※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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今回もエロ無しですが、前段階みたいなところには進みました。
アンケート、お気に入りありがとうございました!


白鳥琴乃・失恋処女喪失編 11

「…………」

 

 聞かされた話の数々に、白虎は痛そうに両手で頭を抱えてしまっていた。

 九ヶ月以上前にアマテラスに仕える巫女を通して青龍が事の詳細を書いた文の内容を読んだ時も言葉を失ったが、今回もそれに匹敵する内容だった。

 ネノクニの外敵から二千年もの間世界を護り続けていた精霊と交わり『理を紡ぐ力と理を整える力』をイザナミから託された一族が、一人を残して滅ぼされた。

 しかもそれを行なったのは、ネノクニの守護神として精霊となる前、人間だった頃に大陸を渡って来た苦楽を共にした仲間と主であった『麒麟』と『徐福』。その上に、『徐福』こそがヨモツオオカミ亡き後に新たな悪霊の長として君臨し、『ヒミコ』と名乗ってアマテラスとカグツチの命を狙っている。

 

(全てが悪い夢だと思いたくなってしまう)

 

 青龍からの手紙が届くまでは、白虎もまた『麒麟』と『徐福』がネノクニを滅ぼそうとしているなど微塵も考えていなかった。

 二人は苦楽を共にして大陸を渡って来た仲間達。嘗て人間だった頃にヨモツオオカミに挑んだ時に敗北した白虎達が逃げ延びる事が出来たのは、『徐福』が殿を務めて囮になってくれたからだ。

 そのような事もあったと言うのに、『麒麟』と『徐福』は自分達にとって恩人であり、役目は違ってもネノクニを護り続けて来たかの一族を一人を残して滅ぼしたなど悪夢でしかない。

 

(だが……全ては現実なのだ)

 

 白虎は布団の上に横になっている青龍を視線で確認する。

 その胎内には盟約が破られた事を何よりも示す証である青龍の後を継ぐ次代の四聖が宿って、もうすぐ産まれようとしていた。

 四聖獣が子を為す時は、『四聖に深く関わる者がネノクニを崩壊を企んだ』時。

 その対象は青龍、玄武、白虎、朱雀の他に後二人、『麒麟』と『徐福』のみが対象。

 子を為した青龍も、この場にいる白虎も、別の地に居る玄武と朱雀も違うのならば、残る二人しか考えられない。

 その事実だけでも辛かったと言うのに、再び『徐福』、いやヒミコはネノクニとアシハラノクニの二つの世界を脅かす禁忌を行なってしまった。

 

「……済まない。正直に言って全てが嘘だと思いたくなってしまう」

 

「その気持ちは分かる。白虎達にとっては大切な仲間だったんだろう?」

 

「うむ」

 

 白虎は暗い顔をしながらも頷いた。

 だが、今回伝えられた情報は守護神として決して見逃せない話ばかりだった。

 カグツチ以降のアシハラノクニからの来訪者だけでも問題だが、これに関しては本来ならば新たな神であるアマテラスとその娘である佐久夜だけである程度は対処できる。だが、今回は違う。

 何故なら一年後のアシハラノクニの人間である『白鳥琴乃』が、現在のネノクニに召喚されてしまったのだ。しかも呪いや帰還の為に必要なイメージを抱けない状態にされて。

 これではアマテラスと佐久夜だけの『反魂の術』では、琴乃を一年後の未来になど帰還させる事は出来ない。青龍を除いた他の玄武、白虎、朱雀の協力も必要な重大事。

 本来ならば一年待てと言っても良いが、寄りにも寄って召喚された琴乃は、白虎達にとって恩人である綾香の娘なのだ。

 恩人の娘である琴乃が早期の帰還を望んでいる以上、それを叶えなければ四聖獣としての立場がない。

 

「しかし、まさか綾香の娘が召喚されたばかりか、その娘が『無属性』を宿しているとは……」

 

