IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜 作:イズモ
次回は蔓編となります。
お気に入り、アンケートありがとうございました!
カグツチと兵達が、リンドを連れて彼を保護した場所である里の跡地の調査へ向かってから数日後。
アマテラスと佐久夜は、ヒミコの目論見だと思われる『救世主』の召喚に関する案件に対する対処に関しての話し合いをする為に、執務室で来客が来るのを待っていた。
しかし、アマテラスと佐久夜は本来ならば来客以外でこの場に居るべきはずの人物が戻って来ていない事に、僅かに心配そうな顔を浮かべていた。
「……お母さん。お父さんとリンド達に何かあったのかな?」
「少し遅れているだけです、佐久夜。何も心配する事はありません」
そう告げるアマテラスだが、遅れている事に不安を僅かに感じていた。
本来ならば今日の話し合いには、昨日の内に帰ってくる予定だったカグツチも同席する筈だった。だが、一日経過してもカグツチ達からの連絡はなく、一体どうしたのかとアマテラスと佐久夜は心配してソワソワしていた。
すると、執務室の外から慌ただしい足音が響き、部下の巫女の声が聞こえて来た。
「アマテラス様! 佐久夜様! カグツチ様達がお戻りになりました!」
告げられた報告にアマテラスと佐久夜は、ホッと安堵する。
やはり少し遅れていただけ。しかし、部下の巫女からの報告は、カグツチ達の帰還だけではなかった。
「で、ですが、その……」
「何かあったのですか?」
「は、はい……カグツチ様達は大量の荷物を持ち帰って来られたのですが……そ、その荷物が信じられないような物ばかりで」
「信じられないような物? ……分かりました。私も見に行きましょう」
「あっ! お母さん! 私も行く!」
外に向かうアマテラスの後を、佐久夜も追いかける。
(戻って来たのね……じゃあ、後は手筈通りに動けば良い訳ね)
屋敷の屋根の上から、里の入口の方に向かって歩いて行く妹と姪を窺っていたツクヨミは、事前の取り決め通りに行動を開始する。
『………』
里の出入り口へとやって来たアマテラスと佐久夜は、思わず呆然と固まってしまった。
二人の目の前には、兵達が忙しくなく動き回り、大きな荷車に載っている荷物の数々を降ろして分別していた。
「取り敢えず、箱に収められている勾玉と魂は保管庫の方に運んでおいてくれ! 入りきらなかったら外でも良い! 呪具関係と巻物が入っている箱は、屋敷の方に運んでくれ! アマテラス達に見分して貰う!」
『はっ!』
「あっ! お父さん!」
荷物に関して指示を出しているカグツチを発見した佐久夜は、慌てて駆け寄る。
「お、お父さん! コレ!? どうしたの!?」
「佐久夜か。戻るのが遅れて済まない。何せ物の数が多い上に、慎重に扱わないと行けない物が多くてな」
「そ、それは分かるけど!」
「……貴方……これらの品々は一体?」
流石のアマテラスも動揺を隠せずに、身体を震わせながら夫に質問した。
質問されたカグツチは手に持っていた箱を地面に降ろして、アマテラスに身体を向ける。
「例の桃花さんが教えてくれた空間の歪みの中で、このものすごい量の荷物を見つけたんだ。どうやら例の一族の隠し財産らしいんだ」
「隠し財産……これら全てが?」
信じられないと言うように今だ荷車に載っている大量の荷物と、兵達が運んでいる荷物をアマテラスは見つめる。
荷物は封されているが、僅かに漏れ出ている霊力だけでも途轍もない気配が感じられた。佐久夜も信じられないと言うように荷物を見つめていると、大人達に混じって小さな荷物を背負って一生懸命運んでいるリンドを見つけた。
「あっ! リンド!」
「あっ、佐久夜お姉ちゃん」
呼ばれたリンドも佐久夜に気が付いて、笑顔を向けた。
無事なリンドの姿に佐久夜は安堵の息を吐く。リンドも数日ぶりの佐久夜の姿に微笑むが、今は仕事があると言うように近くにいるカグツチに声をかける。
「カグツチ様。巻物関係はお屋敷の方で良いんでしょうか?」
「ああ、そうだ。リンドも疲れているだろうけど、もう少し頑張ってくれ」
「はい。じゃあ、運んで来ます」
リンドはアマテラスとカグツチに向かって頭を下げ、そのまま屋敷の方へと歩いて行った。
佐久夜は後を追いたそうにしていたが、今は荷物の方が気になるか、我慢すると言うように頷いてカグツチに向き直る。
「ほ、本当にどうしたの、この荷物!?」
「ちょっと待ってくれ、佐久夜。アマテラスも気になるだろうが、桃花さんと蔓が来るまでに、取り敢えず簡単な仕分けだけでも終わらしておきたいんだ」
「……分かりました。誰か!? 巫女頭の方に連絡して、空いている手の者を送るように伝えてください」
「はっ!」
アマテラスの指示に一人の兵が頷き、屋敷の方へと急いで向かって行ったのだった。
「……では、これらの品は本当に例の一族の遺産と言う事なのですね」
「ああ、そうだ。見つけた時は、俺達も驚きの余り固まったよ」
荷物の簡単な仕分けと運び終えた後、アマテラスはカグツチから何があったのか聞いていた。
他にも佐久夜に加え、後からやって来た桃花と蔓も同席している。二人も来る途中で、信じられないような財宝の数々を目にして、カグツチの話に聞き入っている。本来ならばアマテラスは姉であるツクヨミにも同席して欲しかったが、ツクヨミは見つけられなかった。
(姉さん……一体何処に?)
