IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜 作:イズモ
旧版と同じでエロは少しになりましたが、幾つか展開が変わっています。
お気に入り、アンケート、誤字報告ありがとうございました!
現在のアンケートは10月1日の0時までとします。
そして後書きに主人公設定があります。
「う、うん……アレ? もう朝?」
朝日が照らす小川が流れている場所の近くにある芝生の上で、身体に被されていた自らが着ていた白衣を退かしながら佐久夜は目を覚ました。
寝ぼけ眼でゆっくりと周囲を見回し、自分の隣で同じように着ていた服を寝巻き代わりに被せていた少年を見つける。次の瞬間、佐久夜の顔はカアッと真っ赤に染まり、慌てて白衣の下に隠れていた自らの秘所に目を向けてみると、昨夜の情事の後が確りと残っていた。
(そ、そうだ! 昨日の夜、私遂にシちゃったんだ)
遂に少年と一線を越えた事を思い出した佐久夜は、恥ずかしさと嬉しさの余り白衣で顔を隠してしまう。
恐る恐る少年の方を見るが、件の少年は安らかな顔をして眠っていた。
(むぅっ……何だか私だけ恥ずかしがっているみたい)
先に起きたのだから仕方がないのだが、不満に思った佐久夜は朝立ちしている少年の剛棒に目がいく。
「………」
昨夜の情事の影響か、無意識に近い形で佐久夜の手が少年の剛棒に向かって伸びる。
「佐久夜様」
ビクっと佐久夜の身体が震えて、恐る恐る振り向いてみると『妖かしの森』の主である桃花が何時の間にか背後に立っていた。
「あ、あの……これは……その……」
「ご安心ください、佐久夜様。昨夜此処で起きた事は、アマテラス様とカグツチ様に申すつもりはありません」
(それってつまり……気づかれてたの!?)
今更ながら佐久夜は桃花が『妖かしの森』の主である意味を思い出した。
捻じれた空間を森の中に発生させて、入った者を迷わせる。そしてある程度、森の中を窺う能力も宿している。
つまり、桃花がその気になれば『妖かしの森』の中を離れていても、対象を指定して見る事が出来る。
自分達を心配して離れた場所から様子を見ていたと思った佐久夜は、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら肩をわなわなと震わせて桃花を見つめる。
「あ、あの……あれは……その……」
「先ずは身を清められた方が宜しいでしょう。流石にその姿のまま里には戻れません」
「は、はい……」
促されて佐久夜は川の方に向かって歩き出す。
「うぅ……何だか歩きづらいよ」
「人間の初めてはそういうものだそうですよ、佐久夜様」
何かが両足の間に嵌まったままのような感触に悩まされながらも、佐久夜は川の中に身を沈めて昨夜の名残りを洗っていく。
「それで佐久夜様。こうしてあの少年が起きる前に話しかけたのには理由があります」
「理由……ですか?」
「私も離れた後、貴女と彼の様子を窺っていました……そして彼が悪霊を滅ぼした時の記憶が無い事も聞きました」
「……」
桃花の深刻さに満ちた言葉に、佐久夜は川の水で身を清めながら昨晩の少年の様子を改めて思い出す。
確かに佐久夜の目の前で、木の枝を操ったばかりかツクヨミが持って行った宝珠を使い、悪霊を葬った筈なのに、当の本人は何も覚えている様子がなかった。
「これはあくまで私の考えですが、彼の記憶は何者かに封印されているのでしょう。その理由は恐らく……」
「……あの力を憎しみに駆られて使わせない為」
深刻な様子で桃花は同意するように頷いた。
見ているだけで惹き込まれてしまいそうな魔性の輝き。悪霊の話では『世界の理を紡いだ一族』に関わる重要な代物。
そして悪霊が低級ながらも悪霊を生み出し、『妖かしの森』に存在していた悪霊の一掃に加えて、佐久夜と桃花には何の悪影響も及ぼさず、寧ろ佐久夜に関しては細かな傷が全て癒えていた。どれをとっても放置しておくには危険すぎる。
「ですので、この事は暫らくは彼に秘密にしておこうと思います。あの宝珠の事も忘れているなら尚更に」
(……うん。桃花様の言う通り、あの子には悪いと思うけど、お母さんが持っていた方が良いよね)
身に余る力は容易く人を吞み込んでしまう。
少年を大切に想う佐久夜は、桃花の考えに同意して頷いた。
「では、佐久夜様が身を清められたらあの少年を起こしましょう……そう言えば、彼の名前は分かりましたか?」
「あっ! えーと、桃花様も知っているでしょうけど、やっぱり里に来てからもあの子。『一族の男子は生涯の伴侶を見つけ、歳が十五になるまで、名を名乗る事を禁じる』って言う自分の里の決まりを護っていて……まだ分かりません」
「そうですか。彼を見つけた時は、さほど気にしませんでしたが、今思えば特異な一族のようですから、そういう決まり事にも何か意味があるのかも知れませんね」
桃花は考え込むような顔をして黙り込んだ。
対して佐久夜も改めて思い出した少年の事情に顔を赤くする。
(そ、そうだ。私達……もうシちゃったんだから、名前を聞いても良いよね? ううん、あの子の名前を聞きたい!)
