執筆当時は有名人の麻薬報道があって気まずかったおもひで……!
業深迷宮第一界層。
その広大な神殿を思わせる空間には、ところどころに巨大な縦坑が設けられ、漆黒の闇を水面の下に静かに湛えている。
この縦坑こそが、第一界層に巣食う蟲達の領域。 今でこそ死霊の巣窟という側面が強いこの領域だが、その影に隠れ、蟲達は未だに活躍しているのである。
そして霧深き業深迷宮第一界層に於いて、突然水面下に巨大な穴が開いているというのはなかなかのトラップだ。況してや業深迷宮の水面には大量の幻燈海月が浮かんでおり、逆光で水中の見通しは最悪。
10年間、なんだかんだと侵入者の注意の隙を突いて活躍してきたこの落とし穴トラップ。落ちた者に生還者が皆無である事から近隣の冒険者には広く周知されているのだが、それでもまあ、落ちるときは落ちる。
例えば『魔物の大軍に追い立てられている』時など特に。
今日、不幸にも足を滑らせたツァルアもその口だ。彼女はうっかり魔物が犇めく罠部屋の扉を開けてしまい、襲い来る腐乱花魁や狂性奴から必死で逃げる最中に、見事に落っこちたのである。
「……!?!!?」
突然の沈没。パニックになりつつも水面を目指して夢中で泳ぐツァルアだが、そんな彼女に数匹の淫猥大邪蟲が絡みつく。
水中でギチギチに拘束されては、一級冒険者と言えども脱出は不可能。鎧のお陰で骨が折れるような事はないが、ドンドンと沈む身体が、水圧に悲鳴をあげる。
息が続くと仮定しても、常人の肉体で耐えうる水深は精々100歩。一級冒険者のツァルアでも300歩持つかどうかは怪しいものだ。
ましてや、今は息が続かない。水圧に屈して肺から空気が漏れ出し、酸欠に踠き苦しむツァルアは、冗談抜きに死を覚悟し、意識を半ば手放しかけている。
だが、次の瞬間。
凄まじい水流と共に何かに『呑まれた』ツァルアは、気づけば生暖かい空気に満たされた空間で、荒い息を吐いていた。
「かはっ、カヒュッ……! はーッ……一体、何が……?」
思わず困惑の声を漏らすが、応えるものはいない。ただ、膝丈にまで満ちた粘液質の液体の中で蠢く幾万の淫猥大蟲と幾億の魔淫蟲が彼女の身体を這い上ろうとしており、ツァルアは夢中でそれを振り払いながら近場にあった『小島』に上陸した。
だがその島は明らかに、肉の質感を帯びている。自分が何らかの生物の体内にいるらしいと確信し、ツァルアの背筋に鳥肌が立つが、どうしようもない。
装備していた短剣は溺れる最中に取り落としてしまい、予備の武装も背嚢と共に水の底だ。それに、剣があったとしても触れた際の弾力からしてかなり分厚いこの肉壁をどうにか出来る自信がない。……業深迷宮の魔物の傾向からして、強靭な生命力を備えているのは確実だからだ。
「……私、食べられちゃったんだよね? って事は、ここ、胃袋?」
とりあえず、現状分析をせねばと、足掻くツァルア。生還の望みは薄いが、生きているのだから足掻かねばならない。
業深迷宮においては、
少ない例だが、数年前に囚われた冒険者が、精神を屈服させられつつも生きているのが発見された例もあるらしい。
まぁ、その場合大体は邪教徒に成り果てているので発見者は元冒険者と戦う羽目になるのだが、ごく僅かなケースでは、精神薄弱となっているところを回収され、人間社会に戻った者もいる。
だから、一番マシな状況を目指して行動すれば、生きて帰る目はある。
そう自分に言い聞かせて、ツァルアは魔淫蟲と淫猥大蟲で満ちた広い空間を探索する。だが、やがてその空間の壁面にまで到達した彼女は『悍ましいもの』を見つけてしまった。
「なん、な、何なのよ、これ……」
人型に盛り上がった肉壁。顔に相当する部分にはいくつもの管が天井から伸び、その腹は大きく膨れている。肘や膝の先が壁の深くまで埋め込まれているのか手足は腿と二の腕までしか輪郭を追えず、埋め込まれている者の素性を伝えるのは、唯一外部に露出している股間部分のみ。
そこに男性器があるか、女性器があるかはマチマチだが、どちらであっても、その大きく膨れた腹の上には、たっぷりと張った乳房らしき物が載っており、乳房の先端から繋がった透明の管が天井まで伸びて、白い液体を絞り出している。
そして外部に露出した肛門と性器のうち、肛門はどの個体も括約筋を失っているのか、穴から絶えず大量の魔淫蟲と淫猥大蟲を産み落とすだけの器官となっている。
唯一個性があるのは、性器だろうか。男女共に透明の管が接続し、天井へと繋がっているのは同じだが、男性器が管によって絶えず精液を絞られているのとは対照的に、女性器には逆に白濁液が流し込まれている。
