エトナ・モンジベッロは騎士の家系であるモンジベッロ家の三女として生まれ、女性の身ながら優秀な騎士として活躍する、若き女騎士であった。
その細腕に精気を漲らせ、身の丈ほどもある両刃の大剣を豪快に振り回すその様は、新人でありながら『台風騎士』と称される益荒男振り。
そんなエトナはいずれ結婚する日まで、家名に恥じぬ騎士であろうと、魔物を相手に幾つもの戦場を駆けた。
将来を誓い合った青年もおり、部隊での先輩や上官の覚えも良く、後輩にも慕われる。大凡順風満帆な人生を歩んでいたと言えるだろう。
だが、それももう、10年も前の話である。
エトナの運命を変えたのは、皮肉な事に戦火ではなく失火である。これがもし、戦の炎に焼かれていたならば、エトナもこれ程に惨めな思いはせずに済んだだろう。
だが、実際に彼女が遭遇したのは、何処かの誰かがうっかり起こした山火事であった。
吹き下ろす乾燥した北風が焔を一瞬で膨れあがらせ、山を焼く火の手は枯れ木のみならず生木すら燃やしながら凄まじい速度で燃え広がった。
そんな、記録的な人災の中で、エトナが駐在していた山腹の砦は四方から迫る山火事に飲まれて脆くも焼け崩れた。石造りとはいえ、周囲が火に飲まれてはひとたまりも無い。
強熱された石が砦の彼方此方で爆ぜ、エトナと同僚たちは、崩落する砦に押し潰されたのである。
そんな中でエトナが半身に大火傷を負いながらも生き延びたのは、その身を盾に石と熱線からエトナを庇った上官の挺身あっての事。
その火災で部隊は数名を残して壊滅し、僅かな生き残りも、癒えぬ傷をその身に受けて、騎士の道を諦める他無い状況に追い込まれた。
その中で、エトナはマシな部類だったのだろう。左半身に広く火傷は残ったが、その身に宿す精気と神官の治療によって、どうにかケロイド以外は身体機能を損なわずに済んだのだ。
その醜い半身故に、民衆の憧れを背負う騎士としての栄達は難しくなったものの、生きていくのに支障はない。
だが。一体、世の中の誰が、焼け爛れた女を娶りたいと思うのだろう。
エトナの婚約はたち消えとなり、新たな嫁の貰い手もない。失意のうちに騎士団を辞した彼女は、冒険者として日銭を稼ぐ道を選び、家を出た。
焦げた甲冑にその醜い半身を隠して出奔したエトナは、この10年、宿の藁布団に潜り込む時以外鎧を脱がず、謎の甲冑騎士として冒険者稼業を続けて来たのである。
台風騎士として鳴らした勇名は失われたが、彼女の実力は変わらない。重装備を身に纏い、分厚い両手剣を縦横無尽に操る彼女はメキメキと冒険者として頭角を現し、果てには街を襲った火龍の首を討ち取って初段にまで上り詰めた。
そんな日々の中で、この10年間、エトナを苛み続けたのは、火事の記憶————ではない。
否、確かにそれも、忌まわしい記憶であり、エトナの脳裏に焼き付いたトラウマではある。だが、それ以上にエトナを苦しめているのは、彼女が持つごく当たり前の感情であった。
————人並みに恋人と付き合って。人並みに結婚して。人並みに子供を作りたい。
それは、強いて分類するならば、性欲や繁殖欲と呼べる衝動だ。だが、エトナにとってその欲望は、余りにも辛いものだった。
騎士として、そして冒険者として活躍する中で鍛え上げた精気。彼女の内に練り上げられたその生命力の奔流が、彼女の生殖欲求を果てしなく昂らせるのだ。
そんな欲求に苦しむあまり、恥ずかしい話だが、エトナは今から4年ほど前に男娼を買ってみたことがある。……だが、言うまでもなくその結果は惨敗。
流石に金を貰って春をひさぐ男だけあり、エトナの裸身を見てもその微笑みを崩すことはなかったが、男性器というのは正直だ。男娼の逸物は萎縮して小さくその身を隠し、エトナは結局返金を受けて店を去ることとなった。
それ以来、エトナは何処か、壊れてしまった。日中は魔物を買って日銭を稼ぎ、夜は張り型を相手に乱れる日々。
そんなエトナの妄想の中に登場するのは、あの日の男娼と、かつての婚約者の面影がある、おぼろげなイメージの男性。
夢の中の彼は醜いエトナの半身を見てもその逸物を熱り立たせて激しくエトナを求め、その胎内に溢れんばかりの精を注いで、疲れ果てたエトナに甘い睦言を囁いてくれるのである。
そして、そんな夢から醒める度に、エトナは枕を涙で濡らす。過去の自分と、故郷の家族と、自らを庇った上官が、幻影となって彼女を責めるのだ。『騎士としての誇りを捨てた阿婆擦れめ』と。
それが自身の
氷のような無力感と、炎のような獣慾に、エトナの精神は徐々に磨耗し、崩れ、欠けていく。
