※この作品はR-18です。

IZUMO2〜鬼畜ショタ性記〜   作:イズモ

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予定通り考察なのでエロは無しです。
お気に入り、ありがとうございました!


白鳥琴乃・失恋処女喪失編 13

 深夜に近い時間帯。

 ツクヨミは姿を消しながら屋敷の中に在るリンドの部屋に入る。

 無論、『アシハラノクニの学び舎』に行っている為に部屋の中には誰もいなく、無人の一室。

 当たり前の事だが夜這いなどで来る筈はなく、ツクヨミは部屋の中心の床に触れて霊力を流し込む。すると、何もなかった筈の床が光り輝き、複雑な文様を描いた陣が出現してツクヨミの姿は部屋から消失した。

 

(転移はやっぱり便利ね)

 

 消えた筈のツクヨミは、次の瞬間には『アシハラノクニの学び舎』にある地下空間にいた。

 リンドの部屋にあった陣の正体は転移陣。何処にでも行ける転移ではなく、互いに出入り口を設置されている場所にだけいけるものではあるが、それでも便利なのは事実。

 ツクヨミも転移の術は扱えるが、使う為にはかなりの霊力を消費してしまうので、緊急時などの時にしか使えない。その点で言えばリンドが敷いた陣は、空間作用の力を持つ桃花に手伝って貰ったのと霊脈を利用しているので、使用の時に僅かに流す霊力だけで使えるのだから軍師としてツクヨミは憧れを覚えてしまう。

 

(だけど、そんな転移陣も里に設置していながらリンド一人しか逃げられなかった)

 

 アマテラスの里で暮らしている者達と違って、リンドの一族には霊力を扱えない者は一人もいなかった。

 精霊の血を引いている恩恵もあるが、里に婿入りや嫁入りする者達も、今リンドが手を出している佐久夜や琴乃のように霊力を扱う才能に優れている者ばかり。

 その中にはアマテラスとツクヨミのような『夢を紡ぐ力』を宿した一族の者もいる。

 

(まさか、私達『夢を紡ぐ力』を宿した一族の掟である『双子が産まれた場合は片方を捨てる』が気に入らなくて、秘密裏に保護していたなんて聞かされた時は複雑な気持ちになったわよ)

 

 ならば何故自分の時には保護に来なかったとツクヨミは怒りを覚えたが、その理由を聞かされて複雑な思いへと変化した。

 ツクヨミがアマテラスと共にネノクニで生を得た時は、丁度ヨモツオオカミがイザナミを吸収した時期と重なっていた。そしてその時期こそがリンドの一族にとって最も激しい戦いが行なわれていたので、産まれて捨てられてしまったツクヨミを保護している余裕が無かったのだ。

 イザナミの代わりに世界維持に加え、侵攻して来るアシハラノクニの神々との激闘。

 その上、ヨモツオオカミに救われたツクヨミ率いる悪霊の軍勢による四聖獣封印などもあって、本気で余裕など一切なかったのだ。

 不運な重なりと、それがなければ現状のようにカグツチと『真の契りの儀式』を結べて側室になれなかった事に複雑な気持ちを抱きながら歩いていると……。

 

「あう、あう!」

 

「ツクヨミ様、待っていました」

 

 大切な我が子である李花を抱き抱えてあやしていたリンドに気付かれた。

 微笑まし気に椅子に座ってリンドと李花を見ていた桃花と蔓も気が付き、ツクヨミに向かって頭を下げる。

 ツクヨミも三人に向かって頷くと、桃花と蔓のすぐ傍に置かれていた椅子に座る。

 

「リンドは結構赤ん坊の扱いに手慣れてるわね」

 

「ええ……聞いたところ、里ではお義母様がお産婆を務めていたのでお義父様と旦那様はその手伝いを良くしていたそうです」

 

「そう……」

 

 その言葉の裏には、ヒミコに寄って滅ぼされたかの一族の中にはリンドよりも幼い子供、或いは産まれたばかりの赤子も居た事を示していた。

 そして一族の生き残りは桃花が産んだ李花と今はまだ青龍と蔓のお腹に宿っている二人の子以外に、リンドしかいないのならば、その子供達がどうなったのかは考えるまでもない。

