※この作品はR-18です。

錬金術のアトリエF   作:東京のぷるぷる

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フィリスの家
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4時間 南↓↑北
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おばちゃんの中継所小屋
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2時間 南↓↑北
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中心クリスタル広場
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1時間 南↓↑北
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中心クリスタル広場南中継所小屋
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8時間 南↓↑北
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パーストン一家の中継所小屋 兼トロッコ置き場。パーストンのご隠居
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4時間 南↓↑北
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空の見える場所兼釣り場
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1時間 東↓↑北
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坑道入り口中継所小屋



錬金術のアトリエF 1

☆

錬金術のアトリエF 1

 

「おはよう。今日も元気そうね」

輝く水晶亭の番人、テアさんが声を掛ける。

お化粧の達人でもある、綺麗な女性。

「おはようございます!テアさん!」

フィリスは、持ち前の明るい大声で挨拶する。

少し耳に障るくらいのパワーがある。

そして可愛い声と持ち前の明るさ……

そしてバカっぽい所で、フィリスは人気者っぽくもある。

「今日も元気いっぱいね?」

テアさんは少し苦みもある笑顔で、フィリスに手を振る。

「はい!」

そしてフィリスは、走り去って行く。

「本当に今日も元気ねぇ……」

そんなフィリスの後ろ姿を眺めて、テアは呟く。

 

 

そして、フィリスは町の出入り口へと向かう。

「はあぁ~お空……風……この扉の向こうに行けたらなぁ……」

大きな鉄の扉……

でも所々傷んでいたりして、以前に隙間からちょこっと風が吹いた時もある。

フィリスは扉に、ぴったりと頬を付けてみたりしてみる。

「ここだけ壊れたりしないかなぁ……」

独り言を呟きながら、扉の細い亀裂を指でなぞってみたりしてみる。

 

「カッ……カッ……」

 

30分程そうしていると、何かが帰って来た音がして、フィリスは扉から離れる。

 

ガゴゴゴゴ……

そして扉が開く。

その扉の分厚さたるや……

フィリスはそこに注目してみたり。

そして姉のリアーネと、狩人組が獲物を積んだ荷車と共に帰って来た。

「フィリスちゃ~ん!」

リア姉はそう言うと、携帯食の干し肉を取り出す。

「はむっ☆」

フィリスはジャンプして食い付く。

「ひあへへほはへひ~」

もぐつきながら、フィリスは言う。

なんかこんな感じがウケが良くて、思わず食い付いてみた訳だ。

「フィリスちゃん、今日も可愛いなぁ」

狩人組のおじさん、お兄さん達も、そう声を掛けて微笑みかけ、荷車を運んで行く。

大きな鉄の扉は、ちゃんと閉める人達が閉めていた。

 

「リア姉、お外の話聞かせて~」

フィリスはリアーネに捕まり、そうせがむ。

今日もどこで粘土拾いしていたのか、やたらと黒い砂に汚れている。

「も~♪でもまずは長老様に報告して来ないとだから、ちょっと行って来るわね」

そう言って、リア姉はフィリスから離れる。

この報告というのがいつも長いので、暇つぶしに鉱石探知の構えで、また歩き出す。

 

「も~♪じっとしていられないフィリスちゃん、捕まえた♪」

歩き出してほんの少ししたら、フィリスはリア姉に後ろから捕まり、持ち上げられる。

「あれ?リア姉早くない!?」

フィリスは振り向く。

狩人組の人々も居た。

「今日は長老にはお客様が来てるとかで、長老じゃなかったのよ~♪」

「男女問わずセクハラ祭りかと思っていたんだが、どうやら美人のお客様が来てるとかでな。しかしフィリスちゃん、今日もなんか臭いな」

「傷つく~!傷つくから~!」

イタズラっぽく笑う狩人組に向かって、フィリスはじたばたする。

よくあるやりとり。

 

家に帰る道、狩人組とリア姉から外の話を聞きながら帰る。

「おかえり、フィリス。リアーネ。食事、出来てるわよ」

母親、ニコラが2人に笑い掛ける。

今日も誰からかの服作りをしていたみたいで、作り掛けの服が作業台に乗っている。

「おお、リアーネは今日帰るんだっけ?2人とも、おかえり」

父親、ルーカスも2人に向いて微笑む。

装飾品職人なんだけど、よく母親の服作りも手伝っている。

「ただいま~、美味しそうな匂い!」

お肉の焼ける匂いに、フィリスはテンションを上げる。

 

