※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

41 / 174
今回もエロはありませんが、次回は確りとエロありです。

感想、お気に入り、アンケートありがとうございました!


ツクヨミ編 中編

 見張り役の兵士以外に、里の者達の殆どが寝静まっている時間帯。

 里の外れにある家で暮らしているリンドは、己が『真の契りの儀式』を結ぶ事で得た力の一つである召喚を用いて、ツクヨミの監視を頼んでいた桃花と蔓を呼び戻し、その報告に頷いていた。

 

「……なるほどね。やっぱり、ツクヨミ様に残されている時間は少ないんだ。いや、寧ろ十数年もあの状態を保てているなんて、逆に凄いかも。宝珠からの情報だと、不完全な『真の契りの儀式』じゃ子を産んでから長く持たない筈なのに……これがアマテラス様とツクヨミ様の一族が受け継いでる『夢を紡ぐ力』なのかな」

 

 ツクヨミの状態を、既にリンドは把握していた。

 不完全な『真の契りの儀式』の影響で、子を産んでからも力は戻らず、奇跡の代償としてその身が消滅に向かっているという事を。本来ならば当の昔に消滅してもおかしくないのだが、ツクヨミは無意識の内に僅かに残された力で、自らが宿している『夢を紡ぐ力』を発動させ、存在を保っていた。

 

(でも、それも限界だ。幾ら『夢を紡ぐ力』でもツクヨミ様が、他の事に力を使うようになれば存在を保てなくなる。様子を窺っていた桃花と蔓の話だと、姿も薄れかけていたみたいだし……危ないところだったけど、間に合って良かった)

 

 下手に『真の契りの儀式』の情報を語る訳にはいかないので、準備が終わるまでツクヨミへの接触は待っていた。そして遂に全ての準備は終わった。

 

(フフッ、これで漸くこの里での僕の立場も揺るがないものになる。佐久夜お姉ちゃんの婚約者になる事だって出来る筈だ)

 

 佐久夜と結ばれ、アマテラスの勧めで術師見習いとなったリンドだが、今だに里内での立場自体は低い。

 以前のような嫌がらせはなくなったが、今だに余所者と見る者もいる。だが、計画が上手く行けば、一気に立場は向上する。佐久夜の婚約者に選ばれるのも夢ではないと確信している。

 それだけではなく、強力な協力者も得られる。今こそ、計画を実行に移す時が来た。

 

(入念の準備は重ねた。後は実行に移すだけ……これも桃花が頑張ってくれて、蔓が良い隠し場所を知っていたおかげだよ)

 

 リンドが立てた計画。

 ネノクニの各地に眠る、自らの一族に万が一の時が訪れた時に、一族の復興やネノクニに侵入させてしまった外敵に対処する為に2000年もの間、ずっと貯め込んでおいたかの一族の隠し財産。それを回収し、その三割をアマテラスとカグツチが治める里に得させて、里内のリンドの立場を確かなものとする計画だった。

 影に隠れ続けていた一族故に、その存在を立証する証拠は無いに等しい。

 知らしめる形で、宝珠に操らせた悪霊に喋らせたが、悪霊の言葉を全て鵜呑みにする訳がない。

 ネノクニに長く存在している四聖獣ならば、自らの一族の事を知っているかも知れないが……。

 

(下手に四聖獣に確認されて、僕の一族の危ない面が知られるのは不味いからね)

 

 性欲溢れる一族だと知られると、佐久夜の傍に居られなくなってしまうし、アマテラスとカグツチにも警戒されてしまう。故に誰かに語られる形以外で一族の事を知られるのは不味い。

 だからこそ、確信を得られる方法にも入念の準備を重ねた。そして、その準備が漸く終わった。隠し財産とそれを守護するように張られた強力な結界や式神を見れば、カグツチ達も納得してくれる。

 

「桃花、そして蔓、財産の選別ご苦労様。二人の頑張りがなかったら、ツクヨミ様の事を間に合わせる事が出来なかったも知れないからね」

 

「旦那様。お気になさらないで下さい。全ては旦那様の悲願である『一族再興』の為にしたことです」

 

「ええ、それに私よりもずっと桃花の方が、頑張っていましたので」

 

 蔓は、つい先日リンドと『真の契りの儀式』を結んだ。

 その為に大半の作業は桃花と、一族の隠し財産の中に在る式神達にして貰った。もっと早く蔓と『真の契りの儀式』を結べていれば、桃花の負担は軽くなったかも知れないが、蔓が守護していた『アシハラノクニの学び舎』に向かうチャンスがなかったのだ。