漠然とした嫌な予感をアマテラスは感じる。だが、今はツクヨミばかりに構ってはいられない。
カグツチの話の内容は驚くべき事だったのだから。
先ず最初に、桃花が発見した空間のひずみの場所に辿り着いたカグツチ達は、一人の兵が最初に侵入を試みようとした。
本当ならばカグツチが一番に確かめたかったところだが、若い頃と違い今は里長の一人。故に部下が率先して挑んでくれたのだが、侵入しようとした部下は即座に弾き飛ばされた。
「次に俺が入ろうとしたんだが、入ろうとした瞬間、声が聞こえたんだ」
「声ですか?」
「ああ、女の人の声で『イザナギとイザヨイの血をひく者よ。入るならば一族の者を』って告げて来たんだ。それでも俺は入ろうとしたけど、まるで固い壁に阻まれたかのように入る事が出来なかった……それで……リンドで試してみた」
「っ……」
同席していた佐久夜は、思わずと言う様子でカグツチに強い視線を向けた。
佐久夜がリンドに弟以上の感情を向け始めている事を知っているカグツチは、少し申し訳なさそうにする。
「済まない、佐久夜。だけど、一族の者と言われると、一緒に居たリンドしか思い浮かばなかったんだ」
「……う、うん。それは分かるよ、お父さん……それで、リンドは?」
「入れた。内側から手を入れた瞬間に、まるでリンドは引っ張られたみたいに入り込んだんだ」
「そ、それで!?」
「俺達も慌てて入ろうとした。そしたら今度は阻まれる事もなく入れて、その先には大きな蔵があったんだ……その蔵の前には大きな灰色の狼が番犬のように入口を塞いでいたんだ」
「狼ですか、カグツチ様?」
カグツチの報告に話を聞いていた桃花は、何かを思い出すような顔を浮かべた。
「ああ、そうだ、桃花さん。白虎が本性を見せた時ぐらいの大きさの灰色の狼が、蔵の入口の前に陣取っていたんだ。入って来た俺達を見た瞬間、鋭い犬歯を剝き出しに襲い掛かって来そうだった」
「ど、どうなったの、お父さん!?」
「急いで剣を構えようとしたら、俺達よりも先に入っていたリンドが声を上げたんだ。そしたら狼は犬歯を剝くのを止めて、優しい眼差しをリンドに向けながら、ゆっくりと蔵の入口の前から退いてくれたんだ。俺達はリンドを連れて恐る恐る近づくと、狼が女の人の声で『一族の宝を託します』って……。そう言って狼は消えたんだ」
「消えたのですか?」
「ああ、俺達の目の前で消えた。それで蔵を開けてみたら、あの宝の山が在ったんだ」
「……もしかしたらですが、その狼は精霊の影かも知れません」
「桃花さん?」
突然の桃花の発言にカグツチ達の顔が桃花に向けられた。
「遥か昔。まだ私がイザナギ様から『オオカムツイ』の名を頂く前の事ですが、野を駆け走る精霊の狼の話を聞いたことが在ります」
「太古の精霊……なるほど。それほど精霊ならば、四聖獣のように己の影を残す事が出来るかも知れません」
(その通りです、アマテラス様。旦那様の一族の宝は、全て旦那様と血縁関係にある精霊の方々の影に護られていました)
リンドに頼まれて各地の巡った桃花は、カグツチが目撃した以外の太古の精霊達の影に出会った。
影ゆえに特殊な空間からは出られず、役割以外の言葉を発する事はなかったが……。
(全員悲しい顔で私を見つめていました)
隠し財産に手を出す時。それは一族の危機かネノクニの危機が訪れた時。
精霊達の影は来る日が来ない事を願っていた。だが、一族の子を宿す桃花が訪れてしまった。
その時の事を思い出し、内心で悲しみを感じて僅かに桃花は俯いた。
隣に座っていた蔓が察して話を続ける。
「それで、この巻物もその桃花が名を与えた少年の一族に関する物なのでしょうか?」
蔓の指摘に、アマテラス達はリンドが背負って運んで来た小さめの箱に収められていた数本の巻物に目を向けた。