だがそれでもその武技は冴え渡り、冒険者初段『屠龍騎士エトナ』として数多の魔物を討ち滅ぼしてきた。そしてそれ故に名声轟く『鎧のエトナ』と、惨め極まる『裸のエトナ』はより一層乖離して行く。
そんなギャップに苦しみ、地獄のような日々を過ごすエトナに、ある種の朗報が飛び込んで来たのはつい先日のことであった。
————曰く、此処より遥かに南方のネミツ湿地帯に10年前現れた新迷宮は淫系統偏重型の、珍しい迷宮である。
————曰く、そこは沼稚児や滑液魔が潜み、震撃蝦蛄と淫猥大蟲が蠢き、夢魔睡蓮が咲き乱れ、そして卑猥な石像が乱立する色欲の沼である。
大陸南部からやってきた商人から偶々そんな噂を聞いたエトナの心に、ふと影がさしたのだ。
————バケモノの様なこの身でも、化け物ならば欲情『してくれる』のではなかろうか、と。
そして今。エトナ・モンジベッロは数ヶ月の旅を経て、『業深迷宮バビロン』の門に臨んでいる。眼前には、古代都市の沐浴場を思わせる円形に整備された泉と、そこに乱立する卑猥な裸像達。そして、その中心に聳える巨大な『自慰に耽る王女』像。
泉の水は薄く桃色に染まり、空気は甘い香気を帯びている。その全てが媚薬という、あまりにも馬鹿馬鹿しく、余りにも厄介なその迷宮は噂以上の存在感であり、多くの迷宮に潜ってきたエトナをして、久々に『未知の空間』への恐怖を抱くほどの妖気を放っていた。
「……私を組み敷くことができる程の魔物は果たして……居ないならばその時は踏破するしかないが、もし居たならば……いや、その時は最早私に選択肢はない、か」
思わず漏れるのは、そんな呟き。今までの稼ぎを実家に送金し、身辺整理も終え、後腐れはない。
遥々南方のネミツ湿地帯までやってきた関係で、こちらでエトナの名を知る者もほぼ居ない。
死にに行く覚悟を決めて迷宮に臨むエトナは、しかしタダで死ぬ気は毛ほども無かった。むしろ迷宮内の魔物が不甲斐ない様であれば、そのまま踏破する気合いである。
そんな彼女は、胴付長靴の上から鎧を着込んだ沼地仕様の装備で迷宮に向かい、一歩を踏み出した。
その直後。弾ける様に泉の中から植物系魔物『夢魔睡蓮』の触手状の根が飛び出し、蛇のような肉蟲の魔物『淫猥大蟲』が鎌首をもたげて殺到した。
それらは鎧を着込んでもなお女性的な曲線を描くエトナの脚へと絡みつき、万力の如き勢いでそれを締め上げる。
だが。段位を得た冒険者を前に、その程度の有象無象が太刀打ち出来るはずも無い。
ただ歩くのみのエトナの足によって、夢魔睡蓮の触手は引き千切られ、淫猥大蟲がちぎれ飛ぶ。龍をも屠る化け物殺しの化け物の足を止めるには、彼らではあまりに荷が重かった。
そのまま悠々と歩を進め、エトナは迷宮の門を潜る。その内部はまるで古代の地下水道。
壁には繊細なレリーフが彫り込まれているが、足元は泥濘に覆われており、天井からは霧と雨が降り注ぐ。
息をするだけで媚毒が身体を蝕むその空間の中では、エトナも全く影響を受けないわけではない。兜の下の頬は上気し、乳首とクリトリスが固くしこって存在を主張しては、甘い快楽を享受しようと誘惑していた。だが、 彼女はもとより情慾に身を焦がしたケダモノだ。快楽への予感はむしろスパイスとなり、彼女の歩みを加速させる。
そして、その行く手には不思議なことに魔物の影はなく、道の分岐もない。
————露骨に誘われている。
そう自覚してなお、エトナの歩みは止まらない。自分を倒す強者がその先にいるのならば、それはむしろ歓迎すべき事なのだから。
「ああ、楽しみだな」
思わずそう呟いて、エトナはより一層歩みを早めていく。
* * * * * *
妨害のない、ただ長い長い迷宮。静かに天井から甘い香りの雨が降り、足元にきめ細かい白泥が満ちた、乳白色の地下構造体。
壁面の無数の彫刻は淫靡かつ美麗な女体を形取っており、あるものは乳首に嵌めたピアスにカンテラを吊り下げ、あるものは膣に燭台を挿入して、各々に迷宮を照らしている。
それらは生きているかのように蠢き、通路を歩むエトナに向けて蠱惑的な動作で誘惑を投げかけていた。————いや、事実生きているのだろう。此処は迷宮の胎の中。世界唯一の『迷宮自体が淫魔』なダンジョンは、その構造自体が人間の情欲を掻き立て、精を貪ろうとしているのだ。
そんな通路の足元には、膝丈程の泥濘と水。この迷宮の水には『幻燈海月』と呼ばれる魔物が棲息しており、その魔物が淡い燐光を放っている為エトナの視界は地下とは思えぬほどに明るい。
もちろん幻燈海月もこの迷宮に棲む魔物の一種。色とりどりのその妖光は幻覚作用を帯びており、意志の弱い者は見ているだけで淫夢の中へと囚われる。
だが、エトナにとってはただの明かり。便利な迷宮の機能に過ぎない。降り頻る媚毒の雨の中ではカンテラも役に立たない為、視界を明るく照らす幻燈海月は大いに役立っていた。