 

(少々悔しくは思います……場所さえ違っていれば、私が主様の子を先に妊娠できたかもしれないですから)

 

 蔓は自らの腹部に手をやる。

 その下にある子宮には、自らの血を分けた大切な命が宿っている。

 桃花も着物故に隠されているが、安定期に入った事で大きくなっているお腹を撫でる。

 

(この子の事と旦那様の事を想えば苦ではありませんから、安心して下さいませ、旦那様……ですが……佐久夜様が旦那様の婚約者と認められてしまうのは、やはり……)

 

((嫌です))

 

 リンドと子の為ならば我慢できる桃花と蔓だが、正式に佐久夜が愛しい相手の婚約者となってしまうのは女としての感情が納得出来ずにいた。

 佐久夜は最早桃花と蔓にとって、女としての宿敵。無論、それは佐久夜の方も同じ。

 

(何とかして婚約者の立場を防ぎたいところですが……)

 

(主様の里内での確かな地位の獲得も必要な事……一体どうすれば……)

 

 桃花と蔓は知らない。

 万全に整えた筈のリンドの計画が、1人の男の存在によって最後の最後で阻まれる事になる事を。

 そして計画を立てたリンドもそうなると知らず、佐久夜が己のお嫁さん候補の一人になる時を想像していると、感知力が一つの気配を察知する。

 

「ツクヨミ様が戻って来たね」

 

 里内に入って来た弱々しい精霊の気配。

 アマテラスとカグツチの前では隠しているが、精霊に対して敏感な察知力を持っているリンドには、それが上辺でしかないことに気付いていた。

 リンドは傍に置いてあった一本の巻物を手に取る。その巻物こそ、桃花と蔓に探して貰ったツクヨミの説得に必要な切り札。

 

「じゃあ、行こうか。ツクヨミ様に協力者になって貰う為に」

 

『はい、旦那様(主様)』

 

 桃花と蔓を連れ立ってリンドは歩き出す。自分達にとって必要不可欠な強力な協力者を得るために。

 

 

 里へと舞い戻ったツクヨミは、上空からアマテラスとカグツチが暮らしている屋敷を一瞥し、すぐに里の外れにあるリンドが暮らしている家に目を向ける。

 

(先ずはあの坊やの確保を優先すべきね。幾らアマテラスが直々に鍛えているからと言ったって、素人術師の域は出ていないんだから)

 

 問題はアマテラスが肌身離さずに持っている宝珠の方。

 最初に知った時に焦りから強い反応を示してしまったので、アマテラスには強い警戒を抱かれてしまった。ツクヨミ自身、本当に宝珠が世界の理に関わる力を秘めているのならば、迂闊に使ってはならない事を理解している。

 だが、何時消滅の時が訪れてもおかしくない現状では悠長に待ってはいられない。

 

(ニニギの封印を解いたら、すぐに返すから許してアマテラス……そしてカグツチ)

 

 自らの息子の父親であるカグツチを想った瞬間、ツクヨミの胸に言いようのない痛みが走った。

 その痛みの正体をツクヨミは既に知っている。精霊でありながら、在り得ない感情だが、ツクヨミはカグツチに好意を抱いていた。

 嘗て敵対していた時には抱いたこともなかった筈なのに、ツクヨミはネノクニの為に頑張るカグツチを見ているうちに一人の男性を想う感情へと変化していた。無論、その感情を表に出す訳にはいかない。

 カグツチは大切な妹の夫なのだから。だが、その妹よりも先に妊娠していた事実を知った時、ツクヨミは心の奥底で確かに……。

 

「気の迷いよ……精霊となって私はその類の感情を失った筈なんだから」

 

 精霊は基本中立の存在故に、負の感情と言った類の感情は抱かない。

 それは悪霊から精霊へと変化したツクヨミが一番実感していた。

 地に降り立ち、そのまま目の前にある家に踏み込もうとしたところで……。

 

「こんばんは、ツクヨミ様」

 

「っ!?」

 

 背後から聞こえて声に、ツクヨミは驚きながら振りかえる。

 其処には家の中に居るはずのリンドが、微笑みながら立っていた。

 

(この坊や!? 何時の間に!?)

