IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜 作:イズモ
もう一話前に投稿しています。
お気に入り、ありがとうございました!
リメイク前と内容は大きく違います!
アマテラスの里の巫女達が滝行を行なう場として使われている修行場。
雄大な自然の風景と激しく水が落ちる轟音が鳴り響いている。上から下に落下して舞い上がる水飛沫は、夜の月明かりに照らされて幻想的な光景だった。
実を言えば、この修業場には秘密があり、滝の裏手には大きな洞窟が隠されている。その洞窟は里に何かが起きた時の避難場所とされている。
本来ならば緊急時以外には使用されないその避難場所の洞窟の中には、焚き火の明かりとそれに照らされる二つの重なり合う影があった。
「ん……♥ んちゅ、ちゅる……ちゅっぱぁ……♥」
焚き火のすぐそばで冷たい岩肌に背を預けている腰まで届く濡れた長い黒髪の少女は、自身に覆いかぶさるように抱き着いている相手と熱い口づけを交わしていた。
少女と口づけを交わしている相手は、一糸纏わぬ姿で重なり合っている。良く見れば、すぐ近くの岩肌には乾かす為なのか濡れた服が広げられて置かれていた。
だが、おかしなところが岩肌に置かれている服にはあった。片方は子供が着るようなネノクニの服だったが、もう片方はネノクニの服ではなく白いブラウスと黒いスカートと言うアシハラノクニの高校生が着る女子制服だった。
その制服の持ち主である少女-『白鳥琴乃』は、白い下着を身に付けた未成熟から成熟へと至ろうとしている瑞々しい肢体を口づけを交わしている相手に絡ませながら、互いの舌を絡ませる。
(あぁっ……♥ 暖かい……リンド君とキスしてると……暖かくて安心出来る)
舌を絡ませるごとに、琴乃の吐息は熱くなっていく。
息継ぎをするために顔を離したりしても、互いに熱い視線を向け合ってすぐにまた口づけを行なう。
「琴乃お姉さん……」
「はぁ、はぁ、リンド君……んっ♥」
最初こそリンドの方からだったが、何度も繰り返した事によって遂に琴乃からリンドの唇に自身の唇を重ね合わせた。
たどたどしくも情熱的に琴乃はリンドの口内で自身の舌を動かす。リンドもわざとたどたどしく舌を回して、琴乃に深い口づけのやり方を教えながら抱き締めていた手を動かす。
「んんっ♥」
リンドの手がうなじや太腿、胸、そしてお尻に触れても琴乃は注意せずにされるがまま口づけに没頭する。
(と、止められない……寒いのは……もう嫌っ……)
無意識にリンドを琴乃は強く抱き締め、伝わってくる体温に安心感を抱く。
そうしていれば冷え切っていた身体だけではなく、心も琴乃は暖かくなるのを感じて安心感が増していく。
その安心感は心が深く傷ついている琴乃にとってはまるで麻薬のように効果覿面で、心の傷口に年下の少年であるリンドと言う存在が入り込み一つになっていく。
「じゅるっ♥ ぢゅるるっ……♥ ちゅっぱっ♥ んんっ♥」
舌を絡めるだけでは終わらず、唾液も交換し始め、幾度も繰り返している内にリンドと琴乃の唇の間には唾液の糸が生まれる。
何時の間にか琴乃の手も最初はリンドの身体を恐る恐る撫で、やがて子供にしては力強さを感じるその肉体の素肌の上を這い回り出した
弱っている心にまんまと入り込んだ雄は、度重なる口づけの官能と酸素が不足で満足に思考が行なえない事を利用して、雌の理性が溶けさせて、発情させて蕩けさせていく。
充分に琴乃の頭の中が蕩けきったところで、リンドは背に手を回し、白のブラジャーのホックに手を掛ける。
「あっ……」
「良いよね?」
優しく確認するようなリンドの声。だが、その声には拒否はさせないという意志が込められていた。
心が弱り切り、理性を蕩けさせられた琴乃は、その雄の意思に抗う事は出来ず、コクリっと頷く。
許可を貰えたと同時にリンドの指が動き、パチンとホックが外れ、濡れていた事もあって白い肌に張り付いていたブラが緩む。