 それを想像してしまったのか桃花は思わず立ち上がり、李花を抱えているリンドの下に向かい、蔓も何かから護るように膨らんでいる腹部を両手で抱えた。

 

「桃花、蔓。大丈夫だから安心して。李花や蔓のお腹にいる子も、もうすぐ産まれる青龍の子もちゃんと護るから」

 

「旦那様」

 

「主様」

 

 告げられた偽りの一切ない思いを聞かされて、桃花と蔓は頬を赤くさせた。その二人を更に安心させるように二人に向かってリンドは微笑む。

 大切に抱いていた李花を、母親である桃花の腕の中に抱えさせ、そのまま用意していた椅子に座って四人は対面する。

 

「では、昼間の話の続きですが……ツクヨミ様は僕と同じように青龍と白虎の話に違和感を感じたんですね?」

 

「ええ、そうよ。あのスサノオがヨモツオオカミ様を置いて長期の遠征に出る筈が無いわ。もし出るとすれば、最低でも本拠地の『黄泉平坂』に居るように願うはずよ。なのに、青龍達がヒミコと麒麟と共に決戦の地としたのは『蓬莱山』。どう考えてもおかしいわ」

 

 これが他の悪霊ならばツクヨミも違和感を抱かなかった。

 だが、話は嘗ての主であるヨモツオオカミと同僚であったスサノオの事だ。しかも、スサノオはそれこそ二千年もの間、母親であるヨモツオオカミに母としての情を持って心酔していた男なのだ。

 そんな男が果たして一度でも母親であるヨモツオオカミが危機的状況に追い込まれ、自身は遠征で遠方に居た事実に耐えられるとはツクヨミにはどうしても思えなかった。

 

「僕はヨモツオオカミに関しては詳しく知りませんから、ツクヨミ様の印象に関しては何も言えません」

 

 リンドが産まれる前にヨモツオオカミはカグツチ達の手によって討伐された。

 一族の次期当主候補筆頭だったので、戦いの経緯に関して当主だった母親からリンドは聞かされているが、詳しい心情までは分からない。

 だが、それでも嘗て行なわれた青龍達とヨモツオオカミの決戦の流れには違和感を感じていた。

 

「僕の印象では、明らかに互いの状況を把握しているとしか思えない流れでした」

 

「ええ、その点に関しても同感ね……そしてこれが当たっていた場合……」

 

「最低でも『ヒミコと麒麟は、ヨモツオオカミと何らかの関わりがあった』と言う事になります」

 

『っ!?』

 

 リンドが告げた事実に桃花と蔓は驚愕し、二人は顔を見合わせた。

 言うまでもなく桃花と蔓は、最近までヒミコこと『徐福』と麒麟に関しては青龍から話を聞くまで何も知らなかった。

 それ故に二人の中での印象は、少なくともヒミコと麒麟は、今はともかく嘗てはヨモツオオカミに青龍達と共にネノクニの人々を護る為に果敢に挑んだ者達だった。

 その前提を覆す事をリンドは口にし、ツクヨミも否定する事なく頷いた。

 

「だ、旦那様。ヒミコと麒麟を擁護する訳ではありませんが、それでは青龍様が言われていた事と矛盾します」

 

「桃花の言う通りです。青龍様は確かに他の四聖獣の皆様に、ヒミコと麒麟を加えてあの邪神ヨモツオオカミに戦いを挑んだと仰られていました」

 

 それは確かな事実。何よりもリンドの手によって番の雌に堕とされ、その身に自分達のように子を宿している青龍が、偽りの事実など口に出来る筈がないと桃花と蔓は思っている。

 だが、二人は重要な事実を見逃していた。戦いとは別に誰かを護る為だけに行なうのではないと言う事を。

 

「別に矛盾はしていないわ。少なくとも青龍や他の三人の四聖獣達は当時のヨモツオオカミ様の蛮行を止める為に戦ったんでしょう。でも、ヒミコと麒麟は違った」

 