 

 弱っていたとしても、呼びかけられるまで気付かなかった事にツクヨミは戦慄しながらリンドを見つめる。

 

「どうされたんですか? こんな夜更けに?」

 

「ちょっ、ちょっとね……そう言う貴方こそ、どうしてこんな時間まで起きているのかしら?」

 

「フフッ、ツクヨミ様を出迎えようと思いまして」

 

「っ……」

 

 ツクヨミの目に強い警戒心が浮かんだ。

 その瞳には、もうリンドをただの子供だと思う気持ちはない。弱っていても精霊としての力で刀を呼び寄せようとした瞬間……。

 

「ツクヨミ様。それ以上の行動は駄目です」

 

「ええ、それ以上は認められません」

 

「なっ!? ……桃花……それに蔓」

 

 何時の間にか桃花と蔓が、ツクヨミの傍に立っていてそれぞれ左右の手を掴んでいた。

 直前までいなかった、正確に言えば認識出来なかった二人の出現にツクヨミは戸惑う。そんなツクヨミにリンドは微笑みながら告げる。

 

「話は中でしましょう。僕らの為になる話を」

 

 抵抗は無意味だと悟ったツクヨミは、素直に従い桃花と蔓に左右を固められながら家の中に入る。

 

「……坊や。貴方、まさか悪霊の手の者なの?」

 

 ずっと演技していたのかと疑いの視線をツクヨミはリンドに向ける。

 だが、ツクヨミの危惧を否定するようにリンドは首を横に振るう。

 

「違います。僕の里は確かに悪霊に滅ぼされました。だから、悪霊は僕にとって憎むべき敵です」

 

「……その割には悪霊への憎しみの色が貴方には見えないわね」

 

 幼い子供ならば家族を奪われれば、必ず強い負の感情を抱く。

 しかし、ツクヨミの見たところリンドにはその類の感情が薄い。

 

「薄いのは復讐よりも優先する事があるからです……僕は『一族の再興』を生涯の目的としているんです。里の皆は、その為に僕を逃がしてくれた……そんな想いを裏切って復讐には走れません」

 

 その想いはリンドにとって呪縛となっている。

 故に『一族の再興』の為ならば、どんな手段でも使うつもりだ。子供らしからぬリンドの姿に、これこそがリンドの本性なのだとツクヨミは悟る。

 

「つまり、私達はまんまと貴方の演技に騙されていた訳ね。何も知らない子供を装っていたと」

 

「そうなります。その事に関しては謝罪は出来ませんが、お詫びをするつもりです」

 

「どんなお詫びかしら?」

 

「一族の隠し財産の三割をお渡しするつもりです。『精霊が鍛えた神具』。『勾玉各種数千個』。『魂を各種数百個』。他にも『『宝貝』を含めた伝説級の呪具の数々』。そして一族が知る術が記載された巻物の一部をお渡しします。術に関しては認識阻害の術が使われていて簡単には全て読めませんが、何れ全て読めるようにします」

 

「………冗談でしょう」

 

 流石のツクヨミも掠れた声を出すしかなかった。

 それほどまでリンドが差し出そうとしている物は、在り得ないとしか思えない代物ばかりだった。下手をすればこの里にある秘宝さえも超えるほどの宝だった。

 実際にある事さえ疑わしい。不審の目をツクヨミがリンドに向けると、桃花と蔓が口を挟む。

 

「ツクヨミ様。彼が言っている事は事実です」

 

「この場には流石にありませんので、お見せ出来ませんが、確かに存在しています」

 

「……悪いけれど、貴女達の言い分は信用できないわ」

 

(この二人は、もう坊やの側にいるんですもの)

 

 良く知っている相手とは言え、既に桃花と蔓の立ち位置は違う。

 故に味方とは考えない姿勢を示す。そんなツクヨミに、リンドは懐から取り出した一本の巻物を差し出す。

 

「そしてツクヨミ様にはこれです。今、ツクヨミ様に何よりも必要な事が記載されています」

 

「私に必要な事ですって?」

 

 警戒しながらもツクヨミは巻物を受け取り開く。

 そして最初の一文を読んだ瞬間、目を見開いて固まった。

 

「『精霊が人と子を為す方法と注意事項』ですって!? まさか!?」

 

 自身に起きた奇跡に確立された方法が存在していた。その事実が信じられず、ツクヨミは巻物を広げて文を読み進める。

 

「……『真の契りの儀式』……『契りの儀式』の上位互換……これが精霊と人が子を為せる方法だというの?」

 