置かれている箱以外にも巻物が入っている箱は在ったが、小さめでありながらも重要な物だと示すように彩色が施されている。
「……中を見てみましょう。もしかしたら悪霊が言っていたという『イザナギ様とイザヨイ様と共に世界の理を紡いだ一族』に関する何かが分かるかも知れません」
アマテラスは、ゆっくりと一番上に置かれている巻物に手を伸ばす。
そのまま紐を解いて巻物を広げてみるが……。
「えっ?」
「どうした、アマテラス?」
「……読めないんです、貴方」
「何だって? もしかして独特の文字とか暗号が使われているのか?」
「そうではありません。見て下さい」
差し出された巻物をカグツチは受け取り、文字を見ようとするが。
「……読めない」
巻物に書かれている筈の文字を、カグツチも読む事が出来なかった。
正確に言えば文字は書かれてるのだが、その文字を認識する事が出来ないのだ。
次に桃花、蔓、そして最後に佐久夜も巻物の文字を読もうとするが、三人ともやはり巻物を読む事が出来ず首を傾げてしまう。
「どうやら巻物自体に術が掛けられているようです」
「解けそうか、アマテラス?」
「……正直分かりません。下手に解こうとすれば、巻物そのものが消滅してしまう恐れもあります……恐ろしく高度な術が施されています」
「お母さんが其処まで言うなんて」
信じられないと言うように佐久夜は巻物を見つめる。
アマテラスも驚きながら、念の為にと言うように更に一本の巻物を手に取って広げる。その巻物には……。
「っ!? ……そ、そんな……ま、まさか……」
「アマテラス?」
驚愕と言う言葉ではあり得ないほどにアマテラスは狼狽した。
カグツチが声を掛けるのも気が付かずに、アマテラスは巻物を広げて読み進めていく。やがて……。
「……ああ……う、嘘……だから……姉さんの力は……戻らなかった……」
「アマテラス!? 本当にどうしたんだ!? その巻物に何が書かれて!?」
顔色が蒼白になったアマテラスに、カグツチは心配して肩に手をやる。
肩に手を置かれたアマテラスは、縋るようにカグツチに目を向けた。
「貴方!? 姉さんが!? 姉さんが!?」
「ツクヨミがどうかしたのか?」
「このままでは、姉さんは消滅してしまうかも知れません!?」
『っ!?』
悲鳴交じりのアマテラスの叫びに、カグツチ達は目を見開いた。
驚くカグツチ達に、アマテラスはたった今読んだ巻物の内容を語る。
「何故か分かりませんが、この巻物は最初の巻物と違って読む事が出来たんです。内容は『精霊が人と子を為す方法と注意事項』と、最初の方に書かれています」
「な、何だって……じゃあ、ニニギが産まれたのは……」
「……偶然にも貴方と姉さんは、その方法を実行してしまっていた……不完全な形として」
「不完全だって? 待ってくれ。ニニギはちゃんと産まれたんだ。それで終わりじゃないのか」
問題児ではあるが、ニニギは確かにツクヨミとカグツチの子として生を受けた。
ならば巻物に書かれている内容が成功したのではとカグツチは考えたが、アマテラスは悲痛な顔で首を横に振るう。
「巻物には、精霊が子を為す儀式の事を、『真の契りの儀式』と書かれています。信じがたい事ですが、『契りの儀式』には更に上位の儀式が存在し、その儀式によって精霊は契約者となった者の子を宿せるようになると書かれているのです……そして貴方と姉さんは不完全な形でしか儀式を終えていません」
「その証拠があるのか?」
「宝珠です。貴方が姉さんと『契りの儀式』を行なった後に、私に渡してくれた姉さんの宝珠。『真の契りの儀式』を終えた精霊は、自らの宝珠を契約者の魂に渡し、決して切れる事がない魂の繋がりを結ぶと巻物には書かれています。その繋がりがなければ、子を為した精霊は徐々にその力を失い……やがて消滅してしまうと書かれてあるのです」