そして、その明るい視界の中でもとりわけ明るい場所に今、エトナは立っている。
天井からいくつも吊り下げられた卑猥な女堕天使を象ったシャンデリアは、その翼状の燭台に無数の魔力の輝きを灯し、壁には光り輝く水晶の裸婦像。
目を凝らせば、その裸婦像の輝きは、胎に宿した胎児型の魔石による物であると看破できるだろう。
そして広間の中に等間隔で配された『冠を戴く全裸の美少年』を象った黄金の立像はどれも異なる外見とポーズをとる手の込んだ作りで、その冠には桃色に燃える炎が燃え盛る。
そんな猥褻にして豪華絢爛たるその場所に、それ、否、『彼』は待ち構えていた。
緩やかなウェーブを描くアッシュブロンドは肩に掛からない程度に切り揃えられ、服は白のワイシャツに白金の糸を織り込んだ灰色のベストとスキニースラックス。
襟を引き締める真紅のリボンタイには金糸のレースがあしらわれ、肩に羽織るのは同じく真紅の薄く鞣したレザーマント。
これで陶器のような質感の籠手と脛当てが無ければ、舞踏会にでも行くような装いだ。
だがしかし。その青年は怜悧な相貌に蠱惑的な笑みを浮かべながらも、悍ましいまでの闘気を放ち、魔力を滾らせている。
「この魔力。……上位魔人か?」
エトナが漏らすのは誰何の声。淫系統魔物は『人を誘惑する』という関係上知能の高いものが多いが、ヒト型であればそれは尚更の事。
そして、エトナの経験上、上位の魔物である程に、人との会話を行う傾向にあった。
相手の心を惑わせ、挫き、瘴気を生成させる事を目論む魔物の生態からくる本能的な行動。
圧倒的な余裕から来る強者の振る舞いで『心を圧し折る』事を目的とした『口撃』は、上位魔物の作法とすら言えるのだ。
そしてエトナの見立て通り、青年の姿をした魔物は口を開いた。
「ええ。その通りです。僕は『淫泥魔人公子』スペリオル。バビロン様より貴女の捕縛を命じられた、しがない淫魔です。永いお付き合いになるかと思いますので、何卒よろしくお願いしますね」
そう名乗る顔に浮かぶ微笑は貴公子然とした甘さを帯びており、初心な村娘から手練れの娼婦まで悉くを魅了するような色気を帯びている。
ただ声を聞いただけで脳髄の奥が疼き、もっと声を聞きたいと思わせる本物の『魔性』。
甘美なその誘惑に対し、エトナはガチリと奥歯を噛み締めて抵抗する。
————身も心も堕ちてしまいたい。
そんな劣情に駆られる裸のエトナと、戦士としての死に場所を求める鎧のエトナ。そのジレンマが彼女の脳に負荷を掛けるが、ある種怨念すら篭ったその葛藤すらも精気の漲りに変えて、彼女は真っ向から魔人スペリオルを睨みつけ、言葉を返す。
「捕縛、か。拷問にかけ、苦悶の瘴気を搾り出そうというのなら諦めろ。私は苦痛には屈しない。……それ以前に。ここでお前を倒せば、私を捕らえることはできんだろう?」
言うや否や、エトナは背負った大剣を抜き放ち、鞘走りの勢いそのままにスペリオルへと叩きつける。本気ではあるが、その一撃はあくまで開戦の狼煙に過ぎず、エトナもその一撃で決着をつけるつもりはない。……が、その結果は予想外のものだった。
脳天から腹までざっくりと切り裂かれたスペリオルの肉体。背骨を引き裂いた一撃は腰椎で辛うじて止まり、真っ二つの断面からは内臓がドロリと覗く。血が剣を伝ってエトナの籠手にまで滴り、錆臭いような生臭いような匂いがエトナの鼻を突いた。
「……え?」
圧倒的な強敵だと、本能が感じていた。皮膚が粟立つほどの威圧を受けていた。それ故に、あまりに呆気ないそのざまに、エトナは思わず一瞬呆けてしまった。
それが失策だと気づいた頃には、もう遅い。
「失敗しましたね、お姉さん」
「ぐッ……ぎぁッ……」
籠手へと伝った血が突如触手のように蠢いて鎧の内部に侵入し、そこを基点に目の前で『開き』になったスペリオルの肉体が瞬時に蕩けてエトナの鎧に流入。その肢体を直接締め上げると同時に、内側から鎧の留め具を弾き飛ばし、手早く武装を解除する。
それと同時に溶解した体躯が再構成され、エトナの首を鷲掴みにした姿勢で無傷のスペリオルが現れる。
「貴女はもう少しお淑やかにされた方がいい」
「かはァッ…… くそがッ……舐め……」
「気を爆発させようとしても無駄です。僕は既に貴女の内部に侵入を果たしている」
スペリオルのそんな言葉と共に、エトナの内股に針のような痛みと何か冷たい液体が流れ込む感覚が走る。
淫系統魔物の媚毒の恐ろしさを知る者ならば、それがいかに危険な事態か理解できるだろう。
