IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜 作:イズモ
アンケートの結果をご報告します。
1.奉仕(27票)
2.教育(5票)
3.演舞(11票)
4.馬術(13票)
結果『奉仕』に決まりました。
お気に入り、アンケート、ありがとうございました!
「今から二千年以上前。まだアシハラノクニとネノクニの世界が二つに別たれる前の神代の時代。イザナギとイザナミが治める国以外に少数ながらも絶大な力を秘めた一族が居ました。彼らは信じられない事に、本来は共に歩む事が出来ない筈の存在……そう。『精霊』を己の伴侶として子を為し栄えていたのです」
「なっ!? 『精霊』を伴侶にして子を!?」
この場において青龍同様に事情を知らない蔓は目を見開いて驚いた。
青龍が今語った事は、ネノクニの常識を覆すほどの大事。精霊である蔓にとっては見過ごせない話だった。
だが、蔓を除いた面々には驚いた様子がなく、青龍は目を細める。
「どうやら、かの一族が精霊と交わった一族だという事は知っているようですね」
「ああ、その辺りまでは知っている。出来ればその辺りも詳しく聞きたいが……」
カグツチはツクヨミに視線を向ける。
(もしかしたらツクヨミの力を取り戻せるかもしれない。今の青龍の話だと、子供を産んだ後もその精霊達は戦えていたみたいだからな……それに、ニニギが封印されたころからどうにも胸騒ぎみたいなものをツクヨミから感じる)
里を護る戦力としてではなく、純粋にカグツチはツクヨミの事が心配だった。
それは不完全ながらもカグツチとツクヨミの間で繋がっている『真の契りの儀式』の影響。漠然としながらもカグツチは、ツクヨミに危機が迫っていると感じていたのだ。
だが、余りにも漠然としている上に、不完全な繋がりの為に胸騒ぎ程度までしか感じられず、アマテラスにも相談していなかった。
それでも感じる不安から先に聞きたいと思いにカグツチは駆られるが、当の本人であるツクヨミは首を横に振るう。
「カグツチ。その辺は後で構わないよ」
「良いのか?」
「ええ。今優先すべき事はその一族の詳細を知る事でしょう。桃花と蔓も良いわね?」
「構いません」
「私も構いません」
桃花と蔓も詳細を聞きたそうだったが、今はそれよりも優先する事が分かっているのか頷いた。
精霊達が納得している事を青龍は確認すると、話を再開する。
「では、話を続けます。イザナギとイザナミが治めていた里と互角の力を持つ一族でしたが、互いの関係はとても良好でした。かの一族の者達も地の安定を望んでいたので、イザナギとイザナミと争う事はなかったそうです……ですが、あの悲劇が起きてしまいました」
「……母さんが殺された事か」
嘗て『胎児の夢』と言う形で自らの母に起きた悲劇をカグツチは知っている。
イザナギとイザナミが長を務めていた国の中で反乱が起きたのだ。しかも当時最強の戦巫女だったイザナミが身重の中での反乱。
最強の剣士だったイザナギでも、身重の妻を護りながらでは反乱を起こした者達を倒す事は出来ず、結果イザナギとイザナミは反乱を起こした者達に敗れた。
イザナギは身を挺して庇ってくれたイザナミのおかげで逃げ延びる事が出来たが、イザナミは宿っていた子と共に反乱した者達の手に掛かって亡くなってしまった。
「その悲劇が起きた時、かの一族の下にもイザナギとイザナミを追い落とした者達の手が伸びていました。ですが、イザナギとイザナミと互角以上に戦えるかの一族の力には及ばず返り討ちにあったそうです」
そもそもイザナギとイザナミに彼らが勝てた要因は、当時イザナミが身重で大半の力を失っていた事が大きい。
イザナギとイザナミに襲い掛かった者達も実力者ではあったが、精霊と交わったかの一族には及ばなかった。
「事態を知った彼らは、すぐさまイザナギとイザナミの救援に向かったそうです……ですが、彼らが目にしたには既に事切れたイザナミの亡骸のみ。生き残った筈のイザナギの捜索で、彼が死者の国であるネノクニに向かった事を知ってからは、すぐに一族総出で助けに向かったそうです」
「一族総出で」
「残ればイザナギとイザナミを裏切った者達の手が伸びると彼らは考えたのでしょう。そして漸く彼らが到着した時には、既に裏切った神官達に寄ってネノクニが閉じる寸前でした……そしてイザナミがネノクニに残る決意を見た彼らは、同じようにネノクニに飛び込んだのです」
