ということで女の子をぼんぼりにして灯りをつけてあげる回です。
淫精芙蓉樹。夢魔睡蓮から派生した知恵ある植物系魔物であり、脳みそおちんちんな連中が多い業深迷宮内ではインテリ派に分類される魔術師系の魔物である。
そんな、淫精芙蓉樹の中でも、とりわけ知識欲に富む個体が一株。
『悪涜神樹・鉢頭摩王』ことヘラエから株分けされた、『セウロア』という名のその個体は、生まれつき『神来』の技能を持つ、非常に利発な女性である。
生まれてから8年が経つ現在では『博士』と呼ばれ、迷宮随一の研究者、芸術家、そして医者として迷宮内に広く存在が知られているのだ。
白い花弁で出来た白衣を身に纏い、植物珪酸体で出来たメガネを掛けた特徴的な外見は、まさに知的な美女というイメージそのままの美しい姿である。
————ただ、研究者、芸術家、医者のどの職種においても彼女を語る際には『
そんなセウロアは今日も思いついたアイデアを形にするべく、実験サンプルを調達していた。と、言っても、研究室まで人的資源を宅配してもらうだけ。
迷宮上位陣の誰かに『ちょっと上層で冒険者を捕まえてきてくれたまえ』と声を掛けるだけの他力本願スタイルがセウロアの主義である。
彼女は戦っても強いのだが、面倒なので戦わないしそんな時間があれば普通に研究に使う方が有意義だと考えているからだ。
そして、今日彼女の『お使い』を引き受けたのは、最近上層で『可愛い奥さんを捕獲した』幸せ者のスペリオルであった。
「うむ、良いサンプルだ。いやー、愚生の願いを聞いて貰って済まないね、スペリオル君」
「いやいや、セウロア博士には何時もお世話になっていますからね。幾らでも頼んで下さい」
「いや、そういうわけにもいくまい。健康そうな冒険者を、10体も捕獲してくれたのだから。これで10回は実験ができる! その価値は計り知れんのだよ、スペリオル君。わかるかね? わかるだろう? わかりたまえ。そして、その価値には対価があって然るべき……ということで、これを君に贈ろう。奥方と励むと良い」
そう捲し立てたセウロアは、あらかじめ準備してあったのか、白衣のポケットから錠剤の入った瓶を取り出した。
「元はアンナ様たっての願いで開発した物なのだが、君にも渡しておこう。……ああ、誤解するなよ? アンナ様には既に十分な量をお渡ししているので遠慮する必要は無い。……そいつの名は異種交配薬。服用した生物の精子と卵子に魔術的に干渉し、本来ならば諸々の関係で生まれ得ない雑種を生み出すことのできる薬剤だ。効果は服用後3時間。その範囲内で受精に成功すれば、雑種が生まれてくる。……つまり、淫系統特有の苗床や借り腹ではなく君と奥方との実の子が産まれやすく————」
「ありがとうございますッ!」
「うむ、食い気味だな。愚生の作品を気に入ってくれたようで何よりだ。用法用量などの注意は瓶に記載してあるのでしっかりと守るように。……ではスペリオル君、改めてありがとう。大変助かった」
「こちらこそ、良い物を頂きました。……では博士、研究がうまくいくよう願っております」
挨拶を述べて辞するスペリオル。その背中にヒラヒラと手を振ったセウロアは、スペリオルが置いていった『陶器の檻』に強力な睡眠ガスを念入りに吹き込んだあと、鍵を開けて、手頃な冒険者を一人引きずり出した。
「善は急げ。早速インスピレーションの赴くままに作品を作っていこうじゃないか!」
そんな独り言と共に取り出したるは、まだ年若い女冒険者。
その四肢に拘束を施した上で筋弛緩剤を投与し、更に脊髄クモ膜下麻酔を施して、胸から下の感覚を奪う。
その上で魔術的に感覚を麻痺させて念押しし、セウロアは1つの術式を唱えた。
「邪神式魔術プログラム、起動。魔術マクロ起動。第23連動術式『細胞増殖式子宮拡張手術』選択。各値を入力……完了。マクロ実行」