ましてや上位魔人にまで達した淫魔のそれを喰らってしまった日には、もはやイキ狂う以外何もできない肉人形に成り果てるしかない。それは常人に耐えられる毒ではないのだ。
だが、エトナは先手を綺麗に返されたとはいえ『冒険者初段』の超人であった。
「私をッ……舐めるなぁッ!!!」
「ッ!?」
エトナの全身から噴き出したものは、ただの精気ではない。火龍を屠ったその功績と、業火に焼かれた自身の経験から、彼女は精気を熱量に変換する技能『炎纏』を獲得したのだ。
近接物理戦闘に特化した騎士職でありながら属性攻撃を可能とするその技能は、エトナが今まで単身戦い抜いてきた証であり、強力な武器である。
そしてその炎の勢いそのままに、エトナは怯んだスペリオルを振り払————えなかった。
むしろ彼は燃え盛るエトナを引き寄せ、その手を彼女の背に回して、キルトアーマーの上から彼女の胴を締め上げてみせたのだ。
「これはこれは。驚きましたよ。……しかし残念。多少熱くなった程度でこの手を離すと思いましたか?」
「馬鹿な、技能による再現とはいえ龍種の炎が『熱い』で済むはずが無い!」
「ええ、確かに。こうして今、燃える貴女を拘束している僕は常に炎によるダメージを受けています。ですがね、お姉さん。魅力的な女性を抱きしめる為ならたとえ火の中水の中。それが淫魔という魔物なのですよ。……それにほら、ダメージを受けたなら、回復すれば良いんです」
スペリオルはそう言って、拘束を逃れようともがくエトナの首筋に唇を這わせ、そっと唇で頸を食んだ。
淫魔の口付け。それは人間には到底達し得ない魔性の愛撫。
雰囲気や情動で性的興奮を得る女性にとって快感を感じようのない戦闘中にすら、エトナの首筋に快感を齎す甘い毒だ。
そして、その快感こそが淫魔であるスペリオルの糧となる。それを理解して暴れもがくエトナだが、裏拳を入れようが、肘を入れようが、水の入った革袋を殴ったような重い感触がするのみで一向に効いている気配がない。
その一方で、身体の中にじわじわと流し込まれ続けている媚毒は既に彼女の全身へと回り、身体は意識と裏腹に弛緩しつつある。
スペリオルが語る通りの、圧倒的な相性の悪さ。物理攻撃を無効化する沼人系魔物の上位種であるスペリオルには、エトナの攻撃の一切は通用しない。
加えていやらしいことに淫系統魔物でもあるスペリオルは、エトナに触れて快感を与える度に精気を食って回復してしまう。
だが、彼女の真の敗因はそこには無いと、スペリオルは看破していた。
何しろ彼は自身が淫泥魔人公子であると名乗っており、エトナが話に集中していれば『物理的な攻撃は効かない』というのは剣を抜く前に判っているはずなのだ。
にもかかわらず彼女は斬りかかった。それはつまり、話を聞く気がないか、或いは————。
「お姉さん。貴女、敗北を望んでいたんじゃあないですか?」
「ッ何を……ぐぁッ」
「魔術が使えないにしても、魔導具なり護符なりを用意できるでしょうに。それが騎士らしい手段かは別として、我々魔物に対抗するのに手段を選んでしまったのは、貴方自身の枷、心理的な油断とでもいうべきものでしょう。……ねぇ、お姉さん?」
「くっ……」
「おや、力が緩みましたね。図星を突かれて動揺しましたか? 可愛い人だ。————しかし、精神状態はともかく貴女は騎士としては間違いなく超一流。人を縦に切り裂くなんて並の膂力じゃあないですからね。ふふふ、僕の奥さんにするには申し分ない方だ。いやぁ、こうしてお知り合いになれて良かった」
そんな戯言を吐きつつ、スペリオルは締め付けを強め、媚毒の注入量を少しずつ増していく。血管を巡り、筋肉に浸透し、精神を侵す魔性の毒。いかに屈強なエトナとはいえ、上位魔人の分泌する媚毒を無効化するすべは持たない。
もはや精神はともかく、肉体的にはエトナは完全に敗北していた。
下着は既に愛液に浸り、クパクパと肉欲を求めて蠢く大陰唇の内側で、可愛らしいピンクのヴァギナがヒクヒクと脈打っている。シャツの中では乳首がビンビンと痼って存在を主張し、全身の皮膚はその上を締め付けながら這い回るスペリオルの『泥』の感触に甘い快感を得て蕩けるばかりだ。
そうして、わずかに残った自我と精神にスペリオルは遂にトドメを刺した。
「おやおや、素直になってきましたねお姉さん。女性はそうして快楽に悶える姿こそが美しい。……そろそろ仕上げにしましょうか」
その言葉とともにスペリオルの指先から伸ばされた無数の極細触手がエトナの陰核に突き刺さり、夥しい量の媚毒を一気に注入したのである。
「んゴッふぉぉぁぁああぁぁん!?!!? ンッ♡ ぎげぉぁッッ♡♡♡ …………ほぁ……♡♡♡」
