※この作品はR-18です。

業深迷宮日誌   作:黒山羊

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本日3話目。エロ無し回。
今後への布石を撒くための回なのでザーっと読み流してくだされば。
トレカのフレーバーテキスト的な回ですね。


プレゼントパーティ

 ————第1225号迷宮、業深迷宮バビロンに子供が出来た。

 

『迷宮と人の間に魔人種が誕生する、かもしれない』というその一報は、バビロンからの惚気を伝話で聞いた渇血紅帝・骸統皇カニヌから齎された。

 

 その話は魔術通信網を通じて邪神軍内部に瞬く間に広がり、インテリの多い邪神軍上層部の注目を集める事になる。

 

 そして、第1225号迷宮核に関する知識を参照した彼らは、淫系統ジャンルで新種をチマチマと開発している実態を知り、この機会に顔を繋いでおこうと考えた。

 

「……で、その結果がこの、ちょっと異様な数の贈り物達か。最初に転移してきたときは何事かと思ったぞ全く。……で、ヘラエ、シヴリン、非常招集を掛けた割に地味な作業をさせて申し訳ないが、内訳は?」

「ヘラエ報告よろしく。僕は整列とか誘導とかしてただけだから」

「了解だと回答します。……まず贈答品の類ですが、無難に妊産婦用のハーブティーやタオルケット、各種族に伝承される安産祈願の呪物などが多数を占めます。メッセージカードはまとめてあるのであとでご覧ください。呪物の方は実際に一定の安産効果を見込める魔術媒体ですので、既にアンナの部屋に輸送中です」

「なるほど。で、少数なのは?」

「まず、闇小人(ドヴェルグ)の長から、細身の短剣が。子供の武運長久を祈る護符だそうですが、鍛冶の腕に長ける闇小人の作ですので武装としても一級品であると鑑定します。他には魔女系魔物達からお腹に塗る事で妊婦の肌をケアする膏薬や、悪阻でも美味しく食べられる保存食などが届いております」

「魔女はさすが女性のみの種族だけあってだけあって実用的だな。闇小人の短剣も、将来的な実用性は高いし。贈答品はそんなところか……さて、では本題だが」

 

 そう言って、バビロンが視線を向けた先、ヘラエとシヴリンの後方には、ズラリと並ぶ百鬼夜行が存在している。……統一感のない魔物の群勢という風情だが、どれもこの迷宮では見かけない『普通の魔物』だ。

 

「はい。先程までの物品がアンナへの贈答品ですが、バビロン様向けの物は『生きた魔物』だと報告します。配下として使ってくれとのことで、各方面から色々と贈られてきています」

「ああ、見れば分かる。魔王カニヌが周囲に話すのは予想はしていた、というか半ば連絡担当をお願いしたような形だが、こうなるとは流石に予想外だな」

「ぶっちゃけ、みんな媚薬と受胎薬が欲しいんじゃない? スペリオルのところも無事妊娠成功したらしいし。……あ、報告したっけこれ」

「報告はされていないが知ってはいる。アンナに使った受胎薬はスペリオルの協力のもと改良された強化版だし。……で、受胎薬と媚薬か。媚薬の方は量産出来るし。随時お祝い返しとして送り返して行こう。受胎薬は流石に受注生産だな。……で、だ。話を戻すが、魔物の内訳は?」

「はい。まず第1号迷宮核『終天極界・邪神城 漆黒神殿 ネガ・クリフォティウム』様からですが……」

 

 そう答えたヘラエに、バビロンは引き攣った表情で、一旦ストップと手で示す。

 

「いや、お姉ちゃん……いや、うん、会ったことはないとはいえたしかに私のお姉ちゃんなんだが、えっと。うん、何してるんだあのお方は。末端の迷宮に干渉していいレベルの人じゃあないだろう? 邪神城といえば神が手ずから仕立てた原初の大迷宮だぞ……?」