 これにもまた白虎は言葉を失った。

 綾香の娘がヒミコの手によってネノクニに召喚されたのも驚愕するしかないが、『無属性』持ちと言う特異な存在。

 その上に綾香と同じ恩人である渚の娘は『ヤマタノオロチ』の転生体。しかも『スサノオ』の転生体までアシハラノクニに居ると聞かされた。

 

(充分過ぎるほどの緊急事態だ……手紙でのやり取りで済ませられる話ではない)

 

 致命的な存在が居る場所に来る必要性は充分にあったと白虎は納得した。

 

「話は分かった。私の方から玄武と朱雀に事の次第は伝えておく」

 

「お願いします、白虎」

 

「ただ少々時間はかかると思って貰いたい……玄武の説得には苦労するだろうからな。今回の呼び出しの時だって、自分は絶対に行かないと言い張っていた」

 

「まあ、玄武じゃな」

 

 玄武の性格を知っているだけに、カグツチは思わず納得してしまった。

 四聖獣の中で最も奔放な性格をしているのが、他ならぬ玄武なのだ。実力的にリーダーとなっている朱雀も軽い性格をしているが、玄武はその上を行く。

 アシハラノクニの物が大のお気に入りで、ちょくちょくアシハラノクニに行っては物を買ったりまでしているし、服もボンテージ系の物を曲解して着ているほどである。

 そんな性格なだけに子を為すなど全力で拒否の姿勢を示していた。

 

「頼まれていた玄武の社にあった綾香の荷物も、私に丸投げして来たぐらいだ」

 

「玄武ですから、それぐらいは確かにしそうです」

 

 青龍も玄武を知っているだけに心から同意を示すしかなかった。

 

(それに今の玄武には私のように人としての感情も戻っていませんから、尚更に子作りは拒否するでしょう)

 

 尤も青龍としてはその姿勢を全力で応援したいところだった。

 無論、玄武の安全よりも、リンドを想う女性が増えるのを拒否の方に比重をおいて。

 

「とは言え、玄武の気持ちは私にも少なからず分かる……盟約が破られる日など来ないと思っていたのに、こうして破られてしまった。果たさなければならないのは分かっているが……この身で子が産めるのか不安でもある」

 

(四聖獣の皆の中で一番幼い容姿をしているからな、白虎は)

 

 他の青龍、玄武、朱雀は魅惑的な美女だが、白虎だけは美少女ではあるが一番幼い容姿をしていて、リンドと同じ背丈ぐらい。

 カグツチと『契りの儀式』を結ぶまでは経験もなく、本当に子供が作れるのか不安を抱くのは仕方がない。

 思わずカグツチは青龍と同じようにお腹が膨らんだ白虎を想像しそうになってしまうが。

 

 ギュっ! ギュッ!

 

「痛い痛い!?」

 

「貴方」

 

「ヒカル」

 

 左右に居た二人の妻が同時に頬を引っ張った。

 

「ん? どうした、カグツチ?」

 

「い、いや、何でもないんだ何でも、ははははっ!」

 

 いけない想像を仕掛けていた事を悟らせないようにカグツチは笑って誤魔化した。

 白虎はその様子に首を傾げるが、聞いても答えて貰えないと思ったのか話を再開した。

 

「それと綾香の荷物だが服や装飾品はともかく、武器の類はそのまま玄武の社に置いて来た」

 

「それは構いません、白虎。琴乃さんに戦って貰うつもりはありませんから」

 

(というか、綾香さんの武器って、大変な物ばかりだからな)

 

 カグツチの脳裏に綾香が使っていた武器の数々が浮かんだ。

 どう言う訳か中身が無くならないヘアスプレーとライターを用いた火炎スプレー。

 ガスボンベを手にした後はネノクニで悪霊と戦い続けた影響か、軽々と持ち上げてそのまま火炎放射器として扱い。

 モデルガンやショットガンなど、仕舞いには発破で爆発など、嘗ての仲間達の中で一番危険な武器の類を扱っていたのが琴乃の母親である綾香だった。

 娘とは言え、流石にそんな危険な武器の類は渡せないので白虎の気遣いはカグツチ達も助かった。

 

