「.....はあっ!」
剣鬼のバケガニ討伐から数日後、夕陽に染まる海岸では別の音撃戦士がバケガニとは別種とは思われる怪童子と対峙していた。
「....フン...!」
怪童子は左腕の海老の節に似た物体を掲げると瞬時に下ろし代わりに右腕を前に突き出すと人差し指と中指が蛇の如く伸び始め白色の音撃戦士=苑鬼へと襲いかかる。
「フッ!!」
苑鬼はバイオリン型の音撃弦「烈律」を構えると己に向かって延びる硬質な触手を軽くいなす
幾多の獲物を海へと貫き落とした赤黒い指も鬼が相手では通用しない。中距離戦では不利と判断した怪童子は指の長さを元に戻すと左腕の海老の脚に似た鋭い武器を構えて岩場を駆け出す。
「ハァェウェアッ!!」
怪童子は一気に間合いを詰めて苑鬼に左腕を振るうものの、苑鬼には行動を読まれていたのか後方に飛び上がるとバイオリンの弓型の音撃弦「烈旋」を利用して雷を帯びた矢に似たエネルギー体を生成し、怪童子へと放つ。
「くっ...ウェエエィアアッ...!!」
怪童子もみすみすと攻撃を受ける訳にはいかない。豪速で迫り来る矢を岩場を転がる様に避けると人間の裸足に似た岩場を蹴り上げた
「っ!?」
一気に間合を詰めて烈律で腹を切り裂かんとした苑鬼は驚愕した。甲殻類然とした姿をした怪童子は背中から蜻蛉に似た透明な翅からけたたましい音をはためかせながら橙色の空を浮遊していた。
「・・・」
宙を舞う怪童時の姿に苑鬼は一瞬の驚愕を覚えるがそこは一人前の音激戦士、すぐさま冷静さを取り戻すと烈律をバイオリンケースに戻し、その場で静止する。
「シイイッ!!」
夕空を飛ぶアミキリの怪童子は手ぶらになった鬼を見るやいなや急降下ながら左腕の爪で光を反射する皮膚を引き裂こうとする。
「.グエッ.....?」
怪童子の身体に一瞬の痛みが走り、ふとその根源であろう部分に視線を下にやると腹部に黒色の棒が突き刺さっていた。
棒が差していた先には弓矢を構えた鬼が地面を踏みしめていた。目の前の鬼が放った物が矢でそれが己の身体を貫いていたのは怪童子にさえ分かることだった。
「グウウェイヤアアアアウェエアアアウッ!!」
口元や矢の刺さった部分から白い体液を撒き散らしながら魔物の身体は元の軌道を外れる。
仰向けで地面に叩きつけられた事で矢は更に身体を深く貫き顔面や両腕の外骨格や胴体の黒い装甲さえも岩により嫌な音を立てながらズタボロの状態に崩れていく。怪童子の身体は派手に爆散することもなく地面に白い体液となって地面を穢す。
「あいつ、やっぱりバケガニの童子じゃ…」
海風に削られる怪童子の無惨な姿にぼやく苑鬼。その予感が的中したかのように海辺から古びた鉄骨が軋むような音が響き渡る。
「...」
狙い目が来たと言わんばかりに烈律と烈旋を持ち音撃を放つ構えを取る。
「さて、ここからが本番か...」
大きな水飛沫と共に夕暮れを被うその巨体を見た苑鬼の言葉が止まる
「・・・・・やっぱり違う...」
それは横に広い身体を持つバケガニとは似ても似つかない鋭利な姿の怪物であったのだ。
「アミキリだ...!」
苑鬼は確信した。童子の特徴や過去の文献、この頃の魔化魍出現パターンからみて感じてた違和感がここで的中してしまったのだ。
海上から上がったアミキリは海老にザリガニ似た扇状の尾を振りあげて飛沫を払う。ギィギィ耳障りな音を立てながら奇怪なバケモノはこちらに向けてにじり寄ってくる。
「...仕留めるか...」
苑鬼はため息をつけば烈律を構えて闘志を見せる。
ギイイイイイッ!!
