる予定の場所に到着すると、すぐさま野営の準備を兵達は行ない出す。

 『迷い人』が来るのは明日。最もこれに関しては前後する可能性もあるので、出雲学園に向かうカグツチの手には連絡用に『宝貝』が渡されている。

 

「それじゃあ、アマテラス、琴乃ちゃん。俺達は行くよ」

 

 カグツチはツクヨミを後ろに座らせながら乗る馬の上から、最愛の妻と今回の行軍について来た巫女装束姿の琴乃に声を掛けた。

 

「貴方、姉さん……どうか気を付けて」

 

「佐久夜さんとリンド君も、どうか無事で」

 

 アマテラスに続くように琴乃がカグツチ達の隣で、同じく馬に乗っている佐久夜とリンドに心配そうに声を掛けた。

 

「お母さんが一緒だから大丈夫と思うけど、琴乃さんも気を付けてね」

 

「必ず僕達は戻って来るから、安心してね、琴乃お姉さん」

 

「……ええ」

 

 少し寂しそうな顔を琴乃はしながらも、手に持つ横笛を握りながらリンドに向かって微笑んだ。

 

(むっ! ……何だか此処最近、琴乃さんとリンドとの距離が近づいている気がする)

 

 女の勘と言うべきか、若干ではあるが間違いなくリンドと琴乃の距離が近づいたことに佐久夜は気が付いていた。

 

(そりゃ、リンドが頑張って落ち込んでいる琴乃さんを元気づけたのは知ってるけど……やっぱり女の人と親しくなるのは……)

 

 琴乃の事情は佐久夜も理解している。だが、それでも想い人であるリンドと他の女性が親しくなるのは……女としてどうしても複雑だった。

 

「佐久夜? どうしたんだ? そろそろ行くぞ」

 

「あっ! ごめんなさい、お父さん」

 

 父の呼びかけに佐久夜は慌てて手綱を動かして、馬を動かす。

 そして先に馬を走り出させたカグツチ達を追いかける。カグツチ達が乗る馬が見えなくなるまで、アマテラスと琴乃はその後ろ姿を見つめる。

 

(リンド君。佐久夜さん。どうか無事に戻って来て)

 

 手に持つ横笛を強く握りながら、琴乃は心の中で強く願うのだった。

 

 

 里から歩きでは出雲学園まで半日かかってしまう距離だが、馬を全速力で走らせれば短時間で辿り着ける。

 泊まる予定なので疲労は考えずに馬は獣道を走り続け、出雲学園の正門にカグツチ達は到着した。

 カグツチ、ツクヨミ、佐久夜、そしてリンドは馬から降りる。泊まる為の荷物をカグツチとリンドは背負い、正門に向かって歩き出す。

 

「しかし、学園に泊まるだなんて十何年ぶりだろうな」

 

 カグツチにとって懐かしく思い出のある出雲学園だが、ネノクニで生きる事を決意してからは訪れる機会は殆どなかった。

 最近ではアシハラノクニから召喚された琴乃を里に連れて行く為に迎えに来た時以来である。横を歩いてその言葉を聞いていたリンドは、カグツチに顔を向ける。

 

「カグツチ様が、『アシハラノクニの学び舎』に来られなくなったのは、やっぱり彼方での事を思い出すからなのですか?」

 

「……ああ。此処には色々とアシハラノクニでの思い出がある。ネノクニで生きる事を決めた事に後悔はない……でも、アシハラノクニの事を思い出してしまうからな」

 

(……その事でアマテラスを不安にさせたくなかったし……美由紀の事も思い出してしまうんだよなあ)

 

 嘗て共に戦った仲間達の中で、やはりカグツチが一番気にしている相手は、和解しながらも急な形で永遠に離れ離れになってしまった妹である『美由紀』。

 綾香と渚の2人とは『宝貝』を用いて会話出来るようになったとはいえ、海外で暮らしている『美由紀』とは未だに会話していない。

 

(とは言っても、会話したらしたで何を話したら良いんだろうなあ? 留美ちゃんの事か? 旦那や娘に関して? ……どちらにしても兄としてろくに話もせずに別れをした俺が聞いて良いのか?)