「影でヨモツオオカミと手を結んでいて、その事実をネノクニに来てすぐに分かれた青龍達は知らなかったとしたら」

 

『っ!?』

 

 リンドが口にした可能性はあり得た。

 何故ならば青龍、玄武、白虎、朱雀の四人は確かにネノクニの人々を護る為の活動をしていたが、肝心の麒麟と当時の主人であるヒミコに関しては何の話も聞いた事がない。

 ヨモツオオカミに挑んだ話だって、青龍が教えてくれたからこそ分かった事なのだ。

 

「ツクヨミ様が来る前に、残っている一族の遺産を守護しているご先祖様の方々に連絡を取って確認を取りました」

 

 ツクヨミも出会った『サギリ』はネノクニを去り、他にも桃花と蔓が回収してくれた一族の遺産を護っていた守護者達は結界の一部になったが、まだ残っている遺産の守護者達が居る。

 その者達と連絡が取れる『宝貝』もあるので、リンドは連絡を取ってヒミコと麒麟に関して確認を取って見た。その結果……。

 

「『青龍、玄武、白虎、朱雀の四人は確かにネノクニで人を護っていた。だけど、ヒミコと麒麟に関してはヨモツオオカミとの戦い以外での話は噂でも聞いていない』。当時の頃の記憶を持つご先祖様達からの報告です」

 

「……最悪の可能性もあり得るわね。青龍には暫らく話せないわ」

 

 無言でリンド、桃花、蔓は頷いた。

 浮かんだ可能性だけは青龍にはやはり話せない。蔓も身重ではあるが、ヒミコと麒麟とは顔も合わせた事がないので話を聞いても、大切な番の雄であるリンドの敵と言う印象だけで済む。

 だが、青龍は違う。既にヒミコと麒麟に関しては何が何でも報いを受けさせると心に決めていても、ショックが大きすぎる話なのだ。全ての前提が崩れてしまう危険極まりない可能性。

 それをもうすぐ出産間近の青龍には聞かせられない。だからこそ、ツクヨミは会談の場では話さず、リンドも感謝したのだ。

 

「取り敢えず、後でこの件はそれとなくカグツチとアマテラスには話しておくわよ」

 

「ええ、それは構いません」

 

 あくまで可能性だとしても、見過ごせる話題ではないのだから、アマテラスとカグツチも知っておくべきだとリンドは頷いた。

 

「さて、一先ずこの話題は保留として……リンド。貴方は何処にヒミコが封印されていたと思う?」

 

 試すようなツクヨミの問い。その問いに関してリンドは答える。

 

「ヨモツオオカミにヒミコは取り込まれていた。ツクヨミ様もそう考えているんでしょう?」

 

「ええ、そうよ」

 

 返って来た返答に満足そうにツクヨミは頷いた。

 この答えに至るのは簡単だ。何せヒミコが今やっている事なのだから。

 何よりもヒミコが復活した時期を照らし合わせれば、どう考えてもヨモツオオカミが討伐された時期と重なる。短期ならともかく、二千年以上もの間封印し続ける労力を使う事よりも何かで利用していた方が良い。

 更に言えば少なくとも青龍達は、当時のヨモツオオカミならばヒミコと麒麟と力を合わせれば勝てると思っていた。それほどの力ならば十分にヨモツオオカミに狙われてもおかしくない。

 

「では、旦那様、ツクヨミ様。ヒミコは二千年の間、ずっとあのヨモツオオカミの一部で居たと言う事ですか?」

 

「そうなるわね。それにそれならヒミコが強大な悪霊として蘇ったのも納得出来るわ」

 

 邪神ヨモツオオカミは、ネノクニ最大の悪霊の長だった存在。

 そんな存在と二千年もの間、同化していたヒミコが強大な悪霊として蘇ってしまうのは必然としか言えなかった。

 

「それにそれが事実ならば、僕の里の場所をヒミコが知っていてもおかしくありません」

 

「どう言う事かしら?」

 

「僕らの里の場所を知っているのは、一族の者を除いてネノクニでただお一人。イザナミ様しか知らないからです」

 

