※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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先ずは導入部分として投稿します。
行き先には二人の精霊がいるので、相手は分かり切っていますが内緒と言う事で??編としました。
今回の編が終わったら、改めて名前で書き直します。

感想、お気に入り、アンケートありがとうございました!


麒麟編 1

「ふふ~ん♥」

 

 朝早くに保健室に訪れた佐久夜は、大きな姿見の鏡の前で昨日の探索時に衣裳部屋の中で見つけたフリルの付いた可愛らしいピンクのブラとショーツを、同世代の少女が羨むほどに眩しい自らの肢体に身に付けながら上機嫌な笑みを浮かべていた。

 姿見の前で何度もチェックをし、どうすれば女としての魅力が発揮出来るかも入念に確認する。

 その確認が終わった後に手を伸ばすのは、ベットの上に置いてある購買と呼ばれる場所で発見した出雲学園の冬制服。琴乃が最初に着ていた白のブラウスと黒のスカートと違い、青色の制服と白のスカートを佐久夜は身に付けて行く。

 そして着替えを終えた後には、学生服を身に纏った佐久夜が姿見の前に立っていた。

 

「リンド……喜んでくれるかな」

 

 好きな相手がアシハラノクニの服に興味を持っている事を、佐久夜は勿論知っている。

 だが、アシハラノクニの服などネノクニでは手に入らない。似た物を縫製しようにも、そもそも縫製技術のレベルが違い過ぎるので、製作しようとしても必ず失敗する。

 ならば、出雲学園のあるかも知れない服を、と思っても、残念ながら出雲学園にある制服や洋服の類は、十数年の歳月が過ぎているので、全て虫食いや住み着いていた悪霊に駄目にされてしまっていた。

 ……つい先日までは。

 

「本当に色々と変わっているから、来た時は驚いちゃった」

 

 月に数日だが、ここ一年近くは毎月過ごしていただけに、佐久夜も出雲学園の変化にすぐに気が付いた。

 新築とは言えないが、明らかに『迷い人』と戦った時よりも内装が綺麗になっていて、なかった物が沢山増えていたのだ。

 今、佐久夜が着ている服もその一つで、琴乃が教えてくれた購買と言う場所に在った。

 他にも衣裳部屋には下着や様々な衣装が置かれていた。衣装はともかく、下着まで何故と一緒に探索した琴乃と美由紀は首を傾げていたが、佐久夜にとって何よりも重要な事は……。

 

「この制服と見つけた他の服や下着で、リンドの目を更に私に釘付けにする! 桃花様と蔓様には、絶対に渡さない!」

 

 佐久夜は一つの危機感を覚えていた。

 それは一年以上、それこそ生理などや状況的に出来ない時もあっても、ほぼ毎日していながらリンドとの子供が出来ない事。それは精霊の血をリンドが引いているからだと、佐久夜も残念ではあるが認識している。

 だが……精霊とリンドが交わった場合はどうなのかと危惧を感じていた。

 

(『真の契りの儀式』なんて、精霊と人が子を為せる儀式があるんだから……もしかしたら……)

 

 精霊とならばリンドは子を為しやすいかも知れない。

 『真の契りの儀式』に関する事が書かれた巻物は、母であるアマテラスの手によって禁術として封印されているが、リンドは宝珠と繋がって知識を得る事が出来る。

 何よりも巻物の内容を、既に桃花と蔓は知っているのだ。

 

(だからこそ、桃花様と蔓様は警戒しないと!)

 

 女の勘で桃花と蔓がリンドに惹かれている事を悟っている佐久夜は、より一層の二人への警戒を心に強く誓った。

 そんな佐久夜の耳に……。

 

「……馬の鳴き声?」

 

 出雲学園の校門の方から、馬の走る音と嘶きの声が佐久夜の耳に聞こえてきた。

 一体何かなと疑問に思いながら佐久夜は保健室の窓を開けて、校門の方を見て……即座に保健室を飛び出し、校舎の入り口に向かって走り出した。

 

(何で!? 何で!? 何で青龍様とリンドが一緒に馬に乗っているの!?)