「っ!? ツクヨミが消滅!?」
「そんな伯母様が!?」
親しい相手の消滅の危機にカグツチと佐久夜は悲鳴を上げた。
桃花と蔓は計画通りに事が進んでいる事に内心で微笑みながらも、表面上は慌てた様子を見せながら声を掛ける。
「アマテラス様。今は何よりもツクヨミ様に会われた方が良いと思われます」
「ええ、巻物の内容の真偽はツクヨミ様にお会いすれば分かります」
「っ!? そう! 姉さん! 貴方! すぐに姉さんを探さないと!」
「ああっ!」
「お、お父さん! 私も手伝うね! だって伯母様が危ないんでしょう!?」
異母兄であるニニギはともかく、伯母であるツクヨミには複雑な感情を持っていない佐久夜も心配さに満ちた顔をして手を挙げた。
「私達も協力いたします」
「植物の近くにツクヨミ様が居るなら、探す事は可能です」
「頼む、桃花さん、蔓……皆でツクヨミを見つけよう」
カグツチは強い眼差しのまま頷き、その場にいる全員が部屋から飛び出して捜索を開始した。
(後は、ツクヨミ様が居る場所にカグツチ様とアマテラス様を誘導するだけですね)
(これで怪しまれる事なく、私達も『真の契りの儀式』の存在を知れました……いずれは主様と『真の契りの儀式』を結んだ事を表立って言えます)
桃花と蔓が人知れずに微笑みあっている事に気付く事無く……。
「桃花と蔓が動きました。どうやらちゃんと巻物の方は読まれたようです」
「そ、そう……遂に……来たのね」
屋敷から少し離れた雑木林で隠れ蓑術を使って姿を隠しているリンドの報告に、ツクヨミは頬を赤くして変なところはないかと身嗜みを確認する。
(……大丈夫ね……身もちゃんと浄めたし、準備は万全よ)
これから十数年ぶりにカグツチに抱かれる。
その事実にツクヨミは少し緊張していた。心の何処かで望んでいたカグツチとの行為が、もしかしたら最後の最後で訪れるかも知れない。
女として恥ずかしくないように、ツクヨミは身嗜みを整え終えた。残るのは……。
「分かっているでしょうけど……」
「はい。もしツクヨミ様が『真の契りの儀式』を結べずに消滅して仕舞われた時は、契約通りに、ツクヨミ様の息子で佐久夜お姉ちゃんの異母兄のニニギの封印は僕が解きます」
「ええ、貴方の実力はもう疑ってないわ」
(とんでもない子供ね。しかも、薄れているようだけど精霊の血を引いていたなんてね)
リンドの本性には驚かされたが、その実力は確かなものだとツクヨミも既に認めていた。
契約もある以上、息子に関しては後顧の憂いはない。
(なら、最後になるかも知れないカグツチとの一時を楽しませて貰うわ)
「……来ました。じゃあ、僕は行きます」
リンドの気配が音もなく遠ざかり、代わりに慌ただしい足音がツクヨミの耳に届く。
「ツクヨミ!?」
「姉さん!!」
「……騒がしいわね」
自分を呼ぶ声にツクヨミは、大切な妹とその夫を慈しむような笑みを浮かべながら振り返った。
カグツチとアマテラスは、何時もならばその笑みにツクヨミは変わらないと思っただろう。だが、今は……無理をしている笑みにしか思えなかった。
ゆっくりとアマテラスが一歩前に踏み出す。
「姉さん……正直に答えて欲しいの」
「何をかしら? ニニギの封印を解くのは諦めるつもりはないわよ」
「そうじゃないわ……姉さん……貴女は……」
口にするが辛いと言うようにアマテラスの顔が歪んだ。
言葉に出せば、それが現実となってしまうかも知れない恐怖。今のアマテラスは里長でもなく、ネノクニを支える神でもなく、たた姉の身を案じる一人の妹だった。
口にしたくない。だが、口に出さなければ答えは出ない。
覚悟を決めたようにアマテラスは深呼吸をして、言葉を発した。
「姉さんは……
(否定して姉さん! 『何を言ってるの?』って、呆れた目で私を見て!?)