 

「カグツチ様?」

 

「あっ……悪い、リンド……ところでリンド。佐久夜と此処で月に数日宿泊している訳だが、何か変な事はしてないよな?」

 

「お、お父さん! 何を言ってるの!?」

 

 カグツチが出した話題に、話を聞いていた佐久夜が慌てて声を掛けた。

 何せ変な事どころか、子作りを目標とした性行為をこれでもかとヤっているのだ。何れは正式な婚約者にリンドをしたいと考えている佐久夜だが、幾ら父親とは言えリンドとの赤裸々な関係は知られたくない。

 その質問にリンドは考え込むような顔をする。

 

「え~と、変な事と言うと、佐久夜お姉ちゃんと学び舎の中を探検した事でしょうか? 2人で一緒に何に使う道具なのか考えたり調べたりはしましたけど」

 

「そ、そうだよ! それぐらいしか私とリンドはしてないからね!」

 

「ハハッ、悪い悪い。ちょっとからかっただけだ」

 

「フフッ、カグツチ様もお人が悪い」

 

 突然新たな女性の声が響くが、四人は慌てた様子を見せずに声の聞こえて来た正門の入口の方に顔を向ける。

 其処には何時の間にか桃花が立っていて、微笑ましそうにカグツチ達を見ていた。

 

「こんにちは、桃花さん……蔓は?」

 

 桃花と共に出雲学園に居る筈のもう1人の精霊である蔓が現れない事に疑問を覚えて、カグツチは質問した。

 

「蔓さんは学園内に張られている悪霊封じの札の確認をしています。何処まで役に立つかは分かりませんが、確認はしておくべきでしょう」

 

「そうですか。じゃあ、会うのは後になるか」

 

(どうやら誤魔化せたようですね。身重の蔓さんをカグツチ様と佐久夜様に会わせるとしたら、旦那様にお2人の認識を変えて頂かねばなりません)

 

 出来るだけ蔓とは会わせないように頑張るつもりだが、最悪の場合はリンドに頼るしかない。

 チラリと桃花が微かにリンドに目を向けると、同じく微かにリンドは頷いた。通じ合えている事実に、桃花は幸福を感じるが、桃花とリンドの間に自然な形で微笑む佐久夜が割り込んでくる。

 

「桃花様。半月ぶりですね」

 

(お父さんと話してるんだから、リンドに目を向けないで!)

 

「ええ、佐久夜様」

 

(私と旦那様は貴女よりも深く通じ合えているのですよ、佐久夜様。そのような遮りは無意味です)

 

 互いに微笑みあいながらも、佐久夜と桃花の間には火花が散っていた。

 

「……ツクヨミ。俺は何だか桃花さんと佐久夜が怖く感じるんだが」

 

「……気のせいでしょう」

 

(全く。人の事は言えないけど、『真の契りの儀式』の影響は凄いわね)

 

 触らぬ神に祟りなしと言うように、ツクヨミは我関せずのていを示す。

 カグツチもこの場に留まるのは余り良くないと思い、リンドを伴ってグラウンドを歩いて行く。

 そしてグラウンドの半ばまで辺りまで進んだ瞬間……。

 

「……えっ」

 

 急にリンドは立ち止まり、慌ててグラウンドの上空に目を向けた。

 カグツチもそれに気が付き、足を止めてリンドに顔を向ける。ツクヨミ、佐久夜、桃花もリンドに顔を向けるが、向けられているリンドは上空をジッと見ていた。その胸中に満ちるのは……困惑。

 

(何で!? どう言う事なんだ!? 急に『迷い人』の依り代の動きが……変わった!?)