母親も心得たもので、あとは焼くだけのセッティングの鉄鍋が、ステキな食事を演出するのだ。

「また泥拾いしてたのかい?フィリス、まずは手を洗っておいで。桶の水も新しいからね」

父親、ルーカスが優しい穏やかな声で言う。

「は~い」

リアーネとフィリスは、水桶に向かう。

 

 

そして一家団欒の夕食。

「また長老様から、ってお肉とハーブを貰ったのよ?フィリスも、よく頑張ってくれるって誉めていらしたわ」

母親、ニコラは上機嫌だ。

「そ、そうかな~……えへへ~……結構遊んで歩いてるんだけどね~……」

フィリスは照れ笑いする。

 

最近は特に採掘組に呼ばれる日も減ってるし、呼ばれてもお仕事の時間は短いし……

「なんか最近は長老様も、いつも町の中心クリスタル辺りに居るそうじゃないか」

父親、ルーカスが話す。

「うん。なんかお外が落ち着いて来てるから、長老様はヒマヒマになるとか言ってたよ?めっちゃぺたぺたすりすりされたよ~」

フィリスはそう話す。

3日前ぐらいに、妙なテンションのベルント長老に捕まって、ぺたぺたすりすりされた。

相変わらず、色んな人にぺたぺたすりすりしてた。

ベルント長老、恒例のライフワークなので、町の人はみんな馴れてる感じだけれども。

……ちなみに、カエルとかにも、ぺたぺたすりすりしていたらしい噂まである。

 

「でも、今日はお客様だとかで、居なかったみたいなのよね?」

リア姉がそう話す。

いつも恒例の、狩人組ぺたぺたすりすりの洗礼が、今日は無かったそうで。

「確かに、リア姉の報告、今日は早かったもんね~」

ウサギのロースト肉にフォークを伸ばしながら、フィリスは話す。

「このエルトナにお客様なんて、どんな人なのかねぇ?」

母親、ニコラが呟く。

 

「商人の人じゃないか?エルトナも、最近になって色々と交易品が来てるからね。見慣れぬ金属の加工に、僕ら職人も試行錯誤してたりするからなぁ」

父親、ルーカスも呑気にそう話す。

「あっ!じゃあお外の魔物も少ない感じなのかな?遂に私もお外に……」

フィリスが突然にテンションを上げる。

「これからすぐに繁殖期だから……外は危なくなるばかりじゃないかしら」

リア姉がそう答える。

「ダメよ!外なんて!あなた人一倍とろとろしてるんだから、魔物に食べられてしまうのがオチじゃない!」

母親、ニコラが血相を変えて立ち上がった。

なんか急に空気が変わり、それからは気まずい食事になる。

 

 

……ともかく食事を無事終えて、フィリスはリア姉と2人の部屋に。

そして100回は読んだ本、「風の旅人」の本を開く。

 

……風は旅をする。山を、谷を、海を。

 

フィリスはそんな風のように旅をする自分を夢見て、その本の絵を眺める。

「フィリスちゃん、またその本を読んでるの?」

リア姉がそう声を掛ける。

「リア姉はお外に出られるからいいけど、私なんか未だに1回も出れないんだもん!はぁ~……お外に出て、ふわ~っと旅してみたいよぉ……」

フィリスはため息をつく。

「ふわ~っと旅をするのは、お姉ちゃんもしてみたいけど、お外に出ても飛べる訳じゃないのよ?」

そしてリア姉が笑った。

そして2人は眠りにつく。

 

 

……コーン……

「ああん!寝起きのフィリスちゃん、可愛いわぁ!」

起きた途端に抱きつかれて、フィリスはじたばたする。

「も~リア姉がぁ!リア姉がぁ!」

 