「そして……此方にも重要な話がある……ヒミコの潜伏先が分かった」

 

『っ!?』

 

 白虎が告げた報告に、カグツチ達は顔を険しくした。

 九ヶ月前頃から、それまで積極的にネノクニの各地で猛威を振るっていたヒミコ率いる悪霊の軍は表立った動きを見せなくなり、その行方をカグツチの配下の斥候や玄武、白虎、朱雀に探索させていた。

 その行方が明らかになったのは、本来ならば喜ぶべき事だが……。

 

(琴乃の件がある以上、私達はヒミコの居所を知っても手が出せないわ!)

 

 タイミングが悪過ぎると思いながら、自身と同じように苦い顔をしているアマテラスとカグツチにツクヨミは顔を向ける。

 二人は無言で頷き、アマテラスが代表として白虎に問いかける。

 

「白虎。ヒミコと悪霊の軍は今何処に潜んでいるのですか?」

 

 討伐に向かう事は出来なくても、せめて居所だけ分かれば今後の戦いが楽になる。

 

「うむ、その場所は『蓬莱山』」

 

「『蓬莱山』!? ……やはりあの場所に潜んでいましたか」

 

 白虎が口にした地名に、青龍が驚きながらも納得したように頷いた。

 その様子を見ていたカグツチは、二人の様子から『蓬莱山』には何か因縁のようなものがあるのだと察した。

 

「二人とも、その……『蓬莱山』にはヒミコが潜んでいる以外に何かあるのか?」

 

「ええ、あります」

 

「うむ、青龍の言う通り、私達四聖獣にとって『蓬莱山』はただ強力な悪霊達が棲む魔の山だけではない。因縁の地でもあるのだ」

 

 ネノクニは悪霊達が棲む土地が沢山存在している。

 『蓬莱山』もその一つであり、強大な霊地であることもあって、其処に棲む、或いは発生する悪霊が強力な者が多い。

 戦力が激減しているヒミコ達にとっては戦力確保の面においても打ってつけの霊峰だった。だが、数ヶ月前まで白虎達は『蓬莱山』にヒミコが潜んでいる筈がないと思っていた。何故ならば……。

 

「『蓬莱山』に悪霊以外にも、もう一人……ネノクニ最強の精霊であり、私達の嘗ての仲間。『麒麟』が潜んでいる場所でもあったのだ」

 

「『麒麟』が『蓬莱山』に!?」

 

「ええ……だからこそ、私達は無意識に『蓬莱山』を探索地として外していました」

 

 現在はともかく、数ヶ月前の青龍達は本気で『麒麟』と『徐福』がネノクニに仇を為す筈がないと思っていた。だからこそ、ネノクニの神であるアマテラスとカグツチの命を狙っているヒミコの正体が『徐福』だとは夢にも思っていなかったし、『麒麟』も協力する筈がないと信じていた。

 しかし、前提条件が全て変わるのならば、『蓬莱山』はヒミコ達が勢力を回復させる場所としてこれ以上に無いほどに打ってつけの地だった。

 

「他にも、そもそも『蓬莱山』は遥か昔、私達が人間だった頃に当時の悪霊の長……つまりヨモツオオカミに挑み敗北した地でもあるのだ」

 

「ヨモツオオカミ様が表に出ていたって言うの?」

 

 白虎の話にツクヨミは僅かに驚いた。

 と言うのも、ツクヨミが仕えていた時期には、本拠地である『黄泉平坂』からヨモツオオカミは出る事がなかった。世界崩壊の準備を進めていたのもあったが、半身であったイザナミを吸収してその力を我がものとする為でもある。

 

「うむ、当時のヨモツオオカミは精力的に動いて、産み出したスサノオと共に次々と人々の里や村を滅ぼしていった」

 

「スサノオもか」

 

「ええ、酷いものでした。数日前に村があった場所に行ってみれば、其処には焼き払われていた村の後しかない事も数えきれない程にあったのです。守護神となった後に知った事ですが、半身であったイザナミは『八尺瓊』を創り上げる準備に行なっていた為に、ヨモツオオカミを止めている余裕がなかったらしく」