「母さんの為に其処までの事を」
自らの母親が多くの者に裏切られた事をカグツチは知っていた。そんな中で最後までイザナギとイザナミを救おうとしていた者達が居た事に、ほんの僅か救われたような気持ちになった。
「『イザナギ様とイザナミ様と共に世界の理を紡いだ一族』と言うのは、そう言う事だったのですね」
「ええ……ですが、此処からが問題だったとの事です。最初の頃はイザナミや神官達と共にネノクニの悪霊の退治や安定を行なっていた彼らですが、ある時、強大な悪霊……そう邪神ヨモツオオカミに気が付きました」
『っ!?』
蔓を含めたこの場にいる全員がヨモツオオカミの正体を知っている。イザナミの半身である事をだ。
「ヨモツオオカミの正体をかの一族もすぐに察しました。だからこそ、彼らは戦えなくなってしまった……ヨモツオオカミと自分達が戦えばイザナミの心に傷が出来てしまうと思ったのです」
表裏一体の関係だったイザナミとヨモツオオカミ。
片方に力を貸せば、結局はもう片方の悲しみや憎しみが増してしまう。ましてやネノクニに来てからずっと共にかの一族はイザナミを支え続けたのだから。
だが、ヨモツオオカミの蛮行も見過ごせない。どうすれば良いのか悩み議論が進む中、イザナミは一つの決断をした。
「ネノクニを統べる神となったイザナミは、自らの権能。『理を紡ぐ力と理を整える力』。この二つの力を自身から切り離す事にしたのです」
「……なるほどね。それで納得出来たわ。イザナミ様を吸収したヨモツオオカミ様がどうして二つの世界を別つなんて時間のかかる事をしていたのか……遥か昔にネノクニに干渉する力をイザナミ様自らが捨てていたからだったのね」
「その通りです、ツクヨミ」
ヨモツオオカミがイザナミの半身である以上、当然神としての権能でネノクニに干渉する力は持っている。
それを悪用されない為に、イザナミはまだ不安定だったネノクニの理に干渉して『理を紡ぐ力と理を整える力』を自分から切り離し別の物に移した。万が一、自分の身に何かあった時に、ネノクニを存続させる為の予防策として。
「その二つの力を宿す物こそ。今、アマテラスが持っている宝珠『八尺瓊』なのです」
「この宝珠に『理を紡ぐ力と理を整える力』が」
改めてアマテラスは自身の手の中で虹色に輝いている宝珠『八尺瓊』に目を向ける。
「道理でアマテラスとカグツチに共鳴する訳ね。元々一つの力だったんだから」
アマテラスとカグツチはイザナミからそれぞれ『祈る力』と『支える力』を受け継いだ。
宝珠『八尺瓊』の力もイザナミのもの。共鳴を引き起こすのは当然の事だった。
「権能を切り離す事を決めたイザナミの考えを理解し、かの一族と仕えていた神官達は準備を始めました。そんな時です……イザナミ達はネノクニの内側以外での脅威に気付いたのです」
「内側以外での脅威? あの、それって何ですか?」
「内側以外での脅威とは……
「
「ええ、佐久夜。これまで、そう二千年の時の間、その脅威がネノクニを脅かす事はなかったので知る者は殆どいません。ですが、このネノクニには内側での争い以外に別の脅威。外からの脅威である
「具体的にどんな奴らなんだ? その……
「外敵に関しては時の流れに寄って様々ですが、一番最初に外敵だと判断された者達は……イザナミを殺した神官達です」
『っ!?』
「本来はイザナギとイザナミをネノクニに封印するつもりだった彼らですが、それはイザナミ本人によって阻まれました。そして輪廻転生の理がある以上、彼らも死を迎えればネノクニに転生してしまう。自分達が殺したイザナミが治めるネノクニにです」
一番最初に外敵と判断された者達。それはイザナギとイザナミの国を乗っ取り、二人をネノクニごと封印する事を目論んだ者達だった。
自分達の死後に必ずイザナミに復讐されると考えた彼らは、今度こそネノクニを統べるイザナミを葬ろうとした。
「理に寄ってアシハラノクニの神となったイザナギには無理でも、卓越した術師ならば自力でアシハラノクニからネノクニに渡る事が可能なのです。私も……その一人でしたから」
「青龍が?」
「ええ……私達四聖獣は元々は人間でした。精霊となったのはネノクニに渡ってから暫らくした後の事だったのです。話は戻しますが、神官達の目論見を知ったかの一族はネノクニの陰になり、人知れずこの世界を外敵から護る道を選んだのです」