(フフッ、そう簡単に旦那様は本当の名前を口にはしませんよ、佐久夜様)
少年の目標は『一族の再興』。
世界の理を守護する役目を担う一族の再興は、必要不可欠。個人としても精霊としても、桃花はそれを後押しする。
(本当ならば私が旦那様の子を幾らでも孕んで産みたいところですが……精霊の排卵は百年に一度。次に私が排卵するのは百年後。正直申しまして、この話は旦那様の与太話であって欲しかった)
『真の契りの儀式』を結んだ事で、子を為せるようになった桃花だが、残念ながら人間のように一ヵ月に一度と言う周期で排卵できる訳ではなかった。
本来、精霊は子を為せない存在。その精霊が子を為せるようになるという事は、奇跡の領域に変わりはなく、そして精霊側に大きな負担を及ぼす。その負担の回復に掛かるのが百年。
残念ながら桃花が幾ら願っても、これだけは変える事が出来ない。宝珠の力を使えば、可能かもしれないが、それで桃花に悪影響を及ぼす事を少年は嫌っている。
(だからこそ、この子には沢山の愛情を注がなければなりません♥ 産まれるまで後八ヵ月。その時が待ち遠しい)
気を抜けば大切な命が宿っているお腹を擦ってしまいそうになるのを、桃花は堪える。
まだ誰にも妊娠している事を知られる訳にはいかない。知られれば少年の今後の計画に支障が出てしまうのだから。
「……っ!」
「桃花様?」
「……どうやらアマテラス様が巫女の方々と来られたようです。今、森の入口に来られています」
「お、お母さんが!?」
「はい……佐久夜様は急ぎ身支度を、それと『ホーリーブレス』」
桃花は自らの呪法を使用した。
それと共に佐久夜と離れたところで眠っている少年の身体が淡く輝く。
「これで少しは動きやすくなるでしょう」
「あ、ありがとうございます」
「お気になさらないで下さい。では、私はアマテラス様達のお出迎えして、先ほどの事をご説明して来ます。その間に、彼方の少年も起こして身支度を整えておいて下さい」
ゆっくりと桃花は空中に浮遊し、空へと舞い上がって行った。
残された佐久夜は急ぎ身体を水で洗って、巫女服を着直し、眠っている少年を起こして身支度を急ぐのだった。
パチンと言う音が部屋の中に木霊した。
アマテラスに頬を叩かれた佐久夜は申し訳なさそうに俯き、それを見ていた少年はオロオロと2人の顔を見回す。
ツクヨミもいるが、此方は母親であるアマテラスに任せると言うように見守っていた。
そして最後の1人である桃花は、ツクヨミ同様に事の成り行きを見守るように座ったまま様子を見ていた。
「佐久夜……今回、貴女は余りにも軽率な行動を多くしました」
「……はい、お母さん。ごめんなさい」
「無事であったから良かったものの、危うい状況に追い込まれていた事には変わりはありません」
何時もは優しい母の厳しい声音に、佐久夜は委縮する。
そんな佐久夜を庇うように、少年は口を挟んだ。
「あ、あの……アマテラス様。佐久夜お姉ちゃんは僕を助けようとしてくれて」
「それは分かっています。ですが、勇気と無謀は別なものなのです。貴方も今後は肝に銘じておくように」
「は、はい」
「そうだぞ、2人とも」
男性の声が響き、部屋の中にいた五人の視線が入口の方に向く。
其処には軍を率いて出立したカグツチがいた。
「今戻ったぞ、佐久夜、アマテラス、ツクヨミ……それと少年」
カグツチは先ず四人に挨拶をし、次の桃花に顔を向ける。
「お久しぶりです、桃花さん」
「お元気そうで何よりです、カグツチ様」
「『妖かしの森』の悪霊討伐が出来なくなってすみません」
「謝らなくても大丈夫です、カグツチ様達の御事情は理解しておりますから」
問題無いと言うように桃花は口元に手をやりながら微笑み返した。
「貴方……おかえりなさい。お出迎え出来なくてすみません」
「いや、事情は他の人から聞いたから大丈夫だ、アマテラス。それに少しばかり俺の方とも関わりがある話のようだ」
「関わりがあるってどういう事かしら、カグツチ? 貴方は遠征から戻って来たばかりでしょう? 佐久夜と坊やの件に関わりが出来るとは思えないけど?」
「今回の俺達が討伐した悪霊の軍勢の首魁は……烏天狗だったんだ」
『っ!?』
その場にいる全員の目がカグツチに向いた。神妙な顔をしてカグツチは頷き、桃花に問いかける。
「聞かされた話だと、桃花さんの方にも悪霊が襲い掛かったそうだが」
「ええ、その通りです。私が戦った悪霊は『雷獣』、『海龍』、『大蜘蛛』でした」
「間違いないな。俺達が逃してしまった悪霊達だ」
「それは、つまり……」
おおよその事情を察したアマテラスだが、子供達がいる場では話すべき内容ではないと判断して沈黙する。
視線でカグツチ、ツクヨミにも確認すると、二人は同意するように頷いた。
「……さて、この度に関しての叱りは此処までにして、今後について話します」
ゆっくりとアマテラスは少年に目を向けた。
カグツチもアマテラスの隣に座り、少年は緊張して固まる。
「そう固くなる必要はありません。今後、貴方には『術師』として修業をして貰いたいのです」
「……術師? あ、あの……僕なんかが術師に成れるんですか?」
「ええ……貴方は気付いていないようですが、その身の内に宿っていた霊力が目覚めてしまっています。寧ろ術師として修業をして貰わないとなりません」
「……わ、分かりました……僕も強くなりたいです……佐久夜お姉ちゃんを守れるぐらいに!」
「まあっ……フフッ」
「ハハッ、そうだな。男なんだから女の子を守れるようにならないとな」
「も、もうお父さんったら」
顔を真っ赤にして佐久夜は呟いた。だが、その顔には隠し切れない嬉しさも混じっていた。
すると、様子を見ていた桃花が口を開く。
「でしたら、私からもその少年に贈りものをしたいと思います」
「桃花さん?」
いきなりの発言にアマテラスは驚いたように桃花を見つめた。
「その少年は偶然とはいえ、『妖かしの森』に住み着いていた悪霊達を全て滅ぼしてくれました」
「っ!?」
桃花の説明に、カグツチは息を呑んだ。
事前にある程度の事情は聞かされていたが、まさか広大な『妖かしの森』に潜む悪霊達を全て滅ぼしたとまでは知らなかったのだ。
思わずアマテラスとツクヨミに顔を向けて見ると、二人は無言で頷いた。
それを成し遂げたという少年は、茫然とした顔で自分の手を見ていた。
本当にそんな事をしたのか自覚がないという様子だった。
(桃花さんの言う通り、本当に覚えていない。と言う事は、悪霊を負傷させたという精霊の力も使えなくなっている?)