「事実です、ツクヨミ様。その証拠に……」

 

 ゆっくりと桃花はツクヨミに見えるように帯を解きを、床に袴を落とす。

 突然の事に驚くツクヨミだが、着物の下に隠されていた明らかに腹部が大きくなっている桃花を見て固まる。自身もその状態になったからこそ分かる。

 桃花が妊娠している事を。

 

「桃花……貴女、まさか……」

 

「はい。彼の子を初めにこの身に授かりました」

 

 慈しむように桃花は、自らの腹部を撫でる。

 驚愕の余り目を見開いてツクヨミは固まってしまうが、すぐに我に返って蔓の方を向く。

 蔓も桃花のように着物を脱いだりはしなかったが、大切そうに自らの下腹部を撫でている。

 2人が浮かべている表情が明らかに母親のものであることを悟ったツクヨミは、渡された巻物を読み進める。

 

「……だとしたら、私がニニギを授かる事が出来たのは……」

 

「はい。ツクヨミ様が子を授かれたのは、カグツチ様と偶然にも『真の契りの儀式』に似た形で儀式を行なってしまっていたからです」

 

「なっ!?」

 

「ですが、不完全な形でしか儀式を終える事が出来ず、ツクヨミ様は精霊が子を為すという奇跡の代償から身を守り切れていない状態になっています。その状態を治す方法は一つだけ……カグツチ様と『真の契りの儀式』を結ぶ以外にありません」

 

「つ、つまり……私に……カグツチに抱かれろって言うの?」

 

 ツクヨミはリンドの提案に心が惹かれるのを感じた。

 カグツチの妻である妹の為に、心の奥底に秘した感情が騒ぐのを感じる。だが……。

 

「……それは難しい提案よ。アンタは知らないでしょうけど、アマテラスはああ見えてかなり嫉妬深いのよ。私がニニギを妊娠していたと知った時は、本気で怒って天の岩戸に三日三晩閉じこもって、ネノクニは大変な事になったのよ?」

 

「それは桃花と蔓から聞いています……でも、安心してください。入念に此方も準備は重ねています。失敗する可能性は二割ぐらいです……この失敗の可能性も、カグツチ様がツクヨミ様と『真の契りの儀式』を交わす時に失敗するかどうかです」

 

 流石のリンドも、他者が『真の契りの儀式』を交わす時に割って入る事は出来ない。

 それはツクヨミも分かるので、リンドが渡してくれた巻物を読み進める。

 

「……この『真の契りの儀式』を交わした精霊に起きる悪影響の部分はどうするのかしら? つまり、今こうしている私と契約後の私は大きく変わると言う事でしょう? 桃花と蔓のように?」

 

「ああ、その部分はツクヨミ様なら大丈夫だと思います。寧ろ無くしていたものが戻ってくるような清々しさを覚えるかも知れません」

 

(何せツクヨミ様の場合は、悪霊としての側面を取り戻すだけなんだからね)

 

 ツクヨミは精霊となる前は悪霊だった存在。

 精霊でありながらも、悪霊として失っていた部分が戻るだけ。寧ろ冷徹な軍師としての側面を取り戻せるとリンドは考えていた。

 

「……そう」

 

(この坊やの提案に乗れば、私が生き残れる可能性がある訳ね。お膳立ても確りされているみたいだし……提示された財産も、此処まで自信溢れているなら本当にあるんでしょうし)

 

 リンドが出した提案は、どれをとっても魅力的ですぐにでも頷きたい気持ちにさせられてしまう。

 だが、弱っていても安易に頷くほど、ツクヨミは甘くない。

 

「……確認するわよ。貴方は私を従えたいの?」

 

「いいえ。ツクヨミ様とは対等な協力者。或いは共犯者になって欲しいと思っています。了承できる範囲でしたら、其方からの提案を受け入れます」

 

「なら、そうね……貴方の思惑通り、私がカグツチと『真の契りの儀式』を結ぼうとして失敗した時……私の息子。ニニギの封印を解くと言うのはどうかしら?」

 

『っ!?』

 

 ツクヨミの提案に桃花と蔓は危機感から目を見開いた。

 二人はリンドが佐久夜に手を出している事も知ってる上に、ニニギが佐久夜に対して並々ならぬ感情を抱いている事も知っていた。復活したニニギが佐久夜の変化に気が付き、更に処女までリンドに捧げている事を知れば、間違いなくニニギはリンドを殺しに掛かる。