 

 薄皮一枚隔てた空間の向こう側に存在している別次元に繋がるトンネルからやって来ようとしている『迷い人』の依り代。

 宝珠から伝えられてくる情報と、自身の察知力で訪れるのは明日になるとリンドは思っていた。だが、たった今突然依り代の動きが変わった。牛歩の歩みだった筈なのに、此方の世界に向かって走って来ている。

 

(何で急に動きが!? いや、それよりも不味い! このままじゃすぐに此方にやって来る!)

 

「カグツチ様! ツクヨミ様! 桃花様! 佐久夜お姉ちゃん! す、すぐにアマテラス様に『宝貝』を使って連絡を!? 『迷い人』が……来ます!!」

 

『なっ!?』

 

 リンドの報告にその場にいる全員が驚愕した瞬間……それは起きた。

 

「こ、これは!?」

 

 突然大地が鳴動を始めたかのように揺れ出した。しかも揺れは徐々に強まって行く。

 

「地震!? いえ、これは『世界の揺らぎ』!?」

 

「ですが、これは!?」

 

「琴乃さんがこっちに来た時と比べものにならないよ!」

 

 揺れは治まる気配を全く見せず、強まり続け、五人はその場に膝をついてしまう。

 

(この揺れは不味い!)

 

 ネノクニそのものが揺れているとしか思えない事に、神であるカグツチは危険性をすぐに察して身体が揺れながらも『宝貝』を取り出す。

 

「アマテラス! 急いで皆に戦の準備を! 『迷い人』が来るぞ!」

 

 返事を待たず一方的に言い捨てて、カグツチは頭上を見上げる。

 何故ならばカグツチ達には、他に構っていられないほどの出来事が起きていた。

 

「ああっ……そ、空が!?」

 

 同じく空を見上げた佐久夜は円状にひび割れていく様子を見て、悲鳴を洩らした。

 

「こ、これが別次元に繋がる道だって言うの!?」

 

「……繋がる」

 

 バリィィィィィィーーン!!

 

 硬質なガラスが割れる音と共に、空が砕けた。

 その先に広がったのは混沌と表現するしかない色合いに満ち溢れた空間。その空間から飛び出す様に、何かが出雲学園のグラウンドに激突する勢いで降り立つ。

 

「くぅっ!!」

 

「きゃあっ!」

 

「佐久夜お姉ちゃん!」

 

 地面に降り立ったと同時に吹き荒れた土埃を、カグツチ達はそれぞれ身を護りながら耐える。

 

「……アレが……『迷い人』の依り代なのか?」

 

 グラウンドに降り立った者は、人型の影としか表現できなかった。

 黒い闇が身体に張り付いているようにしか見えず、男性なのか女性なのかも判別出来ない。俯いているのか、それとも顔を上げているのか。それどころか前を向いているのか後ろを向いているのかも、分からないほどにソレは不鮮明だった。

 カグツチとツクヨミはそれぞれ剣を引き抜いて、『迷い人』の依り代に向かって構える。

 驚きはあっても、事前に『迷い人』に関する巻物を読んで情報は知っていたので狼狽える事はない。

 

「ツクヨミ。俺が先に仕掛ける。悪霊が発生する前に、弱らせるぞ!」

 

「ええっ!」

 

 カグツチの判断にツクヨミは同意した。

 『迷い人』の依り代がやって来たのならば、次に起きるのは中級以上の悪霊の大量発生。

 幾らカグツチとツクヨミとは言え、悪霊の群れを相手にしながら『迷い人』の依り代を相手にするのは難しい。

 

(感じられる力からすると、リンドの言っていた通り最上級の悪霊に匹敵するわね……全く、こんな悪霊がいるなんて)

 

 久々に気が抜けない戦いになるとツクヨミは思いながら、横目でチラリと背後を見る。

 既に佐久夜も立ち上がり、裾から扇を取り出して構えている。リンドと桃花も、何時でも呪法を発動できるように身構えていた。

 後方の援護は充分だと判断したツクヨミが頷くと共に、カグツチが『迷い人』の依り代に向かって飛び出す。

 

(先手必勝だ!)