強烈な快感に意識を消し飛ばされ、くたりと脱力したエトナ。そんな彼女を横抱きにして、スペリオルは地下深くの自室へ向けて歩み始める。
「そう言えば結局、名前を聞きそびれましたね。……まぁ、仲良くしながら聴き出す事にしましょうか」
そう呟く迷宮の貴公子は、現れた時と同様に、柔和な笑みを浮かべていた。
* * * * * *
エトナは、肌が外気に触れる感覚で目を覚ました。
まだ目の焦点がボケているが、どうやら先程までいた空間ではなく、ここは誰かの部屋であるらしい。
エトナが寝かされていたのは、石の寝台の上に敷かれた、草を編んだマットレスの上。
床が水没していることを除けば綺麗な室内には、大理石のテーブルや椅子、いくつもの石板が納められた本棚、ガラス製の食器が並ぶ食器棚などが並べられ、この部屋の主の生活感を匂わせている。
「ここは……」
「おはようございます、お姉さん。いえ、エトナさん。……失礼、勝手に身分証を拝見しました」
「……っ!」
エトナの独白に応じた青年。彼女の寝るマットの足元側に腰掛けた彼を視界に捉えた瞬間、エトナは一気に正気に返り、素早く上体を起こした。が……その直後ふと脱力し、項垂れる。
青年の隣に立てかけられた姿見に映るのは、焼けた半身を晒した自身の肉体。自身が敗北し、完全に武装解除されたのだと悟ったエトナは、抵抗の意思を失ったのだ。
もとより、ここで負ければ生きて帰ることは諦めていた。ならば、最期は潔くあらねばと、彼女の中に残る騎士道精神の残滓が主張したのである。
「……私は敗北したのか? ……いや、思い出してきた。完膚なきまでにやられたのだな……不甲斐ない。だが、私の負けは負けだ。……煮るなり焼くなり好きにするといい」
「ええ。好きにさせてもらいますよ、エトナさん。ちゃんと好きにさせますから」
「……? それはどういッ!? おい、お前、スペリオルだったか、お前、何をッ、んむぅっ」
上体を起こした状態のエトナ。彼女の上にスルリと流れるような動きで潜り込んだスペリオルが行った不意打ち気味の口付け。
挨拶のように啄む軽いキスはそこそこに、甘い唾液を纏い、蛇のように蠕く舌がエトナの咥内へと侵入し、くちゅり、くちゅりと音を漏らしながらエトナを愛撫する。
上顎、舌下、歯茎の裏から歯列の一本に至るまで、丹念に舐め回し、舌で揉み解す。流し込まれる媚薬混じりの唾液を嚥下した事も相まって、エトナの頭はポヤポヤと蕩け、しかし同時に激しく混乱していた。
魔物に凌辱される覚悟を決め、情け容赦なく男根をつき込まれ胎内をズタズタに食い破られる苦悶を味わうものだと内心で考えていた彼女は、体内に精気を巡らせ、せめて痛みで情け無い声を漏らすことがないようにと苦痛にそなえていたのである。
男日照りが過ぎて魔物に犯されようとしていた彼女の誤算は、淫魔の性質を見誤った事。ヒトを犯す魔物と聞くと小鬼や中鬼がパッと閃くせいで、彼女は『無理矢理犯される覚悟』をしていたのだ。
それがどうだ。今彼女が受けているキスは、あまりにも甘く、優しく、丁寧なもの。こんな状況でありながら彼女が今まで生きてきた中で最も幸せなキスであろうと言い切れるほどに、その口付けには愛情があった。
「ふふ。エトナさん、可愛いです」
「……? ……???」
もはやエトナは混乱のあまり言葉も出ない。『奥さんにする』だのと言われた記憶はあるが、それは所謂苗床や孕み袋のことであろうと思っていたのだ。優しく口付けられ睦言を囁かれるなど、予想の範囲外過ぎて対応しようがない。
だが、この業深迷宮バビロンにおいて、そのような常識は通用しないのである。
心を開かせ、より積極的に快楽を味わわせる事で寧ろ精気の発散は促進される。瘴気よりもそちらを求める淫系統魔物にとっては、人間に優しく接することは何ら本能に矛盾するものではない。
そして、エトナにとってその体験はあまりにも衝撃が強かった。
灼け爛れた半身のケロイド。赤黒く盛り上がったその薄い皮膚に舌を這わされ口付けられるなど、日々空想の中で交わりを夢見ていた『むっつりスケベ』なエトナでさえ、考えてもみなかったことである。
彼女の抱えるコンプレックスがその発想を阻害していたのだ。そして、それ故にその快感たるや尋常のものではない。
「ダメだ、そんなッ、綺麗じゃないからッ!」
「何故? 貴女は素敵ですよ、エトナさん。焔の様に輝く、透き通った高密度の精気……実に甘美だ。いつまでも味わっていたい。もっと貴女の味を教えて下さい、エトナさん。……ちゅぷぅ♡」
「ンァォォぉおんッ!? 吸われてッ!? あぁぁあああッ…………あンッ♡♡♡」
「んっ、エトナさんの乳首、大変美味しいです。ここの精気は甘いのですね。ミルクのようだ。……ちゅ♡ エトナさんのミルク精気、もっと飲ませてください♡」