 

 浮かんだ様々な疑問と、他の女性と一緒に馬に乗っている愛しい相手を見た佐久夜の胸中は荒れ狂い、学生服のまま校舎の入口に向かっていく。

 その2人から急報が伝えられると知らずに。

 

 

「着きました」

 

 手綱を操って馬を校舎の入口の前で青龍は止めた。

 馬が止まると青龍に抱き着くような形で一緒に乗って来たリンドは、腰に回していた手を放して地面に降りる。

 リンドと離れてしまった事を青龍は残念そうにしながらも、しかし何時までも残念がってはいられないと言うように此方も降りる。降りる時に出来るだけ下腹部を労わるようにしていた。

 そんな二人の前に……。

 

「急なご来訪。どうされたのですか? ……リンド……それに青龍様」

 

「ええ、出来ればお答え下さると助かります」

 

 音もなく桃花と蔓が二人の前に出現した。

 最も二人はリンドと青龍が一緒にいる時点で、二人の間にある繋がりに気付いている。

 

(昨日の旦那様の喜びの感情の原因は、そう言う事でしたか)

 

(青龍様のお腹を庇うような動き……主様と『真の契りの儀式』を結び、子を為したのですね)

 

 リンドの一族と四聖獣の間で交わされた盟約も知る彼女達は、大体の事情を察する。

 そんな二人に青龍は微笑みながら声をかける。

 

「おはようございます、桃花、蔓……二人とも大丈夫なのですか?」

 

(貴女達とリンド様が為した子供達を放置していませんか?)

 

「はい。ちゃんと守りは万全です」

 

(放置などしません。ちゃんと母乳を与え、今は式神達に護られながら眠っています。他にも私と蔓さんが操る木や蔦が傍にあるのですから)

 

「それよりも、何故四聖獣様が、今月は来ないと聞いていたリンドと共に此方に来られたのですか?」

 

(主様と一緒に馬に乗るなど、なんて羨ましい事を!? しかも見せつけるように大きな音を立てて!?)

 

 青龍、桃花、蔓の三人の間で火花が散る。

 しかし、あくまで表面上は互いに微笑みあいながら。その様子を見ていたリンドが声を掛けようとしたところで……。

 

「リンドォォォォ!!」

 

 校舎の中から制服姿の佐久夜が飛び出してきた。

 

「さ、佐久夜お姉ちゃん!? その服どうし……わあっ!」

 

 質問しようとしたところで佐久夜に、リンドは胸倉を掴まれた。

 

「そんな事よりも!? どうして青龍様と一緒にいるの!?」

 

「せ、説明するから、お、落ち着いて!」

 

「一体どうして……えっ? リンド君?」

 

「何でリンド君が学園に? それに誰?」

 

 後から出てきた琴乃と美由紀も、来ない筈のリンドと見覚えのない青龍がいる事に驚く。

 

 

「ヒミコ軍が里の方に向かって進軍して来てる!?」

 

 食堂に集まった佐久夜、琴乃、美由紀、そして桃花と蔓は、馬に乗ってやって来た青龍とリンドが告げた急報に一様に驚いた顔をした。

 何とか荒ぶる佐久夜を落ち着かせたリンドと青龍は、今朝がた里で起きたことを説明し終えた。

 

「そんな……どうして冬が近いこの時期に」

 

 困惑したように佐久夜は視線を彷徨わせた。

 長い間、ヒミコ軍との戦を続けているアマテラス達だが、冬に入る頃から春になるまでの時期はヒミコ軍はこれまで大規模な軍勢を動かした事がなかったのだ。

 故に佐久夜は疑問を覚えるのだが、その辺りの事情が分からない琴乃と美由紀は困惑している様子に首を傾げる。

 

「あ、あの、佐久夜さん? どうしてそんなに疑問を感じているんですか?」

 

「うん。その……良い事じゃないけど、お兄ちゃん達ってヒミコって人達と戦争をしていたんでしょう?」

 