 

「なるほどね……私が仕える前のずっと昔にそんな事が」

 

 自分が知らない過去の嘗ての主と同僚に、ツクヨミは興味深そうな顔をする。

 

「でも、アンタ達。良く生き残れたわね。今の話、まだ人間だった頃の話でしょう? ヨモツオオカミ様だけじゃなくてスサノオとも一緒に戦ったんでしょう?」

 

「ああ、確かに凄い話だ」

 

 カグツチもツクヨミの言葉に感心した声を上げた。アマテラスも同感だと言うように頷いている。

 確かにカグツチ達は仲間と共にツクヨミ、スサノオ、そしてヨモツオオカミを倒した。だが、それは相手が一人だった面も多い。

 もしも三人同時に挑まれていれば、人数では有利でも勝てたかどうかは分からない。いや、寧ろ敗北していた可能性の方が大きいぐらいだった。

 

「いえ、それは違います。あの時、ス(・)サ(・)ノ(・)オ(・)は(・)い(・)ま(・)せ(・)ん(・)で(・)し(・)た(・)」

 

「……は?」

 

 一瞬、何を言われたのかツクヨミは分からずに呆けた声を上げてしまった。

 

「ちょっと待ちなさい、青龍? それに白虎? 貴女達、昔人間だった頃にヨモツオオカミ様に挑んだのよね?」

 

「ええ」

 

「その通りだ、ツクヨミ」

 

「それなのに何でスサノオと、ヨモツオオカミ様に決戦を挑んで戦っていないのよ? アイツがヨモツオオカミ様を放置して遠征なんてする訳ないでしょう?」

 

 ツクヨミは元同僚だっただけにスサノオの性格を熟知している。

 何よりもスサノオが優先するのは、母親であったヨモツオオカミ。例え遠征に出たとしても、その時は必ず強力な護り手を配置する筈なのだ。

 

「現にアイツが表立って動いた時は、アマテラス達に敗北したのもあったけど、私がずっとヨモツオオカミ様の護衛をしていたのよ」

 

「ああ、それでスサノオの奴がアマテラスの里を襲った時にツクヨミは居なかったのか」

 

「もし当時の姉さんまでスサノオと一緒に戦っていれば、二ヶ月も時間を稼げなかったかも知れません」

 

 長年のアマテラスとカグツチの疑問は晴れたが、逆に青龍と白虎の過去に疑問が出来てしまった。

 

「ツクヨミの疑問は最もかも知れないが、実際、私達はスサノオと戦っていない。徐(・)福(・)様(・)……いや、ヒ(・)ミ(・)コ(・)と(・)麒(・)麟(・)が(・)情(・)報(・)を(・)掴(・)ん(・)で(・)来(・)て(・)く(・)れ(・)た(・)の(・)だ(・)」

 

「ヒミコと麒麟が……ね」

 

(ヨモツオオカミ様が、そんなに簡単に情報を掴ませるとは思えないけど)

 

 ツクヨミの師は他ならぬ邪神ヨモツオオカミ。

 霊力を扱い方から、あらゆる術の類、武器の扱い方、そして軍師としての策。

 そんなあらゆる事柄に秀でていたヨモツオオカミの隙をつくなど並大抵の事では出来ない。

 

「だが、結局私達は千載一遇の好機をものには出来なかったのだ」

 

「力の限り戦いましたが、二(・)人(・)の(・)予(・)想(・)よ(・)り(・)も(・)早(・)く(・)スサノオと共に遠征に出ていた筈の一部の悪霊が戻って来てしまい、私達は敗北し、徐(・)福(・)が殿を買って出て、何とか私達五人は『蓬莱山』から逃げ延びる事が出来たのです。後は、三人に以前話した通り、麒麟は逃げ延びる際に徐(・)福(・)に託された神器『八咫鏡』を所持して精霊となった後に、ヨモツオオカミが去った後の『蓬莱山』に身を潜め、私達は守護神となる為にイザナミの下へ向かいました」