「ですが、青龍。イザナミ様が治めていた頃に外敵の事を民に話せなかったのですか?」
「アマテラス。それは無理です……イザナミはともかく、当時彼女に仕えていた神官達は外側から来る者達に強い警戒心と排斥を持っていたのです……そうなってしまった原因は、そもそもイザナギとイザナミへの反乱を企てた者達が、大陸から渡って来た者達から強い影響を受けたのが原因の一つでしたから」
「なるほどね。確かにそんな事があれば、その神官達の判断もやむ終えないわね」
「そうです。そしてこの時の彼らの判断は正しかった。一番最初に外敵だった神官達を葬った後も、ネノクニには度々外敵が現れるようになったのです」
イザナミとかの一族の最初の予定では、ネノクニにまで攻めて来た波乱を起こした神官達を葬った後に再びネノクニの内側を護る予定だった。
だが、外敵はいなくなる事は無かった。
ある者は、死者の国であるネノクニを崩壊させる事で不老不死を得ようとする為に。
ある者は、ネノクニを支配して、自分こそが死者の国の神となる為に。
そうやって時の流れの中で様々な外敵がネノクニに襲い掛かっていた。
「……外敵に関しては分かった。だけど、今のアシハラノクニにもまだ外敵になる存在がいるのか? 俺があっちにいた頃は呪法なんて聞いた事がないし、悪霊だっていなかったんだ。俺が知らないだけかも知れないけど」
「……います。寧ろ今の外敵こそ、最も恐ろしい敵です……私が最後にかの一族の者と会ったのは、今から数十年前。イザナミとその神官達が。カグツチ、貴方とあの四人をアシハラノクニを送る時でした」
「俺達がアシハラノクニに送られる時に」
「イザナミの力は殆ど失われていた為に、かの一族がイザナミの代わりにネノクニの維持に就く事にしたのです。そして私達四聖獣は今彼らが戦っている外敵について聞かされました」
「一体、今何者がこのネノクニの崩壊を望んでいるのですか?」
「現代でネノクニの崩壊を望む者達……それは……『アシハラノクニで崇められている神々と精霊達です』」
『っ!?』
告げられた事実に全員が目を見開いて驚いた。
2人にとって、いや、このネノクニに住む人々にとって精霊とは神聖且つ畏敬の念を抱く存在。そして例外もいるが、大半の精霊はネノクニを護ろうとする。
その精霊が外敵としてネノクニの崩壊を狙っているだけではなく、アシハラノクニで崇められている神々まで外敵として攻めて来ている。いや、それよりも何よりも……。
「待ってくれ、青龍! 実在しているのか!? アシハラノクニで語られている神々は!?」
「実在しています。ですが、彼らはもう大半が覚める事のない眠りについています。アシハラノクニから神秘が失われている事に寄って、彼らもまた人の記憶からも消えて行く定めに追い込まれています。ですが、それを認められない神々もまた存在しているのです。眠りに就く事を拒否し、勢力を保っている神々。その者達こそ、今のネノクニの外敵。この時が止まった事に寄って永遠に消える事のないネノクニの神秘をアシハラノクニに解放させて、嘗ての権威と勢力を取り戻そうとしているのです」
『…………』
青龍が語った恐るべき脅威に、全員が言葉を失った。
ネノクニの内側では今だ新たな悪霊の長であるヒミコが存在しているというのに、此処に来て更に別の強大な勢力の出現。
しかも、どちらも間違いなくネノクニを支えているアマテラスとカグツチの命を狙って来るのは間違いない。
「お父さん……お母さん……」
「……大丈夫だ、佐久夜」
不安そうにしている愛娘を安心させるようにカグツチは頭を撫でた。
だが、そんなカグツチも内心では明らかになった事実に眩暈がしそうだった。
(色々分かったけど、これは俺達の予想以上に不味い状況だ)
ヒミコ率いる悪霊の軍勢だけでも手一杯だというのに、何時ネノクニの外側から外敵が来襲して来るかも分からない。しかも神が相手となれば、下手に情報を漏らす事も出来ない。
もしアマテラスとカグツチ以外の神を人が信仰するようにでもなってしまえば、その神は大手を振ってネノクニへの侵攻を開始しかねないからだ。
だからこそ、
それこそが内側以外での外側からの脅威である外敵。
