エロとか抜きのガチ拷問回なので、マゾかサドの方向けかと。
瘴気。それは我欲、苦悶、その他あらゆる『善くない感情』によって生まれるエネルギーにして、魔物の原動力。
ある程度魔物が群れていれば魔物自身が生み出す魔力で現状維持は十分に可能となるが、集団の発展のためにはより多くの瘴気を産生し、備蓄し、適切に投資する必要がある。
そんな瘴気の生産施設として、業深迷宮にも小規模だが『拷問室』が存在していた。
「————で、私がそんな拷問室の室長って訳。宜しくね、冒険者君」
そう挨拶するのは、白い女。————骸骨系魔物の性骸婦が経験を積み成長した、第二段階の淫系統不死系魔物、『
「私だって淫系統魔物。精気も淫気も大好きだけれど、甘々に過ごすパートナーは一人で良いタイプなの。……ほら、そんな大切なパートナーから瘴気を絞り出すのは可哀想でしょう? だからこうして、君のような冒険者に協力してもらう必要があるわけ」
彼女がそう言って語り掛ける先にいるのは、筋骨隆々の男。
部屋の中心に置かれた拘束台に全裸で拘束され、沈黙の魔術をかけられた所為で声の出せないその男に、彼女は優しい微笑みを浮かべると、沈黙の魔術を解除してやった。
「俺に何をする気だ……!」
「拷問よ? まぁ質問する内容がないから、単なる虐待と言う方が正確かもしれないけれどね」
今日の天気はなんですか、と聞かれたかのように気軽に答えた狂性奴。そして有言実行とばかりに、男の制止の声に耳を貸すこともなく、拷問を開始した。
拷問において重要なのは、生かさず殺さず。
その為には自殺の手段を早期に相手から奪う必要がある。多くの場合猿轡や拘束衣がその手段となるのだが、狂性奴の場合は少々異なる手法を採用していた。
ボコリ。何かが折れるような、外れるような音ともに、男の絶叫が拷問部屋に響き渡る。
「あーっ、あぁぁっ、ぉあぁっ!?」
「あら間抜け顔。まぁどんな男前でも顎が外れちゃったら仕方ないわよね。それに、『両方』外れるなんてまず無いでしょうし。でも、これからが本番なのに泣いてたらダメでしょう?」
言うなり、男の肩を掴んで顎に続き両肩を脱臼させた狂性奴は、痛みに悶える男に『回復魔術』を掛けた。
「ぉお……?」
「痛みが引いて安心した? だとしたら貴方結構おバカさんよ。……脱臼したまま『治癒』すればどうなるか、分からないわけじゃ無いでしょうに」
脱臼を放置した場合、自然な方法で整復する事は困難となる。それを理解してか青褪める男の外れた顎に手を当てて、狂性奴はもう一方の手をペンチ状に変形させた。
「まずは一本♡」
「おごっ、がっ、ぅぅうぉぁあああぁッ!?」
歯を抜く、というような生易しいものではない。歯をペンチで『挟み潰す』という痛みに、男は涙を垂れ流して悶絶する。
ひとしきり悶えた後、脳内麻薬で痛みが引いたところで、治癒魔術で止血しつつ残った歯根を摘出され、1本目の抜歯が完了する。
そして、狂性奴は見せつけるように1本の注射器を部屋に備え付けの冷蔵保管庫から取り出した。
「これ、なーんだ?」
その問いに、男は涙目で首を横に降る。
「
「ヒュッ、カハッ、あぁぁあああッ、アッー!?」
だらりと垂れた男の腕。ビクビクと震えて抵抗する静脈に、狂性奴は容赦なく拮抗剤を注入した。
それから
その地獄めいた感覚に、男は涙と鼻水を垂れ流し、激痛のあまり尿失禁してしまうが、誰もそれを笑う事は出来ない筈だ。
そもそも人間の、いや生物の脳は痛みが終わらないという状況に普通はならない。薬によって強制的に実現されたありえない状況は男の脳に激烈な負荷をかけている。
成人の歯は28本。その全てを砕かれた痛みは、顎の骨どころか頭が砕けたのではないかというほどの痛みを男に齎し、白目を剥いて痙攣する男から大量の瘴気が溢れ出す。
そして狂性奴には部屋に配置された吸引装置に瘴気が吸われる前に、少しだけ上前をはねる権利が与えられていた。
「ん〜♡ 沁みるわぁ。やっぱり瘴気は搾りたてよねぇ」
絶叫響き渡る拷問部屋でどこか気の抜けたセリフを吐いて、狂性奴は苦しみ悶える男を尻目に次なる拷問の支度を開始した。
金属の針がついたマウスピースと、それに繋がる被覆された金属線。そしてその先には手回し式のオルゴール。
