淫奔女皇海神華に進化したセウロアの戦闘テスト。その結果囚われた女冒険者達の内、剣士ソウビは既に長虫の如き身体に堕とされ、独房へと連れ去られた。
そして、そんな中で次なる犠牲者に選ばれたのは、槍使いのリアシーである。
「どうしたものか」
「母乳供給問題が解決した現状、不足気味の人的資源は無いからな。此処は一つ実用性よりは芸術性を」
「良い提案だ。では愚生にはやってみたい事が」
「言わずとも愚生も愚生、分かっているとも」
そんな、不穏な会話と共にリアシーを改造し始めるセウロア達。彼女らが目指すのは、実用性より芸術性の高い改造だ。
その改造とは透明化。骨、筋肉、血、その為あらゆる細胞の屈折率を空気に近づけ、脱色することで人体を透明に変えるのだ。
……と簡単にはいうもののかなり難しい。とても小さなカエルの一種などは肉体が透明に近いが、それは小さいからであって大きな生物が透明でいるのは至難の技である。身体が殆ど水で出来ているクラゲぐらいのものだ。
そう、逆に言えば、クラゲを真似ればいいのである。内部がほぼ液体ならば、透明化は出来る。
そこでセウロアが目をつけたのは、ガラスと油であった。ガラスと油の屈折率はほぼ同じ。ガラス製の外骨格に油を充填し、魔力によって操縦。頭部だけを生身のままにし、首から下は生かしたまま別途使用する。
人間の主要器官は首から上だと言い切るかのような思い切りの良過ぎるその改造においてセウロアが拘るのは美しさと華やかさのみ。正直に言って実用性はない。
スパッと首を切って生命維持の魔道具と肉体感覚をフィードバックする為の術式を接続し、実際の肉体から型取りしたガラス性のボディに接続。ガラスの躯体内に流動性パラフィンと、夢魔睡蓮の花や幻燈海月、磨いた震撃蝦蛄の甲殻を入れ、いわゆる
特筆すべきは、幻燈海月は生きたままであること。別に鰓呼吸ではないし、瘴気さえあれば流動パラフィン中でもさして問題はないので、七色の発光でリアシーのガラスの身体を美しく輝かせてくれるのだ。
「うん。良いなあ。可愛い可愛い」
「こういうハンドメイドな雑貨を作りたい欲は時々発散したくなるからな」
「愚生も女の子だしな、たまには手芸を嗜みたくもなる」
好き勝手にそう言って、外部からリアシーの身体を操り、クルクルとバレエを踊らせるセウロア。華麗に舞う肉体の上で、生首だけのリアシーは、媚薬に脳を狂わされながらも、肉体を喪失した空虚感に涙を流す。
痛みはない。苦しみもない。身体の全ての感覚は存在している。
だが、同時にその肉体の中身が存在しないという事実が、残酷なほどに明確に実感できるのだ。
そして、踊るリアシーのその一方で、『リアシーの頭部を模したガラスの
と言っても、こちらはせいぜい血や筋肉のヘモグロビンやミオグロビンをヘモシアニン系の透明な色素に変えただけ。あとは業深迷宮では珍しくもない子宮と乳管の拡張だ。
だが、異常なのは拡張されたその肉体に入れるもの。
夢幻淫紋蛸。極彩色に輝くこの猛毒の蛸を子宮や乳腺、果ては肛門から侵入して消化管内全てに詰め込まれたリアシーの身体は、まるで臨月の妊婦の様になりながら、内側から発光している。
そう、いつぞやの『人間ランプ』の再演だ。セウロアは存外、あの芸術を気に入っていたらしい。
「ほら、リアシー君、見るが良い、君の嘗ての肉体を」
「美しいだろう? 内側から輝く女体。滴る愛液や母乳さえ煌めいて見える美しさ。媚毒でガクガクと痙攣して快楽に震える様すら芸術的だ」
「特にあの頭が良い。君をそっくりそのままコピーしたんだ。身体によく似合っているし、君との対比もできる」
「ひ……ぁ……ぁぁあぁ……!」
当然だがリアシーはドン引きである。首から下がガラス人形になっていなければ、失禁し、嘔吐し、嗚咽していたことだろう。
それも仕方あるまい。並みの人間は、自分が首を刎ねられて、その首と身体が両方生かされたまま、首の目の前で身体を陵辱されるなどという妄想は考えもしない。それが普通だ。
そうしてセウロアは最後の仕上げに最悪な指示を出して、外道ハンドメイド雑貨の仕上げとした。
「うん、じゃあ、2人を対面座位で百合エッチさせようね」
「体が分割されている場合はオナニーになるのか?」