 外敵への対処の為に徹底的に情報を隠され、存在そのものを抹消されていたリンドの一族。

 四聖獣は知っていたが、里の場所までは彼女達にも隠されていた。これは精霊として結ぶ『契りの儀式』を警戒しての事。

 『契りの儀式』で結ばれている間は、守護神とは言えその相手に優先的に力を貸さねばならない。

 カグツチは余り青龍達に聞いたりしなかったが、他の者ならばどうなるか分からない。故に青龍達もリンドの一族の里の場所は知らなかった。

 同様に婿入りや嫁入りした者達も生まれ育った里に戻る事が無いので、リンドの一族の里の居場所は決して外部に漏れないようにされていた。

 そんな一族の里の場所を知っている者は、一族以外の者で一人だけ。ネノクニの神であったイザナミだけが知っていた。

 外敵とヨモツオオカミの存在があった為に共に歩めなくなってしまったが、それでもリンドの一族の者にとってイザナミは尊敬すべき相手であり、友人でもあった。当主が代替わりした時は必ず挨拶にも行なっていたほどだ。

 だからこそ信頼と信用の証として一族の里の場所をイザナミだけには教えていたのだが……。

 

「ヨモツオオカミにイザナミ様が吸収されて一つになってしまい、その時に一部であったヒミコに一族の里の場所が知られてしまった可能性はあり得るでしょう。そうだとすれば的確に僕の一族への対処が出来たのも分かります」

 

 ヒミコが悪霊の軍勢を率いて、リンドの一族の里を強襲してきた時、余りにも対処が出来過ぎていたのだ。

 力を持つ幹部だけで里に攻め込んで来たのならば、『八尺瓊』を使って対処できた。

 配下だけならばリンドの一族の者達で対処できた。だが、誰一人逃がさないと言うように転移を封じた結界を幾重にも張り巡らされ、更にはヒミコ達はリンドの一族の最大の弱点を優先して狙って来た。

 リンドの一族の決定的な弱点。即ち、『子供』である。本来子を為せない精霊にとって、自らの血を分けた我が子は何よりも大切な宝物。それ故に精霊の血を引くリンドの一族は、『子供』を何よりも大切に想う。

 その隙を突かれ、リンドの一族は事前に準備を重ねていたヒミコ達の前に敗北し、滅ぼされた。

 無論、ただ滅ぼされただけではなく、リンドを里から逃がしたり、『八尺瓊』を敵の内側に忍ばせたりと幾つかの手を打ち、最後にはヒミコに一切の力を渡さない為に禁術を使ってネノクニとアシハラノクニの境界の間に張り巡らされている結界となった。

 

(だからと言ってヒミコは絶対に赦さない。アイツには絶対に絶望のどん底を味合わせて、その魂を輪廻の輪にだって逃れさせてやらない)

 

 青龍からヒミコは美少女だと聞かされているが、幾ら強い女性に目がないリンドでも一族を滅ぼした者に情欲を抱く訳がない。

 こうやってヒミコの情報を集めているのも、どうすれば絶望のどん底に落とせるか知る為だ。

 尤もあくまで出来ればの話。『一族再興』を優先する中で機会があればとリンドは考えている。

 

「色々と過去に関しては分かって来たけど、問題はこれからよね」

 

「そうですね。せっかくヒミコの居場所も分かったのに、肝心のヒミコには攻められないんですから」

 

 何よりもツクヨミとリンドが腹立たしいと思っているのが、最低でも一年もの間、ヒミコに関して直接的に何も出来ない事である。

 二人はこの数ヶ月の間、ずっと陰でヒミコ討伐の話し合いを行ない続け、ある程度の流れまで決めていた。本格的な取り決めこそ、青龍の力が戻ってからだったが、それでも綿密な策が出来かけていた。

 そうだと言うのに、ヒミコが世界を人質に取った予想外の一手によって策を練り直さなければならなくなってしまった。

 

「……不満を口にしている兵の方はどうですか?」

 

「何とか我慢させているけど、何処かで不満を減らすようにしないと危ないわね。アンタが提供してくれた遺産のおかげで自信が抱けるようになったのが悪い方向に進みかねないわ」

 