その配線の動作チェックや試運転を行った後、狂性奴は男に治癒を施し、キチンと抜歯の後始末をする。
「うぁ、う、おぉ……あ」
「酷い顔ね。それに酷い匂い。大人なのにウンチとオシッコ漏らして恥ずかしくないの? ————『オムツ洗浄ver.3.4.1』」
狂性奴の清掃魔術で身も清められた男だが、その感情は恐怖で塗りつぶされ、憔悴しきっている。だが、容赦なく狂性奴はその口にマウスピースをはめ込んだ。
ちょうど歯のあった位置、神経のまだ残る箇所に小さな針が刺さる様になっているそのマウスピースは、痛い事には痛いのだが、感覚がおかしくなったのか、気力が萎えたのか、男は鈍く呻くのみ。
だが、そのマウスピースから繋がる配線の先、手回しオルゴールを狂性奴が回し始めたその瞬間、男の様子は激変した。
「グゥゥゥオォォォァァァァアアアアアアアアッッッ!?!!?」
「おお、凄い凄い! まだまだ元気じゃない!」
オルゴールが回り、爪が金属板を弾くたび、バチバチと煌めく火花。
水晶を圧縮するタイプの『起電機』が組み込まれたこのオルゴールは、爪が金属板に触れるたび、放電を起こす。そして各金属板に溶接された配線を通じて、マウスピースの針先に静電気を放つのだ。
そう。歯の神経に直接、静電気がブチ込まれるのである。
「君たち人間の大好きな、聖神教の賛美歌を奏でるオルゴールよ。全身で賛美歌を感じられて幸せでしょう? 」
そんなわけがない。というのは重々承知の上で、男を嘲る狂性奴。拘束具を引きちぎりかねないほど悶え、のたうち回る男は、口角から泡を吹いて、狂ったように吠え猛る。
その悶絶が功を奏してか、どうにかこうにかマウスピースを吐き出した男だが、そのまま胃の中身も吐き散らし、血管が切れたのか鼻血を流して荒い息を吐く。
絶え間無い苦痛より、休憩のある苦痛の方が苦しいのだと身を以て知った男だが、それでも今は、ひと時の休息が欲しかった。
「随分ハッスルしたわねぇ。賛美歌がそんなに好きなのかしら? ふふ、でもまぁ、少し疲れたみたいだし。汗もかいてるし水分を取らなきゃいけないわよねぇ……♡」
パチリと狂性奴が指を鳴らすと、拘束台が回転し、男は仰向けの姿勢に固定される。そこで、狂性奴は木綿の布袋を男の顔に被せると、その上にバケツで水を注ぎ始めた。
「ぉぼぉぶぉぼぼっ、ぼるぉぶぉ、ぼぼぼぼ、がぽっ、カハッ、カッ、ごぽっ」
「二杯目行くわよー」
「んぼぼぼぼっ、ごっ、ぼゔぉ……!」
人間は、仰向けの姿勢で鼻や口に水が入ると、反射によって肺の息を吐いてしまう様にできている。
これを利用した古き良き水責めにより、拷問ついでの水分摂取を行わせるというわけだ。加減を間違えれば死ぬが、即死では無いので狂性奴の魔術なら余裕で救命できる。
まぁ、彼女はそもそも加減を間違えるような素人では無いが。
「ガハッ、ゴホッ、ゴホゴホッ、カッ……!」
「お水飲めたかしら? じゃあ、お水休憩も済んだし、次に行きましょうか。……そうねぇ。歯はもう良いかしら。次は爪ね」
そう言って男の手を取った狂性奴は、骨の針を生成すると、おもむろに男の爪と指の隙間に針を突き刺した。
「————ッ!??!!?」
「アハハ、パクパクして鯉みたいね。でも、貴方の指、あと19本あるわよ?」
28本の歯を砕きおられたと思えば、20枚の爪の間に針をねじ込まれる。災難にも程があるが、当の本人は最早災難であるなどという思考を巡らす余裕もない。
拮抗剤により脳内麻薬が無効化され、延々と続く痛みは決して弱まることなく指を突き刺される毎に増幅する。泣き喚き、小便を漏らし、あまりに絶叫し過ぎて喀血する男の姿は悲惨そのもの。
全身に血管が浮かび、苦痛に過剰反応した肉体の各所が炎症を起こしつつある中で、既に屈服した胃には早くも潰瘍が出来かけている。
だが、そんな潰瘍も、爪の痛みも、狂性奴が回復魔術をかければ一瞬でなくなってしまう。
————気が狂いそうだった。いや、狂いたいのに、狂えなかった。
全身から痛みが引いた状態なのに、もはや神経が昂り過ぎており、もはや実際に痛いのか痛く無いのか分からなくなっているのだ。
しかし、その混乱すらも、狂性奴の魔術1つで覚め、正気に戻ってしまう。