朝……

と、いっても薄暗いままの町。

朝6時の鐘で目を覚ました2人がドタバタし始めて、父親も母親も目を覚ます。

「ああ、フィリスおはよう。今日からまた職人仕事に行って来ないとだね」

フィリスが部屋を出て走っていると、父親、ルーカスがそう言って起き出して来た。

そんな朝の日常。

「フィリスちゃん、捕まえた~♪」

「あ~もう!リア姉!どこ触ってるの!?も~!」

フィリスとリア姉で玄関先でじゃれ合う。

「狩人組、今回はちょっと長かったからかしら。フィリス分が足りてないのねぇ……食事は出来てるわよ?2人とも」

そんなじゃれ合う2人を眺めて、ニコラが言う。

 

 

食事を済ませ、フィリスとリア姉は南へと歩き出す。

エルトナの北端にある家だから、南方向に行くと、宿屋とか中心クリスタル広場とか、色々とあったりする。

そして、この町は結構広く、家から中心クリスタル広場まで、最短距離でも6時間掛かる。

 

「お空が見たい!坑道入り口の、釣り場に行こうよ!」

そしてフィリスがそう言い出す。

家~中心クリスタル広場で6時間、中心クリスタル広場~坑道入り口までは12時間ぐらい掛かる道のり。

 

「フィリスちゃん、本当にあそこ好きよね~。いいわ、行きましょう」

リア姉はあっさりと快諾して、2人は歩き出す。

「リア姉みたいに弓を練習すれば!お外に出れるかな~?」

歩き出す道で、フィリスが呟く。

「フィリスちゃんまだ小さいから、引ける弓が無いんじゃないかしら?弓作りならターロイセンさんに聞いてみる?」

「あの人怖いからなぁ……でもこの杖、凄くいいんだよね。岩を壊しまくっても壊れないからね!ターロイセンさん、凄いよねぇ……」

「じゃあ、道の途中だし、ちょっとお礼でも言いに行こうかしら」

「結構行ってるけど、弓まではお願いしづらいよね~……貴重な木を使わないとだもんね~」

 

そう話しながら、2人は歩く。

リア姉の外の出来事の話なんかも聞きながら4時間ほど歩いたらターロイセンさんの家。

でもターロイセンさんは留守だった。

あのおじさんも、よく外に出掛けて帰って来なくなる。

 

……そして中継所小屋に寄る。

このエルトナの町のあちこちに、中継所と呼ばれる小屋があり、長く歩き回る人々をサポートしていたりする。

これがベルント長老の時に作られたみたいで、フィリスはよく使う。

 

「あらフィリスちゃん、お姉ちゃんと一緒なのねぇ……今回はウサギだけじゃなくてね、イノシシも入ってるんだよ。ちょっと脂っぽいけどね」

中継所のおばさんが、そう言って食料庫を開ける。

家の近くの中継所は、もう中心クリスタル広場に程近くて、食料が充実していたりする。

ミルクまである時もある。

「おばちゃん、ミルクある?」

目をキラキラさせて、フィリスが訊ねる。

なんか、奥で寝てる人も居たりするけど。

「あるよ。今日も坑道に行くのかい?」

おばちゃんはそう訊ねる。

今日は、ついつい長話になってしまう、お喋りなおばちゃん。

 

「うん。お仕事はお休みなんだけど、坑道の入り口の、お空を見に行くんだ!」

ミルクを飲みつつ、フィリスは答える。

そして長話の構えを取るべく、長椅子に座ってみたり。

「じゃあ、ついさっきエドさんとブラウさんが釣り道具を持って行ったよ」

おばちゃんはそう話す。

長老のお客さんの話も聞いてみると、錬金術師とか言う2人組みが来ている、と話した。

 

「どちらも可愛い子だったねぇ。1人はなんか子供には刺激的な格好の美人さんだったよぉ。あんな格好でうろつけるなんて、とんでもない胆力の持ち主か、人を人とも思っていないか、どっちかだねぇ」

おばちゃんは、そう話す。

話す事が好きで好きでしょうがないから、フィリスが顔を出すと嬉しそうで、ここぞとばかり色々と教えてくれる。

「ほへぇ~……レンキンジュツシって何だろ?」

ほへぇ~って顔をするフィリスの横に、リア姉も座る事にする。

どうやら長くなりそうだし、こういう時間が流れるのは心地好い。

「私もそれはさっぱりだ。覚えるのも大変だったよぉ。でも、見た目華やかなお嬢さんだったけどねぇ」

 

