※この作品はR-18です。

うちのイケメンのド変態っぷりがハンパないんですけど、どうにかなりませんかね!!   作:まあエロい

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前編

「くそー!!あのイケメンめ!!なんで私のいないとき狙って来るんだー!!!」

 

朝の騒然とした事務所内にわたしの叫びが響く。

 

わたし、春山夕菜(はるやまゆうな)35歳、量販店でスポーツコーナーを担当して今年で10年目。

 

たまりまくった有給消化のため、三連休にして出勤してみれば、自分の売り場がひどいことになっているではありませんか!!

丹精こめて書いたおススメポイントつきのPOPはすべて剥がされ、値札もついてない。

売れるからと前面に出してあったスクワットマシンが棚上部に引っ込んでる!

売れ筋のダイエットベルトが無残に筒型什器に突っ込まれている…!!!

 

「何でこういうことしてくかな?!ホントイケメンって人種ってやつはもう!!!」

 

わたし、イケメンって大嫌いなんですよ。

イケメンってさ、イケメンだから何でも許されるって思ってる人種なんだよ!!

 

学生時代、田舎から都会通り越して田舎に通学してたんだけどさ、その通学電車でまあよく痴漢にあったんだけどさ。

その痴漢どもって、そろいもそろってみんなイケメン。

爽やかにひざにハンカチのせて何すんだと思ったらちんちんごしごし。

にこやかにズボン下げてくるとか。

 

馬鹿なんじゃないの、ああ、馬鹿なのか、イケメンは。

わたしのイケメンに対する偏見は、15年物だ。

そうそうめったなことでは覆るはずもない。

 

「あーあー出たよ、春山さんのイケメンディスリ。そもそも越谷(こしがや)さんってそんなに言うほどイケメンか?」

 

経理の原本さんが呆れた顔で宥めてくる。

 

「どう見てもイケメンでしょ!!」

 

本社所属のスポーツ用品担当総括、越谷さん。

全国各地を飛び回る、スペシャル指導員である。

いわゆる、本社の偉い人。

月に一度くらいのペースで、店舗訪問していろいろ指示を出して帰っていく、

 

詳しくはめんどくさいから省くけど、とにかく、偉い人である。

こんなに本気でディスってはいるが、実はめちゃくちゃ偉い人だったりする。

 

他部署はたいてい、何日に行くので準備と確認お願いしますとか事前通達があって、

今日来てどこどこを変えたので確認してください、飾りつけはこんな感じでとか指示ももらえるはずなのにですよ。

うちのイケメンときたら、いきなり来てサクッと売りもん動かして、値札も張らずに退場が基本ですよ!!!

さらに私がつけてさしあげたPOPに対して、堂々とうーん、華がないな!!もっと派手に作り直して!!とかさらっと言いやがる!!なんだこのドエス!!

 

『春山さんならできるっしょ!!楽勝楽勝!!』

 

毎回毎回荒らしまくって、電話で一言。ふざけんな!

この野郎!!全力でやってやるよ!!!売られたけんかは買ってやる!

 

かくして、ここ五年程イケメンと私の攻防が月イチで繰り広げられているのであった。

 

 

「本社最後の独身イケメンとは言われてるけど、まあ、十人並みのイケメンだよねえ…。」

 

消耗品担当の酒井さんも会話に参戦してきた。

 

そう、本社所属には、昨年まで、全国に名が知れ渡る二大巨塔のイケメンがいた。

おもちゃ総括の古川さんと、越谷さんである。

古川さんは、肥溜めの中にいても爽やかな風が吹くという伝説のイケメンだったのだが、昨年地方の店舗の女の子とできちゃった結婚したんだよね。

 

「いやいや…どう見てもイケメンでしょ!!だいたいねえ、うちの会社はイケメンがあふれてます!!」

 

わたしはくるっと辺りを見回した。

 

「ほらすぐそこに正統派イケメン!」

 

二重瞼のくせにシュッとした目元が印象的なちょっと日焼け気味のお坊ちゃん、消耗品リーダーの橋本さん。

 

「あっちには普通界のイケメン!」

 

モブ男と呼ばれ続けて6年目、おとなしそうではあるが口が大きいのが魅力のワイルド青年、食品担当の大屋敷君。

 

「ここには隠れイケメン!!」

 

眼鏡の奥に真ん丸目玉がくりくり、ぱっと見20代の45歳、防犯対策担当の柏崎さん。

 

「ああ、世の中はイケメンにあふれてる…。みんな変態ばかりだ…。」

 

がっくり肩を下ろす私。

 

「「「ちょっと聞き捨てならないですね!!!」」」

 

おっと、ディスられたイケメンどもが抗議してきたよ。

 

「イケメンと褒め倒しておきながら、変態認定してどん底に落とすとかどんなテクニックだよ!!」

「イケメンすべてが変態とか決めつけんな!!!」

「そもそもイケメン認定判定のレベル低っく!!!」

 

やば、事務所内が一気に春山さんディスリモードになってきたぞ…。

 

「ねえねえ、僕は?」

 

店長がニコニコして声をかけてきた。

 

「店長は普通ですよ!普通界の普通、頂点に立つべき普通です!!めっちゃ誇っていいですよ!!よっ!普通界の癒しっ!!今日も売り上げ、いいよっ!!さすがですねっ!!!」

 

わたしの中で、普通の人はいい人だと認識されている。いい人は本気で褒め倒す!!

