第五界層は、広大無辺な温泉地帯。ヌマア地方にある棚田や、鍾乳洞の
湯はいずれも入浴に最適な温度になっており、この界層に住まう白泥淫魔などものんびりと湯に浸かっている個体が多い。
そこに君臨するのは、意外かもしれないが馬だ。
淫乱と不純、不貞を司る淫系統魔物であり、『処女童貞特攻』『清純特攻』という2種の固有技能が持ち味である。
この能力、相手の状態に応じて自身のステータスが変動するのだが、特に処女童貞特攻の倍率が凄まじい。
清純特攻の方は対象の聖属性が強い程こちらも強くなるという判定で、処女童貞特攻よりは控えめだ。
一方で、処女童貞特攻の判定は、男女ともにシンプルかつ凶悪だ。
ざっくり言えば『身体能力が【3-対象の処女童貞の喪失箇所数】乗になる』。
なおフェラチオの様な『口内でしゃぶっているだけ』の場合前戯扱いでノーカウントだが食道までブチ込むイラマチオはカウントされるなど判定は細かい。
また通常生殖に使わない穴で生殖した場合にもきちんと判定が入ったりするので、邪神の妙なこだわりが窺い知れる仕様になっているのだ。
そんな能力の実際の挙動だが、性器と尻穴両方が処女童貞を失っていれば1乗なのでスペックに変化はない。
だが、片方が処女童貞だった場合には2乗され、完全無欠の処女童貞だった場合には3乗というふざけたスペックを発揮する。
ここに更に清純特攻が乗る為、処女童貞が相手ならもはや神話の怪物との戦闘になるのはいうまでも無い。
だが反面、ビッチやヤリチンにはデレデレであり、童貞処女であっても「初体験は双角馬って決めてたんです!」というような業の深いものには即座に尻と喉と膣をウマチンポでブチ犯してやるなど優しい傾向にある。
また、この能力にはデメリットもあり、業深迷宮の苗床達には手も足も出ない。
例えばアンナの場合、子宮13個、尻穴、右乳首の乳管開口部20箇所、左乳首の乳管開口部20箇所、食道、気道、尿道、左耳、右耳、右鼻、左鼻、臍、左目、右目、左卵管13本、右卵管13本、全身の毛穴500万箇所、皮脂腺500万箇所、汗腺400万箇所の処女を失っており、戦うことになれば能力がざっくり-1400万乗されるので、敵対を思考した時点で肉体が重力に耐えられず自重で圧壊して死ぬのだ。
まぁ、非処女大好きというその習性からアンナ相手に反抗する双角馬は居らず、むしろ神の如く崇め奉っているのでそんな悲劇は起こり得ないのだが。
そしてそんな習性からほぼ非処女非童貞しかいない業深迷宮内にある人間の村——濃褐色の肌で独特の隈取りに似た刺青を顔に施している——や最下層の居住区では子供達を乗せた船を牽いている事も多い。
業深迷宮においては赤子が生まれた時点で魔淫蟲によって確実にケツと尿道の処女を失うため、子供がうっかり双角馬と敵対する様な悲劇も起こらない為、彼らは大人しく紳士的な魔物で居られるのだ。
だが、此処は迷宮の戦闘区画である第五界層。その優しさを発揮する機会はまず無いと言っていいだろう。
そして、そんな双角馬の親玉が『双角王馬』。この第五界層の守護者にして、高い知能を持ち人語を解する巨大な双角馬である。
勇者一行は今、そんな双角王馬と対峙していた。
「遥々この温泉地帯まで来て戦闘とは、随分と勇者というのは戦闘狂らしいな」
「黙れ……! 僕はこの迷宮を破壊する使命があるッ! 囚われた仲間達の為にも!」
「支離滅裂だな。……仲間が惜しいのなら、こんな所に来なければ良いのだ。村の狩人として無難な一生を過ごせばよかろうに。それで、なんだ。私を倒して第六界層に向かうと? 行きたいなら勝手に行くといい。私を巻き込むな。面倒くさい」
「なっ!?」