おばちゃんとの話は続き……

それからは採掘組の作業員の人々のウワサ話とか、リア姉の狩人組の人々の話とか、色々なお喋りをして過ごす。

すっかり1時間ぐらい話して、中継所小屋から出る事になった。

 

 

「あのおばちゃん、本当に物知りよねぇ」

リア姉が妙に感心してる。

「中継所小屋って、色んな人が出入りしてるから、色々と詳しくなるんだって言ってたよ?次の中継所小屋は、もう採掘組のおじさんの持ち回りだから~……お酒飲んで寝てるのかもだよね~……」

フィリスは杖を振り振り、元気に歩く。

「中心クリスタル広場から南になっちゃうと、あまり採掘組以外の人は行き来しなさそうね?」

リア姉はそう話す。

 

家々が段々と減っていき、寂しい岩肌ばかりの道になってゆく。

中心クリスタル広場南端の中継所小屋には、冒険者らしき人と、おばさん達で賑わっているみたいだったけれど。

そんな暗くとも、のどかな風景を横目に2人は歩いて行く。

とはいえ、6時間+12時間……

「ここは寂しい所だよね~……」

フィリスは呟く。

「フィリスちゃんと一緒だから、お姉ちゃんは寂しくても気にならないわぁ~……」

ヘンタイ発動的な声色で、リア姉が話し、フィリスは素早く振り向いて警戒する。

「む~!?」

でも、リア姉はどこか遠くを眺めていたり。

そうして歩く道。

家で退屈してるのが嫌だから、暇さえあればエルトナの中を旅しているので、馴れた道。

 

 

……トロッコ置き場ともなっている中継所小屋で、一眠りしていく事にする。

「おや、ミストルートさんトコのお嬢さん達か。仕事……じゃないだろうから、釣り……でも無さそうだな……どうしたんだい?」

採掘組にも狩人組にも行く、パーストンさん一家が番人となっている場所。

ここまで僻地だと人同士のいざこざも起きる、との事でパーストンさん一家が目を光らせているそうで。

 

おかげで平和だとかなんとか。

 

「また、お空を見に来たんです。今日はリア姉と一緒に!」

騒がしく、フィリスは答える。

「まあ、寝ている人も居るから、静かにね」

パーストンさんはそう言うと、中継所小屋から少し離れる。

作業員の人々も眠ったりしている小屋の一部屋を借りて、フィリスとリア姉も一眠りしていく事にする。

 

 

数時間眠り……

とか思ったけれど、なんかガッツリ眠ってしまったらしく、時計が随分と進んでしまっていた。

でも、何も変わらない風景。

薄暗いままのエルトナ、岩だらけの景色。

「フィリスちゃん、あまり起きないから、寝顔を堪能しちゃったわ~」

「も~……リア姉はすぐにそういう事を言う~……」

そんな話をしながら、2人は歩き出す。

 

 

そして釣り場、空が見える場所へとたどり着く。

今日も釣りをしている人達と、休憩して焚き火を囲んでる人達が居たり。

「おお、リアーネ、フィリスも居るか。魚、食べるか?」

採掘組の人々が、焼いたお魚を振る舞ってくれたりする。

「あう~……苦いぃ……」

焼いた魚に食いついたフィリスが、苦い顔をする。

「はははっ、ハズレか。腹は苦い時もあるからな」

採掘組でよく見るバラディスケスが笑い、グレースさんが空を眺めていたりする。

焚き火の灯りは控え目で、岩の切れ目から覗く青い空は、眩しいくらいに明るく、苦い顔から戻ったフィリスにも、その柔らかな光を湛えている。

 

 

「あーーーーっ!お外に!行きたいっ!」

空が暗くなる頃、フィリスはじたばたすると、駆け出す。

いつもの発作でもある。

 

「また発作がでたなぁ……17になりゃあ、外も出れるとか言われてたような気もするが」

走り去るフィリスの後ろ姿を眺めて、バラディスケスが呟く。

「ここに来ると、いつも置いていかれるのよねぇ……」

リアーネもため息混じりに呟いた。

でも毎度の事だし、せっかくの星空でもあるし、ゆっくりしていく事にする。

 

 

「あう~……」

歩いて12時間の道のりなんて……

そんなもん走り通せる訳もなく、フィリスはパーストンさんの中継所小屋に入る。

「水、飲むかい?」

パーストンのご隠居が守っている時間だったみたいで、ご隠居が木のジョッキをフィリスに差し出す。

「あ!新しいコップだ!」

フィリスは、そう言ってご隠居を見る。

何ヵ月も前から待っていた、新しい木のコップ。

しかもでかい!ずっしりしてる!