緩むと同時にリンドはブラを優しく掴んで敢えてゆっくりと琴乃から離す。止められるのに止めなかったと琴乃に思い込ませながら、ブラを外した琴乃の胸を見る。
佐久夜よりは劣るが、それでも同年代の少女から見れば充分な大きさの双丘は濡れていたブラを身に付けていただけではなく、肌から汗が浮かんでいた。焚き火の明かりがあることもあって、リンドの視界にはこれまでの口づけと撫でまわしの影響もあり固く尖り出している桜色の乳首が見える。
「そ、そんなに……見ないで……」
流石にジッと見つめられるのは恥ずかしいのか、琴乃は思わず両手で胸を隠そうとする。
だが、そう来るのが分かっていたと言うようにリンドの両手が素早く動き、琴乃の両手を捕まえた。そのまま半ば無理やりに琴乃の指の間に己の指を挟みこみ恋人繋ぎに状態にした。
「隠しちゃ駄目。もっと僕に琴乃お姉さんの綺麗な姿を見せて」
「っ……は、はい」
相手が年下であるにも関わらず、琴乃は素直に返事を返してしまう
それは理性が溶かされてしまっている事もあるが、これまでの口づけや軽い愛撫に寄って丁寧に目覚めさせられてしまった琴乃の雌の本能の為。
目覚めさせられたばかりの雌の本能は、圧倒的な雄の気配に抗う事が出来ずに屈服してしまっている。
琴乃に強い意志があれば抗う事も出来ただろうが、今の彼女は弱り切ってしまっている。
(フフッ、危ないところだったけど、おかげでこうして琴乃を僕の雌に堕とせる機会がやって来た)
一目見た時から狙いを定め、ずっと番の雌に琴乃を堕とす機会を狙っていたリンドだが、予想以上に琴乃にはてこずらされていた。
肢体の開発は夜な夜な眠っている間に進めていたが、琴乃の心はずっと一人の男性にだけ向いていた。アマテラスのように使命感を利用する事も出来ず、本当に長期戦になるのを覚悟していたのだが、予想外の転機がリンドに舞い降りた。
(安心して良いよ、琴乃。青龍が時間を稼いでくれているから、明後日の朝まで時間はある。その間に想い人だった『八岐猛』なんて男の事なんて忘れさせて、僕の番の雌に堕としてあげるよ)
内心でそんな鬼畜な事を考えているとは一切悟らせずに、優し気な瞳をしながら恋人繋ぎをしたまま琴乃にリンドは顔を寄せる。
その意味を悟った琴乃は目をトロンとさせて、自分からぎゅっとリンドの手を掴んで口づけを再開する。
「ん、んぅっ♥ ……ちゅっ♥ リンド君……
「
「あっ……この行為の事よ、ちゅっ♥ 私達の世界では……キスって言うのよ、ちゅぷっ♥」
「へぇ、キスって言うんだ。じゃあ、もっとしよう」
「ええ、しまっ、んっ♥ んちゅ、ちゅる……♥ んんんっ♥」
これまでのは遊びだったと言わんばかりに激しく情熱的に、リンドは琴乃とディープキスを行ない、ほんの僅かでも理性を戻させないように蕩けさせていく。
心が深く傷ついている琴乃に、それを抗う意志は持てない、
何故ならば、琴乃は『自分の人生の大半の要だった想い人とは、自分が結ばれる事がないと彼女は知ってしまった』。
その上、本来いるべきアシハラノクニに戻っても居場所がないとも思い知ってしまった。
圧倒的な絶望では済まないほどの絶望感と孤独感を味わってしまった琴乃は、ほんの少し前に洞窟内でも聞こえている轟音が轟く滝の上から身を投げてしまったのだ。
ギリギリのところで行方が分からなくなっていた琴乃に追いついたリンドが、同じく滝つぼに身を投げて救出した。
どうしてそうなってしまったのか。そして何故アシハラノクニの人間である『白鳥琴乃』がネノクニにいるのか? 全ての始まりは一月前の事だった。
アシハラノクニ。其処は『生者の世界』と死者の国に住まうネノクニの者達から呼ばれている。
遥か昔の時代で時が止まったネノクニと違い、時が進むアシハラノクニは様々な文化が芽生えていた。
そんなアシハラノクニのとある小高い山の上に建てられている『出雲学園』。
夕暮れに照らされる学園の教室から、一人の女生徒が憂いを帯びたような表情を浮かべて、窓に手を置いて学園にある剣道場の方を見ていた。