「してるんだけど……冬が近くなれば緑が無くなるよね? そうなると大きな悪霊とかが隠れられなくなって、簡単に見つけられるようになるの」

 

『あっ!』

 

 佐久夜の説明に琴乃と美由紀は、納得したように声を上げた。

 悪霊とは基本的に人間から見れば異形の姿をしている。低級でも明らかに逸脱した大きさを持つ鼠や蜘蛛がいる。それらが近づけば物音などでも分かる。

 

(そう言えば、私も最初にこっちに来た時に悪霊が立てる音で気付けた)

 

 自身がネノクニに来た直後を思い出した琴乃は、佐久夜の説明が良く理解できた。

 ヒミコ軍にいる悪霊は、当然中級以上が主だった悪霊。異形の悪霊が近づけば、早期に発見される。軍の規模となれば尚更に。

 

「それなのに、今朝里に在る『宝貝』から、物身に出てた兵からの急な連絡が届いて、ヒミコ軍が里のある方向に向かって進軍して来てるらしいって報告が届いたんだよ」

 

「どうして里の位置が?」

 

「正確に言えば、里があると思わしき方向に進軍していると言った様子です。私も遠見の術で確認しましたが、ヒミコ軍は横に並ぶような陣形で動いています。里の正確な場所までは、まだ発見出来ていないのでしょう」

 

「報告を聞いたツクヨミ様が言うには、『迷い人』との戦いを見られていたのかも知れないんだって」

 

「あっ!」

 

 青龍とリンドの説明に、佐久夜は納得したように声をあげた。

 『迷い人』との戦いの時に、カグツチ達は率いる軍勢を里を護る事を何よりも優先して陣形を敷いた。そのおかげで里は護られたが、同時に外部からは里の位置が発見しやすい陣形でもあった。

 

「す、すぐに里に戻ろう!?」

 

 『迷い人』関連ならば、自身にも関わりがある美由紀が椅子から慌てて立ち上がる。

 佐久夜は当然として、琴乃も里に戻る為に椅子から立ち上がろうとするが、そんな三人を青龍が諫める。

 

「待ちなさい。まだ、話は終わっていません。ツクヨミの推測には続きがあります。今回のヒミコ軍の行軍は、陽動の可能性があるのです」

 

「陽動ですか?」

 

「ええ……先ずヒミコ軍は確かに大規模な行軍をしていますが、その中に悪霊達を束ねる将『ミナカタ』と軍師である『オオナムジ』の姿が、物見の兵から見えないとの報告が届いているのです」

 

「それって……」

 

 佐久夜も青龍の説明に違和感を覚えた。

 軍師である『オオナムジ』はともかく、将である『ミナカタ』の方は父親であるカグツチも幾度も戦った強敵。

 しかも『ミナカタ』は血気盛んな将。大規模な軍事行動ならば、間違いなく出て来る筈なのに、その姿が見えない事はおかしい。加えて……。

 

「更におかしな点としては、敵の総大将であり悪霊の長であるヒミコが乗っていると思わしき馬車があっさりと発見できた点です」

 

「……アレ? これって?」

 

 聞いていた佐久夜は、思い出したくもない相手が自分から罠に嵌まりに行った状況に似ている事に気が付いた。

 

「佐久夜は気付いたようですね。今回の行軍は恐らく敵の陽動です。本当の狙いは少数精鋭で動いている者達。おそらくその別動隊を『ミナカタ』と『オオナムジ』は率いているのでしょう。その者達の狙いは、朱雀を除いた私達四聖獣の社に侵入した者達です。その者達は、私達四聖獣に匹敵する力を持っています」

 

「ま、まさか!? それって!?」

 

 佐久夜は理解した。何故この場に青龍だけではなく、リンドまで居るのかを。

 視線を向けられたリンドは、佐久夜に向かって重々しく頷く。

 

「うん……多分、四聖獣様達の社に侵入したのは……美由紀さんの他に『迷い人』の依り代にされた人達だと思う」

 

「っ!? どう言う事!? わ、私以外にもそんな人たちが居たの!?」

 