『妖やかしの森』から少年を連れて来る最中もアマテラスは少年の動きを観察し続けていた。
昨夜の内にツクヨミから、少年がニニギ同様に精霊の血を引いている可能性があると聞かされていたからだ。
もしや精霊である桃花さえも欺き、まんまと何も知らないフリをして里に潜り込んだのではと警戒していたのだが……どう見ても少年が演技している様子は見受けられなかった。
(……修業を行ないながら見極める必要が出ました。彼の事は今しばらく見極めに徹しましょう)
新たな判断材料が出た以上、里長として警戒は怠らないとアマテラスは心に決めた。
(あの目。坊やを警戒してるわね、アマテラス……でも、残念ね。その警戒も坊やの手の内なのよ)
妹の内心を見抜いたツクヨミだが、何も言わずに見守る事にした。
「それを成すことが出来たのは、とある道具のおかげですが、力を使い果たしたのか、その道具はもうありません。ですが、『妖かしの森』の主としてそれだけのことをしてくれた相手には何かお礼をしなければなりません」
「……事情は分かりました。それで桃花さんは彼に何を与えようというのですか?」
「名を与えようと思います」
「それは……いや、悪くはないか」
少年が名を名乗れない事情を知っているカグツチは、桃花の案に頷いた。
アシハラノクニにいた頃なら、そんなの下らないと思っただろうが、ネノクニではそういう風習は当たり前に残っている。
もう長くネノクニで過ごしているカグツチも、その辺りを理解していた。
(まあ、名前を呼ばないと不便な時があるからな。桃花さんが与えた名なら、里の者達も納得してくれるだろう)
『妖かしの森』の主である桃花は、里の人間達から悪霊を迷わせて人間の里に被害を出さないようにしてくれている精霊だと崇められている。
その相手から名前を与えられたとなれば、里内での少年の評価も大きく変わる。
(こればかりは里長のアマテラスや俺が言っても簡単には変えられないからな)
現代社会でも差別は残っている。
それがより強くなっているのがネノクニだ。双子は災いを呼ぶから、片方を殺せと言う迷信だって当たり前に実行されるのが、ネノクニなのだから。
その分、精霊や神と言う存在に対する信仰は強い。里内で信仰されている桃花ならば尚更だ。
「えーと……桃花様が僕に名をくれるんですか?」
「えぇ、本来の名はいずれ貴方が15の歳を迎えた時に愛する相手にお伝えください」
(むぅっ! 何だか桃花様とあの子の距離が近い気がする!)
女の勘と言うべきか、佐久夜は2人の距離の近さに危機感を覚えた。
(その子は私の! 絶対に誰にも渡さないんだから!)
「では、名を与えます。これから貴方は『リンド』と名乗りなさい」
「リンド……はい! 桃花様!」
頭を撫でながら与えられた名前に、少年ことリンドは笑みを浮かべて頷いた。
「宜しく、リンド」
「宜しくね、リンド」
「これから頑張るんだぞ、リンド」
「はい! アマテラス様! ツクヨミ様、カグツチ様! 僕頑張ります!」
リンドは満面の笑みを浮かべて返事をした。
桃花も微笑みながらリンドの傍を離れる。唯一不満そうにしている佐久夜に微笑みながら。
微笑まれた佐久夜は、眼差しを強くし、2人の間に見えない火花が散る。
(今は桃花様の名を言うけど、誰よりも先に私が彼の本当の名前を知るんだから!)
