雲が流れた淡い空、緑の葉の朝露が煌めく程の光が樹海を色を浅くさせる。僅かに傘増しされた地面を風が撫で、此処で散らされた得体の知れない命を曖昧にさせる。その間を畝る僅かに渇いた県道をサイレンを鳴らしながら走る救急車があった。その中では
「痛ってぇ...」
その得体の知れない者を倒した警官は担架の上で溜息を付いていた。
「松島ぁ、また怪我したのか?」
知り合いである救急隊員は半笑いで質問をする
「お前笑うなぉ...腕ボキリ行ったんだぞぉ...そうなのよ...捜索中にバケモンに会ってそれで...」
「はぁ? 何だそれぇ? さてはお前、腕だけじゃ無いな?」
「馬鹿言うな。それならこんなになってねえ」
「まあ生きていて良かったよ。テレビで見た感じだと死ぬ可能性だってあったんだろ?」
「そうよそれは本当よ!あっいった...」
警官は身を上げようとして顔を歪める。
「おいおいおいおい無理すんな。お前怪我してんだから」
「ああ...安静にしておくよ」
申し訳なさげな顔で警官は身体を戻す。
(あの青年...一体なんだったのか...)
真面目な顔になった警官を乗せ、救急車は駐車場の横を通り過ぎる。
「....あっ、寝ちゃってたわ...」
その駐車場に停車していた車の中で寝ていたレツキがサイレンの音で目を覚ました。
「やっべえな、早く立花さんのとこに戻んねえと」
レツキは目を擦り、少し慌てながら車のエンジンを起動させる....しかし動かない。
「....うっわマジかよ....」
ハンドルの奥を見るとレツキは愕然とする。ガソリンメーターの針はEを刺していたからだ。
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「はあ...久し振りに動いたから疲れた...」
激闘を制したもう1人の青年、幹人は衣服についた汚れを払いながら宿泊先のログハウスへと戻る。
「首を突っ込む必要が無かったけれどもこれで良かったと思うな。早く課題の時間を取り戻さないとなぁ...」
「お帰りなさい、幹人さん」
台所辺りから聞き覚えのある声がする。
「ただい...真奈美さん?」
不思議に思った幹人は汚いスニーカーを脱いで台所に一目散に駆け付ける。
「ふふっ、おはようございます」
そこには長い髪を後ろで束ねた白いシャツと黒いスキニーパンツ姿の女性が赤いエプロンを掛けながら幹人に頭を下げた。
「真奈美さん!? まさか料理を...!?」
目を丸くする幹人に真奈美は答える。
「そうです。貴方の手際と横に置いてあった書物、そしてそばに置いてあった箱で調べました。あれパソコンというのですね?」
「えっ? そう...なん...ですね...」
唖然とした顔付きで硬直していると、真奈美はコンロを止めれば、フライパンに料理を盛り付けてリビングのテーブルに運ぶ。
「さあ幹人さん、ご飯にしましょ?」
「ああ...はい!」
真奈美の穏やかな笑顔に幹人は流されるままに頷く。
2人が席に着き、湯気の立つ皿の前で手を合わせた。
「いただきます♪」
「いただきます!」
それと同時に置いてあったテレビ番組が7時の時報を知らせ、女性キャスターがフラッシュニュースを読み上げ始めた。
「昨日午後2時過ぎ、鹿児島県屋久島の自動車道で小学生の児童を乗せたバスが転落し、乗っていた児童全員の行方が分からなくなってる事故で、重傷を負った40代男性の運転手が何者かに襲撃されたという証言が警察関係者からの取材で明らかに...」
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時同じくして、朝日煌めく鹿児島の沖を進むのは一隻のフェリー。
そこに積まれた2トントラックの荷台の中で、喘ぎ声と水音がする。
「あうっ...ううっ...うあっ...!」
床で寝そべる少年を犯しながら艶かしい声でよがるのは白い着流しを纏った女。その顔は真奈美と瓜二つだった。
「はあ...お母...さん...」
少年は虚な目で自分を犯す女を見ると、鮮血に染まった口で母と呼ぶ。
肌と肌が重なり合う2人の周りには、無数の肉塊と骨と布の欠片が散らばっていた。
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