「……猛さん」
清楚な雰囲気を放ち、長い黒髪を白いリボンで纏めている出雲学園の女子制服を着ている少女の名は学園に通う一年生である『白鳥琴乃』。
彼女は不安と憂いに満ちていた。その理由は幼い頃から交流があり、今は一人の女性として想いを寄せている男子生徒『八岐猛』の件である。
猛の養父である『塔馬六介』と琴乃の母親は昔からの知り合いで、その縁で六介の義理の息子である猛とは幼い頃からの知り合い。
今でこそ学園に通えるようになったが、琴乃は幼い頃は病弱で入院をしていた。
しかも、何時死んでもおかしくない言われるほどに琴乃は弱く、退院出来てもすぐに入院するような日々。そんな状況に幼い琴乃の心が耐えられる筈もなく、病状が快方に向かう事はなかった。そんな時に六介が連れて来た猛との交流は、琴乃にとって幸せな思い出。その時の経験で音楽部に入って、フルートの演奏者をしているほどだ。猛との交流は、琴乃の人生に大きく影響を与えるほどに大切な日々だった。
病状が回復してからは、母の代わりに塔馬家の家事を引き受けたり、毎朝塔馬家に訪れて食事を作ったりするほどに琴乃は、猛の事が好きなのである。
猛本人は残念ながらそんな琴乃の気持ちに気づいていないが、何時か気づいて欲しいと琴乃は願っていた。だが……。
「………アレは、私の見間違いよ」
目撃したのは偶然だった。
音楽授業で使った教室にうっかり忘れ物をした琴乃は、次の授業が始まる前に取りに行った。
其処で見たのだ。思いを寄せる猛が、教育実習生として学園にやって来た女性教師と仲睦まじく話している姿を。
「……きっと、授業で分からなかった事を質問していただけ。そうに決まってるわ」
自分に言い聞かせるように琴乃は呟く。
だが、どうしても脳裏からあの光景が離れなかった。何故なら琴乃が見た限り、まるで幼い頃から一緒にいる自分以上に猛とその女性教師-『冬木凪』-の方が……。
「そ、そんな事あるはずない!」
琴乃以外誰もいない教室に否定の叫びが木霊した。
心を落ち着けるように何度も琴乃は深呼吸する。
「大丈夫よね……教師と生徒がそんな関係になる筈が。ドラマとかじゃないんだから」
深呼吸を繰り返し、琴乃は落ち着きを取り戻そうとする。
「疲れているのかしら……最近は変な夢も見るし」
何時の頃なのか琴乃もハッキリ思い出せないが、夜寝る度に不可思議な夢を見るようになっていた。
それは琴乃自身が出て来る本当に不可思議な夢。
夢の中での琴乃は、何処かの田舎の村のような場所で過ごしている。幾ら今は身体が良くなったとはいえ、長い間入院生活をしていた琴乃は、余り体力がない。普通に過ごす分ならば問題は無いが、体育でマラソンなんかすれば、すぐに息が切れてしまう。
そうだと言うのに夢の中では農作業などの力が居る仕事もしていて、馬に乗ったりなどもしていた。しかも着ている服は日常的に着ている私服ではなく、神社などで見られる巫女服を着て祭事の手伝いまでも行なっていた。
その時点で琴乃からすれば夢だとしか言えないが、それだけではなく自身と同じように巫女服を着た顔がおぼろげな女性達と共に異形の何かと戦っていた。
剣や槍、弓、果ては扇や鈴など到底武器と言えないような物で戦う巫女も居た。しかも琴乃が戦う為に使っていたのは『笛』である。
(夢の話を猛さんや『明日香』にしたら、笑われたし……どうしてあんな夢を毎日見るのかしら? ……それに……)
妹である明日香や猛にも話していない夢の内容があった。
それは、『夢の中での琴乃が猛ではなく、別の、しかも会った事もない年下の少年と結ばれて愛を誓う』内容の夢。
その夢の中での琴乃は、巫女服ではなく何故か制服姿で数名の女性らしき人物達が見守る中で少年と向き合い、光り輝く『笛』と虹色の祝福を受けながら誓いの言葉を告げていた。
『今この時を持って、私は『白鳥』の名を捨て、ただの『琴乃』として貴方の一族に入り、他の皆さんと同じように■■■君の■の■になる事を誓います』