「精霊武具の一つでもヒミコに渡す訳にはいかないのに」

 

 不満を漏らしている兵の気持ちは分からないでもないが、それで暴発して勝手にヒミコ軍に挑まれてはツクヨミ達だって困るのだ。

 何せ、精霊武具がヒミコ達の手に渡れば、間違いなくその力を吸収して回復されてしまう。そんな事は絶対に認められないが、現状の里でのリンドの立場は裏ではともかく、表立っては従者見習いにすぎない。

 その程度の立場では意見を口に出来る筈がない。

 かと言って、このまま行けば不満を漏らしている兵達の暴走も起きかねない。精霊武具や大量に手に入った『勾玉』に『魂』のおかげで、アマテラスの兵力は以前の比ではない程に引き上がっている。

 これに加えてツクヨミと言う強力な戦力に、全面的な四聖獣の援護も加わるのだから、アマテラスが前線に出なくてもヒミコ討伐はミナカタとオオナムジ、そして麒麟の存在があっても充分に可能。

 そうだと言うのに討伐を延期しなければならない事実に、兵達の間では不満が募っている。

 『ヤマタノオロチ』が復活仕掛けたことを説明しても、ネノクニに何の影響もなかったので、兵達の自覚は薄い。かと言ってヒミコを討伐しようとすれば、琴乃の歪みの問題がある為に行なえる筈がない。

 これにはリンドとツクヨミだけではなく、アマテラスとカグツチも頭を悩まされている。

 ヒミコの居場所が判明してしまった事も悪い流れを加速させてしまっている。

 

「はぁっ、何処かにヒミコ以外の脅威がネノクニで起きないかなんて思ってしまいそうよ」

 

 そうすれば兵達の不満のガス抜きにもなるので、ツクヨミは本気でそう思ってしまいそうだった。

 その声にピンっと何か思いついたのか、リンドが顔を上げた。

 

「それでしたら……『黄泉平坂』にいる『牛頭』と『馬頭』なんてどうですか?」

 

「ん? ちょっと待ちなさい。確かそいつらって『ヨミノクニ』に繋がる『黄泉平坂』の番人じゃないの?」

 

 聞き覚えのある名前にツクヨミは首を傾げた。

 ネノクニで尤も悪霊が棲む地こそが、嘗てヨモツオオカミが棲んでいた『黄泉平坂』。だが、同時に死者が必ず訪れる場所でもある。

 その場所には、今は『牛頭』と『馬頭』と言う番人がいる。

 牛の頭を持った『牛頭』。馬の頭を持った『馬頭』。

 異形の姿を持った存在だが、悪霊の中でもちゃんとした役割を担っている者達。

 何故その者達を討伐するのかとツクヨミは首を傾げる。

 

「ええ、でもあいつら。どうにもヒミコに従っているみたいで、最近だと死者に生き返れるからとか言って試練で遊んでいるみたいなんですよ」

 

「何ですって?」

 

 聞き逃せない情報にツクヨミは眉を顰める。

 仮にも役割を背負った番人である『牛頭』と『馬頭』が、ヒミコに協力している。この事実は見過ごせない。

 

「『八尺瓊』から最近『黄泉平坂』の安定が乱れていると知らされました。多分、万が一にもヒミコが召喚する前に『救世主』が死んだ場合は、『牛頭』と『馬頭』にその魂を回収させるつもりで支配下においたんでしょう」

 

「それは確かにあり得そうね」

 

(つまり、ヒミコと『救世主』の間には深い縁がある訳ね。となると、綾香のもう一人の娘は候補から外すべきかしら?)