(フフッ、どう足掻いても旦那様の最初の子は私が産む事に変わりはないのですよ、佐久夜様。そして旦那様の本当の名もいずれ)
人知れず女の戦いは始まっていた。
その事を悟らせないように桃花はあっさりと佐久夜から視線を外し、元居た場所に座るとアマテラスに視線を送る。
視線の意味を察したアマテラスは頷き、佐久夜とリンドに声を掛ける。
「佐久夜。本日は疲れたでしょうから、リンドをあの家に連れて行ってあげなさい」
「うん! じゃあ行こうか! リンド!」
「さ、佐久夜お姉ちゃん! そんなに引っ張らないで!」
佐久夜はリンドを連れてすぐさま部屋から出て行った。
残されたアマテラス達はその様子を微笑ましそうにみていたが、すぐに真剣な顔をして桃花に問いかける。
「それでは桃花さん。もう一度聞かせて頂けますか? 『妖やかしの森』で何があったのかを?」
「はい、アマテラス様。私も襲って来た悪霊達の相手をしていて、話は十分に聞く事は出来ませんでしたが、聞き逃せない話もありました」
桃花は自身が聞いた話だと説明し、事情を知らないカグツチも含めて説明した。
「……『イザナギ様とイザナミ様と共に世界の理を紡いだ一族』の末裔」
「そんな一族が本当に……」
アマテラスとカグツチは驚きの余り目を見開いた。
嘗て二人はネノクニを荒らし、世界の崩壊を目論んだ邪神ヨモツオオカミと戦った。その時にさえ、リンドの一族のような者は現れなかった。世界の危機が迫ろうとしているのに、何故と疑問にアマテラスは思ったが……。
(いえ、寧ろ世界を護る為に現れなかった? ヨモツオオカミの正体はイザナミ様だった。もしその一族が本当にいたとしても、イザナミ様とだけは戦ってはならない)
イザナミはネノクニを支える神だった存在。
その存在と世界の理に関わる者がぶつかれば、矛盾が発生する。発生した矛盾は、間違いなくネノクニの崩壊を呼ぶ。
「……姉さん? 何かヨモツオオカミからそのような類の話を聞かされた事はありますか?」
今ではカグツチに仕える精霊となったツクヨミだが、昔は邪神ヨモツオオカミに仕える悪霊の将として、絶大な力を誇った『スサノオ』と共に仕えていた。
そして邪神ヨモツオオカミの正体は、嘗てのネノクニの神だったイザナミの負の側面。
当然イザナミの記憶も有しており、ネノクニの創世に関わっている事柄についても知っている筈。
僅かな期待を込めてアマテラスはツクヨミを見つめるが、ツクヨミは首を横に振るう。
「そんな話を聞かされた覚えはないわね」
「そうですか……」
「だけど、今の話の一族がいるのなら納得出来る事もあるのよね」
「えっ?」
「どういう事だ、ツクヨミ?」
「私が悪霊の将だった頃は、このネノクニとアシハラノクニを崩壊させる為に色々とやったわ。人間達を殺す事から始まり、ネノクニを崩壊させる為に守護神である四聖獣達の封印まで行なった……だけど、何をやっても崩壊の兆しが見えなかったのよ」
「崩壊の兆しが見えなかった?」
「そう。当時の私は守護神の四聖獣を封じさえすれば、必ず何かが起きると思っていたのに、崩壊の兆候もなくて肩透かしをくらわされたわ。そもそも今思えばだけどヨモツオオカミ様はイザナミ様のお力を大半奪い取っていた。なのに肝心のネノクニの崩壊の方法が、二つの世界を永遠に別つ以外になかったなんておかしな話でしょう……だとすれば、考えられるのは……」
「ヨモツオオカミは……母さんにはそれ以外の方法しか取れなかった。他の方法を封じている誰が居たから」
「それが『イザナギ様とイザナミ様と共に世界の理を紡いだ一族』」
その場にいる全員が深く考え込んだ。
その中でカグツチは、ツクヨミが言ったこと以外に思い当たる事があった事に気が付いた。
(そうだ。俺達が世界の危機を知ったのはネノクニに来てからだった。アシハラノクニの方には何の異常も起きてなかった。もしかしたらそれも、その一族がネノクニの方で助けてくれていたからかも知れない……爺ちゃんが何かしてくれていたとは考え難いしなあ)
カグツチの脳裏にアシハラノクニにいる実の父であり、実は神だった老人の顔が浮かんだ。
「それにカグツチ。証拠に近い物は既にあるわよ」
「証拠に近い物?」
「これです、貴方」
「っ!?」
アマテラスが懐から取り出した虹色の輝く宝珠を目にした瞬間、カグツチの胸の内で何かが共鳴するかのように鼓動を打った。
カグツチは瞬時に理解したのだ。今アマテラスの手にある宝珠が、世界の理に深く関わる代物だと言う事を。
「その様子だと、アマテラスと同じようね?」
「同じって?」
「貴方。私もこの宝珠を姉さんに見せられた時、胸の内で何かが共鳴するように感じました。それにこの宝珠が力を発揮したと思われる時、離れていても私は感じたんです……ネノクニそのものが、『理』が動いたのを」
「具体的にどんな事が起きたんですか、桃花さん?」
間接的とはいえ、その現場を目撃したという桃花にカグツチは問いかけた。
「この宝珠を使用した悪霊は、リンドの霊力を使い、低級ながらも悪霊を生み出しました」
「悪霊を生み出した!? ……とんでもない話だ。低級だったから良かったが……もし上級の悪霊……いや、それ以上の悪霊も生み出せるかも知れないのか」
それがどれほどの恐ろしい事なのかは考えるまでもない。たった一体の悪霊が際限なく悪霊を生み出せるようになるだけで、ネノクニの危機だ。
今回は低級で済んだから良かったものの。上級、ましてやそれ以上の悪霊が生み出されていれば今頃は里も無事では済まなかった。
「あの烏天狗……最初こそ威勢よく俺達を迎え撃ったけど、劣勢になったらさっさと側近を連れて逃げだしたんだ。あの時はもう脅威にならないと思っていたが……」