その誓いの言葉と共に夢の中の琴乃が握っていた『笛』が更に光を強くし、虹色の祝福も強まったと感じると共に胸の中に『笛』は吸い込まれ、自身が変わっていくような感覚を受け、夢の中の顔がハッキリしない少年とキスをしたところでその夢は終わった。
「……そろそろ帰って猛さん達の夕飯を作らないと」
夢の出来事を思い出している場合ではない。自分には凪に出来ない役割があるのだと、琴乃は頭を振って夢の内容を振り払った。
猛との距離を縮める機会も、学園と言う場所のみだけではない。猛の家にも毎日琴乃は通っている。しかも凪は実習生でしかない。実習が終われば二人が会う機会はなくなる。そう考えることで気を取り直した琴乃は鞄を持って、猛の家である塔馬家に向かおうとする。
(……そう言えば、お母さんや六介さんに夢の事を話した時、二人とも様子がおかしかったような……)
猛や明日香が笑うのは、琴乃も理解出来る。
琴乃自身も妹から自身のような話を聞かされれば、笑ってしまいそうなのだから。だが、琴乃の母親である『白鳥綾香』と猛の義父である『六介』は、琴乃の話に何かを考え込むような様子を見せていた。
アレは何だったのだろうかと琴乃が、今更考えながら教室を出たところで……。
「……ごめんなさい。呪法スリープ」
「えっ……」
何故か急に眠気が襲い掛かり、立っている事も出来ず琴乃は床に膝をついた。
「な、何が……あっ……」
「……おやすみなさい、白鳥さん」
(この声……何処かで……)
聞き覚えのある声のような気がしながらも、意識を保てなかった琴乃は床に倒れ伏し深い眠りに落ちて行った。
それを確認した相手は、周囲を見回して誰も見ていない事を確認し、眠っている琴乃を教室の中に連れ戻す。
そして教室の扉を閉め終えると、服のポケットから貝のような物を取り出す。
「……様。任務完了しました」
『良くやった……確認するが間違いなく『救世主様』と縁が在る者なのだろうな?』
「間違いありません」
『では、これより……様が儀式を行う。予め送っておいた呪具を使い、呪いをかけておくのも忘れるな』
「はい、……様」
通信が終わったのか琴乃を眠らせていた相手は、ポケットに貝を戻した。
そのまま何処か愁いを帯びた様子だったが、指示された事を止める様子はなく次から次へと持って来ていた鞄の中から禍々しい気配を発する道具を取り出して準備を進めていく。
(………なるほど……こう言う経緯だったのね)
教室の中で禍々しい儀式が執り行われる様子を見ていた者がいた。
その者は儀式を執り行っている者に気付かれる事なく、窓の外で姿を消しながら宙に浮かび、琴乃が儀式に寄って呪われていく様子をジッと見ていた。
今すぐ教室の中に飛び込めば、儀式を中断させる事は容易い。だが、それは決して出来ない。してしまえば、『アシハラノクニとネノクニの崩壊を引き起こしかねない』のだ。
(悪いわね、
儀式の様子を窺っている者がこの場にいるのは、邪魔をする為ではない。
寧ろ、邪魔が入らないように見張っている側なのだ。儀式を執り行っている者は、敵ではあるがそれを曲げなければならない。
白鳥琴乃がネノクニに来なければ、世界の秩序が崩壊してしまうのだから。
(それにしても……)
見張っている者は教室から目を逸らして、部活が終わったのか剣道場から出て来る学生達に目を向けた。
正確に言えば、その中にいる二人の男子生徒。ピンク色の髪をポニーテールで結んでいる女子生徒に振り回されている黒髪の男子生徒と、年上の銀色の腰まで届く長い髪で赤いリボンを巻いた大人の女性に帰りの挨拶をしている男子生徒に。
(……フフッ、随分と愉快な事になってるわね、■■■■。まっ、貴方達はそのままアシハラノクニでその二人と幸せになりなさい。琴乃もちゃんと
この日の深夜、出雲学園を中心に局地的な地震が襲った。しかし、大きな揺れだったにも関わらず出雲学園には何の被害も出なかった。
それと前後するように一人の女生徒が姿を消し、警察を始めとして、家族や友人が賢明な捜索をしたにも関わらず、彼女が見つかる事はこの先なかったのだった。
