ある初夏の夕暮れ。
私は風邪を引いている義父のアパートまで、見舞いついでに頼まれていたズボンの裾上げを仕上げ来ていた。
「悪ぃなぁ、由紀子さんわざわざ来てもらって……」
「気にしないでください。近所まで用事があってのついでですので、それよりも風邪を早く治して下さいよ」
いつもは、健康だけが私の自慢だ!なんて口癖のように言っていた義父。珍しく風邪で三日ほど床に臥せている。
私が住んでいる家は、元々は義父が住んでいた家。
そして、義父が今暮らしているアパートは私が結婚前に住んでいたところ。
義父の息子である孝明と結婚し、互いに近距離だったことから住居を入れ替わったのだ。
同居も検討したのだが義父の方から遠慮してきた。
「雨が降りそうだ……」
窓を見ていた義父がポツリと一言。
「傘、持ってきていないから帰りますね」
腰を上げた私を義父がアパートの軒先まで見送りに来てくれた。
「お義父さん……早く良くなってください」
言いかけた時だった。
「うん?ひょっとして雨、降ってきたんじゃないか?」
「あ、ホントだ……えぇっ!?うそーっ」
義父に言われ、ふと、空を見上げた瞬間、まるでバケツをひっくり返したような突然の雨。
義父のアパートを訪ねてやって来た時まで晴れ間も見えていた空。
見る間に路地には水たまり。俗に言われるゲリラ豪雨と思われる勢いの大雨。
ピタリと素肌に張り付くシャツ。重くてずり落ちそうなロングスカート。
訪ねる前にシャワーを使用し、ふんわりと仕上げていた髪型は、見事なまでにぺったんこ。見る見るうちに、みすぼらしい濡れ鼠と頭髪は化してしまった。
ずぶ濡れ状態のままの私。
「……」
言葉もなく唖然として見ているだけの義父。
幸い義父は、狭いけど軒下にいたため濡れてはいないみたいだけれど、あまりに突然の出来事に、すっかり言葉を失っているみたいだ。
「スイマセン。……」
義父が立っている軒下へ逃れようとした。
「あっ・・・ああ!とにかく部屋まで……」
そう言って私を玄関先に導くと、慌てた様子でタオルを取りに行く義父。
見舞いに来ておいて、義父に迷惑を掛けてしまうのは忍びないが、流石にこのまま濡れて帰ると、近所とは言え私まで雨に打たれ風邪を引いてしまいそうだ。
手渡されたバスタオルで髪を拭きながら、義父に促され脱衣所へと案内される私。
濡れたシャツとスカートを衣類乾燥機に入れると、差し出された義父のシャツに袖を通す。
義父のシャツとはいえ、男性のシャツを羽織ると、なんだかいけないことをしているような気がして、年甲斐もなくほんのり頬を赤らめてしまった。
「シャワーを……」
浴びるかとも聞かれたが、さすがにそれは遠慮させてもらった。
いくら義父とはいっても、二人っきりの部屋でシャワーを浴びるなんて……危険な香り。
「大丈夫か?寒くないか?由紀子さん」
「ん、大丈夫です。それよりお義父さんこそ風邪引いてるんだから、ゆっくり寝なければ……」
とりあえず服が乾くまでと、義父の部屋に招かれたはいいが、なんだかやけに気まずくて、思いのほかぎくしゃくしてしまう。
義父もまた、ベッドに腰をおろし平静を装ってはいるものの、どこか目のやり場に困っているみたいだ。そりゃ、そうですよね。
だって、私はいつもの服を脱ぎ捨て、下着の上に義父のシャツを羽織っているだけなのですから。
座り方ひとつ間違えるとショーツが露わに、あまりシャツを綺麗に着ると、胸の先端にある乳首が透けて見えそうな格好なんです。