 

「てりゃあぁぁぁぁぁーーー!!」

 

 まだ晴れ切っていない土埃も利用して、カグツチは『迷い人』の依り代に斬りかかった。だが、次の瞬間……。

 

「えっ?」

 

 カグツチの視界が反転した。

 斬りかかった瞬間、『迷い人』の依り代は流れるような動きでカグツチの懐に入り右腕をロックした上で素早く足が払われたのだ。

 反転した視界の中で、驚愕するツクヨミ達を目にしたカグツチの背に衝撃が走る。

 

「げふぅっ……」

 

(な、投げ技だと!?)

 

 苦鳴を洩らしながらも、カグツチは自身が何をされたのか瞬時に理解した。

 凡そ十数年ぶりに、カグツチは投げ飛ばされたのだ。疑問と驚愕が脳裏に駆け巡りながらも、受け身はギリギリのところで取れていたので、瞬時に立ち上がり『迷い人』の依り代から距離を取る。

 幸いにも追撃は来なかったが、ツクヨミ達がいる方とは逆側に移動してしまう。

 

(どういう事だ? 今の技は、ネノクニの技じゃない……俺と同じアシハラノクニの技だ!)

 

 時が止まったネノクニでは、アシハラノクニのように洗練された武術がない。

 基本的に力を込めた荒々しい剣技で、充分に通じるからだ。無論同等の敵と戦う時には、最終的に技術が上の者の方が勝つ。

 ヒミコ軍の最強の剣士であるミナカタがカグツチに勝てない理由の一つが、技術の差である。

 だからこそ、カグツチは疑問と困惑に包まれた。

 『迷い人』の依り代は明らかにアシハラノクニの武術を使ったのだから。

 

(まさか、『迷い人』の依り代にされた人間は、俺と同じアシハラノクニの……)

 

「カグツチ! 後ろ!?」

 

「っ!? はあっ!」

 

 ツクヨミの呼びかけにカグツチの身体は瞬時に反応し、背後から空から急降下して来た鷹の悪霊を切り裂いた。

 

「悪霊!? まさか!?」

 

 周囲を見回すと、何時の間にかグラウンドの上空には鷹の悪霊を始めとして、鳥の両足に両の手が翼になっているハーピーの悪霊が飛び回っていた。

 地面には重い足音を立てる石人の悪霊を始めとして、蜘蛛の悪霊である土蜘蛛、人と狼が合わさった人狼の悪霊、他にも数種類の悪霊が次々と出現していた。

 

「あ、悪霊がこんなに!?」

 

「……琴乃様が此方にやって来た時の規模を超えています」

 

 動揺する佐久夜に対して、桃花は冷静に、次々と現れる悪霊達を見回す。

 何処からともなく、悪霊は次々と現れ、グラウンドだけではく校舎内にもその姿を確認出来る。

 『迷い人』の出現と共に起きる悪霊の大量発生が起き始めたのだ。この現象は上空にある穴を塞がないかぎり続く。

 ネノクニの危機に、険しい顔をしながらツクヨミも剣を構え直す。その瞬間、地面が再び揺れ出す。

 

「えっ!? まさか、また!?」

 

「違うよ、佐久夜お姉ちゃん! これは!?」

 

(喰らえ! 呪法『スネークバインド』!!)

 

 内心で呪法の発動をリンドが念じると共に地面を突き破りながら鋭い蔦が多数飛び出し、悪霊達に襲い掛かる。

 その呪法は、蔓と『真の契りの儀式』を行なった事によってリンドが会得した精霊特有の呪法。本来ならば逆さまに蔦が悪霊に向かって襲い掛かる呪法なのだが、奇襲の意味も込めて地面からリンドは放ったのだ。

 

「蔦!? 蔓か!」

 

 この場にいなかった出雲学園にいる最後の1人の援護だと、カグツチは認識した。

 実際のところは、『真の契りの儀式』を交わした事で得た呪法をリンドが密かに解き放ったのだが、そう言う裏事情を知らないカグツチと佐久夜は蔓の奇襲だと認識している。

 地面から飛び出した鋭い蔦は悪霊達だけではなく、『迷い人』の依り代にも襲い掛かる。

 それに続くようにツクヨミも剣を構えて走り出す。だが、蔦とツクヨミが『迷い人』の依り代に辿り着く直前に、突然空中に飛び上がり、足を広げながら回転し始めて竜巻を引き起こした。

 

「くっ! こんな技まで!?」

 

(でも、この技? 何処かで?)