魔術マクロ。複数の魔術を連鎖的に起動させ、より複雑な工程を実行させる邪神式魔術の上級テクニックである。
セウロアがいくつか組んであるそのマクロの中から今回選択した、第23連動術式『細胞増殖式子宮拡張手術』は、読んで字の如く子宮の拡張を行う為の術式だ。
本来鶏卵ほどの大きさしかない子宮。それを細胞の増殖促進とアポトーシス制御によって駝鳥の卵サイズにまで成長させ、それに伴いインナーマッスルの増設、骨密度強化、『蛇顎式骨盤』の実装、腹直筋、腹斜筋、腹横筋の成長と伸縮性増強による子宮拡張への対策を実施。
腹腔内臓器の高性能化と縮小により、子宮が体内における最大の臓器となっても問題なく生命活動が維持できるようにするのも忘れてはいない。
その術式が完了しても外観では今までと全く差がわからないというのが、この術式の優れた点である。
「下準備はこれで完成。続いて、全身改造に移る。全身麻酔を実施。呼吸器型触手接続。バイタルサインのリアルタイムモニター開始。……これより血液、および筋肉の透明化を開始する」
血液透明化。通常不可能なその行為は、人間の血が赤い原因である鉄系呼吸色素を、銅系呼吸色素へと置換する事で行われる。それを可能とするのは、これから行われる全身の骨髄の改造と、心肺機能の超強化だ。銅系の呼吸色素は酸素運搬時は青く、それ以外は透明な為、人間の鉄系色素より透き通った質感になるのである。
その次の筋肉の透明化だが、こちらは血液改造よりもう少し簡単だ。白身魚と同じように、全身の筋肉を必要最低限を除いて全て白筋に変えるだけの話である。
原糖をエネルギー源に無酸素運動を行う白筋を維持するべく、肝臓機能の強化による原糖製造能力の強化を行うのも忘れない。
どちらも複雑で難解な技術だが、セウロアにとっては何の問題もなく行える改造だ。このレベルの改造でも、ちょっと遺伝子やら細胞構造やらを弄るだけ、と言ってしまうのが彼女というマッドであった。
「ふんふーん♪ ふふー♪ ……よしよし、順調順調。流石にクラゲのように、とは行かないが、なかなかどうして悪くない。肌の色素も抜いて……と。うむ。青い粘膜、鯛の身の様に透き通る肌。なかなか神秘的じゃあないか。これは良い。良い素材だ。……常々計画してはいたが、『光を燈せば』さぞ美しかろう」
鼻歌を歌いながら被験体の全身をチェックし、計画通りの出来栄えであるのを念入りに確認したセウロアは、大いに満足した様子で頷くと、研究室の作業台に安置してあった『巨大な注射器』を手に取った。
その先端部は滑らかな管状になっており、浣腸用の物を思わせる。が、その中に入って居るのは
幻燈海月の方は言わずと知れた迷宮の光源担当なのだが、悲しいかな、進化し損ねて久しい。
一応『えっちな白昼夢を見せる』という地味な能力があるとはいえ、基本的にエロくない。淫気や精気は専ら他の淫系統魔物のお零れをもらって居るので、大量に溜め込むなど夢のまた夢。
そんな幻燈海月に進化の機会を与えるとともに、素敵なインテリアを作るのが今回セウロアが手掛けた『人間ランプ』のコンセプトである。
「では注入開始だ。しかし、ハハハ、光るものが無い三流冒険者から輝ける存在に変えてやるとは愚生は優しいなぁ」
そんな独白を漏らしつつ、膣に挿入したシリンジのピストンを容赦なく押し込み、巨大化した子宮をグイグイと拡張しながら貪淫濁液魔と幻燈海月を胎内に注入し、麻酔で眠る女冒険者の腹をグイグイと膨らませていくセウロア。
改造の影響かいとも容易く臨月の妊婦以上に膨れ上がる腹。その中で幻燈海月が色とりどりの光を放ち、膨れた腹をランプの様に内から輝かせる。
貪淫濁液魔を用いたのは、セウロアの命に従い『子宮から出てこない』という役割を果たすためである。普通の水であれば、いきむ事で簡単に排水できてしまうからだ。