 

 現在のところ悪霊側の『救世主』として呼ばれる可能性が高いのは、最有力候補として神話級の悪霊である『スサノオ』の転生体である『大斗剛』、その次に同じく神話級の悪霊である『ヤマタノオロチ』の転生体『倉島汀』。

 両者ともに前世において深い因縁がヒミコにはあるので、アシハラノクニから『反魂の術』を用いて召喚する事は可能。

 対して琴乃とその妹に関しては、ヒミコとの因縁らしきものがない。

 

(……いえ、待って。良く考えて見たら、今(・)の(・)ヒ(・)ミ(・)コ(・)は(・)琴(・)乃(・)を(・)召(・)喚(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)の(・)よ(・)ね(・))

 

 フッとツクヨミは自分が一つの思い違いを仕掛けている事に気が付いた。

 そう。琴乃が居る為に、今のヒミコが召喚を行なったものとツクヨミもリンドも、そして他の者も思ってしまっている。だが、それは違う。

 琴乃をアシハラノクニから呼び寄せたのは、一(・)年(・)後(・)の(・)ヒ(・)ミ(・)コ(・)なのだ。

 

「どうしました、ツクヨミ様?」

 

「……リンド。貴方、桂香を通じて琴乃の人間関係は調べているの?」

 

「いえ、余り深い人間関係を知るのは不味いかなと思っていたので、家族と家族同然に過ごしている『八岐猛』とイザナギ様に関してまでしか聞かないように桂香には言っています。ツクヨミ様だって、アシハラノクニの協力者が誰なのかは、琴乃お姉さんには話していないですよね?」

 

「ええ」

 

 出来る事ならば詳しく聞きたい話題ではあるが、琴乃に関する事柄は注意を払わなければならない。

 故に、これまでは琴乃の周囲の人間関係に関しては聞かないようにしていた。

 

「……これはあくまで推測だけど、私達の行動が既にヒミコの『救世主召喚』の妨害に繋がってしまったとしたら……」

 

「っ!? ……なるほど。その可能性はあり得ますね」

 

 ツクヨミの推測にリンドも思い至った。

 つまり、既に何らかの形でヒミコの『救世主召喚』の妨害に行なってしまった。そう考えれば自ずとヒミコが望んでいる『救世主』の相手が見えて来る。

 

「ツクヨミ様が関わったのは、『ヤマタノオロチ』の転生体と『スサノオ』の転生体……このどちらがヒミコの求める『救世主』」

 

「その可能性が高くなったわね……そうなるとそれとなく琴乃に人間関係を聞いておくべきね」

 

 もしそれで『倉島汀』か『大斗剛』の名前が琴乃の口から出れば、候補は一気に絞られる。

 そうリンドとツクヨミが考えていると、考え込むような顔をしていた桃花が口を開く。

 

「……あの、ツクヨミ様」

 

「何か気づいたの、桃花?」

 

「いえ、気づいたと言う訳ではないのですが、『楓』さんを探すのはどうでしょうか?」

 

「……ああっ! 忘れてたわ! そうよ! 『楓』よ! あの娘なら確かに私達の知らない何かを知っていてもおかしくないわ!」

 

 すっかり忘れていた者の名前を聞いて、ツクヨミは漸く『楓』の存在を思い出した。

 

「桃花、『楓』って誰?」

 

 聞き覚えの無い名前にリンドは首を傾げながら質問した。

 一瞬、桃花と蔓はリンドに言って良いものかと悩むが、既に名を口にしてしまった以上、隠すのは無理だと思い説明する。

 

「『楓』さんは『女郎蜘蛛の精霊』で、『スサノオ』と共にネノクニを旅していたお方です」

 

「私の前のこの地を守護していた方でもあります。とは言っても、私は直接お会いした事はありませんが」

 

「へえ、そうなんだ」

 

 精霊と言う事で僅かにリンドは興味を覚えたが、今はそれよりも話を進める意味でツクヨミに質問する。

 

「その『楓』と言う精霊なら何か知っているんですか?」

 

「ええ、何せあの娘は生まれた瞬間から、『スサノオ』の傍に居たわ。まあ、『スサノオ』本人は途中で使(・)え(・)な(・)い(・)とか言って、この地に括って守護を命じさせていたんだけど、最終的には『スサノオ』の伴侶みたいになったわ」

 

「なるほど……それなら『スサノオ』の最後の瞬間にも傍に居ておかしくないですね」

 

 有力な証言を得られそうな相手がいるかも知れない事にリンドは笑みを浮かべた。問題は……。

 

「とは言っても、あの娘。『スサノオ』が死んだと同時期に行方が分からなくなっているのよね……下手をすると……」

 

