※この作品はR-18です。

精喰らう姫   作:Z ERO

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まさかの二弾です。
今回は話を分けてで行きます。主役は仮面ライダー響鬼に初めて登場した姫である、屋久島のツチグモの姫です。



吼える母性 一 (屋久島のツチグモの姫)

2月のある日、空を黒が染め尽くし月が陽の代わりを務める時。

東洋のガラパゴスと呼ばれる自然豊かな屋久島。

原生林が僅かな月光を残して夜の僅かな明るささえも消えてしまう森の中、野生生物にしては大きい、しかし時間帯では人間とはどうしても考えにくいと思われる影があった。

 

空を覆う気を掻き分ける様に月光が蠢く影を照らす。光が暴いた場所にはこの季節ではまずありえない程の薄着の着流しを身に付け、艶めいた長い髪を顔の前に垂らし、右目の下には蜘蛛の巣の様な痣がある、まるで「大和撫子」と呼ばれる程に顔立ちの良い妖艶な雰囲気を纏った若い女性だった。女は惜しげもなく晒した青白い太腿を動かして枯葉の上を音もなく進んでいく。

 

女の目先には朽ち果てた木製の小屋が森の僅かな空間を支配していた。その中に人の気配では無く、虎に似た唸り声が響いていた。女はそこに語り掛ける様に声を出す。

 

『これだけ待っても帰って来ないのだから...貴方の父君は鬼さんに殺されたしまったんじゃ無いかと思うの...兎に角夜が明けたら...ここを出ましょう...』

 

不気味な事に女の身体から出たその声は成人男性の如く低かった...。

 

その女は屋久島の地で産まれた魔化魍、「ツチグモ」を育てる「姫」と呼ばれる人妖だった。

 

番である男の姿をした人妖「童子」と共に、子供であるツチグモを育てる使命を帯びた姫は餌である人間の肉、それも柔らかい肉を持つ若い女性や子供を与える為、屋久島の森に潜み眼を付けた獲物を襲っていた。

 

しかし、とある若い女性を蜘蛛の糸で捕まえ、互いに満足げな笑みを浮かべながら気絶した女を我が子の元へと運ぼうとした時邪魔が入った。その女のそばに天敵である鬼がいたのだ。鬼がけしかけた式神に獲物から離され森の中を逃げ回りながら式神を糸で封じると追ってきた鬼を迎え撃った。

 

口から吐く糸を使って原生林を飛び回り鬼を翻するために二手に別れたが、鬼は姫ではなく怪童子を追っていた。鬼の相手を童子に任せた妖姫は我が子の元へと向かっていた

 

我が子の父を亡くした事に対する悲しみを漏らしながら共に里へ降りる様小屋へと告げる。返事する様に唸る音が響けば姫は穏やかな笑みを見せた。

 

日が変わり、朝靄が闇を薄め始めた時、姫は我が子のいる小屋に向けて呟く。

 

『そろそろ...行きましょうか...』

 

姫は小屋の向く方へ歩き始める。小屋の底が僅かに浮き、草木を薙ぎ倒しながら姫を追い始めた。  

 

 

 

 

 

 

陽が森を多種多様に色付ける。街中の観光客も山へと向かう。

昨日童子と姫に襲われた女の従兄弟であり、鬼の隣にいた少年「安達明日夢」は母親とガイドから逸れ森の中を彷徨っていた。姫は狩場の近くを動いていた青年を見ると朝の移動に疲れた我が子の朝食へと考え獲物に決めた。

 

偶然にも少年は我が子の休む林の広場に来て、小屋の扉に触れていた。この中に自分の身体を凌駕する恐ろしい蜘蛛がいる事など知るわけがない。何も無いと少年がこの場を去ろうとした時、この機会を逃すまいと姫は少年の前へと姿を表した。

 

少年は目の前に絶世の美女がいるにも関わらず、声にならない悲鳴をあげ恐ろしい物を見た形相で後退りし始めた。

 

当たり前である。目の前にいる女...姫は人間では無い不気味な雰囲気を放っていたからだ。感情なんて無い、まるで人形の様な冷た...そして殺気...

少年は得体の知れない恐怖に逃避する様に後退りするしか無かった。

 

『よくお越し下さいました...』

 

姫は少年に挨拶をする。少年の恐怖は急膨張した。ただでさえ気持ちの悪い雰囲気に包まれた女から出る声は男の物だからだ。少年はこの場から一目散逃げ出したかったが、余りの恐怖により思考する余地すら奪われていた。女が右手を上げたと同時に木材が軋む音が響く。小屋の戸が開いた。扉の奥から赤い二つの点が灯り、飢えた虎の鳴き声が聞こえる。少年の心臓は今にも飛び出しそうである。足元の確認が出来なかったのか、少年は枯葉に足を掬われ尻餅を付いた。姫は一気に間合いを詰め、右手を蜘蛛の脚に似た形に変えると、鋭い先を少年の喉の寸前まで突き立てた。長い髪を垂らして恐怖の向こう側へ辿り着いた少年の顔を見やると、首を上げて愛おしい子供に向けて言った。

 

『さぁ...召し上がれ...』

 

怯える少年に顔を戻せば姫は前髪に隠れた顔から白い歯を見せて邪悪な微笑みを見せる。食事の挨拶の代わりの如く小屋の入り口から糸が放たれた。

 