 

 竜巻を回避する為にツクヨミは急停止して、後方に飛び去った。

 間に合わなかった蔦の方は残念ながら全て竜巻に巻き込まれて、ズタズタにされてしまう。しかし、巻き込まれたのは蔦だけではなく、上空を飛び回っていた鷹やハーピーの群れもその竜巻に巻き込まれて消滅していく。

 竜巻が消えた後には、カグツチたちの前には『迷い人』の依り代だけが立っていた。

 

「あ、悪霊達も巻き込むなんて」

 

「『迷い人』からすれば、勝手に発生した悪霊達は味方ではないと言う事でしょう」

 

「寧ろ送り込んだ依り代をこっちに定着させる為の餌って事ね。よくできた悪霊よ、本当に」

 

 忌々しそうにツクヨミは、今だ人型の影にしか見えない『迷い人』の依り代を見つめる。

 静かに立つ依り代は、何故か攻撃を止めて出雲学園をジッと見ていた。警戒しながらその様子を見ていたリンドは、目を見開いて驚く。リンドには分かったのだ。

 依り代に起きている急激な変化が。

 

(て、定着が早い!? どうしてこんなにも早いんだ!?)

 

 目の前にいる『迷い人』の依り代は、本来ならば掛かる筈の時間を無視して急速にこの世界に定着し始めていた。

 本来ならば最低でも半日は掛かる筈の時間が、現れて30分も経たないうちにこの世界に定着しようとしている。明らかな異常事態に、『迷い人』の事を知識だけとは言え知っているリンドも驚愕するしかなかった。

 

(まさか!? あの依り代が執着を覚える何かがこの場所にあるんじゃ!?)

 

 『迷い人』の依り代が、急速に定着する理由は一つだけ。即ち深い執着心を抱いてしまう何かの存在。

 それが何かは分からないが、一刻も早く何とかしなければならないとリンドは焦る。

 

(あの依り代はまだ此方に定着していないに、凄く強い。定着したら、今よりも強くなってしまう! 早く何とかしないと!)

 

「うぅっ!」

 

「リ、リンド!? どうしたの!?」

 

「こ、声が聞こえて……さ、佐久夜お姉ちゃん! 不味いよ! アイツ! 何でだか分からないけど、こっちの世界に凄い早さで定着して来てる!」

 

「そ、そんな!? お、お父さん(・・・・)!!」

 

『■!?』

 

 佐久夜の叫びに誰よりも強く反応したのは、父親であるカグツチではなく、何故か『迷い人』の依り代だった。

 出雲学園を見ていた『迷い人』の依り代は、佐久夜、ツクヨミ、そして最後にカグツチを見た。

 

『■■■■■■■!?』

 

「な、なんだ!?」

 

 カグツチを見た直後に、『迷い人』の依り代は頭を抱えだして何かを否定するかのように声なき叫びをあげた。

 訳の分からない状況にカグツチ達は面を食らう。だが、どちらにしても千載一遇の好機。

 

「カグツチ! 今よ!」

 

「ああっ! てりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ―――!!!」

 

 剣を構えてカグツチは走り出す。

 とにかく、弱らせて、『迷い人』の依り代の精神世界に入り込まなければならない。上空には別次元へ繋がる穴が開いているのだ。

 放置しておけば、先ほどのように大量の悪霊が出現してしまう。アマテラス達の方にも間違いなく悪霊達は出現しているに違いない。

 早急に片をつけるつもりでカグツチは剣を振り下ろす……直前でその変化を目にしてしまう。

 影にしか見えなかった筈の依り代を包んでいた闇が薄れ、その下からブラウスとスカートが顕わになった。

 