アミキリはバケガニより鋭利な鋏を振り上げて一気に振り下ろす。
「はっ!!」
バケガニとは比べ物にならない速度で繰り出される攻撃も苑鬼には想定内の範囲、簡単に交わした跡に鋏が地面に刺されば土埃と共に石の破片が飛び散る。
ギイイイイイッ!!ギイイイイイッ!!!
アミキリは間髪置かずに連続で鋏による攻撃を繰り返すも苑鬼は華麗に交わしていく。
地面がどんどんと破壊され動きづらい環境になっても苑鬼の動きは一向に止まらない。
「ふっ!」
苑鬼は手持ちの武器を烈旋に持ち替えると
動き回りながらも僅かな隙を突くように矢状のエネルギーをアミキリに向けて打ち出す。
エネルギーはアミキリの節に刺さるがバケガニより強度が高いのか少し動いただけで簡単に地面に落下してしまう。
「くっ...」
苦悶の声を漏らす苑鬼の眼前に大きな衝撃が走る。自分が隙を突かれた形で至近距離で鋏攻撃の衝撃波を受けてしまう。
「ああっ...!!」
苑鬼の身体は地面を踏み締めていなかったのも相まって近場の草むらにまで投げ出されてしまう。烈旋も彼女の手から離れてしまい岩場を転がっていく。
ギイイイイイッ....
吹き飛ばされた鬼を尻目にアミキリは目線を近くの漁村に向けると背中から蜻蛉に似た二対の羽根を展開させる。地面に葉脈の様な影を写しながら羽根は蟲の如くはためかせその巨体を宙に浮かせ始める。
「たぁっ!!」
それと同時に威勢の良い掛け声と共に叢から苑鬼が飛び出す。
「逃すものですか!!」
苑鬼は地面に転がっていた烈旋を拾い上げると驚異的な跳躍力で宙を浮くアミキリの背中に飛び上がり、烈律を振り回して二対の翼を真ん中から切り落とす。
アミキリはバランスを崩して宙ぶらりんになっていた足を自重で粉砕させながら地面へ落下する。そして苑鬼は改めて烈旋を構え
(前の修行で編み出したあの技...一か八か今やるしかない!!)
烈旋からエネルギーの矢を10数本形成し斧の形状に変化させると
「ハ ア゛ッ゛!!!!」
力強い叫び声と共にアミキリの背中へ叩き下ろす。
エネルギーの刃は背中の外骨格にヒビを入れて内部の肉組織が白い体液を上げながら露出する。苑鬼はエネルギー刃と烈旋を分離させると烈旋の先をアミキリの傷へと突き立てる。そして装備帯から音撃震「雷乱」を外すと烈律に接続させる。烈律の側面の刃が厚くなり弦が立ち上がると苑鬼はアミキリの背中から烈旋を引き抜けば烈律を顎に乗せ烈旋の弓を弦に乗せる。
「音撃斬・狂雅叙奏...」
苑鬼の呟きと共に疎な星光が見える紫の空に華々しき一旋が紡がれ始めた。
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天の星が埋め尽くした夜空の下、叢に囲まれたテントの中には下半身を丸出しにしたまま眠りに落ちていた篤志がいた。東京から運転していた疲れがここに来たのかかなり深く落ちているようだ。弱い海風がテントの外を撫でる。
ぷすっ
ぷすっ
外から気の抜けた音がする。それはテントの布を貫くように現れた淡白い二本の触手である。それは上下左右に分かれて動きながらテントを引き裂いていく。
ベロンと布が剥がれた先にいたのは左手の指を蛇の如くうねらせたアミキリの姫と口元で左手をちょきちょきしているバケガニの姫だった。
「「見つけた...」」
二人のホットパンツの股間部分が濡れて光っていた。
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