「逃げ出したのは、本当の切り札があったからでしょうね」
幾らでも悪霊を生み出せるようになれば、今率いている軍勢は必要ない。新たに生み出したより強大な悪霊の軍勢でカグツチ達と戦えば良いのだから。
「他にもこの宝珠に触れたリンドが願った事で、『妖かしの森』の悪霊達は一掃され、佐久夜様が負われていた傷も癒えていました」
「桃花さんが治したのではなかったんですか? あの子の怪我は?」
「はい、私が来た時には既に癒えた後だったのです」
アマテラスとカグツチは顔を見合わせた。
様々な情報が集まって行くが、それを確たるものとする証拠がない。だが、証拠はなくとも宝珠とリンドはネノクニと言う世界にとって、重大な存在だと示している。
他にも問題はある。現在のネノクニの神であるアマテラスとカグツチでさえも、知らなかった事を敵側が知っていた可能性がある事。加えて……。
「『人間の救世主を呼ぶ』……ですか」
「……覚えの在る事だ」
嘗てアマテラスに救世主と呼ばれていただけに、カグツチもこの話題を見過ごせない。
『人間の救世主を呼ぶ』にしても何処から呼ぶのか。もしネノクニでないとすれば、場所は一つしかない。
「……再びネノクニとアシハラノクニが混じり合う日が来るのかも知れません」
厳しい声音でアマテラスは呟く。十数年前に自らが行なった事を今度は敵側が行なおうとしている。
だが、その事に対しても疑問はやはり残る。何故ならば悪霊は総じて人間を軽んじている。
それこそ嫌悪している者が多いぐらいだ。だというのに、烏天狗の話では今回の悪霊の長が直々に『人間の救世主を呼ぶ』などと宣言したという。
「ハッキリ言うけど、こんな話をあり得ないけどヨモツオオカミ様から聞かされたら、狂ったと私は思うわ」
「だよなあ」
「ええ」
「あり得ませんね」
ツクヨミの意見にカグツチ達は同意するように頷いた。
烏天狗や率いていた悪霊達が離反してもおかしくない程の大事だ。何せ見下している人間が自分達の上に立つなど、傲慢な悪霊程耐えられるものでは無い。
或いは強大な力を背景に悪霊の長が意見を押し通せば可能ではあるが……。
(あの坊やの話だと、今の悪霊の長を名乗っているヒミコの力は大幅に失われてる……そんな中、こんな意見を言うなんて……相当あの坊やの一族との戦は堪えて焦ったみたいね)
「そもそもの話だけど、アマテラス以外にアシハラノクニから人を呼べるのか?」
「卓越した術師ならば『反魂の術』を用いて呼ぶ事は出来ます。ですが、その為には呼び出す相手との強い縁が必要です」
「だけど、呼び出すつもりなら一体誰を? まさか、自分が殺した悪霊の転生体でも呼び出すつもり?」
「それも……無いよな」
自分が殺した相手の生まれ変わりをネノクニに呼び出す。
通常ならば考えらない事に、カグツチ達は考え過ぎだと思い、一先ず『悪霊に寄る救世主の召喚』に関しては保留にする事にした。
「まず優先すべきなのは、あの坊やの一族が本当にいるのかいないのかの確認よ」
「ですが、姉さん? 調べようにもリンドの記憶は封印されてしまっています。下手に封印を解いて、悲惨な記憶を思い出してしまったら」
「今回は私の『妖やかしの森』で済みましたが、次はネノクニ全ての悪霊を憎しみに駆られて消しかねません」
「流石にそれは……不味いな」
悪霊と戦っているアマテラス達だが、ネノクニから悪霊が全て消えるのは容認できない。
そんな事をすれば世界のバランスが崩れて、ネノクニだけではなくアシハラノクニにまでどんな悪影響が起きるのか想像もつかないからだ。
無論、ツクヨミも分かっている。
「だから、知って居そうな奴らに聞けばいいのよ」
「いや、知って居そうな奴って……俺達だって全然知らなかったんだぞ? 一体誰が知っているって言うんだ?」
「いるでしょう? イザナミ様がネノクニの神になった頃から、ずっとこの世界を守護していた連中が」
「姉さん……まさか、それは……」
アマテラスは姉の言葉に思い当たる者達がいる事を思い出した。
イザナミがネノクニの神になった頃から、この世界にいた者達。同時にネノクニと深い繋がり持つ者達を。
「……『四聖獣』の皆か」
厳かな雰囲気に満ち溢れた武家屋敷。
弥生時代頃の文化しかないネノクニでは珍しい建築様式でありながらも、その場に座る四名が放つ気配にはあっていた。
その四名の中で一番年配の男性-『ヒミコ軍軍師であるオオナムジ』-が、戦果について報告する。
「我らから離反せし一党。悉くカグツチの軍勢に討ち取られたと手の者から報告が届きました。カグツチの軍が其方に気を取られている隙に、我らは無事安全圏までの退避を完了いたしました、ヒミコ様」
「ご苦労様です、オオナムジ」
オオナムジの報告に、上座に座り天幕で姿を隠した女性の声が答えた。
その女性こそ、現悪霊の総大将にしてアマテラスとカグツチの命を狙い、少年ことリンドの里を滅ぼした者。名を『ヒミコ』。彼女は味方であっても、滅多にその姿を見せず、外にいる時も顔を隠して過ごしている。
そして四人の中で一番年若い青年-『オオナムジの息子であり、猛将ミナカタ』-が怒りと嘲りに満ちた言葉を発した。
「ふん! 裏切り者どもにはお似合いの末路だ! こともあろうにヒミコ様を裏切り、その命を狙おうとしたのだからな!」
その言葉の端々からは出来る事なら自分自身の手で裏切り者達を処罰したかったという意思が篭っていた。
ミナカタは若輩でありながらも、ヒミコ軍の悪霊全てを統括している将。それ故に、今回の離反した裏切者達に対する感情は並々ならぬ思いを持っていた。
そんなミナカタに、ヒミコが声を掛ける。