そう良いながらケロイドに覆われた片胸に舌を這いまわらせ、焼けた肌を手で撫で摩るスペリオル。
その愛撫に翻弄されるエトナはしかし、快感に震えながらも一流の戦士としての感覚で自身の肉体の変化に気づいていた。
スペリオルが入念に吸い付いていた乳首は本来ケロイドに埋もれていた筈のもの。胸とてケロイドで強張り、撫でさすられている皮膚も蚯蚓をびっしりと植え付けたかのような酷い有様だったのだ。
だが、今まさに、スペリオルが撫でさすり、舐め回す端から彼女の肉体から歪な隆起が失せ、赤黒くも滑らかな、女体の造形が蘇ってきているのである。
「れろっ♡ んちゅぅ……♡ ふふ、気づいたようですね、エトナさん。大丈夫。色は戻せませんが、貴女の身体の瘢痕は、全て僕が食べてしまいます……ですから、貴女はただ気持ち良いという感覚だけを感じてください。全て僕に任せて……じゅるるるるぅ♡」
傷跡を『喰う』という奇妙極まるその光景。それはスペリオルの持つ『淫泥魔人公子』としての能力を活用した、繊細な治療であった。粘液状の肉体で覆い、隆起した部分を瞬時に消化し、その傷跡を治癒と催淫の力を持つ分泌液で止血し再生させる。
皮膚の奥底まで至った色素の沈着までは消せないものの、せめて肉体の形状は元に戻してやろうというその施術は、エトナにより気兼ねなく快楽を貪らせる為の下準備。
治療が進むほどに体内に侵入する媚毒と、傷が癒える喜び、皮膚を這う快感。その全てがエトナの心を揺さぶり、極上の精気をじわじわと溢れさせる。
スペリオルは治療を進めながら、その甘美なる精気の味わいに酔い痴れているのだ。
「……火傷が、身体が……ああ、戻って、戻って……あ、あぁぁあああッ、ああッ、あぁぁ…………ぐすっ、う、えぐぅ、どんな薬でも、戻らなかったのに、私、私の、あああああああぁぁあああッッ………………!」
「ちゅるッ……嗚呼、甘露。エトナさんの涙は、実に美味しい……ふふふ。今から更にイイ事をするのですから、このぐらいで泣いてはいけませんね。ほら、唇を此方に。……んちゅ、ちゅぅ、ちゅぱッ……♡」
「んッ、んんんん〜〜ッッ♡♡♡」
痛みを感じる間もない瞬時の治療とはいえ、傷が治った直後のような、微かな痒みの感覚を伴うスペリオルの施術は、彼の強力な媚毒に侵されて快感を増幅されたエトナにとっては、耐えがたい責めだ。
美しく修復されて行く肉体を仰け反らせ、つま先に力を込めて快感を逃そうともがく程に、スペリオルの卓越した手技が彼女を襲う。
円弧を描き、赤黒く色づいた肌の上で踊る指先。強張る筋肉諸共緊張を揉み解す掌。太股の間に滑り込む脚は濡れそぼった秘所を優しく擦りながら、張り詰めた彼女の脚に絡みつく。
そうして隈無く漏れ無く全身を愛撫され、エトナが意識を完全に蕩かす頃には、彼女の肌は真紅と白のコントラストは残るものの、ハリのある美しいものへと修復されていた。
その段になって漸く、スペリオルはエトナの口腔を凌辱していた舌を戻し、最後にじゅるりと彼女の唾液を飲み込んでから、その唇を解放した。
「んっ……ぃやぁ……♡ もっと……♡」
「可愛い……♡ 僕もエトナさんとずっと口付けていたいですよ。しかし、他にも色々楽しまないと、損ですよね」
そう言いながら、スペリオルは軽くエトナの唇へと口付け、強請るように伸ばされる彼女の舌先を軽く吸ってから、頬にキスを落とし、そこを起点に舌を彼女の肌へと這わせ始める。
頬から目尻を経て、耳に至ったその舌先。そこで大きく口を開けて、スペリオルはエトナの耳にむしゃぶりついた。
じゅるり。くちぃ、くちゅ。ずるるるるっ。ずっ、ずぞっ。ちゅ。くちゃ。じゅちっ。ちゃ、くちゅぅ。
耳たぶを甘噛みし、耳介を入念に舐めてから耳の穴へと侵入するその舌先。その一連の動きで発生する音が、エトナの精神を蹂躙し、その快楽に抗うことすらできず、エトナは軽く絶頂を迎えて痙攣する。
だが、続くスペリオルの攻撃はそれ以上の快感をエトナにもたらし、脳をブチ犯される快楽に彼女はのたうちまわる事になる。
細く変形したスペリオルの舌先は、外耳道を舐め回しながら鼓膜へと至り、その薄い膜を優しく舐め始めたのである。
ざり。くちゅ。ざり。ざり。ちゅっちゅ。ざり。ざりざり。じゅるるるるるるる。
脳に直接響く大音量の舌の音。もし耳が性器であったなら、エトナは既に100回は妊娠しているに違いない。そう思えるほどに、エトナの耳は今、完全にセックスの為の器官と化していた。
もはや箍が完全に外れてしまった彼女は、自慰に溺れる淫靡な本性を曝け出し、その快楽を享受する歓喜を言葉に紡ぐ。