そうアマテラスは切望しながら、ツクヨミを見つめる。
やがてツクヨミはアマテラスとカグツチを見つめながら……。
「全く……」
ずっと張り詰めていた力を抜いた。
「……どうして気付いたの?」
ドサッとツクヨミは地面に、その身を薄くさせながら倒れ伏した。
「っ!? 姉さん!?」
「ツクヨミっ!?」
力なく、そして明らかにその身を薄くさせて倒れているツクヨミに、アマテラスとカグツチは慌てて駆け寄った。
カグツチはツクヨミを抱き上げる。抱き上げられたツクヨミだが、苦しい息遣いをするだけだった。
実際、今ツクヨミは本当に死にかけている。力を張り詰めさせてその身を維持させていたのに、力を抜いてしまったのだから。再び力を入れようとしても、もう戻らない。
「ツクヨミ! ツクヨミ!!」
「姉さん!? 確りして!?」
「……アマテラス……ずっと一緒にいるなんて言ったけど……私は此処までよ」
「いや! 姉さん!」
「カグツチ……後の事は頼むわね……ニニギの事も……アマテラスの事も……」
「何言ってるんだ!? 絶対に助ける!!」
「無理よ……自分の事は……一番分かってるから……これは精霊の身でありながら……子を宿した代償……世界の拒絶なのよ……」
「……なら、その世界の拒絶を、姉さんを奪おうとする拒絶を否定する儀式を……行ないます」
アマテラスは既に知っている。
ツクヨミを唯一救える手段がある事を。今この瞬間だけ、アマテラスの女としての感情をツクヨミを救いたいという感情が上回る。
「貴方……結んで下さい」
「アマテラス……まさか……」
「あの巻物に書かれていた姉さんを唯一救えるかも知れない手段。『真の契りの儀式』を」
再びツクヨミがカグツチに、その身を抱かれる時が訪れたのだった。
「んんっ……」
屋敷の一室で、ツクヨミは苦し気な声を横になっている布団の上で洩らした。
薄れた身体は戻らず、不安定な状態を示している。その傍に居るカグツチは、アマテラスから渡された『精霊が人と子を為す方法と注意事項』の巻物の中に書かれている『真の契りの儀式』の項目を読み進める。
(『精神世界』じゃなくて現実でツクヨミとシないといけないんだよな……それで俺の気でツクヨミの気を取り込む)
急がなければならないが、失敗したりしたら元も子もない。
故にカグツチは真剣に巻物を読み進める。アマテラスや桃花、蔓さえ知らなかった『真の契りの儀式』の事を教えられる者」などいないのだから。
嘗てカグツチはツクヨミを含めた精霊達と『契りの儀式』を交わした。その時には精霊側が補助してくれたが、『真の契りの儀式』に関してはそうはいかない。
寧ろ精霊側よりも相手となる男性の方が頑張らなければならない。
「……よし……やるか」
意を決したカグツチは、恐る恐るツクヨミが着ている着物を脱がしていく。
着物をはだけた終えた後には、雪のように白く染み一つない肌と着物のよって隠されていた豊満な乳房とくびれている腰が露わらになった。
十数年ぶりに見るツクヨミの肢体に、カグツチは思わず息を呑んでしまう。
(ツクヨミは精霊だ……俺やアマテラスはあの時よりも歳を経て、身体が大人になったけど)
変わらないツクヨミの肢体からは、少女から大人へと変わりゆく女性としての魅力があった。
しかし、その魅力は肢体が薄れ始めている事で半減してしまっている。
カグツチはゆっくりと苦し気な息を洩らしているツクヨミの顔に、自身の顔を近づける。
「必ず助けるからな、ツクヨミ……んっ」
「んっ……」
カグツチは、ツクヨミの淡い色の唇に自分のそれを重ねて触れ合う様な口づけを交わした。
そのままカグツチは触れあう箇所から自らの気を流し込み、その先にあるツクヨミの気を取り込む。
「んんっ!?」
取り込んだ直後、閉じていたツクヨミの目が見開き、目の前にカグツチの顔がある事に気が付く。
(カ、カグツチ……い、今のは……い、一体何?)
朦朧としていたので意識がハッキリしていなかったツクヨミは、訳が分からないと言うように唇を合わせながら視線を彷徨わせる。
カグツチは唇から伝わってくる反応からツクヨミが意識を取り戻した事を悟るが……。
(それだけじゃ駄目だ。先ずはツクヨミの薄れた身体を戻す!)