「ミナカタ。この度の離反した者達に対する責任は、貴方にはありません。全ては私の不徳の致すところ」
「ヒミコ様……ですが、この度の裏切りは俺が配下を従えきれなかった故に起きてしまったこと……かの一族との争いに勝利した喜びに浮かれてしまったばかりに」
「いいえ、違います……私が不用意にも、『アシハラノクニより人間の救世主を召喚する』と告げたのが、かの者達の怒りを引き起こしたのです」
元来、悪霊とは個が強い者達。
ミナカタやオオナムジのように心からヒミコに忠誠を誓っている者達も居れば、その力に恐れをなして従っている者達も当然いる。今回、ヒミコ軍から離反したのは後者の者達。
「かの一族との戦いで、私はその力を半分も失ってしまいました。その補填をする為に、救世主様を呼ぼうとした事が彼らには大いに不満だったのでしょう」
恐れていたヒミコが、その身に宿していた力を半分も失い、更にアシハラノクニから救世主を呼ぼうとしている。
そして……アシハラノクニからヒミコが呼ぼうとしているのは……『人間』。悪霊は総じて人間を見下している。
そんな見下している存在が上に立つなど我慢ならなかった者達こそが、カグツチの軍に討たれた悪霊達。
そしてそうなるように仕組んだのが、軍師であるオオナムジだ。
(ヒミコ様のお力が半分も失われた今、アマテラスとカグツチの相手をするのは不可能……かの一族。ヒミコ様が仰るには、太古の昔に『イザナギとイザナミと共に世界の理を紡いだ一族』。その称号に相応しき一族だった)
目を閉じたオオナムジの瞼の内側に、かの一族と繰り広げた激戦が浮かんだ。
勝てたのは、まさに奇跡。一族の人間と一緒にいた精霊達の強さは、まさに化け物級。策を練りに練ったオオナムジも、何度死を予感したのか分からないほどの戦いだった。
だが、最終的には勝利した。悪霊の総大将であるヒミコが力を失うという手痛すぎる代償を背負う事によって。
(本来ならばその穴埋めは、かの一族達の力を奪う事で補填する手筈だったが、奴らはそうなる前に自ら命を散らした。奴らが所持していた秘宝の在処も不明。流石は世界の理を陰ながら守護し続けた一族。敵ながら見事と言う他あるまい。おかげで我らは今しばらく隠れ潜むしかなくなった)
総大将であるヒミコの力の半減。他にもかの一族との戦いで失われた配下達。
どれをとってもヒミコ軍は弱体化の一歩を辿っていた。だからこそ、ヒミコは救世主を呼ぼうとしたのだが、それを気に食わない一部の軍が離反。
(……相応の覚悟はしていたが、大損害と言う他にない。唯一の救いがあるとすれば、かの一族が滅んだことによってヒミコ様の目的が進んだことぐらいか……せめて)
オオナムジの視線が、この場にいる最後の一人である耳の辺りから角を伸ばし、軍議が始まってから一言も話さず目を閉じている長身の女性-『ヒミコの側近である
(麟が参戦していれば……だが、ヒミコ様が頑なに麟を参戦させないと告げたのだ。私達にも話せない深き事情があるのだろう。どちらにしても、最早後戻りは不可能なのだ。ならば、現在の状況で打てる手を考えるまで。幸いにもアマテラスとカグツチは我らの状況を知らぬ)
すべきことを見出したオオナムジは、今だ荒れているミナカタに声を掛ける。
「ミナカタ。そう怒りに身を任せるよりも、我らは今残っている者達で軍を編成し直させねばならない」
「……分かっている、父上。我らの戦いは、ヒミコ様が願いを成就される日まで続く」
「2人とも変わらぬ忠誠に感謝します……では、今後に我々の行動に関してお話します」
『ハッ!』
ヒミコの言葉にミナカタ、オオナムジ、麟は平伏した。
「私はこれより予定通り救世主様の召喚の準備に取り掛かります。その間、ミナカタには軍の再編成と私の護衛をお願いします」
「お任せ下さい、ヒミコ様!」
大役を仰せつかったミナカタは力強く返事を返した。
「そしてオオナムジ」
「ハッ!」
「貴方には麟と共にかの一族の遺産の捜索をお願いします」
「麟と……共にですか?」
かの一族の討伐の時には参加させなかった麟を、自分と同行させるという命令に、流石のオオナムジも驚いた。
「私から離反した烏天狗の動きは、明らかに何かを求めての物のように思えました」
「確かに。私もその意見には同意いたします……恐らく奴はかの一族の戦いの中で遺産の在処に関わる何かを知ったのかも知れません」
「なんと……ヒミコ様を裏切ったばかりか、我らが捜していた遺産の隠し場所までも……」
怒りを堪えるようにミナカタは手を強く握り締めた。
「かの一族の宝は彼らの里にはなかった。そうなれば、このネノクニの何処かに隠されている筈です。その遺産の中に在る筈の『精霊の力を秘めた武具』。これを何としても手に入れて下さい、オオナムジ、麟」
「お任せ下さい、ヒミコ様」
(『精霊の力を秘めた武具』。それが手に入れば、失われたヒミコ様のお力を早急に回復させる事が出来る。何としても手に入れねば)
失われた自らの主の力を回復させる為にも、何としても手に入れるとオオナムジは決意する。
「……では、ヒミコ様。私は出発するまでは軍の編成の手伝いに参らせて頂きます。行くぞ、ミナカタ」
「応、父上」
ミナカタとオオナムジは立ち上がり、部屋を出て行った。
残されたヒミコと麟は2人の気配が離れるのを察し、今まで黙していた麟が目を開けた。
「……かの一族の討伐に参戦出来なかった事を深くお詫びします」
「よいのです、麟。かの一族と精霊である貴女が出会えば……貴女も惹かれてしまうのですから」
「っ……」
ヒミコの指摘に、麟は思わずお腹を擦ってしまった。