その行為はより一層彼女自身とスペリオルを昂らせ、エトナの内側から淫気と化した精気の奔流がスペリオルへと流れ込んだ。
「私の耳マンコにスペリオルの舌チンポ、ジュポジュポしてるッ♡ 耳マンコの鼓膜処女膜犯されてるッ♡ 舌チンポの唾液ザーメンで耳マンコ孕むッ♡ 孕むゥッッッ♡ んあぁぁっ♡ ゔぉッ♡ ッほぉぉぉおぉンッ♡♡♡」
「んちゅ……♡ エトナさんの耳、ほろ苦くて、美味しいです♡ んふっ♡ ジュルッ……♡ ……コレは反対側も、舐め比べてみないと♡」
「んゔぁっ!?!!? だめだッ♡ 両方はダメッ♡ 脳みそ貫通しゅるッ♡ 交互に舌チンポで掘削されて両耳マンコ開通しゅるから、だから、りゃめぇッッッ……ッッん、ッほぁぁ…………♡♡♡」
左右の外耳道と鼓膜を交互に舐め回し、もはや味がしなくなるまで舐り倒す。そんなスペリオルのマニアックな責めは、何も変態趣味だけで行なっている行為ではない。
耳という器官は、眼球の次に脳に近い。その器官に繰り返し刷り込まれた媚毒が血管や神経を通じて脳を侵したからこそ、エトナはこれ程に乱れているのである。
「ふふふ♡ 可愛らしく仕上がってきましたね、エトナさん。僕がもっとエトナさんを気持ちよくしますから♡ もっともっと可愛くなってください……♡」
そう言ってエトナの両耳を解放したスペリオルは、張りと艶を取り戻した彼女の双丘におもむろに手を添えるとやわやわと優しく揉み始めた。
一見それは愛撫としては穏やかなものに感じられる。しかし、その内情は、先程以上にエトナの身体を快楽に沈める悪魔の手淫であった。
スペリオルの掌から発生したのは、その肉体の一部を細く細く変形させた、髪の毛よりも遥かに細い毒針。
蚊に刺されるほどの痛痒すら感じさせずに乳房へと突き立った無数のその針先は、媚毒と精力剤の効果を持つスペリオルの体液をエトナの乳腺組織へと注入し、その機能を活性化させる。
そこに揉み込む様な刺激を与えて乳管の詰まりをほぐし、最後に思い切りむしゃぶりついたスペリオル。その吸引が呼び水となってエトナの体内から精気とともに母乳が溢れ出した。
スペリオルは嬉々としてその味を堪能する一方で、エトナからすればそれは未知の感覚だ。
「なんでッ♡ ァんッ♡ おっぱい出てるッ……♡」
「んく、んく、んっ……♡ ……ぷふぅ。涙とはまた違った甘み。初物の母乳はやはりイイ♡ 僕の妻となる以上、山のように子を産んで頂くのですから、やはり乳の出も確かめておかなくてはね?」
「うそだッ、私、私、妊娠なんてしてないッ、なんでお乳が、ッふぁ……♡ ダメだ、吸わないで……ぁあん♡ お乳出すの、こんなに気持ちいいなんて、知らないぃ……♡」
「ふふふ。僕の媚毒が母乳に混じって乳管に流れていますからね……しかし、これはあくまで一時のもの。今から本当に、おっぱいを出すのが気持ちよくなれるようにしてあげましょう」
そんな言葉と共に、スペリオルはその身に魔力を漲らせ、『邪神式魔術』のシステムへと接続する。
「————邪神式魔術プログラム、起動。
邪神式魔術特有の、システマチックな詠唱。それを並列化して三つ同時に起動したスペリオルは、その両手から濃縮された魔力を迸らせ、エトナの胸へと流し込んだ。
鍛え上げられた大胸筋によって底上げされ、元々大振りなサイズがさらに強調されているのが、エトナの胸の特徴だ。
そこにスペリオルの詠唱した術が流れ込む事で、その巨乳はより上の段階、爆乳へと成長する。とはいえ、それは純粋に乳腺組織の肥大化によるものであり、妊娠すればエトナが自然に到達していたサイズ。
だが、異なるのはそのハリだ。本来当然重力によって垂れるべき爆乳は、ピンと乳首を上に向け、重力に抗っているのである。
乳房を支持するクーパー靭帯が魔術的に改造され、強靭なゴムの如き強さを手に入れたことで、母乳でパンパンに張った乳房が問題なく重力に抗し得るようになったのだ。
そして。内面的な変化は、その爆乳がスペリオルによって吸われた際に明らかとなった。
「んちゅ……♡ んく、ごく、ごく、んくっ♡」
「んッ♡ ふぁぁ……♡ スペリオルぅ……♡ ダメだ、おっぱいそんなに飲まれたら、出すほど気持ちよくて、ああぁあん♡ あぁ、なんだこれ、凄く満たされた気分で、気持ちよくて、ああぁ……♡ やばいぃ……♡♡♡」
「あぁ、詠唱の早口言葉で乾いた喉にエトナさんのコクのある母乳が染み渡りますね。ふふ、エトナさんも幸せな気分になってくれてるみたいで、僕も嬉しいですよ♡ 先程の呪文は乳首の性感を感じる神経と、乳首を吸われた際に分泌される幸福ホルモンの分泌を半永久的に活性化させる人体改造術式。……ですから、エトナさんのおっぱいを、沢山飲んで、沢山幸せになって貰いますね♡ んちゅ♡ ああ、でもそうだ、そろそろこっちも可愛がってあげないと、寂しいですよね? ふふっ♡」