「なっ!?」

 

 見覚えのあり過ぎる制服のブラウスとスカートに、カグツチの剣がブレる。

 そのブレを隙と見た依り代は、カグツチの剣の動きに合わせて身体を動かし、流れるように背をカグツチの胸に当てて一本背負いで投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたカグツチは反転した視界に映る琴乃とは違うカグツチが学生時代だった頃の女子制服である出雲学園の制服を纏う依り代に、驚愕の眼差しを向ける。

 今だ頭部と手足は影を纏っているので、その正体はハッキリと分からない。だが、カグツチは確信できてしまった。目の前にいる『迷い人』の依り代の正体を。

 

(嘘…だろう……)

 

「ガハッ!?」

 

 二度目の衝撃に声を洩らしながらも、カグツチは依り代に顔を向け続ける。

 すると、顔を振るう動作を依り代が行なうと共に、頭部を覆っていた影が消え、腰にまで届く長い髪と後頭部につけられた白いリボン、そしてその素顔が顕わになった。

 ツクヨミ、桃花は依り代の素顔に驚愕して固まった。2人とカグツチは、『迷い人』の依り代にされていた少女の正体を知っていた。

 

「あ、あの方は!?」

 

「嘘でしょう!? 何であの娘(・・・)が!?」

 

「えっ? だ、誰?」

 

 桃花とツクヨミと違い、依り代の正体が分からない佐久夜は困惑して少女を見つめる。

 それは明らかな隙。その隙を逃さずに、依り代である少女は踏み込み、一瞬にして佐久夜の目の前に移動した。

 

「……えっ?」

 

 桃花とツクヨミよりも後方にいた筈の自分の前に現れた依り代である少女に、佐久夜は呆けた顔をしてしまう。

 グローブに包まれた拳を依り代の少女は、佐久夜に向かって突き出す。

 迫る拳を前に、佐久夜は避ける事も出来ず、拳を振るった少女の顔を見つめる。

 

(……何でこの女の人…‥こんなに悲しそうに泣いてるの?)

 

 露わになった少女は泣いていた。目から止まる事のない悲しみの涙を流して。

 優しい心を持っている佐久夜は、その涙を見た事で身体を動かすのが遅れてしまう。

 しかし、佐久夜に拳が届く直前に横合いから衝撃が走り突き飛ばされた。

 

「呪法『シールド』!!」

 

 佐久夜を突き飛ばしながら、リンドは『荒玉』の呪法を発動させて物理防御力を引き上げて少女の拳から身を護ろうと腕をクロスさせる。

 だが、少女の拳がリンドの右腕に叩きつけられた瞬間、防御力を引き上げる呪法が発動しているにも関わらず、何かが折れる音が響き渡り、そのまま吹き飛ばされた。

 

「っ!? リンドォォォォ!?」

 

 自分を護る為に吹き飛ばれたリンドを目にした佐久夜は、悲鳴のような声で名を叫ぶのだった。




美由紀が急速に定着してしまったのは、出雲学園とカグツチの存在が原因です。
最も擦らせていた時期で、負の感情の源。加えて不毛の荒野で死にかけ、その後におぼろげながら訳の分からない空間を歩かされる。
そんな状況に置かれた精神が、良く知る出雲学園を目にし、歳を経ても兄であるヒカルだとすぐに分かったので定着が早まったところで、佐久夜のお父さん発言とよく似たツクヨミの存在。止めです。

後、冒頭スパンキングは軽めのもので何度か叩いて赤くなっていただけです。
美由紀の方向性は『お仕置きエッチ』なので。

リンドの折れた右腕に関しては、『和玉』や『産玉』、桃花の呪法で治さないのにはちゃんと理由があります。
まだ身体自体は子供なので、自然治癒の方がより強くなるとかや骨折などの場合、まだ幼い内に呪法で治すと骨が脆くなりやすいとかですね。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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