「ああ、良いなこれ。キラキラで可愛い。インテリアとしては自分史上最高の出来かもしれん」
自分の首から下の上に、自分を模した頭型
しかし同時に、こみ上げるような嫌悪感が湧き上がり、リアシーの精神を苛むのだ。正気で居れる訳がない。
自分のガラスの陰核が自分の肉の陰核と擦れ合い、自分の肉の舌にガラスの舌が絡み、互いの腕が互いの乳房を揉みしだく。
ガラスの身体の感覚は、魔術による擬似的なもの。それ故に調整が可能であり、快感は殊更に増幅され、リアシーの心を快楽の毒炎が焼き焦がすのだ。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁぁぁぁぁ……♡♡♡♡♡♡」
それは嬌声か、灼かれた魂の断末魔か。
分割されたリアシーのその声を堪能しつつ、ひとしきり映像記録を取ってから、セウロアはそのオブジェを自身の居住区へと転送する。
そして、最後の獲物として残されていたクュセチに、セウロア達の目が向いた。
「この魔術師はどうしようかな」
「魔術師、魔術師か。愚生ちょっとやりたいことが」
「あぁ、確かに。聖神式の解析は必要か。どうしたものかな」
「詠唱の為に脳と肺と喉、それと関連するいくつかの構造、そして心臓は必要だろう」
「ではその他は別途再利用するか。必要部分は胸像の様に仕立てた魔道具に組みこもう」
「では脳と肺と心臓と横隔膜、要は胸から上だな。摘出するか。眠らせろ」
容赦も遠慮もない判断で全身麻酔を実行し、腕を肩から切り落とし、胸椎と腰椎を切り離して、横隔膜から下の臓器をパージする。まさに胸像の様に加工されたその肉体を、セウロアは何やら装置に組み込んで、最終的に巨大な杖の様に加工してしまう。
頭部に差し込まれた配管、
「うーむ。これでどうか」
「試運転しよう試運転」
「では————魔導具起動、謳え、魔女の杖」
「其は遍く在りて揺蕩うもの、歌と雲と砂塵の運び手、見えざる悠久の放浪者。其は大気。其は風。渦巻け、逆巻け、集いて乱れよ。『旋風球壁』」
虚ろな声で読み上げられた詠唱に呼応して、放たれるのは聖神式魔術。
クュセチを組み込んだこの魔導具は、『聖神教徒のまま』外部から脳を弄る事で魔術を行使させ、聖神式魔術を機動するもの。
敵を知れば百戦危うからず。対魔術戦の演習や、聖神式の構造解析などに非常に役立つこの『道具』にセウロアは満足し、早速バビロンに献上する。
と同時に、セウロアは『残り物』の活用にも余念がなかった。
「よし。残ったパーツは……そうだ、鎧縛嬌触装甲を使うか」
切除した腕と胸から下のパーツに、鎧縛嬌触装甲を装着。足りない部分を補い人型を取った鎧縛嬌触装甲に指示を出し、中身がない部分をワイヤーフレーム化する事で、無駄にオシャレ感を演出する。
「心臓の部分にハート型の水槽を吊るして、赤い色水に幻燈海月を入れて……」
「おお、愚生のセンスも捨てた物ではないなぁ」
「実に芸術的だ」
「とりあえず、腸に直接媚毒を流し、血液の酸素交換や臓器の制御も鎧縛嬌触装甲に任せて、腕も生かしてあるわけだが、これどうする」
「インテリア枠にしつつ、子宮は魔淫蟲の苗床だな。尻穴は淫猥大邪蟲で」
「しかし、頭が無くても性感はあるのだろうか?」
「無いだろうな。しかし穴はある。生きていれば多少の精気は産むものだ。申し訳程度に実用性がある美術品としては悪く無い」
「いやぁ、普段はなかなかこんな風に貴重な人的資源を浪費出来ないので愚生とした事が」
「ああ、少し愉しみすぎたな」
「ま、飼育している人間達に酷いことは出来ないし、侵入者でたまに発散するぐらいなら許されるのでは?」
「ペットの子豚を殺そうだなんて思わないがそれはそれとしてソーセージは食べる、的な」
「うむ。いやまぁ、誰も殺してはいないのだが。2人を半分に分けただけだろう?」
やいのやいのと楽しく語らうセウロア達。オブジェと化したクュセチの余りもラボに送り、全てを済ませた彼女達は、一頻り談笑した後で、茶色く硬く変化して、ボドボドと水面に落下する。
その身を実に変えて、散りゆく女群花。その跡から次々と芽生えるのは、セウロアの面影を宿した淫精芙蓉樹達だ。
獲物の瘴気と精気を喰らって増殖する、魔性の花。
その香りが甘く漂う迷宮で、今日も犠牲者は増えていくのだ。