 

「なるほど」

 

「そのような事が過去に」

 

 カグツチとアマテラスは二人の話に感心した声を漏らした。

 少なくとも、今はともかく、昔のヒミコは間違いなくヨモツオオカミに戦いを挑んだ。

 青龍達が敗北した後にどうなかったかは不明だが、恐らくはヨモツオオカミの手によって何処かに封印されていたに違いない筈だ。

 そうでなければ、二千年後の今になって蘇る筈がないのだから。殺されていたのならば、今アシハラノクニに居る『汀』と『剛』のように転生している筈だからだ。

 

「ツクヨミは今の話を聞いてどう思った?」

 

「……さあ、何せ私がヨモツオオカミ様に仕えるずっと昔の話よ。少なくともヨモツオオカミ様からは、ヒミコを何処かに封印したなんて話は聞かされてないわね」

 

 ツクヨミはカグツチとアマテラスに向かって首を横に振るいながら口にした。

 

「とにかく、昔はともかく今のヒミコは数々の禁忌を犯したネノクニの厄災そのものみたいになってるわ。青龍、白虎、貴女達にとっては過去の仲間かもしれないけど、ヒミコは必ず討伐するわ」

 

「勿論です、ツクヨミ。ヒミコと麒麟には己の行ないの報いを受けさせます」

 

「うむ……これ以上、ヒミコと麒麟が蛮行を繰り返す前に止めなければならない」

 

 青龍と白虎はそれぞれアマテラス、カグツチ、ツクヨミに向かって頷いた。

 二人の様子からアマテラスとカグツチは安堵の息を吐く。リンドと『真の契りの儀式』を結び、子を宿した青龍は勿論、白虎も間違いなくヒミコ討伐に力を入れてくれる確信できたからだ。

 

(ですが、近い内に残る玄武と朱雀にも改めて会う必要はあるかも知れません)

 

 四聖獣の事は信じたいが、今回は敵が敵なだけに手心を加えられては困るのだ。

 何れ残りの二人。玄武と朱雀の面談も必要だとアマテラスが思っていると、部屋の扉がコンコンっと叩かれた。

 

「お、お話し中、申し訳ありません! で、ですが、そろそろ青龍様に薬膳のお茶をお飲みして貰う時間ですから」

 

「もうそんな時間か?」

 

 部屋の外から緊張と恐怖で震えた巫女の報告に、カグツチは過ぎていた時間に驚いた。

 アマテラスは立ち上がり、部屋の扉を開ける。其処にはお茶が入った急須と湯呑みが載った木の板を床に置いて、身体を恐怖で震わせながら平伏している巫女がいた。

 重大な会談が行なわれているのは巫女も知っているが、青龍に薬膳が入ったお茶を飲んで貰う時間になってしまった為に声をかけるしかなかったのだ。

 平伏しながら震える巫女-『うづき』にアマテラスは微笑む。

 

「顔を上げなさい、うづき。報告ありがとうございます。お茶は此方で青龍に飲ませますから」

 

「は、はい! 失礼いたしました!」

 

 アマテラスはお茶が載ったお盆を受け取り、部屋の扉を閉める。

 その間にツクヨミが青龍の背に手を添えながら体を起こした。事情が分からない白虎は首を傾げて、唯一手が空いているカグツチに質問する。

 

「カグツチ。青龍が飲むお茶とは?」

 

「最近『妖やかしの森』で見つかった葉で煎じた物で、薬効の効果が高くて里の皆も飲んでいるんだ。今、青龍には少しでも体力をつけないといけないから、決まった時間に飲むようにしているんだ」

 

 時間を気にせずに話し合っていた為に、その時間が来てしまった。

 会談の後と言う訳にも今の青龍は行かない。何せ唯一子が気を受け入れるリンドが里に居ないのだ。

 まだまだ話し合う事があるのだから、時間が掛かるのは間違いない。

 その間に青龍に急変が起きないとも限らない現状では、細かな事でも見過ごすわけにはいかない。

 ゆっくりとアマテラスはお盆を青龍の傍に置き、用意されていた湯呑みに急須に入っていたお茶を注いだ。

 