「んぅっ……此処は?」
意識を取り戻した琴乃は、何度か目を瞬きさせながら床から起き上がる。
「私……どうして? ……あっ! いけない!」
漸く頭がハッキリして来た琴乃は、窓の外を見て外が夜になっている事に気がつく。
「大変! 今何時なのかしら!?」
窓から見える月の位置から確認すると、かなり遅い時間帯になっているようだった。
慌てて教室内の時計に琴乃は目を向けてみる。
「あら? 時計が動いていない?」
教室の時計は全く動いていなかった。一応放課後の時間帯を示しているが、窓から見える月の位置と一致していない。
「夜勤の先生とかに見つかっても、素直に話したら納得して貰えるかな」
覚えはないが、状況的に見て自分は教室で眠ってしまっていたようだ。
それだったら他の生徒達が見つけて起こしてくれてもおかしくない気がするが、運悪く見つからなかったのだろう。
「急いで学園を出ないと。こんな時間じゃ明日香もお母さんとお父さんも、それに六介さん、猛さんも心配しているでしょうし」
家族や家族同然の付き合いのしている人達に心配をかけてしまった事に落ち込みながら、机の上に置いておいたはずの学生鞄に手を伸ばそうとして……。
「えっ? 鞄がない?」
確かにそこに置いていたはずの鞄が無くなっている事に気がついた。
「どうして……えっ? まさか泥棒!?」
口元に手をやりながら今更ながら琴乃の内に恐怖が湧いた。
「せ、先生に……」
学園なら当直の先生が必ずいる。
怒られるかも知れないが、こうなったら仕方がないと覚悟を決めて教室の外の廊下に琴乃は出た。
「……夜の学園って静かね」
昼間ならば生徒や教師で賑わっている事で静けさなどとは無縁だが、今は琴乃一人の足音しか聞こえない。
暗闇に包まれている廊下を恐る恐る琴乃は進んで行く。自分の足音を聞きながら、通路を進んでいると……。
ギシッ
「何の音?」
何か重い物が擦れるような音が背後から響いた。
一体何なのかと注意深く見つめていると、暗がりの中に赤く輝く目のようなものがギラリと光った。
「ひっ! 嫌ぁぁぁぁぁ!」
本能的にその目の主が危険なものだと分かった琴乃は、暗がりの床を走る。
「ハァハァッ」
しかし、元来の病弱ゆえの体力の無さが災いしてすぐに息が切れてしまう。
追いかけて来る赤い目の主は琴乃の体力の無さを悟ったのか、嘲りと嗜虐に満ちた笑みを浮かべている。まるで猫が鼠を甚振るように、琴乃を追いかける何者かは遊んでいた。
「か、階段を……ひぃっ!」
階段を降りようとした琴乃は足を止めて後退った。
何故なら降りようとした階段の下から、追いかけてくる赤い目と同じ目をしたものと、八つに輝く目が見えたからだ。それらも危険なものだと一瞬で理解した琴乃は、別の道を行こうとする。
だが、既にその先には……。
『ヂュウゥゥゥッ!!』
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」
体長90㎝ほどの大きさの鼠が立っていた。
某有名なテーマパークのような愛らしい姿にデフォルメされたものではない本物の鼠が、巨大化した生物が目を赤く輝かせて琴乃を睨んでいる。
まさかと思って振り向いてみれば、背後から追いかけて来ていたのも同じ大きさの鼠で、階段からも一匹。それに加えて天井には巨大な蜘蛛が張り付いていた。
「ああぁぁぁっ……」
明らかな異常事態。
逃げ場を失った琴乃は、後退りして壁に背をつけて追い込まれてしまう。
その隙を逃さないと言うように天井に張り付いている蜘蛛が、背を向けてお尻から糸を放ち壁に琴乃を磔にする。
「きゃあっ! う、動けない……ひっ!」
動けなくなった琴乃に、巨大な鼠達が口から涎を垂らしながら近寄って来る。
目的は明らか。鼠達は琴乃を食べるつもりだった。
「い、嫌! 誰か助けて! 猛さん! 猛さん!!」
想い人に助けを願うが、無慈悲にも鼠の鋭い牙が振り下ろされる。