「……ごめんなさい、美由紀さん。実は美由紀さんに巣食っていた『迷い人』は、他にも三人の人達に自分の分身体を巣食わせていて、別次元への道を歩かせていたんです。それで歩いている間は、こっち側から道を封鎖する事も出来なくて……歩いてた三人をこっちの世界に呼び寄せたんです。だけど、無理やりこっち側から引き寄せる形になって、そのまま何処かに飛んで行ってしまって……」

 

「そ、そんな……」

 

 告げられた事実に美由紀は言葉を失った。

 自分以外にも、『迷い人』の犠牲者がいた。その事実は今の美由紀には重いと感じてカグツチ達も黙っていたのだが、そんな事を言っていられる状況ではなくなってしまった。

 

「ヒミコは己の力を回復する為、或いは自らの戦力に加える為に、陽動として行軍を行ない、カグツチ達を引き付けるつもりです」

 

 見せかけだとしても、大規模な軍として敵が動き、更にそれが里の方面に向かっているのならば、人間側の将であるカグツチと軍師であるツクヨミは同じように軍を率いらなければならない。

 アマテラスも、当然里の護りを何よりも優先しなければならない。

 ヒミコ軍はその為に弱っていながらも軍を陽動として動かしたのだ。直前に青龍が里に来て、『迷い人』に関わる情報を教えていなければ、敵の思うつぼになっていたかも知れない。

 戦が本格的に始まる事に琴乃は震えながら、気になった事を手を挙げて質問する。

 

「あ、あの……もし回復する為だった場合、その人達はどうなるんでしょうか?」

 

「……死にます」

 

『っ!?』

 

 琴乃の質問に対する青龍の返答に、琴乃と美由紀は驚愕の余り目を見開いた。

 佐久夜も、その可能性が高いと思っているのか顔を俯かせてしまう。

 

「琴乃さん、美由紀さん。青龍様が言っている事は本当なの。現にこれまでヒミコが力を奪った相手は、悪霊も人間も関係なく死んでしまっている」

 

「そ、そんな……」

 

「……た、助けなくちゃ! その人達がいる社って、何処にあるんですか!?」

 

「……別次元の美由紀。向かえば戦いが待っています。私達四聖獣に匹敵する力を持つ貴女でも、無事で済む保証はありません。『迷い人』なる悪霊に憑りつかれた三人もまた、私達と同等の力を持ち、更に『ミナカタ』と『オオナムジ』とも戦う可能性があるのです」

 

「『ミナカタ』と『オオナムジ』……」

 

 青龍が発した敵の名前に、佐久夜は重い声を発するしかなかった。

 しかし、敵の事を良く知らない美由紀と琴乃は、名前だけでは実力が分からずに首を傾げてしまう。

 そんな二人に青龍は厳しい声音で、敵について説明する。

 

「『ミナカタ』はヒミコ軍の悪霊の将です。その剣の実力は凄まじく、人間側ではカグツチで無ければ相手が出来ないほどです」

 

「お兄ちゃんでないと……」

 

 和解を果たしてからは、一緒に稽古や手合わせを行なっている美由紀はカグツチの実力を理解している。

 そのカグツチで無ければ相手にならないという相手に、戦慄を覚えるしかなかった。

 

「そしてその『ミナカタ』の父親である『オオナムジ』は、ヒミコ軍の卓越した軍師であり術師です。実力こそツクヨミやアマテラスには劣りますが、それはあくまでツクヨミとアマテラスだからこそ。人間側で彼に対抗できる相手は少ないでしょう」

 

「軍師であるオオナムジまで直接動くなんて」

 

「それだけ相手も本気と言う事です、佐久夜」

 

(そして……最後にもう1人。これだけの案件ならば、先ず間違いなく彼女も動くはず。『麒麟』っ!)

 

 佐久夜、琴乃、美由紀に見えないように膝の上で青龍は手を強く握った。

 嘗て苦楽を共にした仲間であり、今は敵となった『麒麟』。本来ならば『ミナカタ』や『オオナムジ』以上の強敵なのだが……青龍が『麒麟』に対して抱くのは脅威ではなく……。

 

(リンド様に抱かれてしまう!? しかも、失敗したら私の子が四番目になってしまう恐れがあります!)