不変の存在である精霊にとって、かの一族は毒であり……同時に福音。遥か昔、麟は目にしたことがあった。
子を為した精霊とそれに寄りそうかの一族の人間を。
(凛々しき精霊でした……なのに、かの一族の者と出会い、子を為した事によって彼女は変わっていた……私もそうなっていたかも知れない)
想像してしまう。子を為し母となった自身を。
(いけない! 私はヒミコ様に仕える者。最早失われた奇跡に気を向けている暇などない)
かの一族の人間が全て滅んだ今、最早奇跡が精霊と言う存在に起きる事はない。
「……事実を知れば、多くの精霊達に私は恨まれるでしょうね」
「いえ、現代に存在する精霊達は、かの一族を知りません。知っているとすれば……四聖獣達ぐらいでしょう」
「彼の者達は、日の光の下から影に生きる事を選んでいた。しかし、私が為そうとしていること知れば、表に出てアマテラスとカグツチと共に戦ったでしょう。そうなる前に、何としても滅ぼさなければなりませんでした」
ヒミコには何としても為さなければならない目的がある。
その目的の為に既に……思いを寄せていた相手さえも滅ぼし、その力を奪ったのだ。
(今更私は後戻りできません。いえ、するつもりもありません……なのに)
「……っ!? ヒミコ様! もしや!?」
天幕の向こう側で、ヒミコが自らのお腹に手を添えるのを察した麟は目を見開いていた驚いた。
「……最後の最後で……あの戦っていた女性当主にしてやられました……『貴様も、本当の意味で命を産む重さを知れ』……それが彼女が最後に残した言葉でした」
ヒミコの体内。そしてその子宮には、本来ならば人の枠を外れたヒミコが宿す事のない命の種。つまり、卵子が存在していた。
その卵子は、特殊な術で保護されているのか、日数が経過しても衰える様子もなくヒミコの子宮内に宿っている。そして……ヒミコには卵子を消すことは出来なかった。同時に……。
(……スサノオ様……)
愛した男の子を宿したい。ヒミコは祝福と言う名の呪いをその身に受けてしまっていた。
麟はヒミコの様子から心の内を察して、静かに目を閉じる。
(……かの一族は全員滅んだ。ならば、私がすべきなのはかの一族の遺産を見つけ、ヒミコ様のお力を回復させた後に、アマテラスとカグツチを討ち取るだけ……それでヒミコ様の願いは成就されるのだから)
その時まで自分はヒミコの傍で仕え続けると、麟は改めて強い決意を固めた。
ヒミコと麟はまだ知らない。かの一族が自分達の血を絶対に絶やさぬ事を決めていた事を。
そして……ヒミコが殺した女当主の息子が生き残っている事を、彼女達が知ったのはずっと後になってからだった。
「見事なものだったわね、坊や、いえ、リンドの策は」
一先ずの会談を終えた後ツクヨミは、村はずれの林の中で桃花と向き合っていた。
「ええ、流石は旦那様です」
自らの番がツクヨミに認められている事実に、桃花は頬を染めながら同意した。
「だけど、今後は気を付けないといけないわよ。何せもう今回の悪霊の長の下にはリンドの手駒がいないんだから、相手がどう動いて来るのか推測するしかないわ」
「旦那様の意見は、ヒミコがかの一族を詳しく知っているならば、自分達の遺産を求めて動くはずだという話でした」
「その辺りでしょうね。直接はまだ見ていないけど、貴女は見たんでしょう? 『精霊の力を秘めた武具』やその他の力ある呪具なんかを?」
「ええ……最初に見た時は圧倒されました。まさか、アレほどの物のあんなにも隠されていたなど、長き時を過ごしたこの身でも目を疑うような財宝の数々でしたから」
「貴女は其処まで言うなんてね……なら、里に渡す予定の三割と私個人に渡す一割にも期待させて貰うわ」
「ええ、旦那様が構わないと言うのなら私に異存はありません。ですが、ツクヨミ様」
「分かってるわよ。貴女が出産する時はちゃんとお産婆を務めてあげるわ」
リンドがツクヨミと交渉する中で、一番重要な事にしたのは桃花が出産する時の手伝いだった。
桃花の出産は状況的に秘密裏にしなければならない。当然秘密裏にするのだから、手を貸せるものは限られている。
遺産の守護神として存在している先祖の精霊の影に協力して貰うのもありだが、出来れば近場で産んで貰って出来るだけ早くリンドは桃花との子の顔を見たかったのだ。
「さて、これで近い内に四聖獣の誰が間違いなく里に来るわ……そして私達が確かめないといけない事は……」
「四聖獣の方々がヒミコと繋がっていないかどうかですね」
本来ならば長年ネノクニを守護してきた四聖獣を疑うなど以ての外だが、ヒミコ軍に潜入していた宝珠から伝えられた情報に寄って疑わざる得なくなってしまった。何故ならば……。
「ヒミコの傍に嘗て四聖獣達と共に大陸を渡って来た者。精霊『麒麟』がいるなんて聞かされたらね」
「しかもどういう訳か、『契りの儀式』を結んでいる様子もなく、ヒミコの側近として行動してるそうですので」
「……残念だけど疑うしかないわね」
一番肝心のヒミコの正体までは、残念ながら宝珠も調べられなかった。
何せ側近の者以外は天幕の向こう側に隠れて話すようにヒミコ本人はしていて、しかも無理やり調べようとすれば精霊『麒麟』が排除するという気配を発してる。
(最もリンドが言うには、宝珠はある程度ヒミコの正体を確信している。だけど、その情報は四聖獣とリンドが会ってからしか告げないなんて意思を送られているそうだからね)
四聖獣の誰かとリンドが出会った時、とある事が起きる可能性がある。
宝珠『八尺瓊』はその事を引き起こしたいために、敢えて情報を出し渋っているというのがリンドの見立てだった。
「………」
「機嫌が悪くなるのは分かるけど、余り思いつめ過ぎたらお腹の子に悪いわよ」