「呪法! イリュージョン!!」
「えっ?」
暗がりの中から年端もゆかない少年の声が響き、琴乃の身体が光った。
次の瞬間、その身に突き刺さるはずだった鼠の鋭い歯が素通りし、更にその身に張り付いていた蜘蛛の糸も素通りして拘束から逃れた。
突然の出来事に琴乃は呆然としてしまう。だが、事態は琴乃を待たずに先へと進む。
「飛鳥の舞!!」
女の子の声が廊下に響き、暗がりの中から飛んできた鉄扇によって天井に張り付いていた蜘蛛が切り裂かれた。
大きさ故に音を立てて天上から床に落下した蜘蛛だが、戸惑う琴乃の目の間で今度は音もなく消滅し、後には勾玉のような物だけが残された。
「い、一体何が……?」
「伏せて!」
今度は別の女性の鋭い声が響き、琴乃は思わず従い、頭を抱えながら床に伏せた。
同時にドンっと何かを踏みしめるような音と共に巫女服を着た女性が、廊下の奥から勢いよく飛んで来て巨大鼠に深々と持っていた刀を突き刺した。
「はぁぁぁぁぁっ! 悪霊退散!」
「ヂュウゥゥゥッ!?」
一瞬雷光のようなものが剣を奔り、巨大鼠は一瞬の内に消滅した。
痕跡も残さず消え去った後には、勾玉が落ちている。巨大鼠を消滅させた女性は、琴乃を護るように立ちながら牽制するように刀を振りまわして周囲の敵を威嚇する。
「そのまま伏せていて下さい! 悪霊達は私達が倒しますから!」
「あ、悪霊?」
頭を抱えて伏せながら、琴乃は女性の言葉に疑問を覚える。
しかし、説明している暇を与えないと言うように巨大な鼠と巨大蜘蛛は女性と琴乃に襲い掛かって来る。
『ヂュウゥゥっ!!』
『シャァァァッ!!』
巨大鼠は体格を活かした突進を行ない、巨大蜘蛛達は白い糸を放って逃げ道を塞ごうとする。
「させない! 飛鳥の舞!!」
「呪法ファイア!」
再び廊下の暗がりから声が響き、突進していた巨大鼠の横腹に鉄扇が激突して胃液らしきものを吐き出しながら鼠は消滅した。
蜘蛛の方は放った糸を飛んで来た炎に焼かれてしまう。不思議な事に炎は蜘蛛の糸だけを焼き、他の物を焼く事は無かった。
その間に霊力を集め終えたのか、刀を持つ女性の刀身には雷が迸り、生き残っている鼠と蜘蛛に向かって振り下ろす。
「これで終わりです! 轟雷!」
女性が振り下ろした刀から稲妻が轟き、鼠と蜘蛛は焼き尽くされて消滅した。
残心を行ない、周囲に悪霊が居ない事を確認すると、女性は腰に差していた鞘に刀を納めた。
「……悪霊はもういないみたい。良かった。間に合って」
「桂香! その人は無事!?」
無事な琴乃の姿を改めて確認したアマテラスに仕える巫女衆の一人である『桂香』は、安堵の息を吐いた。
その桂香に声を掛けたのは、同じく巫女服を着たアマテラスの娘である『佐久夜』。その後ろには神官服を着たリンドがいた。
「はい、佐久夜様。この方はご無事です。ただその……」
「良かった。って、アレ? その服装。見慣れないけど、人間だよね?」
「えっ? あ、あの?」
訳の分からない質問に琴乃は混乱する。
何処となく興味深そうに琴乃を見つめる佐久夜に、後をついて来たリンドが報告する。
「桂香さん、さ、佐久夜お姉ちゃ……じゃなくて佐久夜様。術で確認しましたけど、その方は人間って、いひゃいひゃい!」
「りんど~」
顔は笑っているが明らかに怒っている佐久夜は、リンドの左右の頬を引っ張りながら告げる。
「様じゃなくてお姉ちゃんだよね?」
「で、でも、アマテラス様や巫女様達から人がいる時は様付けで呼ぶようにって言われて」
「私が良いって言ってるんだから良いの! それにそれはあくまで里の人達の前ではの話! 桂香だって此処にいる時は良いって言ってくれてるでしょう!?」
「だ、だけど……僕は佐久夜お姉ちゃんの従者だし……」
「とにかく駄目! 此処にいる間は様付けは禁止! じゃないとお仕置きだからね!」
「……は、はい、佐久夜お姉ちゃん」
「うん! それで良いの!」
とても嬉しそうに佐久夜は笑みを浮かべた。
その様子を見ていた桂香が苦笑を浮かべていると、恐る恐る琴乃が質問して来る。