……だが、ツァルアが見てしまった最も悍ましい物は、その女性器に繋がった管だ。とりわけ腹の大きな女性に繋がっていたある管が急に注入をやめて吸引——白濁液の逆流で分かった——に切り替わった次の瞬間、その管の中を、胎児が登っていったのである。
そして、天井の方から赤子の泣き声が響いた直後、その声は次第に壁の方へと下がり始め、やがて『産みの親』の隣にひどく小さな『膨らみ』が生じて、天井からの管が接続されていき、やがてあまりに幼いおちんちんと肛門が外部に露呈した。
「ゔぉぇ……! ゔ、うぉげぇ……!」
吐いた。
気分が悪くなった、などというレベルの話ではなかった。この空間の空気を吸っている事すら拒否したくなる光景だった。
この世界のごく一般的な家庭に育ったツァルアにとって、出産とは最もめでたく、喜ばしい行為だという認識があった。子を産み育てるのが女の喜び、妻子を養い守るのが男の喜び。
そんな戦時下の世界ならではの、素朴な価値観が確かにあった。それを全否定するような、『人間の生産』を目の前にして、ツァルアの精神が悲鳴をあげたのだ。
そして、ツァルアは衝動的に、『人型の肉袋』を助けようと手を伸ばす。管を引きちぎり、身体を覆う肉壁を裂けば、この悍ましい状況から犠牲者を救えるはずだという希望に縋りたかったのだ。
————愚かな話だ。脱出の手立ても無い状況で犠牲者を取り出しても何にもならないというのに。
そして、そもそも。ツァルアが思う以上に肉壁は強靭で、むしろ逆にツァルアの腕は肉壁に飲まれてしまった。
「ひっ!?!!? そんな、いやだ、やだ、助けて! 止めてください、やだ、ヤダヤダヤダヤダ! ィイヤァァァァッッ!?!!? ————————もぐぉ……!」
争う間も無く、全身を壁に呑み込まれ、絶叫と共に肉の中に消えたツァルア。
混乱、困惑、絶望感。それらに押し潰されて意識を失ったツァルアは、やがて壁内を輸送され他の犠牲者と同様に壁面にセットされる事になるのだった。
* * * * * *
そんなツァルアが、意識を取り戻したのは、口内に感じる甘さがきっかけだった。
目を開けば、そこにあるのは、自分を心配そうに覗き込む、見知った青年。
……ツァルアにとっては、憧れの男。幼馴染の『彼』といつか結ばれることを、ツァルアの中の少女性は無邪気に信じていた。
『大丈夫? お粥は食べられそうかい? ……ああ、君は迷宮から救出されたんだ。もう安心して良い』
そんな声を掛けられ、ツァルアの口元にさじを差し出す『彼』。
ツァルアはひどくお腹が空いているのを感じ、器と匙を受け取って夢中で粥を食べ始める。
口内に広がる甘さと暖かさ。膨れるお腹。……その安心感に安堵の涙を流しながら、ツァルアは夢中でお粥を食べる。
お粥を食べる度に、幸福感が増していく。お腹が膨れる。おかわりはまだある。
おかわりを食べる。お腹はもう随分膨らんでしまい、『彼』は愛しそうにそれを撫でて、ツァルアに微笑みかけてくれる。
だからまた、お粥を——何かおかしい——少し頭痛がしたが、『彼』に気遣われて優しく撫でられるとすっかり良くなった。だからお粥を食べる。お腹は膨れる。
お粥を食べる。食べる。食べる。
食べたお粥がお尻から出てしまいそう。恥ずかしい。だけれど、粗相をしたツァルアを『彼』は優しく介抱してくれる。嬉しい——おかしい——頭痛。
『彼』が薬をくれたのでお粥と一緒に食べる。きっとお粥をもっと食べれば頭痛はしなくなると、ツァルアは思った。
『彼』がお粥をくれる。だからお粥を食べる。幸せ。
なんだか胸が張ってきた。お粥の食べ過ぎで太ったかもしれない。……太って嫌われるのは嫌だ。だけど『彼』はツァルアを抱きしめると、『太った』胸の先を吸い出してくれた。気持ちいい。
どうやら『太った』のは『おっぱいが溜まったから』らしい——おかしい——頭痛がする。
『きっと苦しい思い出があるからだよ。僕が忘れさせてあげる』
そう言ってくれた『彼』とセックスをする。お粥を食べながらセックス。お粥をお尻から出しながらセックス。気持ちいい。お粥が美味しい。
お粥を食べる。セックスをする。おっぱいを飲んでもらう。お粥をセックスでおっぱいが食べて出してお粥お尻お粥を甘いセックスお粥おっぱいセックス吸われるお尻美味しいセックスを出すおっぱいがお粥幸せお尻お粥を幸せセックス幸せおっぱいお尻幸せお粥を出す幸せ幸せ幸せセックス幸せお粥幸せ幸せ幸せ幸せ幸せおっぱい幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ————。