「……状況は非常に不味いですが、まだ、微かに希望は残っています」
「どんな希望かしら?」
「宝珠『八尺瓊』が残っていると言う事は、何処かに間違いなくかの一族の生き残りが居るはずです。その宝珠はかの一族の血を引く者しか扱えないと理で決められています。かの一族が本当に一人残らず滅ぼされているのならば、宝珠は消滅する筈なのです」
宝珠が無事である以上、何処かにかの一族の生き残りはいる。
その者を保護しなければならないと青龍は考えた。いや、保護しなければならないのだ。何故ならば……。
「その生き残った者達まで死亡すれば、今度こそ終わりです」
「終わりって? 確かに危機的状況なのは変わりないけど、随分とハッキリ断言できるわね」
「生き残っている者達まで死んでしまったら、宝珠は消滅し、それに宿っていた力が……アマテラスとカグツチに宿ってしまうはずなのです」
「俺とアマテラスに?」
「そうです。ですが、力は増してもその力に馴染むまで2人は動けなくなってしまいます」
『っ!?』
元々はイザナミに宿っていた力。
宝珠『八尺瓊』が消滅すれば、その力の行き先がアマテラスとカグツチとなるは当然のことだ。だが、力を増す事が良い事とは限らない。
ネノクニにおいて絶大な力である『理を紡ぐ力と理を整える力』。強大なその力がアマテラスとカグツチに宿れば、力に馴染むまで二人が思うように戦えなくなってしまう。
「……ヒミコはそれを狙ってその一族を」
「分かりません。先ほども言いましたが、かの一族の存在はネノクニの秘中の秘。その証拠に現在ではかの一族の存在自体がネノクニから無かった事になっているのですから。私達が詳細を知っているのは、遥か昔からネノクニの守護神だからです……もし他に知っているとすれば……」
青龍の脳裏に一瞬二人の人物の顔が過ぎった。
(いえ、あの二人がまさか、かの一族を滅ぼすような事をする筈がありません)
脳裏に浮かんだ可能性を青龍は否定した。それは確かな信頼から来る確信だった。
「……とにかく、生き残りがいるのならばその相手を見つけて、一体何が起きたのか詳しく聞く以外にありません」
「それなんだけどね、青龍……その生き残りの子なら、今里にいるわよ」
「えっ?」
「但し、記憶が封印されているみたいで本人は普通の人間だと思っているのよ」
「記憶が封印されている?」
「ええ、今から説明するわね」
ツクヨミは今里で従者としての修業を受けているリンドの事を説明した。
二ヶ月以上前に、桃花が『妖やかしの森』に迷い込んだリンドを連れて来た事から始まり、先日の烏天狗の一件に関する事も全て。
聞き終えた青龍は何処か難しそうな顔をして考え込む。
(聞く限り、桃花は間違いなくその子に惹かれていますね)
青龍は知っていた。かの一族は確かに使命に対して忠実なのだが……同時にその身に流れる血の力を。
(あの一族は余りにも精霊と交わり過ぎてしまった。そのせいで精霊を無意識に魅了してしまう)
脈々と受け継がれた精霊の血とかの一族の血は、他の精霊に影響を及ぼし、精霊と言う存在に子を為せるという事実を認識させてしまう。
つまり、精霊にとってかの一族は普通の人間ではなく、普通と違う事を無意識に感じてしまう。簡単に言えば惹かれてしまうのだ。
嘗て桃花がリンドを初めて見た時に目が離せなくなったのも、そのせいだった。
(二次性徴を迎えていないのが幸いと言うべきでしょうが……どちらにしても男子と言う時点で不安を覚えてしまうのですよね、あの一族は)
女子ならば青龍が考え込む事は無かった。だが、男子は非常に不味い面を持っている事を青龍は知っている。
何せ青龍は、遥か昔の人間だった頃にリンドの一族の男子に口説かれた事があるのだ。他の四聖獣である玄武と朱雀もだ。白虎は容姿が幼かったので免れたが、その時の事を思い出すとどうにも不安を感じた。
無論、アレから二千年以上経っているのだから男子も変わっている可能性はあるが……。
(時々会っていたあの一族の接触者は……最後に会った時も含めて全員女性でした)
数十年前のカグツチ達をアシハラノクニに送る時に、かの一族側から訪れたのも女性だった事を青龍は思い出した。
その事に気付いた青龍は、アマテラスに顔を向ける。
「アマテラス。申し訳ありませんが、その少年を呼び出して貰えないでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