 

 青龍が危惧しているのは、自身の子がリンドの三番目の子ではなく、四番目の子になってしまうかも知れない事だった。

 実際、妊娠時期が数日程度ならば、その可能性は充分にあるので青龍の危惧は間違っていない。

 

(何れリンド様に抱かれるのは覚悟していましたが、まさか、こんなにも早く出会ってしまう可能性が出て来るなんて、思っていませんでした)

 

 嫉妬の余り青龍の心は内心で荒れ狂う。

 残念ながら青龍では身重で無く、万全の状態だったとしても『麒麟』には勝てない。四聖獣最強の朱雀でも『麒麟』が相手では勝てるという保証はない。

 だが、リンドならば『麒麟』を無効化できる可能性がある。『麒麟』には盟約と言うかの一族への対抗手段がない故に、リンドと出会えば間違いなく影響を受ける。最低でも撤退に追い込め、上手くすれば、ヒミコ軍の中に間者を送り込める。

 

(理屈では分かります……ですが!?)

 

 危惧と嫉妬で思わず佐久夜達が目の前にいるのも関わらず、青龍は力を発現しかけてしまう。

 しかし、発現しかける直前、膝においてあった青龍の手にリンドが手を重ねた。

 

(っ!? ……リンド様)

 

 驚きながらチラリと青龍は横に顔を向ける。

 佐久夜達がいるので表情は変えていないが、手を絡め合う事で意思を示す。

 

(……いけませんね。戻ってしまった感情の制御が難しくなっています)

 

 ずっと失っていた感情に振り回されてしまう自身を落ち着かせるように、青龍は目を閉じた。

 そして改めて目を開けて、気持ちが落ち着いてから話を続ける。

 

「アマテラスとカグツチは、貴女達には暫らく此方で過ごして欲しいそうです。これまでと違い、里も安全とは言えませんが、この出雲学園は敵にとっても重要な場所です。被害を及ぼす可能性は低いでしょう」

 

 ヒミコの目的の一つには、スサノオの転生体をネノクニに呼び寄せる事が含まれている。

 そしてスサノオの転生体が一番最初に呼び寄せられる場所は、どうやっても出雲学園。その場所に影響を及ぼすのは、ヒミコが最も望まない事。

 

(それにしても……徐福さ……いえ、ヒミコがスサノオに想いを寄せていたと聞かされた時は、本当に驚かされました)

 

 スサノオは邪神ヨモツオオカミの息子だっただけに、青龍達が精霊となる前、人間だった頃も当然敵だった。

 それなのに、ヒミコはスサノオに異性として想いを寄せていた。信じ難い話だが、事実だとすれば……。

 

(ヒミコ……貴女は、あの時から既に私達を謀っていたのですか?)

 

 既にヒミコと敵対する覚悟も決め、戦う事に迷いのない青龍だが、やはり苦楽を共にしていた仲間に裏切られていたかも知れない事実は辛かった。

 

「……この場に残り、時が来るまで待つのも選択の一つです」

 

「せ、青龍様は如何されるんですか?」

 

「勿論、自身の社に戻るつもりです……彼と一緒に」

 

「えっ? 彼って? ……まさか?」

 

 恐る恐る琴乃は青龍の隣に座っているリンドに目を向け、佐久夜と美由紀もまさかと言う気持ちでリンドに顔を向けた。

 桃花と蔓はそうなるだろうと思っていたのか、表情は変えずに沈黙している。

 そしてリンドは青龍の言葉に応じるように頷いた。

 

「うん。僕も青龍様……ううん、『迷い人』の依り代に占拠された三つの社に行くつもりなんだ」

 

「リ、リンド!? どうして!?」

 

「……佐久夜お姉ちゃん。相手は僕の一族の敵である『迷い人』なんだ……それに僕が依り代にされた三人を引き寄せたから、青龍様達の社が大変な事になってしまったから」

 