「んぁっ♥ ぁ、ぅん……んんっ、んっ♥」
(なに……これは……私がカグツチに満たされていく)
自らの空っぽになりかけていた器に、カグツチの気が入り込み、僅かに残されていた自らの気が取り込まれていく感覚にツクヨミは溺れていく。
肢体が震え、動かすのも億劫に感じていた筈なのに、気付けば離れる事を拒むようにツクヨミはカグツチの首に手を回していた。
「はぁっ♥ んぁ……んんぅ、カ、カグツチ……」
「んっ……ツ、ツクヨミ……」
何時の間にか触れ合うだけだった筈の口づけは、互いに舌を絡めあうような濃厚な口づけへと変わっていた。
その度に自らの気を取り込んだカグツチの気がツクヨミに送られ、気が付けば薄れていた身体が元の質感を取り戻していた。
しかし、それでは足りないと言うようにツクヨミは貪欲にカグツチの気を求めるように舌を動かす。
(ああっ♥ 分かる。今なら分かるわ……私の心と身体はずっとカグツチを求めていたのよ♥)
もう離したくないと言うようにツクヨミは力を込めてカグツチに抱き着き、豊満な双丘がカグツチの胸板で潰れる。
潰れて敏感な箇所に刺激が加わると、ツクヨミの身体が快楽によって震える。
「んああっ♥」
「ツ、ツクヨミ……大丈夫か?」
明らかに違った意味で様子がおかしいツクヨミに、思わずカグツチは口を放してしまう。
荒い息を吐きながら頬を赤くしたツクヨミは、熱を帯びた瞳で見つめる。
「はぁっ♥ ……大丈夫よ……でも、これは……何なの?」
「お、俺も詳しくは分からないんだが、今俺とツクヨミは『真の契りの儀式』を結ぼうとしているんだ。だから……その……ツクヨミを抱く……良いか?」
「……ふふっ、良いも悪いもないわよ……貴方の好きして……カグツチ」
カグツチの耳元でツクヨミは囁いた。
声に触発されたかのように、カグツチはツクヨミの豊満な胸に手を伸ばして揉む。
「ああっ、んんっ♥ はあぁぁぁぁっ♥」
(こ、これはなに? ただ……胸を揉まれているだけなのに、こ、こんなに感じてしまうなんて♥)
『契りの儀式』の時とは明らかに違う快感に、ツクヨミは喘ぎながら肢体をクネらせる。
カグツチもツクヨミの艶姿に欲情し、片手で胸を揉みながら、下腹部にも手を伸ばしてその先にある愛液で濡れだしている秘裂に触れる。
「んあぁぁぁ――っ♥ そ、そこはっ、カグツチ! ま、待って!?」
敏感な部分に触れられただけで走った快楽に、危機感を感じたツクヨミは思わず声を上げてしまった。
(あ、あの坊や!? こうなる事が分かっていたから、あんな風に書き換えたのね!?)
快楽に喘ぎながらツクヨミは悟った。
『真の契りの儀式』の本当の恐ろしさを。儀式を終えた後に、自分と言う存在が大きく変質……いや、戻ってしまう事を。
しかし、時すでに遅く、ツクヨミの艶姿に興奮してしまったカグツチは息を荒げて愛撫を始める。
「悪い。ツクヨミ。俺も、もう我慢出来そうにないんだ」
じゅぽじゅっぽ……ぐちゃっぐぢゅ……
「あっ♥ あああっ♥ あああぁぁぁ――っ♥」
淫靡な音がツクヨミの秘部から鳴り響き、弄り回すカグツチの指を愛液が濡らしていく。
「も、もうだ、ダメえぇぇぇぇぇ――っ♥」
ガクガクと身体を震わせながらツクヨミは絶頂に達した。
「はぁっ、はぁっ……もう貴方の事……坊やだなんて言えないわね、カグツチ」
「そ、そうか……でも、大丈夫か?」
思わず心配してしまう程に叫んだツクヨミを見ただけに、カグツチは恐る恐る確認した。
まだ本番にさえ至っていないのに、既にツクヨミは息絶え絶えの状態。身体の薄れがなくなったのだから、『真の契りの儀式』は間違いなく進んでいる筈。
心配そうに自身を見つめるカグツチに対して、ツクヨミは不敵な笑みを返す。
「ふふっ、此処まで私を感じさせておいて、いざ本番になったら怖気づいたのかしら?」
「言ったな……なら、俺も止まらないからな」
寧ろカグツチの方が我慢できなくなっている。
(ツクヨミを俺のものにしたい……アマテラスがいるのにこんなことを思ったらいけない筈なのに、そんな気持ちが湧いてきて仕方ないんだ)
自身の手で善がるツクヨミの艶姿。アマテラスと同じく神々しさを感じさせるような極上の肢体。
それが他の誰かの者になってしまう事を許せないという気持ちが、カグツチの中に芽生えた。
カグツチは既に固くなって雄々しくそそり立っている自身の肉棒を、ツクヨミの秘裂に押し当てる。
「んっ♥ ……来て……」
(……ヒカル)
口に出来ないカグツチの真の名を寂しさを感じながら内心で呟き、頬を赤く染めたツクヨミは両足と両手を広げて向かい入れる姿勢を示した。
カグツチの理性はその艶姿の前に消え去り、愛液で濡れそぶるツクヨミの秘裂に亀頭を押し当てて挿入した。
「くっ! ツクヨミ!」
ずにゅん、ぐりゅ、ずぶぅぅ!