(リンドの一族の者と会った事がある青龍ならば問題は無いでしょう)
アマテラス個人としては悲惨な記憶など思い出さない方が良いと思っている。
加えて言えば、下手に記憶を呼び覚まして『妖やかしの森』で起きた事を、今度はネノクニ全土で起こされるのは不味い。だからこそ、リンドの記憶の封印には手を付けなかったのだが……。
(先ほどの話が事実だとすれば、早急に記憶の封印を解く事も考慮しないといけません)
里長として、そして今のネノクニの神として見過ごす事は出来ない情報が手に入ってしまった。
最悪の場合、この場でリンドの記憶の封印を解く事を決意しながら、アマテラスはそっと襖を開けて警護していた巫女に命令する。
「リンドをこの場に連れてくるようお願いします」
「はっ! すぐに巫女頭様の下に向かいます」
指示を受けた巫女は一礼して、その場から去って行った。
その様子を見ていた佐久夜は不安に駆られて、隣に座っているカグツチに問いかける。
「お父さん。もしかしてリンドの記憶を?」
「……そうなるかも知れない。だから、佐久夜。リンドが自分の憎しみに負けないように来たら手を握って上げていてくれ」
「うん! 任せて!」
(そうはなりませんよ、カグツチ様、佐久夜様)
二人の会話を聞いていた桃花は内心を悟られないようにしながら、青龍に僅かに視線を向ける。
(どうやら青龍様がヒミコと繋がっている事はないようです)
チラリとツクヨミに視線を送ると、微かにコクリと首を縦に振った。
会談が始まってから桃花は青龍の様子を観察していた。その結果、青龍には不審な所は見受けられなかった。ヒミコの名前を出した時も、かの一族が滅んだ事を話しても青龍の反応に演技は見受けられなかった。
(『麒麟』という精霊に関して尋ねたい気持ちはありますが……私が知っている事で不審を抱かれるのは旦那様に迷惑が掛かってしまいます)
それは桃花にとって望ましくない事なので沈黙を選択した。
(さて、何が起きるのかしらね?)
もうすぐリンドがこの場にやって来る。
それには何の問題もない。寧ろこの状況を作る事こそが、まだこの場には来ていないリンドと宝珠『八尺瓊』の目的なのだから。
(此処まで来て何も起こらなかったなんて承知しないわよ)
ツクヨミとしてはリンドの能力を疑う訳ではないが、此処で失敗でもされたら自身がカグツチと『真の契りの儀式』を結ぶ機会が遠退いてしまう。
それだけを危惧しながらジッと座って待っていると、襖の方から声が聞こえて来る。
「アマテラス様。彼を連れて参りました」
(来ましたか)
遂にかの一族の最後の生き残りと会う時が来たと思い、青龍はアマテラスに顔を向けて頷く。
アマテラスも頷き返し、襖の向こう側にいる配下の者に指示を出す。
「入って貰って構いませんよ」
「では、失礼します」
襖の向こう側から返事が返って来ると共に、襖がゆっくりと開く。
青龍はその先にいる相手を見極めるつもりで顔を向け……襖の向こう側にいた少年と視線が合った。
ドクンッ!!
「……えっ……あっ……ああっ……」
「ん? 青龍?」
急に身体を抱き締めるように手をまわした青龍に、カグツチは気が付く。だが、カグツチが青龍に声を掛ける前にドタンっと誰かが倒れる音が響く。
その音に慌ててカグツチが目を向けて見ると、部屋の出入り口の前でリンドが倒れていた。更に倒れたままリンドは苦痛に満ちた叫びを上げた。
「痛い!? 痛い!? 痛いよ!?」
「リ、リンド!? どうしたの!?」
「ちょっと! 大丈夫なの!?」
「桃花さん!」
「はい、すぐに!」
苦痛を叫ぶリンドの周りに、佐久夜とアマテラスの指示を受けた桃花が近寄る。
その間にも青龍は自らの肢体を強く抱き締め、自身の胸の奥から沸き上がって来る昂ぶりを抑えようとしていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……そんな……まさか……これはっ……あくっ」
「青龍!?」
「アマテラス様!? 青龍様のご様子も変です!?」
「一体これは!?」
突然リンドと青龍に起きた異変に、アマテラスは疑問の声を上げた。
とにかく身体を抱き締めて苦しそうにしている青龍を何とかしようと、カグツチは手を伸ばす。