 

「半年も待って、ようやく届いたんだよ。ドナの木で出来てる品物でな、フルスハイムの職人の作品だ。ロウも届いてるから暫くは手入れもしてやれるってもんだ。はっはっはっ……」

いつになく上機嫌で饒舌なご隠居。

フィリスが1番に使ったらしいけれど、7つあるらしい。

「いつもの水とは違うね!木の香りがするもん!しかも新鮮で元気な感じの!」

新しいコップに、フィリスもはしゃぐ。

「今のところは分かりやすいよなぁ……いい品物だよ」

ご機嫌なご隠居も、そう言って笑った。

「お外……行きたいよぉ~……」

フィリスはそうこぼす。

ご隠居としても聞き馴れた言葉だ。

 

「扉かぁ……でもこのジョッキも来たらしいし、色々と入って来てるみたいだからな。フィリス、お前が外に出れる日、ってのもそう遠い未来じゃないかも知れないな」

ご隠居はジョッキを眺めながら、そう話した。

これはとんでもなくご機嫌な様子。

「ご隠居さんは、外に出た事もあるんですよね?」

フィリスは訊ねる。

いつもはあまり聞けない、ご隠居の外の話を聞くチャンスでもある。

いつもは気難しいオーラが凄くて、あまり聞けなかったけれど。

……今が千載一遇のチャンス!

フィリスはそれを嗅ぎ付けたのだ。

「いや、無い。外に出た事があるなんて、一体誰から聞いた?」

ご隠居はフィリスにギョロ目を向ける。

「あわ……あわわ……だ、誰からだったっけなぁ~?」

大いに怯むフィリス。

ご隠居はそのギョロ目を細める。

「まあ良い。扉の様子でも見て行くのがよかろう」

 

ご隠居はそう話して、フィリスを解放してくれたので、フィリスは逃げるように北へと向かう。

目的地は家だけど、その途中にある中心クリスタル広場のすぐそばにある、外への大きな石の扉だ。

急ぎ足で向かい、そろそろ扉が見える頃、扉に取り付く赤い服の人と、なんか全裸?みたいな人が居て、フィリスはさらに急ぎ足で近づく。

 

(……ハダカかと思ったら、そういう服なの?)

 

近づいてみると、服を着ているみたいだ。

お尻の割れ目が見えるし、なんか変な感じに思う。

「よし、セット完了。あれ?」

赤い服の女の人はフィリスを見て、扉から離れる。

フィリスの方に2人とも近づいて来た。

「危ないですから、離れていて下さい」

裸みたいな人が、フィリスの肩を掴み、3人で扉を遠巻きに眺める。

扉には幾つも赤い何かが張り付いていた。

 

……ボスン!ボスンボスンボスン!

湿った低い爆発音がして、扉は砕け落ちる。

バラバラになって崩れ、その瓦礫が青く光り出した。

その青い光はどんどん強くなり、直視できないぐらい強烈な光になった。

「うわあっ!何これ~っ!」

薄暗いエルトナの町に馴れてるフィリスは、強く目を閉じて、大いに怯む。

 

……まぶしい。

……目が痛い。

……でもそれも治まって来た。

 

……確かに扉が壊れたんだ。

……外に行けるようになったハズなんだ。

そう思い起こしてフィリスは目を開ける。

いつもの薄暗さ、岩肌の景色が戻って来る。

「あーーーーっ!」

フィリスは扉に走り、扉にへばりついた。

扉が元に戻っているばかりか、新品のようにピカピカになっているのだ。

「あああああ……」

かなり古くなっていて、そろそろ壊れそうな部分もあったのに、もはやそんな場所もなくなり、細いヒビもどこにも見当たらない。

 