「ふあああ――っ♥ んっ、ああああっ、あああああっ♥」
ずっと待ち望んでいたものが訪れたことに歓喜するように、肉棒を挿入された膣内は蠢き、ツクヨミは大きく背を仰け反らせた。
カグツチも十数年ぶりに味わうツクヨミの膣内の感触に、酔い痴れるように腰が震える。
二人は同時に理解した。
((これが『真の契りの儀式』っ!?))
全てが『契りの儀式』とは違っていた。互いに高め合い、最後の瞬間に一つになる全能感を得るのが『契りの儀式』ならば、『真の契りの儀式』は既に繋がった瞬間から一つになったような悦楽と全能感を味わい、更に行為を行なう事で交わりを深くしていく。
「あうっ♥ くぁっ♥ あぁぁぁぁぁっ♥」
「ツクヨミ! ツクヨミっ!」
熱を帯び、硬く滾ったカグツチの肉棒が秘裂を抜き挿しする度、快楽と官能にツクヨミは喘ぐ。
甘い声で嬌声を奏で、美しい肢体を快楽にツクヨミは仰け反らせる。その姿に魅了されてしまったカグツチは、より深い結合を望むと言うように、ツクヨミを抱き上げて対面座位の体勢にした。
「んああああああああっ♥ カグツチ! カグツチ! もっと強く抱き締めて♥ あぁぁぁ――っ♥」
自身もカグツチの鍛えられた肉体に抱き着き、腰を振ってツクヨミは肉棒を出し入れする。
カグツチも激しく肉棒を突きあげ、膣奥から降りてきている子宮を攻める。淫靡な水音と肌と肌がぶつかる乾いた音が重なり、部屋に熱気が籠もって行く。
それでも足りないと言うようにツクヨミは抱き着きながら、カグツチの口に己の唇を押し当てる。
そのまま今度は自分からカグツチの口内に舌を入れて、カグツチの舌と絡ませる。
「んむっ、ちゅっ、ちゅっ♥」
「んっ、凄い。持っていかれそうだ」
「ぷはっ♥ 出して! 私の子宮に♥ そして私を貴方のものにして♥」
「ああ!」
最後のスパートだと言うようにカグツチは腰を激しく動かして、ツクヨミの膣内を蹂躙していく。
降りてきている子宮口と亀頭が激しくぶつかり合い、遂に最後の一突きでツクヨミの膣内にカグツチの肉棒で全て埋まった。
次の瞬間、ツクヨミは大きく背を仰け反らせて絶頂に達する。
「ああっ、あっ――はああぁぁぁぁぁんっっ♥」
「くっ! 出るぞ!」
びゅうっ、どびゅうるるるっ!
