多くの犠牲を払い、たどり着いた第三界層、広大な水没した鍾乳洞。
ミスが即座に死に直結するという天然の迷宮を模したこの洞窟は、他の階層の例に漏れず媚毒に満ちている。
その上更に危険なのは、この階層に棲まうモンスターの存在だった。
快楽天鼠。吸血蝙蝠から進化した淫系統魔物、吸精蝙蝠が更に進化したこの魔物は、翼長1歩を超える大型種であり、反響定位用の高周波に加えて、獲物を捕獲する為の催淫音波を備える。
この催淫音波が中々に厄介で、人間の可聴域外な為に攻撃を察知できず、音故に洞窟という閉鎖空間ではかなり遠距離からでも反響してくる。
だが、そんな快楽天鼠が可愛く思える存在が、この洞窟には君臨していた。
淫乱尾籠猥蟲竜。アンナのペットであるマンダラの子供達がこの洞窟に巣食っているのだ。
下位とはいえ竜種。それが群れで犇めくというだけでも最悪だが、此処は洞窟。ワームやヴルムと呼ばれる系統の長虫型竜種である淫乱尾籠猥蟲竜にとって、この空間はあまりに相性が良い。
「くっそ……!」
攻撃が効かないという勇者の能力を以ってしても、淫乱尾籠猥蟲竜のブレスは厄介極まる。このブレスは媚毒のみならず『強力なバフ魔術』を含んでおり、その強力さ故に『異常なレベルで精気の生産能力を増大させる』のだ。
そしてそもそも淫乱尾籠猥蟲竜の持つ媚毒自体、その実態は強力すぎる回復強壮薬。四肢の欠損すら治癒させるほどの霊薬である。
要するに、媚毒というのはそもそも勇者の無敵バリアを貫通してしまうのだ。
にもかかわらず今まで無事だったのはバリアというよりはガスマスク、そして勇者という職業による強力な補正のおかげ。だがそれが通用するのも此処までである。
故に、勇者は此処に来て初めて、この迷宮の恐ろしさを思い知る事になっていた。
「体が熱い……」
いきり勃つ陰茎、茹る頭。それらを逆にデバフで打ち消すのがこの迷宮の攻略では重要なのだが、悲しいかな『勇者にはデバフが効かない』。
故にいつまでもムラムラが収まらず、パンツの中はもう先走りでベトベトだ。そんな隙だらけな状態でも無敵バリアのお陰で死にはしない。
大木の様な淫乱尾籠猥蟲竜のタックルを受けようが、噛み付かれて投げ飛ばされようが、不死身で無敵な勇者にとってはなんの痛痒にもなりはしない。
だが、周りの仲間もそうかというと、若干勇者より分が悪い。
「コイツ、切っても切っても死なんとは、不死身か……!?」
「再生力が強い。攻撃力は低い。攻めづらい」
「其は、穿つもの。谷を削るもの。山を押し流すもの。其は奔流。其は水。押し込め、絞り、高まり、弾けよ。我が眼前に水神の暴威を示せ! 水刃砲! ……魔術も通りが悪い様ですわね」
応戦は出来ているものの決め手に欠け、勇者以外にまともなアタッカーができないのだ。
「すまん! ファントム君、辛いだろうが頼む!」
「すいません、心配ばっかりかけて……!」
覚束ない足取りで、怪力の技能任せに剣を振るい、どうにか淫乱尾籠猥蟲竜を八つ裂きにした勇者は、しかしその返り血を浴びて一層媚毒の影響を受けてしまう。
八つ裂きにされてなお再生しようと蠢く肉塊に背を向けてどうにかこうにか、安全地帯らしき洞窟の脇道に逃げ込んだ4人。
デバフで媚毒を中和している3人に比べて、あまりに勇者の消耗は大きく、息も荒い。
この状況で目の前にいる3人の美女に襲い掛からないというのは驚嘆すべき胆力だが、それはどちらかと言えば胆力ではなく童貞臭さだ。
エッチな事は恋人同士になってから、というまぁ真っ当な少年の貞操観念が、彼をどうにか押しとどめているのである。
だが、現実は非情……というか、この世界での常識はそうではなかった。
「ソークス見張りして。カズラと私で勇者を手当する」
「ああ、任された」
「分かりましたわケーレさん。それで、ケーレさんはどちらを?」
「私が口でする。カズラは胸。大きいから」
あっさり3人で交わされる合意。それに困惑する勇者を無視して、ケーレが素早く勇者の股の留め具を外し、パンツをずらして陰茎を剥き出しにしたのだ。
「え、ちょ!? ケーレさん!?」
「大丈夫。皮付きだけど立派。……あむ」
ちゅぱちゅぱと音を立てて行われる口淫。暴走する精気を精液と共に吐き出させる、業深迷宮を潜る上では極一般的な治療法だ。
手早く済ませる為に二人掛かりで行うのも、ダンジョン内という戦場にあっては当然の時短策。しかし、常識の異なる世界から来た勇者ファントムにとっては、あまりに唐突なエロ展開だった。
「嘘でしょ!? というかカズラさんもおっぱい出さないで……ぅわ、でっかい……」
「ふふふ、勇者様は素直で愛らしいですね。ほぉら、私のおっぱい、好きに触ってくださいな」
おっぱい。それも、おっきいおっぱい。その魅力に勝てる男子中学生が居ようか。いや、いない。
本能的に興奮した勇者は呆気なくケーレの口内に射精し、賢者モードで意識が覚束ないまま絶え間ない口淫によって精液を連射してしまう。
じゅぷじゅぷと卑猥な音を立て、カリ首を舌でほじりながらじっくりとしゃぶるケーレの口づかいと、顔を胸でモニュモニュと挟んでくるカズラ。そんな状況で我慢が続くはずがないのだ。
本能の赴くままにカズラの胸にしゃぶり付き、ケーレにされるがままに精液を飲まれた勇者が、過剰な精気を消費して正気に戻ったのは、コップ一杯分の精液をケーレに飲ませ終えた後。
その段になって意識の覚醒による急激かつ強烈な自己嫌悪に襲われた勇者は咄嗟にケーレとカズラに土下座するが、身支度を整える2人は不思議そうに首を傾げた。
「精気の暴走は敵の攻撃。仕方ない。気にしない」
「いや、でも、女の子に酷いもの飲ませちゃったし、それにカズラさんにもひどい事を……」
「大丈夫。勇者のは美味しかった」
「……なるほど、勇者様は随分と厳格な貞操教育を受けておられたのね。大丈夫ですわ、この迷宮だけでなく、戦闘後に精気を昂らせすぎた仲間の性処理をしてあげるのは冒険者の嗜みの様なものですから」
「えぇ……うそだぁ」
困惑する勇者。だが、そうしている暇もなく、見張りをしていたソークスが声を上げた。
「済んだなら行こうファントム君。少しでも先に進まないと」
「あっ、えっと、すいませんソークスさん。そうですよね。早く進んで、迷宮をどうにかしないと……うん。その、ケーレさん、カズラさん、えっと、治療してくれてありがとうございました」
無理矢理思考を使命に切り替えて、装備を整え先を急ぐ勇者。だがその目がケーレの唇やカズラの胸を捉えるたびに彼の耳元は赤く染まる。
その様子に苦笑を漏らす3人の美女を引き連れて、勇者は第三界層の果てを目指して、再び洞窟の先に進むのだった。