 しかし、その提案が来ると分かっていたリンドは重々しく表情で頷く。

 

「分かりました。ツクヨミ様の提案を受け入れます」

 

「だ、旦那様!? お待ちください!」

 

「ニニギは危険です! 佐久夜様と仲良くされている主様を見れば、彼は間違いなく剣を主様に向かって振るいます!」

 

「ええ、二人の言う通りでしょうね」

 

 実の母親であるツクヨミも、桃花と蔓の意見に頷いた。

 

「良いんだよ、桃花、蔓。ツクヨミ様と対等な協力関係を結ぶ必要はどうしてもあるからね。何よりも出産を経験しているツクヨミ様が居れば、桃花と蔓の出産の時に助けて貰えるから」

 

(……なるほど。どうやら桃花と蔓を道具みたいに考えている訳じゃなくて、本当に大切に想っているみたいね)

 

 少なくとも、桃花と蔓を切り捨てるつもりはないのだとツクヨミは悟った。

 子の出産の時を言われた桃花と蔓も、リンドを止める言葉は出なかった。実際に式神などの手は借りる事は出来ても、子供の出産に必要なものが何なのかを桃花と蔓は良く知らない。

 二人は本来子を為せない精霊であり、人が住んでいない場所でずっとこれまで過ごして来たので、人間の出産に立ち会った事もない。しかし、ツクヨミは実際に子供を産み、育てた経験者。

 将来的に取り戻せる実力よりも、リンドが何よりもツクヨミに協力して欲しいのは桃花と蔓が子を出産する時の手伝いなのだ。

 

「それでは最終的な契約に関しては、ツクヨミ様がカグツチ様と『真の契りの儀式』を交わし終えてから。今は仮の契約と言うことで、僕らの事を秘密にするでお願いします」

 

「ええ、それで良いわ」

 

 此処に一先ずの契約は結ばれた。

 その事に安堵しながらリンドは頷くと、ツクヨミから巻物を返して貰い、最後の方に書かれている『真の契りの儀式を交わした精霊の変化』に関する項目の部分に触れて文字を消し去る。

 その代わりに新たな文字が浮かび上がり、『消滅寸前まで不完全な『真の契りの儀式』を結んでいた精霊を癒やす方法』の項目が出現した。

 

「それは何かしら?」

 

「フフッ、この項目は絶対にツクヨミ様に必要になりますよ」

 

 意味深にリンドは笑った。

 ツクヨミは新たにリンドが出現させた項目を見て、溜め息を溢す。何せツクヨミが読んだ内容は在り得ないと思える文だったからだ。

 

(あの文の内容通りだとしたら、私が何度もカグツチに抱かれると言う事でしょう? 幾ら私でもアマテラスがいるカグツチに何度も抱かれる訳がないでしょう)

 

 この時のツクヨミはそう思っていた。

 しかし、カグツチとの『真の契りの儀式』を結んだ後に、ツクヨミはリンドの打った手を絶賛する事になる。そうなる先が待っていると知らずに、ツクヨミはリンドと仮契約を交わしたのだった。

 

 

 翌日、里の入口ではリンドを自身と一緒に馬に乗せたカグツチは、その背後に複数の兵を従えて見送りに来たアマテラスと佐久夜に顔を向ける。

 

「それじゃあ、アマテラス、佐久夜。これからリンドを連れて、桃花さんが見つけてくれた場所に行って来るよ」

 

「気を付けて行って来て下さい、貴方」

 

「リンドもお父さんに迷惑を掛けたら駄目だからね」

 

「は、はい、佐久夜様」

 

「むぅっ!」

 

 様と呼ばれた事に佐久夜は不機嫌そうにした。

 不機嫌な佐久夜の様子に、リンドは困ったように視線をカグツチとアマテラスに向ける。

 二人は微笑ましそうに笑いながら、佐久夜を窘める。

 

「佐久夜。リンドが困っているぞ」

 

「ええ、流石にこの場ではリンドの方が正しいですよ、佐久夜」

 

「う、うん……ごめんね、リンド」

 

「いえ、大丈夫です……佐久夜様」

 

 カグツチやアマテラスだけではなく、兵士達がいるのであくまでリンドは従者見習いの対応をする。

 佐久夜は寂しそうな顔をするが、仕方のない事だと溜め息を吐く。

 その様子にカグツチはまた佐久夜が不満を出す前に、出発させようと馬を里の出入口へと向けた。

 