だが、カグツチの手が肩に触れる直前、風が吹き青龍は距離を置くように背後に飛び去った。
そのまま身体を抱きしめ、僅かに前かがみになるように立って荒い呼吸を繰り返す。
「はぁっ……はぁっ、はぁっ……んんっ!」
「せ、青龍?」
明らかに様子がおかしい青龍に、カグツチは首を傾げて一歩前に足を踏み出す。その動きに拒絶するように青龍の周囲を風が吹いて遮る。
「これは!?」
「青龍!? どうしたのですか!?」
「青龍様! お心を落ち着かせて下さい!」
「はぁっ、はぁぁっ……カ、カグツチ……今の私に近づいては……いけません……貴方でも、攻撃して、んくっ……しまう……んっ、ぁ……んんっ」
「せ、青龍?」
何処か鼻にかかった甘い吐息を漏らして、顔を真っ赤にさせている青龍の様子にカグツチは戸惑ってしまう。
アマテラスと蔓も、苦しそうにしながらも甘く艶やかな色香に満ちた吐息を溢しながら、何処か艶めかしく見え始めた青龍に戸惑って顔を見合わせる。
しかし、当の本人である青龍は他者の目を気にしているどころではなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……な、なぜ……んんっ♥ 盟約が……破られて」
「盟約?」
「んくぅっ♥ っ!?」
胸の奥。それも心臓ではなく魂の奥底から襲って来る衝動に、必死に青龍は抗っていたが、フッと目にしてしまった。
先ほど床に倒れた少年を心配するように寄り添っている桃花と佐久夜の姿を。
その光景を目にした瞬間、必死に抑えようとしてた衝動が今まで以上に昂ぶり、荒れ狂う感情のままに叫ぶ。
「
『なっ!?』
叫ぶと共に青龍は荒れ狂うを風を桃花と佐久夜に放った。
突然の、しかも予想もしていなかった相手からの攻撃に桃花と佐久夜は目を見開いて驚く。だが、二人に風が当たる直前に床に倒れて苦しんでいたリンドが動き、二人の胸を左右の手でそれぞれ突き飛ばす
「佐久夜お姉ちゃん!? 桃花様!? ガハッ!?」
ギリギリのところで二人を襲い掛かって来る風の範囲から逃したリンドだったが、そのまま風の直撃を受けて部屋の外の廊下まで弾き飛ばされた。
「リンド!?」
「っ!?」
吹き飛んだリンドの姿に佐久夜は悲鳴を上げ、桃花は目を見開くがその手は誰にも気づかれないように下腹部を護っていた。
「ああっ……」
そして風を放った青龍本人は、自らの攻撃で吹き飛んだ少年の姿を目にして胸が張り裂けそうになるほどの悲しみと苦痛を感じ、両目から涙を溢してしまう。
「どういうつもりなのです!? 青龍!?」
娘を攻撃されたアマテラスも、最早我慢できないと言うように声を荒げた。
しかし、アマテラスの怒りの声を聞いても青龍は顔を向けない。それどころか何かを決意した顔をして叫ぶ。
「『八尺瓊』!? 四聖獣『青龍』は此処に盟約を果たす事を誓います! だから、どうか彼の治療と私の社への転移を!?」
「何を、っ!?」
突然の青龍の発言にアマテラスは更に声を荒げようとした。だが、その声を遮るようにアマテラスが懐に戻したはずの宝珠『八尺瓊』が宙に突然出現した。
まるで青龍の意を心得たと言うような行動。そして『八尺瓊』は虹色の光を発し、次の瞬間、リンドと青龍の姿は忽然と消え去った。
後残されたのは役目を終えたと言わんばかりに、床に転がり落ちる『八尺瓊』と呆然として固まるアマテラス達だけだった。
四聖獣の一人。『青龍』が住まう『青龍の社』はネノクニの東側に存在していた。
だが、其処は社と言われながらも建物は存在せず、深い鍾乳洞の一番奥に祭壇が置かれている。其処に辿り着くこと自体が、試練でもあった。
鍾乳洞の中は入り組んでいるばかりか、激しい水が流れている。その上、青龍が試練の為に用意した悪霊を模した影の防衛も鍾乳洞の中を行き来して来訪者を襲う恐ろしい場所。
アマテラスが送った巫女が最奥まで辿り着けたのは、道案内をして来れる通行手形のような物を持っていたおかげ。それを持たない物には容赦なく悪霊を模した影が襲い掛かる。
その上、本当の意味で試練を突破した事になる為には、神獣の姿になった青龍本人と戦い打ち破られなければならない。
そんな恐ろしい場所の最奥に安置されている『青龍の祭壇』の前に、突然虹色の光が溢れ、光が消え去った後には目を閉じて倒れているリンドと顔を真っ赤に紅潮させた青龍が現れた。