「あ、あの……」
「あっ、ごめんなさい。えーと、その変わった服装。もしかしてお父さんが言っていた、せいふく? っていう服で良いのかな?」
「は、はい、そうですけど……あの変わっているってどういうことですか? 寧ろ私からすると……」
琴乃は桂香と佐久夜が着ている巫女服と、リンドが着ている神官服を見つめた。
神社などに行けば見かけることもある服だが、少なくとも夜の学園で着ているような服ではない。
一体どうなっているのかと琴乃は困惑するが、佐久夜と桂香、そしてリンドは深刻そうな顔をしながら顔を見合わせていた。
「やっぱりアシハラノクニから。じゃあ、この人が悪霊の『救世主』」
「いえ、そうとは限りません、佐久夜様。この方が置かれていた状況は、間違いなく危ういところでした。リンドの呪法が間に合っていなかったら、大怪我を負っていたはずです」
「僕もそう思うよ……でも、僕らだけじゃ判断がつかないし、明日、里に戻ってアマテラス様とカグツチ様に会わせようよ。僕らじゃ分からない事も、アマテラス様やカグツチ様、それにツクヨミ様や青龍様なら分かるよ」
「……うん。そうだね」
「あ、あの、どういうことですか? 私は家に帰らないと行けないんですけど」
早く帰りたいと願って琴乃は言葉を発した。
だが、その言葉に佐久夜、リンド、桂香は沈痛そうな顔をして琴乃を見つめる。
「……帰れないよ」
「えっ?」
「此処はね。貴女が暮らしてたアシハラノクニじゃないの」
「な、何を言って……」
「此処はネノクニ。死者の世界。貴女は誰かに呼ばれて来てしまったの。生者の世界であるアシハラノクニから、この死者の世界であるネノクニに」
佐久夜は心の底から辛そうな声で、困惑する琴乃に宣言した。
そして同じように沈痛な様子で顔を伏せている筈のリンドの視線が、まるで探し求めていた者を見つけたと言わんばかりに爛々と輝いている事に琴乃は気付いていなかった。
(フフッ、漸く出会えた。強い僕の子供を産める女性にね)
琴乃が置かれている状況はかなり複雑です。
原作で『反魂の術』は禁忌と定められている理由が深く関わっているのと、大きな問題にならずに済んでいた事が関わっています。
モブ巫女役の紹介。
名前:
役職:巫女
容姿:『夏神楽』に出て来る『音羽桂香』と瓜二つ。
詳細:アマテラスに仕える巫女の一人で、金属性の故か雷を操って戦う巫女。しっかり者で真面目な性格ゆえに、葉子が居ない時は巫女達のリーダー役を担っていた。幕間で葉子に命じられてアマテラスを呼びに行った後、潜んでいたリンドに捕獲されて鍛錬場で一方的な戦いをされて、一度目の『疑似契りの儀式』を結ばされた。その後、一度解放されて『疑似契りの儀式』を結んだままリンドと戦ったが敗北。二度目の『疑似契りの儀式』を行なわれて雌犬巫女に堕ちた。
妹がいるが、リンドに雌犬巫女に堕とされた後、進んで協力し、姉妹揃って雌犬巫女に堕ちた。夢は『姉妹揃ってリンドの子を孕む事』。
実は里内に気になる男性が居たが、雌犬巫女になった後は興味もなくなってしまった。
アンケートの結果、表では琴乃の親友になる予定。その裏ではリンドに捧げる為に暗躍することになる。
アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。
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琴乃が堕ちた段階で孕ませる
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四聖の社全て攻略後に孕ませる
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サヨ関連終了後に孕ませる
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イザナミも加え、四人そろって孕ませる