「戻って来るのは数日後になるから、それまでそっちも気を付けていてくれ! じゃあ、行くぞ!」

 

『はっ!』

 

 カグツチの呼び声に兵達も返事を返し、そのまま里の外へと出て行った。

 残されたアマテラスと佐久夜は、カグツチ達の姿が見えなくなるまで見送る。

 

「では、佐久夜。これから修業を始めますよ」

 

「うん、お母さん」

 

(『妖やかしの森』の一件以来、この子は以前よりも修業するようになってくれた……やはり少々厳しくても、『アシハラノクニの学び舎』への派遣は佐久夜とリンドに任せるべきかも知れない)

 

 低級の悪霊とは言え、実戦の経験は早い内に積んだ方が良いとアマテラスは、『妖やかしの森』での一件以来考えるようになっていた。

 カグツチも最近の佐久夜の真剣に修業に打ち込む姿と、同じく修業を頑張っているリンドを見てアマテラスと同じ考えを持っている。

 

(詳しい事は、数日後に訪れる桃花さんと蔓さんに会ってから決めましょう)

 

 以前よりも強固な協力関係を結ぶ事が決まっている二人の精霊を考えながら、アマテラスは佐久夜と共に修行場へと向かっていく。

 しかし、その足は途中で止まり、一緒に歩いていた佐久夜は首を傾げる。

 

「どうしたの、お母さん?」

 

「……姉さん。戻って来ていたんですね」

 

「えっ? 伯母様?」

 

 佐久夜が前を見てみると、其処には何時の間にかツクヨミが木に寄りかかっていた。

 

「ええ……アマテラス。カグツチ達は何処に行ったの?」

 

「あの子。リンドを見つけた里の跡地にです。あの場所を調べてくれた桃花さんが見つけてくれた、空間の歪みの調査に行きました」

 

「……そう」

 

「姉さんこそ、またニニギの封印を解きに行っていたんですか?」

 

「そうよ」

 

 ツクヨミはアマテラスの質問に何でもないと言うように答えた。

 ニニギの名前が出たことで、佐久夜は明らかに不機嫌な顔をした。それを察したアマテラスは、溜め息を吐くと共に佐久夜に告げる。

 

「佐久夜。先に修行場に行きなさい」

 

「う、うん。お母さん」

 

 指示に従い、佐久夜は修行場へと向かっていった。

 

「自業自得だけど、ニニギも妹に嫌われたものね」

 

「ごめんなさい、姉さん」

 

「良いのよ。私だってあの子が佐久夜に嫌われるのは仕方ないと思っているもの。そのニニギの封印を解こうとしている私に複雑な気持ちを、佐久夜が抱くのは仕方がないわ」

 

「姉さん……どうか無理はしないで。もう姉さんには以前のような力はないの……ニニギの事も大切だけど、その為に姉さんが死んだりしたら」

 

 アマテラスは、自身の姉であるツクヨミが以前ような四聖獣に匹敵する力を失っている事を知っている。

 そんな状態で自分でさえも解けないような強力な封印を解こうとすれば、当然その負担は計り知れない。

 自身の身を案じてくれる妹の優しさをツクヨミは感じるが……。

 

「分かってるわ。でも、貴女だって佐久夜が同じ事になったら無理してでもやるでしょう」

 

「そ、それは……」

 

「まあ、暫らくは里に居るから安心して……」

 

(だって、もしかしたら私が力を取り戻せるかも知れないんだから)

 

 ツクヨミはつい先ほどまでニニギが封印されている戦場後ではなく、出雲学園に桃花と蔓と共にいた。

 そして出雲学園の地下に隠されている里に提供する三割の財産ではなく、残り七割のリンドの一族の秘宝の数々を見せられた。

 

(あの秘宝の数々を見せられたら、坊やの話は嘘じゃないと認めるしかないわよ)

 

「姉さん?」

 

「何でもないわ……少し疲れたから休むわね」

 

 言い終えると共にツクヨミの姿は消えた。

 その消え方にアマテラスは、何故か言い知れぬ嫌な予感を感じる。

 

(まるで、姉さんが消えてしまうような)

 

 漠然とした不穏を感じながらも、その不穏の正体が分からないアマテラスはツクヨミが消えた場所を見つめるのだった。




次回は遂にツクヨミとカグツチのエロです。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。