「私はバビロン様から『勇者は通してやれ』と言われている。お前を阻む理由はない。……もっとも、勇者以外は話が別だがな」
そう言って、双角王馬が視線を向けたその先に居るのはケーレとカズラ。それでは結局、勇者の前に立ちはだかるのではないか。そう憤る勇者だが、双角王馬は彼を一瞥すると、凄まじい速度でその角を振るい、勇者を第六界層の入口へと叩き落した。
と同時に恐ろしい勢いで第六界層から飛び出した『何か』が勇者を掴んで引きずりこむ。
「度し難いほど隙だらけだな、あの勇者は。会話中には攻撃されないとでも思っているのか?」
「ッ……!? 見えな……!?」
「当然だ。尻穴の処女も捨てて居らん餓鬼に我が攻撃が見切れる故もなし。……しかも、けしからん事に貴様に至っては、両穴処女だな?」
カズラを見据えてそう告げた双角王馬は、次の瞬間その全身から煮え滾る様な蒸気を噴き出した。
そして、同時に光り輝く2本の角。馬体の節々からも漏れ出すその光を浴びたケーレとカズラの身を襲ったのは、耐え難い快感だった。
「ほう、どうやら余程の
デバフ解除ではなく、デバフ反転。それが双角王馬の持つ能力だ。近縁種である一角獣の角に癒しの力がある様に、双角王馬にも類似の力が存在するのである。
だが、それはこの迷宮においては酷く攻撃的な力だった。
『デバフによって精気の暴走を抑制する』という戦法が、この10年で業深迷宮を攻略する為の知恵として確立されているからだ。
無論それはケーレとカズラも同じ。深層へ潜る度、重ねがけされていた『精力減退』の魔術が、この瞬間に『精力増大』に変化し、体内に蓄積されていた媚毒が一気に炸裂したのである。
ガクガクと膝は震え、股間から潮と愛液を噴水の様に噴き出して、それでもなお辛うじて、ケーレとカズラは戦闘態勢を取り、双角王馬に対峙する。
「ほう。伊達に段位持ちではないな」
「随分、馬鹿にしてくれますね……! 天に在します聖神よ、我が信仰に応え、その御力を我に与え給え。其は天の炎。聖なる閃光。聖雷砲!」
自身に掛かった魔術効果を消去することで、デバフ状態にはなれずとも媚毒のみに影響を絞ったカズラが放ったのは、上位の聖気魔術『
本来であれば魔物には効果覿面の筈のその魔術はしかし、双角王馬の角から放たれた電撃によって真正面から打ち破られ、カズラは反撃の余波で吹き飛ばされる。
「きゃあああああっ!?」
「馬鹿め、両穴処女が。貴様の攻撃が私に通じるとでも思ったか。……尻穴処女、貴様もだッ!」
「ぐぁ……ッ!」
「背後に音もなく回り込む技量は認めよう。だが私の視界の広さを侮った様だな」
背後からの奇襲に対し、後ろ蹴りという強烈なカウンターを食らい、吹き飛ぶケーレ。
カズラとケーレの双方がこの階層の温泉に落下し、その全身を媚毒に侵されたその瞬間。温泉に潜んでいた、というか入浴していた白泥淫魔達が2人へと襲いかかった。
その中には上位種である淫泥魔男爵や淫泥魔子爵も混ざっており、媚毒が綺麗に入った状態で争うには余りにも荷が重い。それに何より、双角王馬からの一撃のダメージが、彼女達に決定的な隙を作ってしまった。
鯉の群れる池にパン屑を撒いたように、女体へと殺到した淫魔達が媚毒の温泉に2人を沈め、その全身を揉みくちゃにする。
そのあまりの快感と単純に溺れた彼女らが失神したのを確認した双角王馬は、バビロンに連絡を取って両者を端末に受け渡し、脱力した様に息を吐いた。
「はぁ……風呂に入ろう。処女に触れて身体が汚れた気がする。いや、もはや会話をしてしまった口を早く濯ぎたい……アンナ様の様な素晴らしい非処女とだけ語らいたいものだな、全く」
業深迷宮第五界層。攻略者自身の魔術が牙を剥くこの界層は、今日も平和だった。