「『スサノオ』同様にアシハラノクニに既に転生している可能性もあります。『楓』さんの『スサノオ』への想いは並々ならぬ想いでしたから」

 

 肝心の『楓』は安否が不明。

 それでは駄目なのではとリンドは落ち込む。

 

「桃花。それじゃあ話を聞くなんて無理だよ」

 

「申し訳ありません、旦那様。ですが、可能性は低くても『楓』さんを捜索してみる価値はあると思います……『楓』さんも精霊。もしかしたらこのネノクニの何処かに旦那様のご先祖の方のように、何かを残している可能性はあり得る筈です」

 

「あの娘ならあり得るわね」

 

 桃花とツクヨミは、並々ならぬ『楓』の『スサノオ』への想いを知っているだけに可能性は充分にあると確信に近い思いを持っていた。

 逆に『楓』の事を知らないリンドと蔓は懐疑的ではあったが、少しでも現状に関しての謎が判明するならばと頷く。とは言っても、『楓』の捜索に関してはツクヨミに任せるしかない。

 

「それでリンド? あの『無属性』の『鏡の精霊武具』は、本当に『無属性』の者しか扱えないの?」

 

 もし『鏡の精霊武具』が琴乃以外にも扱えるのならば、『楓』の捜索にこれ以上に無いほど役に立つ。

 何せその『楓』と『契りの儀式』を結んだカグツチがいるのだから。『鏡の精霊武具』が琴乃以外に扱えるのならば縁を辿って捜索が出来る。

 そんな考えからツクヨミは質問したが……。

 

「はい。『鏡の精霊武具』を扱う為には、琴乃お姉さんの霊力がないと無理です」

 

 望む答えは返って来なかった。

 

「そう、駄目なのね」

 

「一応、琴乃お姉さんの霊力が『鏡の精霊武具』に宿っていれば、『映す』事ぐらいが可能かもしれませんが、探索となると……難しいですね」

 

 更に言えば琴乃と『楓』の間には、何一つ縁がない。

 幾ら『見る』力に特化している『鏡の精霊武具』とは言え、結局のところは扱える者の実力次第なのだ。

 縁のない相手の探索など、余(・)程(・)使(・)い(・)こ(・)な(・)せ(・)な(・)い(・)限り無理なのである。

 予定では一度か二度しか琴乃は『鏡の精霊武具』を扱わないのだから、『楓』の探索を行なえる力量には至れない。

 

(地道に私かアマテラスが探知をするしかないわね)

 

 一先ず『楓』の探索に関してはそうツクヨミは決めた。

 これで一通りの話し合いは終わり、リンドは桃花の腕の中で眠る李花を優しい眼差しで見つめる。

 桃花と蔓も、その様子に微笑ましそうな様子で眺めている。

 ツクヨミも用意されていたお茶を飲みながら、四人の様子を見つめていた。

 

(そう言えば……リンド? 琴乃の事を狙っている割に、積極的に関わろうとしていないわね)

 

 夜な夜ないやらしい事を琴乃にしているようだが、昼間は一定の距離感を持って接している。まるで自身は無害だと琴乃に教え込むように、リンドは琴乃に接している。

 無論、一度見定めた相手をリンドが見逃す筈がない。今は虎視眈々と待っているのだ。

 琴乃が無意識に抱いていてしまっている自分への警戒が無くなるその時を。

 そしてその機会がもうすぐリンドにとっても予想外の形で訪れるのは、もう間もなくだった。




と言う訳で里のガス抜きには、原作でのボスキャラである『牛頭』と『馬頭』になりました。
楓の捜索も決定しましたが、本人は既にアシハラノクニに転生していますので、会うとすれば旧版と同じように残した影になります。

次回こそ琴乃の本番無しのエロです。
その後に遂に絶望の時が訪れます。

アマテラス、佐久夜、琴乃の妊娠について。

  • 琴乃が堕ちた段階で孕ませる
  • 四聖の社全て攻略後に孕ませる
  • サヨ関連終了後に孕ませる
  • イザナミも加え、四人そろって孕ませる
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