そう言って、スペリオルはちゅうちゅうとエトナの乳を吸いながら、彼女の股座へと手を伸ばし、そこにある秘裂を優しく指でなぞるように刺激し始める。
すると、すでに胸や耳への刺激で散々に焦らされたエトナの大陰唇は、数回の往復で呆気なく緩んでその桃色の柔肉の中へとスペリオルの指を受け入れてしまった。
つぷり。と愛液の音を立ててエトナの中へと潜り込んだスペリオルは、指先で内部を優しく揉み解しながら、その具合を確かめていく。
ザラザラとして大きな尿道海綿体、襞の多い膣壁、奥と中程がすぼまった膣全体の形状。
「素晴らしいですねエトナさん、こんなにステキなモノを持っているなんて……♡ うん、ほぐれるのも早いし、ほら、もう指が4本も入りましたよ」
「ふぉぁああああッッ♡ ダメ、ナカ凄いっ、自分でやるよりずっと深くてッ♡ んッふッッ♡ んんんッ、イケ、ないぃ♡ 焦らさないでッ、欲しい、欲しいからッ……♡」
「結構。可愛くおねだりができて素敵ですよエトナさん。でも何が欲しいのでしょうか? ……なんて意地悪を言っても良いのでしょうが、僕は優しいのが好きなんです。だから、挿れて差し上げましょう……んッ……あぁ、やはり、エトナさんの
「あっ……♡ きたぁ♡♡♡」
ずるり、と膣奥まで差し込まれた陰茎。その待ちわびた存在へと喰らい付くエトナの膣内は激しく収縮し、窄まった奥と中程が負圧を生んでスペリオルの鈴口を吸い上げる。
まるで吸盤のようなその動き。淫魔であるスペリオルですら一瞬自制心を失って腰を振りまくりそうになるほどの快感。
鍛え上げた筋力と生まれつきの膣の構造によるその快楽空間は、間違いなく名器と呼ぶに相応しい場所だ。
そして、その中を掻き分けて抽送を開始したスペリオルの陰茎もまた、淫魔の貴公子に相応しい逸物である。
魔物のそれでありながら、蓮の花のような薄桃色に色づいた陰茎は一見無害そうに見える。だが、その雁首はまるで矢印のごとく張り出し、それがなんと7段重ねになっているのだ。
奇怪な構造をしたそのペニスは進入時は膣肉を割り開いてスムーズに侵入し、引き込んだ時に7段の『カエシ』が膣肉をえぐるという女体に優しいのか優しくないのかわからない物体と化しており、そして何より長い。
太さは4指ほどで大きいとはいえまだ常識的なのだが、長さたるや反り返ってヘソまで届くという表現が比喩で無くなるほどだ。
そんな逸物が今、その7段の雁首で愛液を掻き出しながら、エトナの膣を抉っている。
エトナがその責めに耐えられているのは、偏に彼女の趣味の『張り型遊び』によるものだ。彼女の所有する張り型のいくつかは多段タイプであり、また極太の物も多かった。
そんなオモチャで遊んでいたエトナにとって、今膣をえぐるその感覚は未体験のものではない。
だが、一人遊びではなく実戦のセックスである以上、刺激されるのは膣だけではないのである。
徐々にエトナの様子を見ながら最良の抽送速度を見極めたスペリオルは腰のリズムを一定に保ちつつ、母乳を滲ませた乳首を絞り、耳穴に舌を差し入れ、余った片手でエトナの陰核を優しく扱き始めた。
徐々にピンと張り詰める陰核、母乳を撒き散らしながら快感に震える乳房、舌を受け入れされるがままの耳穴、愛液を迸らせる膣穴。
それらから同時に叩き込まれる快楽。それぞれは既知でも同時というのはかつてない体験である。
その激烈な快楽に、エトナの精神はついに決壊した。目はぐるぐると泳ぎ、舌をだらしなく零してヨダレを口から垂れ流し、ガクガクと痙攣しながら愛液、母乳、潮、涙を止め処なく分泌する彼女は、性的絶頂の極みに至り、まるで爆発するかの如き精気の噴出を巻き起こす。
それを吸い上げ、なお一層エトナに快楽を与えんとするスペリオル。だが彼自身も、妻となるべき女との初夜を迎えた興奮と、何より魔性の膣穴を持つエトナの肉体に溺れたことによって限界を迎える。
大量に放たれる精液。多くの精子と特濃の媚毒を含んだ寒天状のそれはエトナの子宮へとなだれ込み、その腹をポッコリと膨らませた後、逆流して膣から溢れ出てくる。
その快楽の螺旋の中で、どちらともなく崩れ落ちた二人は幸せそうな表情で寄り添い、繋がったまま眠りにつく。
その眠りの中で、エトナは迷宮の所有物へと存在を落とし、スペリオルは大量に得た精気を元に、より一層の成長を遂げた。
変化は僅か。しかし確実に変わっている二人は、今はただ、眠りながら無意識に腰をゆすり、優しい快楽の中にまどろむばかりである。