「んんっ♥ はぁっ♥ はぁっ♥ ……何と言う事を私は……」
自らがしてしまった所業に青龍は悔いるように呻くような声を漏らした。
だが、青龍の苦悩など関係ないと言うように魂の奥底から沸き上がって来る衝動は全身を這いずり回り、カグツチ達の前では必死に抑えていた官能に満ちた喘ぎ声が鍾乳洞内に木霊する。
「んっ♥ んああああああああっ♥ あっ、あああああああっ♥」
目の前で目を閉じているリンドだけしかいないのを知っているだけに、もう声を抑える必要はないと言うように青龍はチャイナドレスのスカートの上から両手で秘所を押さえながら身体を仰け反らせた。
やがて前のめりに青龍は鍾乳洞故に濡れた岩肌に倒れて、そのまま起きる様子を見せないリンドの顔を熱く濡れた瞳で見つめる。
「ああ、この方が……私の番っ♥」
今日初めて、それも出会ってから時間にすれば十分と経っていないにも掛からず青龍はまるで長年探し求めていた愛しい相手に出会えた喜びで胸が一杯になっていた。
目を閉じて眠るリンドを見ているだけで、すぐにでも抱き締めたい。その唇に自身の唇を捧げたいという衝動に駆られる。
今、青龍はまだリンドと『真の契りの儀式』を結んでいないにも関わらず、『真の契りの儀式』を結んだ後の状態に強制的になっていた。無論、このような事が起きるのには理由がある。
それは青龍の魂に刻まれたかの一族との盟約。
その盟約は発動してしまえば、最早止める術はない。『青龍が次代の四聖獣を孕む』まで、官能の昂ぶりは続く。
「あくっ♥ はっ♥ はぁぁっ……♥」
熱に浮かされたような様子で身体を起き上がらせた青龍は立ち上がると、邪魔だと言うように履いていた白い靴を脱いで綺麗な素足を晒す。
そのままリンドの横に移動して壊れ物を扱うような手つきで頬を撫でる。
「こんなにも幼いのに……でも、彼のあの様子ならデキるようになっている筈」
見た目からはどう見ても二次性徴を迎えていないとしか思えないリンド。
だが、青龍には確かな確信があった。リンドが自分とシテ、子を為せる身体になっている事を。
「私が魂に盟約を刻まれているように……貴方には血に盟約が刻まれているのですから♥」
青龍がリンドを目にして盟約を発動したように、リンドの方でも盟約の力が働いている。
それを確信する為に、青龍は目を閉じたままのリンドの履物に手を伸ばす。
「痛い思いをさせて申し訳ありません。変わりに……今からとても気持ち良くさせてあげます♥」
そして青龍は履物に下に隠されているものを目にしようと両手を掛けた……ところで、小さな両手が青龍の両手をガシッと掴んだ。
「えっ?」
「せっかくさ、里から離れた社にいるんだから、たっぷり時間をかけて楽しもうよ、青龍様」
「っ!?」
意識を失っていた筈のリンドの声を聞いた青龍は、動揺から固まってしまう。
その隙を逃さないと言うようにリンドは掴んでいる青龍の両手を天井に掲げるように引き上げた。
同時に鍾乳洞の天井から木の枝が勢いよく伸びて来て、青龍の両手に頑丈に巻き付き、そのまま一気に吊り上げた。
「なっ!? あああああっ!?」
リンドと引き離された青龍は無意識に悲痛な叫びを上げてしまう。
そのまま宙に吊るされて青龍の肢体が揺れる。無論、精霊は宙に浮く事が出来るので人間のようには負担を感じる事は無い。
何よりも青龍が風を操れば、自らの両手を縛っている木の枝を破壊する事は容易い。だが、自らの番である筈の少年がした行為を拒否したくないのか、破壊するようなことはせず熱を帯びた艶やかな視線で立ち上がるリンドを青龍は見つめる。
「……はあっ、はあっ♥ んぁ、んくぅっ♥」
これから始まる筈の一時を想像して、青龍は無意識に熱く艶めかしい甘い吐息を吐く。
記憶を封印されて精霊の力も使えず、普通の人間の子供だと自分を思っている筈のリンドが精霊の力を使った事も、今の青龍には関係ない。
一刻も早く『真の契りの儀式』をリンドと結び、子を為したいという衝動が魂の奥底から沸き上がって来る。だが……。
「よっと」
「……っ!?」
肝心の番であるリンドは青龍に襲い掛かる事無く、祭壇の前に腰かけた。
そのまま青龍に顔を向けて、明らかに子供が浮かべる筈がない雄の嗜虐に満ちた笑みを浮かべる。
「せっかく時間があるんだから、たっぷり楽しもうよ。ご先祖様のお膳立てなんかじゃなくて、身も心も全部僕の番の雌に堕としてあげるよ、