「っ!?」

 

「ん? 白虎?」

 

 お茶が注がれると共に白虎の全身が強張り、獣耳と腰に生えていた尻尾がピンと立った。

 それを見たカグツチが声を掛けるが、白虎はジッとアマテラスが青龍に差し出している湯呑みを見つめる。

 

(ま、まさか……この匂いは……)

 

 湯呑みの中に入っているお茶から香る匂い。

 その匂いは人間や青龍には良い香りとしか感じられない。だが、四聖獣の中でも獣としての側面が強く、何よりもネ(・)コ(・)科(・)で(・)あ(・)る(・)白(・)虎(・)にとっては危険であり、同時に魅了して止まらなくなってしまう香り。

 

(マ、マタタビの匂いに!?)

 

 お茶から立ち昇る香りは、猫にとって大好きなマタタビの匂いに告示していた。

 白虎は猫ではなく、虎の化身ではあるが、同じネコ科に属する以上、一度嗅いでしまったマタタビに酷似した匂いには反応せざる得なかった。

 

(が、我慢しろ、私! アレは青龍の為に用意された物なのだ!)

 

 ネコ科としての本能と白虎は戦う。

 その間に青龍はアマテラスが差し出したお茶を一気に飲み干す。

 

「はぁ~、やはりこのお茶は美味しいです」

 

 心から美味しそうに青龍は微笑んだ。対して白虎は……。

 

(ああっ!?)

 

「いや、白虎、本当にどうしたんだ?」

 

 へなへなと耳と尻尾が崩れ落ちている白虎の様子に、カグツチは質問した。

 顔は平常時と変わらないが、耳と尻尾の様子で明らかに落ち込んでいるのが分かってしまう。

 常日頃に見られない白虎の感情表現に気が付いたアマテラスも、思わず湯呑みと白虎を見比べる。

 

「白虎……もしやこのお茶を飲みたいのですか?」

 

「……い、要らない……それは青龍が飲むお茶なのであろう。だったら私が飲むわけには」

 

 そう言いながらも白虎は気が付いていないが、腰から伸びている長い尻尾は何かを期待するように揺れていた。

 その様子にアマテラスは思わず苦笑し、青龍に確かめるように視線を向けると頷かれた。

 

「私は構いませんよ、白虎。私が使った湯呑みで良かったら、どうぞ」

 

「…い、いや、それは」

 

 沸き上がって来る飲みたいと言う気持ちはあっても、それを飲んだら自分がどうなってしまうのか自ずと察した白虎は首を横に振るう。

 その間に、青龍から湯呑みを受け取ったツクヨミが急須に残っていたお茶を注いだ。

 

「っ!?」

 

「ほら、その様子。本当は飲みたいんでしょう? 飲んでみなさい、白虎」

 

 微笑みながら近寄って来たツクヨミが白虎にお茶が注がれた湯呑みを差し出す。

 近くに差し出された白虎はますます湯呑みに視線が集中し、無意識に綺麗な鼻がピスピスと動いてしまう。

 

(駄目だ……このお茶を飲んだら私は)

 

 理性は必死に飲む事を拒絶するが、本能には抗えずにツクヨミから湯呑みを白虎はマタタビに酷似した匂いを発するお茶を……。

 

「んっ!?」

 

 一気に飲み干した。

 そのままの姿勢で白虎の動きが止まり、様子を見ていたカグツチが恐る恐る声を掛ける。

 

「びゃ、白虎?」

 

「……っ!」

 

「うおっ!」

 

 俊敏な動きで白虎の姿がカグツチ達の視界から消えた。

 慌てて全員が部屋の中を見回してみると……。

 

「ゴクゴクッ!」

 