「で、でも……アレは……」

 

 その場にいた佐久夜は、あの状況ではそうするしかなかった事を知っていた。

 別次元への穴が開き続ければ、『世界の揺らぎ』によって中級以上の悪霊が際限なく発生するという悪夢としか言えない状況。

 その状況を打開する為には、別次元に繋がる道を通っていた三人を何とかするしかなかった。

 

「それでも僕には責任があるから……行くよ」

 

「リンド……」

 

 子供とは思えない凛々しい眼差しに、佐久夜の頬が熱くなる。

 それは琴乃と、そして美由紀も同じだった。

 

(リンド君、かっこいい)

 

(うぅっ、何だか頬が熱くなっちゃう)

 

 やがて決意を固めたのか佐久夜は頷いて、青龍に顔を向ける。

 

「青龍様。私も行きます……足手纏いになるかも知れないけど……『迷い人』との戦いには私も関わっていたんです」

 

「あ、あの……私も行きます……出来ることはそんなにありませんけど、少しでも力になりたいんです」

 

「わ、私も……もしかしたら『迷い人』に依り代にされている人達は、知っている人達かも知れない。だから」

 

 佐久夜に続き、琴乃、美由紀も参戦の意思を示した。

 青龍は三人の目をジッと見つめる。

 

(やはりこうなってしまいましたか……出来る事ならば、リンド様と二人だけでそれぞれの社に向かいたかったのですが、仕方ありませんね)

 

 実際、今は猫の手も借りたいほどに状況は不味い。

 佐久夜もそれなり戦えるし、琴乃の神具である横笛もあれば助かる。そして美由紀の力は使いこなせさえすれば、自らに匹敵すると青龍自身も感じている。

 そして社にいる外敵である『迷い人』に近づけば、再びリンドの血が鼓音して精霊としての力が高まる。

 『樹界降誕』は味方が多ければ多いほどに強力な呪法。複雑な気持ちはあっても、そのメリットを考えた青龍は三人の提案を受け入れる。

 

「分かりました。では、これから向かう三つの社に関して説明しましょう。先ず私が祀られている場所ですが、実は他の三ヵ所とは違い、社と呼べるような建物はありません。此処から東にある天然の自然洞窟の奥に、私を祀り、呼び出す為の祭壇が設けられているのです」

 

「佐久夜さん、そうなんですか?」

 

「うん。青龍様が住まう場所は言われた通り洞窟で、中はかなり入り組んでいて、水も流れているから足も滑りやすくて危ないって聞いた事がある」

 

「水も? もしかして、その洞窟って、鍾乳洞なんじゃ」

 

 説明を聞いた美由紀は、かなり渋い顔をした。

 彼女の使う武術は、当然確りとした足場があるからこそ十全に力を発揮出来る。水に濡れた岩肌など滑りやすい場所では、不利になる。

 向かうのならば、今いるメンバーのなかで最大戦力である美由紀が力を発揮し切れない事を覚悟しなければならない。

 

「次に北にある玄武の社ですが、彼女の社は堅牢な建物で、内部は薄暗い迷路のような作りになっています。此方には当然私の仲間である四聖獣の玄武が向かっています……ですが、彼女から伝えられた情報によると、少々厄介な事になっているかも知れません」

 

「厄介な事? それは何ですか、青龍様?」

 

「……実は彼女の社には、嘗てこの世界をカグツチとアマテラスと共に救った仲間達が扱った武具が保管されていたんです」

 

「それって……もしかしてこっちの世界の私が使った物もあるんですか?」

 

「ええ、その通りです、別次元の美由紀……彼女達が使った武具はアシハラノクニが由来している武具でしたので、下手にアマテラスの里に置いておくわけにもいかず、最も堅牢な社である玄武の社に戦いが終わった後に保管してあったのですが……その武具が奪われてしまったようなのです」

 

「ええっ!?」

 

 佐久夜は思わず悲鳴を上げてしまった。

 何せカグツチ達が嘗て戦った相手は邪神ヨモツオオカミ。その相手に通じた武器となれば、当然強力な物に決まっているからだ。

 