しかし狼と猿の鳴き声が響くと、色鮮やかなカラクリが我が子の糸を切り離して、それに気を取られた姫は鷹の鳴き声を出す赤色の式神に体当たりされ、獲物から引き離される。

獲物を捕らえる為小屋から再度糸が放たれる。が、それを何処からか飛んで来た鞄に止められた。

 

立ち上がった姫の前に現れたのは、昨日の我が子の食事を邪魔をし、同時に夫の敵でもある鬼、「ヒビキ」だった。

 

「少年!」

 

ヒビキは勢いよく飛び出し、少年の服を掴むと、我が子の前から遠ざける様に引っ張った。

 

『あっ....』

 

姫は逃すまいと少年に掴みかかるが、ヒビキの速さには追いつけず、谷へと滑り落ちていった。

 

間一髪、斜面の木に捕まり明日夢を逃す事に成功したヒビキは姫のいる場所へと戻ってきた。

 

 

 

 

 

我が子にまたしてもご飯を与えることが出来なかった自らの不甲斐なさ、そして我が子の父を殺した怨み、怒りの頂点に立った姫はこの場所に戻ってきた鬼を睨みつける。

 

鬼と対峙し、両手を広げ、下腹部に手を合わせると、白い着流しが浮き上がり首へと吸い込まれる。

程よく実った乳房、牛乳の様に綺麗な腕や腹、毛一つ無い女性器... とても官能的な産まれたままの姿を鬼に見せつける。

 

身体を纏っていた衣服がマフラーの様に首に集まると肌が黒く変わっていった。女性的な体線を残し黒い鎧の様になり、両腕が蜘蛛の如く黄色と黒の毛の生えた形になり、端正な顔立ちも醜くに変わっていた。両手を下腹部から話した時、女の姿は子供である蜘蛛に酷似した怪物へと変貌た。これが姫の戦闘形態...鬼側はこの姿を「妖姫」と呼ぶ様だ。

 

目の前にいる男は手に持った音叉を叩くと額の前に掲げ、全身が紫色の炎に包まれた。

 

「タァッ!!」

 

気合の入った掛け声を上げ、男が炎を払うと紫色の音撃戦士「響鬼」へと変身した。

 

 

森の中で睨み合う異形、緊張が走る。

 

「・・・」

 

『ハァッ!!』

 

双方敵に向かって動き出す

 

我が子の食事を邪魔した怒りと我が子を守るため、右手を蜘蛛の脚へと変化した妖姫は鬼へと駆けよった。

 

「とりゃっ!」

 

しかし十数年に渡って何体もの童子と姫を相手にしていた響鬼には見慣れた技と赤子の手を捻る様な感覚で簡単にかわされ、カウンターの回し蹴りを胴に受けると呆気なく吹き飛ばされ、小屋の下へうつ伏せで倒れた。

 

まだ諦めないと奮起しながら妖姫は立ち上がろうとする。後ろから我が子が糸を放つ音が聞こえた。

 

((我が子よ、私を助けてくれるのか...!!))

 

姫は我が子の成長を心から喜んだ。発せられた糸は________

 

((えっ?))

 

粘り気のある音、巻きついた感触、その源は自分の左脚であった。

 

ツチグモは朝の移動や獲物のお預けを食らった事で空腹が頂点に達しており、目の前にいた女...あろう事かこれまで並々ならぬ愛情を持って育ててくれた母”自分“を餌にしようとしたのだ。

 

無常にも糸は引かれ、妖姫は小屋へと引き摺り込まれた。我が子に裏切られた絶望を奏でる様に扉がしまった。

 

『んくぅ〜っ!!!!』

陽の当たらない暗闇の中、姫は秘所を激しくイジられたかの様な喘ぎ声をあげる。股間に牙が突き刺さり、その穴から唾液が流れ込み始めたのだ。

 

『むくくくくっ!! くくくんぉほほほほおっ.....!!』

全身に強烈な刺激が行き渡り、姫は絶頂に耐える女の如く叫べば、肉が引き裂かれ、骨が砕かれるような嫌な音を鳴らされながら。我が子に”召し上がられる事になった。

 

しかし、姫には死ぬ恐怖も、我が子に裏切られた悲しみも無かった。「お腹の空いていた我が子の糧となれた」その事に対する喜び満ちていた。

 

ツチグモの口内には自らの母親はもうカケラさえ残っていなった。遅めの朝食を取って満足げなツチグモは小屋から八本の脚を伸ばし立ち上がると、妖姫の末路に呆然と立ち尽くしていた響鬼を襲い始めた。

 

 

 

 

 

ー 鬼と小屋がいなくなった広場、その近くで強烈な邪気を放つ存在がいた。黒い帽子とマスク、魔女の様な服とこの場所に似つかわしくない黒装束の女はどうやらこの場所での一連の戦いを見物しており、ただ一つ表情を確認できる目は無に満ちていた。左手に持った試験管を除き、右手でマスクを剥がす。

 

女の顔は姫と全く同じ顔をしていた。

 

女はマスクを戻すと右手を翳す。何処からとも無く銅色の杖が浮遊する様に現れ、レースの手袋をはめた右手に収まる。杖の上部には様々なタコメーターや先程の試験管をセット出来る様な器具が搭載されていた。

 

女は顔を上げると、鬼と小屋が向かった場所へとゆっくり歩き始めた

 




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