 何時の間にか頬を赤くしながら急須のお湯を注ぐ先を自身の口に向けて、中に入っていた残りのお茶を飲んでいる白虎がいた。

 その場にいる全員が白虎の突然の奇行に驚くが、白虎は構わずにお茶を飲み続け、中身を全て飲み干し終える。

 

「ヒック! アマテラス、カグツチ……もっと今のお茶を飲みたい」

 

 頬を真っ赤に染めて目をトロンとさせながら白虎はアマテラスとカグツチに願い出た。

 

「お茶をですか?」

 

「そうだ、ヒクッ! 私はこのお茶をもっと飲みたい」

 

「いや、待て、白虎……もしかして酔ってるのか?」

 

「酔ってない……お茶で酔う訳がない」

 

 そう言いながらも白虎の口調は明らかに呂律が回っておらず、腰の尻尾はフリフリと左右に揺れている。

 明らかに様子がおかしい白虎にアマテラスとカグツチが困惑していると、ツクヨミが肩を叩いて来る。

 

「ねえ、カグツチ。もしかしてだけど、例の薬効に使っている葉って……マタタビと酷似しているんじゃないの?」

 

「マタタビ!? そうか!? それで白虎は!?」

 

 ネコ科特有の現象に思い至ったカグツチは、白虎の状態をすぐに察した。

 

「白虎が酔う? っ!? アマテラス!? ツクヨミ!? すぐにカグツチを部屋の外に!? 白虎は酔ってしまうと!?」

 

 長い付き合いなだけに酔った白虎がどうなってしまうのか知っている青龍は、慌てて忠告をしたが……。

 

「あつい」

 

 既に遅かった。シュルっと白虎は腰に巻いていた帯を解き、そのまま服の裾に両手で掴む。

 

「あついからぬぐ。ぜんぶ」

 

 ガバっと白虎は自分が着ている服を持ち上げて、その下に隠されていた肢体を晒した。

 白虎は下着を着ておらず、ほんの僅かに確認出来る小ぶりな膨らみと二つの桜色の突起。ほっそりとした腰になだらかな下腹部。そして無毛の閉じた縦筋が男性であるカグツチの目の前に晒されてしまう。

 嘗て『契りの儀式』を結んだ時に見て触れ合い、白虎の初めての相手となったカグツチ。だが、その時と現状では大きく違っている。

 

「貴方!?」

 

「ヒカル!?」

 

『すぐに部屋の外に出なさい!』

 

「わ、分かった!」

 

 二人の妻の声に飛び出すようにカグツチは慌てて部屋の扉を開けて、外へと飛び出した。

 何事かと警護に当たっていた巫女達が目を向けるが、カグツチは必死に後ろ手で扉を閉める。主に白虎の名誉の為に。

 

『白虎!? すぐに服を着なさい!?』

 

『いやだ、あつい!? 涼しい場所に行く』

 

『窓から外に出ようとするんじゃないわよ!?』

 

『……………後でお話ししないといけませんね、フフッ』

 

 ドタドタと妊婦が居る部屋の中で響く声と音にカグツチは頭を痛そうにする。

 

(白虎だけは酔わせたら駄目だ。あのお茶はもう二度と白虎には飲ませないようにしよう)

 

 そう固くカグツチは誓いながら、目の前でどうしたら良いのか困惑している警護の巫女達にどう説明すれば良いのか頭を悩ませるのだった。




原作で大切な母親を裏切った徐福ことヒミコに対してスサノオが冷静でいられたのはカグツチ達との和解と楓の存在が大きかったと思っています。
本作ではヨモツオオカミとヒミコ達の決戦時にはスサノオは参戦していない事にしました。
手を結んでいて情報を握って、仲間のフリをしてヨモツオオカミを『蓬莱山』に向かわせヒミコと麒麟が秘密裏に青龍達を呼び寄せて奇襲。
でも、裏切りに対して敏感になっていたヨモツオオカミの方が一枚上手で敗北したという流れになっています。

次回は白虎への本番無しエロ。そして琴乃に起きている異変に関してになると思います。
それが終われば一度リンド達で現状を整理して、遂に琴乃の|希望(絶望)の時になります。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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