「はい、その邪神城です。えー、品目は合成獣(キメラ)のつがい3ペア。メッセージカードの内容は『奥さんの妊娠おめでとう。お姉ちゃんも妊娠したいので受胎薬ください』ですね」

「成る程、完全な私欲絡みか。逆に安心したな……合成獣は進化の幅が広い下位魔物の中ではかなり強いし、素直に有難い。在庫は少しあるしすぐに送っておこう。……で、次は?」

 

「続いては、ご近所の第1108号迷宮核モロク様より鬼火10匹」

「ああ、フハユミ火山の。有り難い話だな。……しかし、雨の降るこの迷宮で鬼火は生きていけるのか?」

「雨程度で消える事はないそうですよ。完全水没させた場合は体内に貯めている酸素が無くなると鎮火するそうですが。メッセージカードはお祝いの言葉だけですね」

「なるほど」

 

「次は迷宮ではなく魔王の皆様からですね。誰からかは割愛しますので後でメッセージカードをご参照ください。鋼糸蜘蛛のつがいが10組、絡繰兵士(オートマタ)10体、豚10頭、馬10頭、魔造人間(ホムンクルス)10体、半魚人100匹、溝鼠1万匹、牛蛙30匹、草亀20匹、大鯰10匹、電気鰻10匹、林檎貝(ジャンボタニシ)1万匹、鰐のつがい1組です」

「いや、豚と馬ってなんでだ……と突っ込もうかと思ったが、後半が異様過ぎてまともに見えてきたな。後半ただの『沼地の生き物達』なのでは? いや、鰐とか強そうだけども」

「進化前かつ沼地適応な生き物を探した結果だそうです。鰐は砂漠を拠点とする魔王『灰燼熱砂王シビケ』からですね。砂漠の中で唯一水が枯れない、地下水脈と通じたオアシスで捕まえたとの事です」

「熱帯雨林出身の普通の鰐かと思ったら思いのほか貴重な鰐だった……実は溝鼠とかもそういう事情が……」

「ないですね。各魔王の眷属のうち最下層の個体を選んだようです。例えば溝鼠は『鉄鼠怨獣王ノゼム』からですね」

「うむ。知ってた。……ま、迷宮内で飼育すればどんな動物でも魔物化するだろう」

「バビロン様の育成の手腕に期待されていると考えましょう」

 

「で、最後に、魔王ではなく在野の各種族や邪教徒達からですが、小鬼が様々な鬼の氏族から総勢300体、悪魔族から小悪魔10体。それと、えー。竜族から『バカ娘』1体。邪教徒ですが、『苦悶の求道者』から『被虐姫ミダベチ』、『解放連盟』からは『雄彼男様(おひなさま)カマゲイ・ホラレアヌス』、『繁殖教団』からも『太母マトビリ』が業深迷宮への帰属を宣言し、集結しています」

「竜族のバカ娘……?」

「名前は『エロイーズ』。年齢20歳の若い竜だそうですが、なんでも淫乱との事です。それ自体は別段問題では無かったらしいのですが、性欲が強すぎて雄を数匹トラウマによる勃起不全にしてしまったそうで」

「淫系統じゃないのか、それ」

「竜族もそう思ったようで、今回のイベントを機に業深迷宮に保護を願い出たとのこと。メッセージの方も、お祝いの他に依頼文と結納金というか身代金というか、金品が」

「それもう、祝いの名目じゃなくて良いのでは……?」

「そうですね。厄介払いの面が強いかと」

 

 ヘラエのその返答に溜息をついて、バビロンは暇そうに口笛を吹いていたシヴリンに、各贈り物達を種類ごとに部屋に分けて入れる様に命じ、邪教徒の3名には居住区に1室を与えておくよう命じると、解散を宣言する。

 

「戦力増大は有り難いが、仕事が一気に増えたな。地道に一個ずつ淫系統化や適性判断をするしかないか……ひとまずは動物系をパパッと片付けて……」

 

 1人玉座で悩むバビロン。だが、その表情は実りある仕事への喜びに満ちていた。

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