「へへ~……凄いでしょ?ベルント長老に頼まれたんだよね。ちゃんと開閉も出来るハズだけど、どうなんだろ?」

赤い服の女の人がそう言って、扉にへばりついたフィリスの側にやって来た。

「え?開くんですか?」

「そこも確認しないと~……なんだけど~……?でも、フィリスちゃんは、外に行きたくてしょうがない子なんだって聞いたよ」

赤い服の女の人が、そう言って微笑む。

可愛い声をしていて、なんか優しいオーラを感じる。

「私の名前、知ってるんですか?」

フィリスは赤い服の女の人を見る。

「へへ、自己紹介しなきゃだよね。あたしはソフィー、ソフィー・ノイエンミュラーって名前なんだ」

ソフィーは優しく微笑んで、そう話す。

そこに際どい白い服の、お尻が特徴の女の人もやって来た。

「私はプラフタと申します。あなたが居る前では扉を開けないように言われていますが、抜け出そうとしているのですか?」

プラフタと名乗ったお尻の人は、なんか賢そうな感じで、フィリスにそう訊ねる。

「え?いや、抜け出そうとはしていないんですけど……外は危ないみたいだし……」

フィリスは少し困った……みたいな感じで答える。

「それならば、今開閉の確認をしても問題無さそうですが……」

そう話していると狩人組の人達が2人、やって来た。

グローバーさんとセグルさんの2人。

釣り場でよく釣りをしている人でもある。

「なんか、新しい扉を開け閉めしてきてくれ……って……おおっ!?いつの間にっ!?」

おじさん2人は驚き、ソフィー達を見る。

「えへへ……頼まれた扉の直し、今終わりました。まだ開閉はこれからなんですが……」

ソフィーはそう言って照れ笑いをする。

「どれどれ……」

お兄さん2人が扉を少し開き、そしてまた閉じる。

「こりゃ、大したもんだ!レンキンジュツシってのは凄いなぁ!噂だけの話かと思ってたけど、こんな凄いもんなんか!」

そして目を見開いて驚いていた。

なのに、ちゃんと鍵を掛ける事も忘れてない。

 

「はぁ~……」

フィリスは新品同様になってしまった扉を眺めて、ため息をつく。

「扉が新しくなって、あまりお気に召さないようですね?」

フィリスの肩に手を掛けている、プラフタがそう言った。

「い、いや、そんな事はないですけれど……」

フィリスは小さい声で答える。

プラフタはくすっ、と笑った。

「フィリスちゃん、あたし達はフィリスちゃんにお願いをしに来たんだよね?このお願いを聞いてくれたら……外にも出れちゃうよっ?」

ソフィーはそう言って笑う。

「え、ええ~っ!?な、何をしたらいいんですかっ!?」

フィリスはさっきとはうって変わって、持ち前の大声になる。

 

「……あなたの声は、キンキンしますね……」

すぐ近くに居たプラフタが怯む。

「確かに。北の方に、そのお願いしたい事があるから、まずはそこに行こう」

ソフィーとプラフタ、フィリスは北へと歩き出す。

 

 

「この町、結構広い……というか細長いんだよね~……それでいて長いものだから、最初は結構迷い歩いちゃったよぉ~」

ソフィーが能天気な感じで話す。

「鉱石を掘り当てる為に、こんなになるまで掘った歴史があるみたいで、落盤の跡とかもあったりするって聞きましたけど~……今はパラパラしてる場所なんて、南端くらいしか無いから、安心なんだとか……」

フィリスがそう応える。

おばちゃんの中継所で、おばちゃんから聞いた話の受け売りだけど。

「以前にも錬金術師が入った、との記録もありますから、採掘が盛んだった頃は、天井にも手を加えていた、と考えられますね」

プラフタは上を見上げてそう話す。

「それよりも!私にお願いって何なんですか!?お外に出られるんですよね!?」

フィリスはキラキラの瞳を、ソフィーに向ける。

 

「その頼みたい事はね、ちょ~っと広い場所じゃないと紹介できないんだよね?フィリスちゃんに、錬金術師になって欲しいって話ではあるんだけど」

ソフィーはそう答える。

広い場所に行かないと、詳しく見せてあげられないのだとか。

 

「ああ……楽しみだなぁ……レンキンジュツシはよく分からないけど」

フィリスはうきうきふらふらしながら、プラフタの方を見る。

「私達は、頼み事の出来る才能の持ち主を探して、ここに来ました。ソフィーの作ったチャームが正しいなら、貴方で間違いありません。錬金術も、教えれば出来るようになるでしょう」