「ああっ……」
青龍は全てを悟った。
目の前にいる少年はツクヨミが話していたような力を持たない無力な少年などではなく、虎視眈々と何かを目論んでいた雄だったと言う事を。
そしてリンドが宣言した未来が訪れる事を示すように、青龍の下腹部の奥で目覚めてしまった子宮は降り始め、秘裂からは愛液が溢れ続けていた。
次回は遂に青龍とがっつりエロです。しかもリンドの逆鱗に触れてしまったので、さあ大変です。
身も心も堕とされてしまう青龍の姿をお待ちください。
独自設定
『四聖獣とかの一族の盟約』に関して。
詳細:古の時代に四聖獣、青龍、玄武、白虎、朱雀の魂の根源に科せられた盟約。
内容は、『四聖に深く関わる者がネノクニを崩壊を企んだ場合、ネノクニの守護神の資格剥奪。かの一族と交わり、次代の四聖を産む』。
この盟約を施す事で、彼女達四人はネノクニの守護神として精霊に転生する事が出来た。この盟約はいかなる方法でも破る事が出来ず、唯一無効化する方法があるとすれば盟約の片割れであるかの一族の者達を一人残らず滅ぼして血を絶やす事のみ。
何故このような厳しい盟約を施さなければならなかったのかと言えば、元々四聖獣四人と精霊『麒麟』、そして当時仕えていた『徐福』はまだアシハラノクニとネノクニと言う世界が二つに別たれる前に大陸からやって来た者達であり、より良き人の生活の為に知識を伝来した。だが、その結果イザナギとイザヨイの悲劇を引き起こす遠因となってしまった。
これによってアシハラノクニとネノクニの二つの世界が誕生。四聖獣四人と『麒麟』、そして『徐福』はせめてもの罪滅ぼしとしてネノクニへと渡った。六人の内、青龍は東側を主に、玄武は北を、白虎は西を、朱雀は南を担当してそれぞれネノクニに住む人々を助けていた。
ある時、別行動をしていた主人である『徐福』と『麒麟』から急な連絡が届き、邪神ヨモツオオカミを封じる為に決戦を挑み、結果は敗北。
何とか逃げ延びた四聖獣四人と『麒麟』はその後、『麒麟』は自力で精霊へと至り、所持していた神器『八咫鏡』と共に姿をくらませた。以降、『麒麟』とは四聖獣四人も会っていない。
残された青龍、玄武、白虎、朱雀の四人は自分達も精霊となってネノクニを守護する為に、ネノクニを統べる神となっていたイザナミの下に向かった。ネノクニを旅していた時に、イザナミとその神官達がネノクニと深い繋がりを持つ守護神達を生み出そうとしている知っていたので、四人はそれになろうとした。
だが、イザナミの悲劇を引き起こした遠因だった四人の来訪に、神官達は激怒し、危うく殺されそうになった直前に、かの一族が仲裁に入り、『『四聖に深く関わる者がネノクニを崩壊を企んだ場合、ネノクニの守護神の資格剥奪。かの一族と交わり、次代の四聖を産む』と言う盟約を結んだ事でネノクニの守護神となった。
一見すれば、四聖獣側にデメリットがあるように思えるが、実はこの盟約のおかげで四聖獣はかの一族の精霊を惹かれさせる特性が無効化出来て、十全に力を振るう事が出来る。
また何らかの事情で『真の契りの儀式』が再び露見したり、かの一族の者の中から不届き者が出た時に止められる特権を得ていた。つまり、本来は現在のリンドの行動を唯一止められる役目を四聖獣は持っていたのだが、とある事情で盟約が破られてしまい、唯一の生き残りであるリンドと子を為す定めが出来た。
因みに盟約にある『四聖に深く関わる者』の対象者は、四聖獣四人と『麒麟』、そして『徐福』のみである。
アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。
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琴乃が堕ちた段階で孕ませる
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四聖の社全て攻略後に孕ませる
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サヨ関連終了後に孕ませる
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イザナミも加え、四人そろって孕ませる