——ぉ
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業深迷宮、第一界層。そこにある巨大な縦坑は、蟲達の
そして、その最奥は蟲達の『女王』の御座。
竜種にまで至った淫乱尾籠猥蟲竜から進化した、直径10歩、長さ300歩の巨体を誇る蟲の女王。
その生態は、『生物を飲み込み、自身の体内で繁殖器官として運用する』という、いわば『プチ業深迷宮』のようなものである。
内蔵する『生物』は主に人間や妖精、獣人などで、体内でそれらを繁殖させることも可能。
とにかく蟲を生産する事に特化している為、体内に十分な量の『器官』を確保できれば上位の蟲、それこそ淫乱尾籠猥蟲竜でさえ量産できる。
そんな蟲特化型の
そして、ツァルアは現在、超高濃度の媚毒と麻薬の複合液に漬け込まれ、魔術的な幻覚に晒されながらさっそく魔淫蟲の孕み胎として運用されているのだ。
彼女に投与されているのは、淫乱尾籠猥蟲竜のそれ以上に強いという、もはや並みの人間の主観では強さが判らない媚毒。
マンダラの媚毒を常飲し、その他の媚毒も色々と味わっている媚毒ソムリエなアンナからも上物とお墨付きの逸品で、もはや死んで居なければ蘇生できる程の回復薬。
飲み続ければ不老長寿が得られ、薬の利いているうちは『死なず老いず』という過剰で過激な媚毒である。
もちろん、副作用として不老不死を齎らす程の強壮効果はダイレクトに性的な意味での絶倫性に直結しており、摂取者は幾らイっても終わりのない絶頂無間地獄に堕とされる。
細胞膜が性感帯になる、と言っても過言ではない性的感覚の増大は、静脈弁がクリトリス並みの性感帯になって血流でイってしまう、などの意味不明な症状を引き起こすのだ。
そして、それに加えて麻薬成分を含むのが、淫獄擁胎大猥蟲龍の媚毒のエゲツない点だ。
含まれるのは
要は特盛ブレンド麻薬というわけだが、普通はこんなものを摂取すれば『脳が壊れて死ぬ』。だが、ここで厄介になるのが『媚毒との同時摂取』。不死身となった肉体が無限に『キマりまくる』のである。
これにより人間としての精神機能は破綻し、脳髄は単なる『絶頂器官』へと堕落。全身全霊で絶頂し続けるだけの存在と貸した人体は、淫獄擁胎大猥蟲龍の『繁殖器官』として体内で生かされ続ける、というわけだ。
もちろん、生きている以上いつかは薬物を克服出来る。この世界においては毒を浴びたまま生き続ければ『毒耐性』の技能が得られるのだから。
とはいえ、そんな技能を得る頃には人格はブッ壊れ果てており、むしろより優秀な母胎として完成するだけの事。
そして呑まれたばかりのツァルアにそんなスキルはない。
「おぁー……♡」
麻薬と媚薬でトリップした彼女の口からは魔淫蟲の卵が大量の媚毒と共に流し込まれ、薄まった胃液の中を無事に通り抜けた卵達が腸内で孵化して肛門から産み落とされる。
そして、孵化の為に淫気を生み出すべく、ツァルアを包み込んだ肉壁は彼女の全身を蹂躙した。
微細な触手でその柔肌全てを包まれ、幻覚を見ている脳に女の体が感じ得る全ての快感を叩き込まれるのだ。
女性器には中空構造のイボイボ触手が突き刺さり、複数の男から絞られた性液が流しこまれると同時に、緩やかながらツボを押さえたピストンで存分にその女陰を耕していく。
それは業深迷宮にしては比較的軽い刺激だが、薬物がキマッた頭は、僅かなスイッチで快感が起爆する地雷原。
爆発する快感に理性を吹き飛ばされ、ツァルアはピクピク痙攣しながら蕩けるだけのおバカさんに成り果ててしまっている。
もはや彼女の肉体が真人間のそれとして機能することは無いだろうと確信出来る程に『薬がキマった』ツァルアは穴という穴から汁を垂れながらアヘアヘと壊れた笑いを漏らしており、誰がどう見ても廃人である。
まぁ、肉壁に埋まっているので誰も見ようがないのだが。
しかし、そんな状況でも子宮だけはマトモに機能し、常時流し込まれる精液でがっつり受精して孕んでいる。
「ぉほぉ……♡」
漏れる吐息は、本能が受精を感じ取ってのことなのか、たまたまなのか。
蕩けるツァルアの心境は分からず、彼女は夢の国に旅立ったまま帰ってこない。
今までの犠牲者と同様に、ただの繁殖器官と成り果てて、静かに絶頂し続けるのみである。
まもなく出現から11年。業深迷宮の未帰還者は、未だ減ることなく増え続けていた。