「分かっています。では、ツクヨミ様。失礼します」
言い終えると桃花は姿を消して去って行った。その様子に肩をすくめたツクヨミも姿を消した。
先に姿を消した桃花は、向かった先に家を見つけると、気付かれないようにしながら窓から中を覗いてみる。すると、其処には……
「あッ♥ んぁッ♥ 良い♥ そこ、オマンコ良いよ♥ もっと突いて!」
「う、うん! こうだよね、佐久夜お姉ちゃん!」
「あひッ♥ あああッ♥ 初めての時よりも気持ち良いよ♥」
巫女服を全て脱ぎ捨て裸身を全て晒した佐久夜と、同じように全裸になったリンドが正常位で繋がりあっていた。
腰と腰がぶつかり合う淫靡な音が鳴り響き、2人の結合部は飛び散る佐久夜の愛液で濡れ切っていた。
激しい2人の交じり合いに覗き見ていた桃花は熱い吐息を溢し、思わず袴の上から秘所に手を伸ばしてしまう。
(ああっ♥ 旦那様。今は無理ですが、子供が安定期に入ったら私にもその逞しいチンポを下さいませ♥ 佐久夜様よりもずっと旦那様をお喜ばせして見せます♥)
「あはっ♥ お姉ちゃんの方がもう我慢出来ない。でも貴方の本当の名前は、お姉ちゃんが最初に教えて貰うからね♥」
(フフッ、頑張ってね佐久夜お姉ちゃん。尤もそうなる前に佐久夜お姉ちゃんの方が僕から離れられなくなると思うけどね)
今行なっている行為の切っ掛けは、家に戻って来た直後に佐久夜が巫女服を脱いでおねだりした事が始まり。そして迷うことなく肢体をリンドに預けた。
昨日までならば、間違いなくリンドを責めてから行為をしていたのにだ。
(その内、また母アマテラス様と一緒に潮吹き勝負をしようね。今度も負けないように僕が……調教してあげるよ、佐久夜)
「ああっ♥ イ、イッちゃう♥ ふあぁぁぁぁ――っ♥」
びゅるるるるるッ、びゅくッ!
膣内で爆発するように射精された精液の熱さに、佐久夜は顔を綻ばせた。
リンドも息を大きく吐いて、一息つくと、ゆっくりと佐久夜の顔に自分の顔を近づける。
その意味をすぐに察した佐久夜は笑みを浮かべて迎え入れ、2人の唇が合わさる。そのまま互いの舌を絡めあい、唾液を交換し合う。
「んっ、ちゅっ♥ ……良いよ、リンド♥ 昨日みたいに好きに動いて良いからね♥ だからぁ、私の事を昨日みたいに沢山イカせて♥ あん♥ ケ、ケツ穴も弄って良いから♥」
佐久夜の胸に小さな手が押し当てられ、揉みしだくように愛撫しながら腰が動き出す。それを佐久夜は微笑みながら受け入れて再び腰をぶつけ合う。
2人の淫乱に満ちた交じり合いは夕暮れになるまで続き、桃花はその様子を余すことなく覗き見し続けたのだった。
次回は『四聖獣・青龍妊娠番堕ち編』となります。
旧版とは全く違う内容です。旧版では理性を持てていた青龍ですが、リニューアル版ではより盟約の凶悪さを示すつもりです。つまり、エロエロです。
主人公紹介。
名前:リンド(仮名)、真名■■■■
年齢:10歳(一部大人顔負け)
属性:木属性
発現している精霊の血:植物の精霊
固有呪法:『ホーリーブレス』、『樹界降誕』(現在使用不可能)
真の契りの儀式を結んだ相手:桃花。
手を出している女性陣:桃花、アマテラス、佐久夜
詳細:『ネノクニとアシハラノクニの世界の理を紡ぎ整える役割を担った精霊と人間が交わった一族の末裔』。
一族の女当主とその伴侶である一族の男児との間に産まれた次期当主候補筆頭。幼いながらも術師としての才能に恵まれ、また優れた聡明さも発揮している麒麟児。物語が原作通りに進んでいれば、何れは一族の当主となって数百年ぶりに精霊を伴侶として寄り添っていた。
現在では信じられない話だが、浮気性が酷過ぎて呪詛まで血に仕込まなければならなかった一族の男子達と違い純愛主義者だった。だが、一族を無残にヒミコと悪霊軍に滅ぼされるの目の当たりにしたせいで、『一族再興』の為に鬼畜化した。
『女性は雌。伴侶は番』
その身の内には激しいヒミコと悪霊に対する憎しみが宿っているが、『一族再興』が何よりも優先の為に憎しみに呑まれる事は無い。その代わり『一族再興』の為ならば何だってするという壊れた一面を持っている。現在のネノクニの神であり人妻であるアマテラスを犯したのもそれが理由。
通常ならば一族の裏切り者として粛清対象にされているが、一族の秘宝である宝珠『八尺瓊』も認めているので問題は無い。
しかし、女性ならば誰でも襲う訳ではなく強い子が産まれると確信できた相手のみ。人間では現在は佐久夜だけ。逆に言えば、この鬼畜少年に見初められた人間の女性は最早逃れる事が出来ない。
天性の女殺しの才能に加え、規格外の剛棒と絶倫で身も心も堕とされてしまう。幼いゆえに体力が少ない(アシハラノクニの同年代と比べれば圧倒的の上)のが弱点だったが、桃花の加護で解消。最早彼を止める方法ない。
因みに現在の彼の逆鱗は番と子供である。
アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。
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琴乃が堕ちた段階で孕ませる
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四聖の社全て攻略後に孕ませる
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サヨ関連終了後に孕ませる
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イザナミも加え、四人そろって孕ませる