それからは錬金術の話をしつつ、3人で歩く。

そしておばちゃんの中継所小屋で、一息入れる事にした。

「おお、フィリス……それに錬金術師殿ではありませんか」

そこには、休憩しているベルント長老も居た。

かなりお疲れの様子だったけれど、3人を見るとなんか急にシャッキリしたような。

 

「長老!?」

フィリスは驚く。

長老が北の方に来る事はあまりないので、珍しい。

「おお、フィリス……錬金術師となってこの町を出てしまうなんて、寂しい限りじゃ~……あーすりすり、あーすりすり」

長老に捕まって、すりすりされるフィリス。

「じゃあ、本当に私、外に出れるんですかぁ~!?」

すりすりされながら、テンションを上げるフィリス。

「とはいえ、ひと月程は、本当に錬金術を身につける事が出来るのか、見定めなくてはならんがの。採掘の仕事もあるのだから、1年、という期限も設けさせてもらっておる」

 

「わぁ~!!……1ヶ月!?1年!?」

フィリスのテンションがかくっ、と下がった。

「そのくらい、お主はこの町に無くてはならん人材、という事じゃな。町の衆を説得せにゃならんワシの立場も考えてみい」

ベルントはいつの間にかすりすりから、ヘッドロックに変わって、フィリスにそう言って聞かせる。

「まぁ~……お外に出られるなら、1年でも贅沢……なのかなぁ……」

ヘッドロックされながら、フィリスが呟く。

「1ヶ月して、錬金術師らしい業が無いのなら、外に出す訳にもいかんがの」

ヘッドロックしたまま、ベルント長老はそう話した。

「え~!?そ、そんな無茶苦茶なっ!」

ヘッドロックされながら、フィリスは仰向けになる。

そしてベルント長老の顔を見上げた。

 

「そりゃそ~じゃろう!お主手ぶらで外に出て無事に済む訳があるまい!?そんな見殺しにするような送り出しは出来ん!断じて出来んのんじゃ!」

ベルント長老はヘッドロックを少し揺さぶる。

フィリスは少しじたばたする。

「あう……あうあう……」

 

「ともかく、錬金術とやらはこれから習うんじゃろうし、錬金術師殿からのお墨付きでもある。頑張ればどうにでもなるんじゃろう。用件は話したから、後はフィリス、お主からニコラとルーカスに伝えよ。ワシは腰が痛むので、ここからは引き返すからの」

ベルント長老は、そう言うとフィリスを解放した。

 

 

おばちゃんの中継所小屋で、水とか飲んで、更に北へと向かう事にする。

ベルント長老は、南の中心クリスタル広場に戻るみたいだった。

 

 




ここには、ゲームには無い、勝手に付け加えた設定を書いておく所。むしろだらけなんだけど、人物など。

[携帯食料の干し肉]
食べながら活動出来る携帯食は、こんなご時世には必須。と思うので登場。
[ルーカス]
装飾品の職人、という話は出て来ない。
[水桶]
上下水道は通っていないと思われるので登場。蛇口も無いハズ。
[ぺたぺたすりすりするベルント長老]
そんな事はしていない。
[6時間掛かる道のり12時間掛かる道のり]
これはゲームの方でも、そのくらいの時間の進行を見せる。むしろそれ以上掛かる。
[ターロイセンさん]
武器を作る人が欲しくなったので登場。武器職人。
[中継所小屋]
12時間とか掛かる道なので、休憩所的な場所。
[エドさんブラウさん]
釣り好きなエルトナ町民。
[採掘組]
鉱石採掘をしている集団。日によってメンバーはまちまち。だけどそこそこ決まった人もちらほら。
[狩人組]
狩りに出かける集団。日によってメンバーはまちまち。だけどそこそこ決まった人もちらほら。
[パーストンさん]
ご隠居、長男と妻、次男と妻、三男と妻、長男の息子さん、次男の息子さん、と持ち回りでやっている。パーストン一族みんな正義感が強い。
[作業員の人々]
採掘組に居る事も多い。作業服でうろうろしてる人。

[バラディスケスさんグレースさん]
釣り好きなエルトナの町民。採掘組でよく見かけるおじさん。
[グローバーさんセグルさん]
散歩とお酒が好きなエルトナの町民。狩人組によく参加しているお兄さん。
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