「さて、最後の仕上げだな。……ここまでお膳立てしてやるのだから、進化してもらわないと困るが」
そう呟きながらセウロアはあらかじめ作っておいたらしい安楽椅子型の拘束具に女冒険者を移設すると共に、最後の改造を行う。
「子宮内壁に視細胞を精製。神経を接続し、脳とリンク……問題なく完了。これで子宮内での発光が感覚として感じられる筈だ。……よし、これはこんなものだな。夢魔睡蓮達、この人間ランプを倉庫に入れておいてくれ。インテリアとして欲しい者が居るか後で聞いてみるから。……ああ、栄養点滴を忘れるなよ。それと倉庫についたら麻酔を徐々に解除するように」
テキパキと指示を出した事で一段落ついたのか、セウロアの興味は次の実験へと移り、運ばれていく人間ランプから新たな生贄へと視線が移る。
彼女の知的好奇心が続く限り、実験が終わることはないのだ。
* * * * * *
翌日。倉庫に運ばれた人間ランプに幸いにも貰い手が見つかったので、セウロアは朝早くから引き渡しの為に自室に人間ランプを持ってこさせ、レースのワンピースを着せたり顔を整形して美女に変えたりと、色々と細かい調整に励んでいた。
「ふんふふーん♪ あとはヘアカットと洗髪かー。サクッとやってしまおう。あと毛の成長停止と常時再生も組み込んでメンテナンスフリーに……」
「あ、あのぉ。セウロア博士の研究室はこちらで間違い無いですか?」
「お、来たか。確か『ドロミテ』君だったか? 先祖返り……というか掛け戻しで産まれた淫愛妖精の」
「はい。ドロミテです。えっと、それが私が貰えるインテリアですか?」
そう尋ねるのは、耳が長く尖り、美しい容姿を持つ女性。背中に生えた翅が示す通り、彼女は妖精族の内、邪神側に属する種族『
精気を喰らう淫系統に属し、詩歌の際に優れるこの種族は、迷宮核バビロンが数年かけて行った『掛け戻し』実験により産まれた種である。ドロミテはその第一号であった。
彼女の母は『かなり妖精寄りの』淫角妖鬼だ。そして父は迷宮の第1号種馬こと『おちんちん妖精』レーニアである。そして祖父もレーニアであり、曽祖父もレーニア、更に遡った先祖は、プルナとレーニアの娘の一人。
要するに、妖精であるレーニアの血を強烈に濃くする事で、零落した妖精と言われる小鬼系統の淫角妖鬼から妖精を産みだした結果が、このドロミテである
そんな彼女が今回ランプを引き取ることになったのは、部屋の模様替えの為であった。
「ずっと前から、お部屋に素敵なランプが欲しかったんです。そしたら、人間を改造したランプがあるって聞いて……迷宮核様が壁のレリーフとして妊婦型の照明を作っておられますけれど、生きた者を使ったランプが手に入るなら、そちらの方が素敵だなって。おまけに淫気と精気を出して、お部屋の空気を良くしてくれるなんて最高です!」
「ああ、我々淫系統魔物にとって、淫気や精気に満ちた空間は実に心地良いからな。幸い、このランプは一晩中幻覚光線と幻覚魔術を胎内から直接浴び続けた結果、順調に淫気と精気を生み出す様になっている。確かに君の要望に合致したインテリアだと保障しよう」
「ありがとうございます! 大切に使いますね!」
「是非そうしてくれ。……ところで愚生の方で粗方の仕上げは施したが、君の種族は芸術に造形が深いと聞く。デザイン変更などあればこの場でカスタマイズしておこうと思うのだが、どうだろうか」
そんなセウロアの提案に「わぁ! やりましょうやりましょう!」と賛同したドロミテ。二人はこの後、1日を費やしてランプのデザインを改良し、最後にはハイタッチを交わしてお互いの仕事を称えあった。
————その傍で、人間ランプの口から小さな喘ぎ声が漏れている事に、注意を引かれたものは誰もいない。