ツクヨミが絶頂に達した直後の締め付けに、遂にカグツチも限界を迎えて射精した。
「ああぁっ、熱いっ! ま、またイクうぅぅぅぅっ♥」
追い打ちのように子宮内に入って来たカグツチの白濁液で、更なる絶頂を迎えたツクヨミはカグツチの背に爪を立てながら身体を仰け反らせる。
その瞬間、ツクヨミの胸元から光が発せられて藍色に輝く宝珠が出現した。
「これは……ツクヨミの宝珠」
嘗て『契りの儀式』を交わした後に、その手に握られアマテラスに渡した宝珠『月読』。
出現した宝珠にカグツチが驚いていると、宝珠が淡い輝きを発しながらカグツチの胸の中に入り込んだ。
優しく絶頂の衝撃で意識が朦朧としているツクヨミを布団にカグツチは下ろし、そのまま自らの胸に手を当てる。
「……凄く暖かい。それに……ツクヨミの呪法の使い方が分かるぞ」
本来ならば得る事が出来た精霊の宝珠を、専用の武具や防具によって扱う事が出来る固有の呪法を今、カグツチは自分の意思で発動させる事が出来る。
尤もツクヨミの精霊としての固有呪法は大規模な破壊系なので、この場では使えない。
(他にも『契りの儀式』の時よりも、ツクヨミの存在を近くに感じる……この辺りはアマテラスには内緒にしておいた方が良いよな)
嘗てアマテラスが嫉妬の余り引き起こした出来事を思い出したカグツチは、身体を震わせる。
またあの時ような事が起きたら困ると思っていると……。
「うぅん……」
絶頂の衝撃で忘我の極致に至っていたツクヨミが、意識を取り戻して薄目を開けた。
「ツクヨミ!? 大丈夫か!?」
「……えぇ……ずっと感じてた薄れていく感覚がなくなったわ……それに、少しずつだけど力が戻って来ているみたいよ」
「本当か!?」
失われていたツクヨミの力が戻って来ている。
それが意味する事は一つ。カグツチとツクヨミが『真の契りの儀式』を結ぶ事に成功したという事に他ならない。
その事実にカグツチは心から安堵したように大きく息を吐いた。
「はぁ~、良かった」
「……本当に心配してくれてたのね」
「当たり前だ。俺だけじゃないアマテラスや佐久夜だって、心配しているんだ……ニニギだって復活した時に、ツクヨミが居なくなってたら悲しむに決まってる」
「……ふふ、そうね……本当にごめんなさい……もう少し休んだら、アマテラス達のところに行きましょう」
「ああ、そうだな」
ツクヨミが助かった事実にカグツチは心から喜びを感じ、もう大丈夫だと安堵する。
布団の上で横になって顔を隠しているツクヨミの口元が、笑みで歪んでいる事に気が付かずに。
深夜、リンドは自身の家にある囲炉裏から上がる火の明るさに照らされながら、訪ねに来る相手が来るのを静かに待っていた。
棒で火を調節していると、音もなくリンドの前にツクヨミが出現した。
「待たせたかしら?」
「いえ、大丈夫です。どうやら力が戻って来ているみたいですね」
ツクヨミから感じられる力は、数時間前に感じる事が出来た力とは比べものにならない。
ネノクニの守護神である四聖獣に匹敵する力が、ツクヨミに戻り始めているのだ。
「ふふっ、それにしてもやってくれたわね。てっきり『契りの儀式』とそんなに変わらないと思っていたのに……全然違ったわ。あのカグツチとの甘美な一時を、また味わいたくて仕方がないもの……その為の嘘の文には感謝してあげる」
「それは良かったです」
互いにリンドとツクヨミは微笑みあった。
その笑みは互いに相手と対等に見ている事を示す笑み。リンドにはツクヨミの協力がどうしても必要。
ツクヨミもまた、見つけてしまった目的の為にリンドの力が必要だと理解していた。
「それで、リンド。貴方の最終的な目的は何なのかしら?」
「……『一族再興』を短期で成し遂げ、更に以前よりも強い一族とする為に、ネノクニの神と『契りの儀式』を交わす事です」
「ふふっ、随分と大それた目的ね、それは」
ツクヨミは口元を笑みで歪めた。
その笑みは妹を大切に想う笑みではなく、己の目的を果たす為ならばいかなる手段を使う邪悪な笑み。
『真の契りの儀式』は精霊に母性と女としての感情を与えてしまう儀式。そしてツクヨミは、精霊となった時に失った自身の側面を取り戻してしまった。
「良いわ。協力してあげる。だけど、その代わり貴方も私に協力しなさい。カグツチを……いえ、ヒカルを私は手に入れる。その為に手を結びましょう」
「フフッ、これから宜しくお願いします、ツクヨミ様」
こうして二人は正式な契約を交わした。
ツクヨミは塔馬ヒカルを得るために。リンドはアマテラスと『契りの儀式』を交わす為に。
二人はこの日から、お互いに共犯者となったのだった。
因みに狼の精霊の影が人間体になると、白虎と同じように獣耳付きの美少女になっていました。
次回の蔓編では、以前書いた通り久々の桃花の本番エロもあります。
アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。
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琴乃が堕ちた段階で孕ませる
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四聖の社全て攻略後に孕ませる
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サヨ関連終了後に孕ませる
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イザナミも加え、四人そろって孕ませる