(正確に言えば、武具の方が彼女(・・)を呼んだのかも知れません)

 

 社を護っていた玄武の影を、破壊した攻撃方法。

 それはネノクニでは絶対に在り得ない攻撃手段だった。その攻撃手段を使う方法があるとすれば、社に保管されていたある人物が使った武具を使う以外にない。

 

(三つの社の中で一番危険な場所は、間違いなく玄武の社でしょう)

 

 本当に厄介な事になったと青龍は溜め息を吐く。敵が彼女(・・)でなければ、使い方も分からない道具が存在するだけの場所で済んだというのもあるだけに。

 

「そして最後の西にある白虎の社ですが……この社が実は一番攻略されやすい社なのです」

 

「一番攻略されやすいですか? あの、白虎さんって、前にアマテラスさん達を訪ねに来た女の子ですよね?」

 

「ええ、そうです……琴乃でしたね。貴女も会ったことがある彼女の社は、実はこの出雲学園同様、アシハラノクニの建物なのです」

 

『えええっ!?』

 

 告げられた事実に琴乃と美由紀は揃って驚きの声を上げた。

 

「あっ! そう言えば二人には話してなかったね。うん。青龍様の言う通り、白虎様の社はお父さん達がこっちに来た時の影響とかで、この『アシハラノクニの学び舎』のようにアシハラノクニの建物になってしまったの」

 

「僕も噂には聞いています。このネノクニにある2つの目のアシハラノクニの建物とかで、白虎様の社には戦争が始まる前は、一目見ようと参拝に訪れる人達が多かったとか、里の人達から聞きました」

 

「本来ならば白虎の社も、他の社同様私達を祀る祭壇には簡単に近づけない構造だったのですが、建物自体が変化してしまったので、白虎を祀る祭壇に簡単に近づけてしまうのです……因みにですが、美由紀も良く知っている建物ですよ」

 

「えっ? 私が知ってる建物?」

 

「渚の家と言えば分かりますか」

 

「な、渚先輩の家!?」

 

 まさかの良く知っている相手の家が、出雲学園同様にネノクニにある事実に美由紀は驚愕の余り口を開けて固まってしまう。

 

「本来ならば防衛も兼ねて社を建て直したかったところでしたが、霊地の上に立っている建物なので、下手に建て直す事も出来ず、他の社よりも強力な影を配置する事にしていたのですが……その影も全て倒されてしまい、今恐らく一番危険な状況に置かれているのは白虎の社でしょう」

 

「四聖獣様達の影を、そんなに簡単に倒すなんて」

 

 ネノクニで生きる佐久夜からすれば、信じられないような話だが、『迷い人』に操られていた美由紀と戦った事があるだけに認めるしかなかった。

 

「玄武と白虎も、急ぎ社に向かっている筈です。カグツチ達からは、もし貴女達も行くのならば、私も付き添うように頼まれていますので同行します」

 

「でも、それじゃあ青龍様の社が危ないんじゃ?」

 

「この状況では、どの社も同じです」

 

(それに今の私が社に戻っても、全力では戦えないのですから)

 

 佐久夜の心配は最もだが、肝心の青龍は子宮に子を宿してしまったので、不意打ちならばともかく正面から『ミナカタ』や『オオナムジ』、そして『麒麟』とは戦えない。

 その事はアマテラス達も理解しているので、一先ず佐久夜達が向かうのならば同行するように頼まれていた。それに、社に向かうリンドが他の四聖獣と会わないように、先に青龍が会って事情を説明すると言う理由もある。他にもリンドと『真の契り儀式』を交わした事は暫らく内密と言う事になっている。

 青龍としては大々的に公表して欲しかったが、状況が状況なので渋々と納得した。

 

(今はカグツチとアマテラスの二人で納得しましょう)

 

「桃花、蔓。貴女達は引き続き、この出雲学園の守護をお願いします」

 

「分かりました、青龍様」

 

「どのような相手だとしても、この地を荒らさせるつもりはありません」

 

 青龍の言葉の裏の意味を悟った桃花と蔓は、恭しく頷いた。

 

((李花と樹理には手を出させません!!))