痛みのない、リセットされた状態。自然な状態。なのに、それは絶望だった。振り出しに戻って、何度でも地獄に突き落とされる恐怖。
許されるなら舌を噛み切って死んでしまいたいが、顎は外れ、歯も失われている以上、叶わぬ願いだ。
「おぉぃぇ……ぉおいぇ……」
「殺して? ダメよそんな事言っちゃ。そんな悪い子にはお仕置きね」
炙られて赤熱した針を、足の小指の爪の隙間にねじ込まれる。何度目かの、激痛で脳がパンクする感覚。
死にそうなほど痛いのに、死ぬこともできず、男の精神は擦り切れていく。
だが、狂性奴はそんな彼に容赦無く追い討ちをかけた。
「これ、なーんだ♡」
「……ぁ」
そう言って狂性奴が差し出したのは、軟膏のようなもの。
「ふふ、これ、
「ギィィィァアアアアアアアッッッ!?」
「焼けるように痛いでしょう? 微細な針状の毒素が皮膚を貫いているの。アンデッドの私には効かないけれど、生きている貴方には効果抜群ね。毒の効果は浮腫、肝臓、腎臓への障害。だけれど、臓器障害は気にしないで。魔術で簡単に治るから♡」
そんな狂性奴の声は、男には聞こえない。聞いている余裕がない。背を万の針で穿られる様な激痛。そんなものにまともな人間が耐えられる訳がない。
だが、男は痛みに目を閉じるのではなく、抗うべきだった。
たっぷりと軟膏を手につけた狂性奴が次に狙ったのは、男の陰茎と陰嚢。手早く丁寧に全体に擦り込まれたその軟膏が齎した激痛は、これまでとは比較にならない。
嘔吐、悶絶、嘔吐、咆哮、吐血、発狂。
拘束具を引きちぎらんばかりに悶え、咆哮し、血を吹き散らす男の姿は壮絶なものがあり、もはや可視化できる程の瘴気が発生して、その苦悶の程を表している。
だが、それでも狂性奴は容赦しなかった。薄めた軟膏を点眼したのだ。
目の強膜は痛覚に最も鋭敏な場所の1つ。
夥しい涙と鼻水に溺れながら悶える羽目になった男の苦悶は極限に達し、痛みで気絶して、痛みで起きて、また気絶するという壮絶極まる状況に、いよいよ脳が根をあげたのか、男は最早苦しみ続けるだけの獣と化して、言葉も、自分の名も忘れてしまった。
回復魔術が施されていなければ、極度のストレスで脳が萎縮し、壊死してもおかしくないほどの苦痛。
そこから得られる瘴気は濃厚かつ芳醇であり、迷宮にとっては甘美な滋養である。
しかしそれに満足することなく、クルセイドは更なる拷問を開始した。
橈骨骨折と骨髄への硫酸注入、軽く火炙りに掛け、ケロイドに塩を振る。
皮膚を切開してアキレス腱を露出させ、高温の飽和苛性曹達を塗り込んで自然に断裂するまでジワジワと腱を溶かす。
皮を剥いで露出した筋肉に蜜を塗り、アリに齧らせる。ハリガネムシを尿道にねじ込む。
筋肉に突き刺した電極に滅茶苦茶な電気パルスを送って筋断裂させる。人為的に心臓発作を起こす。人為的にクモ膜下出血を起こす。
脊椎以外の骨を全て砕いてみる。雷の数倍の音量の『石版を引っ掻く音』を魔術で発生させる。
氷水と熱湯に交互につけて温度感覚を破壊する。三半規管を損傷させて常時眩暈を発生させる。
全身の毛根を焼き潰す、じっくり時間をかけて指を極薄スライスする。せっかくなので陰茎も丸一日かけて極薄スライスする。
尻の穴から水を流し込んで口からウンコさせる。尿路結石を人工的に3つほど作り尿管を詰まらせる。群発頭痛を人為的に再現して究極の痛みを与える。
初心に帰って鉄鞭で滅多打ちにする。死なない程度に十字架に磔にする。
その他ありとあらゆる拷問を行い、人格と尊厳を破壊し尽くされた男は、全ての拷問を終えた頃には出涸らし程度の瘴気しか生み出せなくなっていた。
感情の揺れ動きによって生み出される瘴気は、心が本当に壊れてしまえば産出が鈍くなるのである。
こうなった場合、拷問室において男は用済みだ。
適切な治療が施され、肉体を正常に戻して、廃人化した彼は次の工程、牛角乳鬼の元へと送られる。
拷問による人格消去と、牛角乳鬼による幼児化プロセスを経た人間の再生産。
それが有益な技能を持った人間を迷宮の手先へと生まれ変わらせる、バビロンの計画なのだ。故に、拷問の後にわざわざ治療して、送り出すのである。
そして、一仕事終えた狂性奴は、愛する夫である邪教徒の少年と睦み合うべく仕事場を後にし、次の仕事まで英気を養うのであった。