 

「では、向かうにしても準備が必要です。馬はいますが、それでもそれぞれの社まで此処から数日は掛かりますから」

 

「野宿の為の準備が必要なんですね」

 

「あっ! そう言えば校舎を探索している時に、キャンプ用の道具があったのを見たよ!」

 

「私も水筒があるのを見ました」

 

 琴乃と美由紀は校舎を探索している時に、旅に役に立ちそうな物を見つけていた。

 

「きゃんぷ?」

 

「すいとう?」

 

 何の事だろうと佐久夜とリンドは首を傾げる。

 

「え~と、野宿に役に立つ物です」

 

「ただ、テントとかは結構大きいから馬に乗せられるか分からないの?」

 

「あっ! 重い物でしたら、ちょっと役に立つ術がありますよ。記憶が戻った時に思い出した術で、重さを減らす事が出来る術なんです」

 

「そんな術があるんだ。じゃあ、大丈夫だね」

 

 リンドの説明に、これで重さの問題は解決出来たと美由紀と琴乃は安堵する。

 それなりにネノクニでの生活には慣れて来たが、野宿の経験をした事はない。キャンプ用の道具を持ち運びする事が出来れば、それだけで助かる。

 

「昼過ぎには此処を発ち、三つの社の内のどれかに向かいます。場所に関しては、貴女達で決めて構いません。では、それぞれ準備を始めましょう」

 

 青龍の号令にそれぞれ食堂から出て動き出すのだった。

 

 

「………な、何故だ……何故? お前がネノクニに災いを為す側に」

 

 四聖獣の一人である西天を司る白き虎の化身である白虎は、驚愕と戦慄の余り固まってしまっていた。

 自らの社に起きた異変解決の為に、急行していた白虎だったが、その途中で懐かしすぎる気配を感じて、急遽其方に向かった。

 その相手も社に向かっている途中だったらしく、程なく白虎は2000年の時を超えてその相手と再会を果たした。だが、最早白虎の中には再会を喜ぶ気持ちは消え去ってしまっていた。

 何故ならば再会した相手は一人ではなく、配下として連れているのか複数の悪霊が共に居たのだ。

 それだけで白虎は察してしまった。四聖獣の中では一番幼い容姿をしている白虎だが、精神が幼いと言う事はない。故に現実から目を背けることなく、目の前にいる敵(・)となった女性を睨みつける。

 睨まれている赤茶色の長い髪を幾つもの黒いリボンで纏め、白虎同様に獣の特徴を示す両耳の上辺りから長い角を下に向かって生やした古い中華服のような衣装を纏った絶世の美女-『麒麟』-は、残念そうに溜め息を吐く。

 

「出来る事ならば、今暫らくは私の事を知られたくありませんでしたが、やはり貴女達の社に行くならば出会うしかなかったようですね」

 

「『麒麟』!?」

 

「ですが、こうして出会ったのならば覚悟しなさい、白虎。ヒミコ様の目的の為に、貴女を此処で倒します」

 

 宣言と同時に麒麟は、白虎へと襲い掛かった。

 此処に四聖獣の白虎と、四聖獣の長であった麒麟との戦いが幕を開けたのだった。




ゲームでは一番最初に突破出来る青龍の洞窟ですが、現実で見ると武術を扱う者にとって明らかに不利な濡れた足場に薄暗い洞窟なので、本作では難易度高めにしました。生き埋めとかも怖いですし。

玄武の社は原作通りですが、綾香が扱った武器。つまり、ショットガンや発破が奪われているので対人戦の危険度ナンバーワンです。向かえば美由紀の最強装備も手に入りますが、その前の彼女を何とかしないといけません。

そして白虎の社。原作で二度目に訪れる時は、中庭に直行すればあっさり白虎に会えたので難易度は一番低い場所としました。しかし、白虎は朱雀の次に強いので……彼女が動いた訳です。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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