 

「ほめられてる気がしない…。」

 

うーん、普通の人には、私の褒め殺しは通用しない模様です。

 

 

……………………

 

 

散々もてあそばれた、私の作り上げた売り場をチェックし、名無しで放置されている商品に値札を付け、オススメコメントを書きこんだPOPを貼って、呼び込み君を録音してセット、自分の声が鳴り響く売り場でモニターチェックをしていたら、電源コードが防災仕様になっていないことに気が付いた。

 

やばい、これ防災担当の比嘉さんが見たら激おこになるやつだ!

 

コードをもらって、取り換えようとしたら、DVD機器に盗難防止のダイヤル式ロックがついていてそれが絡み合って取れないじゃないですか!!

 

なにこれ、あのイケメン、なんてことしていくんだ!!

ゲ、しかもこれ越谷って記名があるから、うちの店のじゃないじゃん!

越谷さんの私物のロック番号なんてわかんねー!!

 

5963ご苦労さん…は違う。

 

1122うちの店の店番ももちろん違う。

 

越谷の名前にちなんだ感じ…ダメだ、語呂合わせが浮かばない。

 

8139ハイサンキューもダメ。

 

うググ…イケメンめぇえええっ!!!

 

なんか、なんかないか、数字、四文字の数字…。

 

…ああ、うちのムック、ムックの力を借りよう!

 

うちの実家の18歳の小型犬ムックはもはや私の中で神化している。

18歳にしてなお衰えることを知らないかわいさ。

 

ムックなら、なんとかしてくれる!!

 

6969…開いたっ!!!

 

「6969良く分かったじゃん!もしかしてシックスナイン好きなの?!」

「ギャー!!イケメンキター!」

 

いきなり背後からイケメンに声をかけられて思わず奇声を上げてしまった。

ん…?なんか変な違和感があったような…?

 

「お前人のことイケメンイケメンうるさいよ!!」

「何いきなり来てるんですか!!!連絡してから来いっていつも言ってるじゃないですか!!大体ね「いいねえ、売り場めっちゃよくなったじゃん!」」

 

わたしのセリフに何の躊躇もなくかぶせてきたよ!!この強引イケメンめ!!!

 

「はあ、どうも。どこかの偉い人が予告も無くいきなり来て、細かいメンテナンスもなしに帰っちゃうくせに、私の休みの日ばっか狙って店に来るんでね!仕方ないですね!!やらせていただきましたよ!!!」

 

「なんだ、とげがあるなあ…。」

 

ひと悶着あったところで、お客様から声がかかる。

 

「すみませーン、このダイエット器具なんですけど~」

 

イケメンはお客さんホイホイなのだ!

せいぜい甘い蜜となって店内中のお客さんを寄せ付けて購入意欲をあおるがいい!!!

 

「いらっしゃいませ、…春山、あとで喫煙室な。」

 

イケメンはお客様にごあいさつした後、私に耳打ちしてしてきた。

何勝手に人のこと呼び捨ててんだ!!失礼なイケメンだな!!!

 

 

……………………

 

 

事務所内には、喫煙室が三室ある。

 

一畳ほどの広さで、椅子はないものの排煙テーブルがあり、そこで会議っぽいことも日常的に行われてたりする。今も、隣の喫煙室は店長とエリア総括が何やら話し合っている。

 

私は誰もいない喫煙室に入ると、フレーバーミストを取り出し、越谷さんを待った。

ほどなく、ニコニコしながらイケメンが喫煙室のドアを豪快に開けて侵入してきた。

 

「いやー、売れた売れた!ずっと残ってた腹筋マシーン、出たよ!」

「ありがとうございます。」

 

さすがイケメン、ナイスアリ集(たか)り。もうこの人いろんな店舗回ってずっと売り場で営業してたらいいんじゃないの。

 

イケメンは無造作に胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。

ひと吸いして、排煙テーブルのボタンを押す。

くそう、いちいち仕草がイケメンで腹立つな!!!

 

「俺と会うの二ヶ月ぶりだっけ?」

「全然覚えてないけど、ずいぶんぶりですね。」

 

多少イラつきながらお返事させていただく。

 

「じらしプレイも度が過ぎると嫌われるなあ…。」

 

ぶはっ!!

 

「ちょっ…!!プレイってなんだ、プレイって!!!」

「まあまあ、落ち着けって!!!ははは!!!」

 

なんだ。めっちゃ陽気だな!!!

 

「くッ…これだからイケメンはっ…!!!」

「それ!!お前イケメンイケメンうるさすぎる。」

 

人を指さすんじゃない!

 

「私だけが言ってるわけじゃないですよ、みんな言ってるし!!!」

「お前がイケメンとか言い出したからだろうがっ!!!」

「そんなことないもん!みんな言ってるもん!!!」

 

なんだこのお子ちゃまな会話。もっと売り場のこととか売り上げの事話せよ!!

 

「しかもなんだ!この店は俺のことゲイ認定しやがって!!消耗のお淑やかな酒井さんに切り傷にやさしい保湿剤もらった俺の気持ちを考えろよ!!!」

「知るかっ!!」

 

そう、うちの店では越谷さんゲイ説が横行している。

いや、うちの店の中では越谷さんはゲイ認定されている。

 

「なんか長期休み取って、海外旅行行ったりしてるんだって。」

とは、勤務暦15年の宝飾一般担当前野さんの弁。

確かに、海外に男をあさりに行きそうな感じだ。

 

わたしがどれだけイケメンと騒いだところで、腐女子率50%を誇るうちの店の中では、ネコ認定者とタチ認定者の終わりなき不毛な戦いが繰り広げられていることを、本人は知らない。

 

「でさー、さっきの話なんだけど、シックスナイン好きなの?」

「ちょっ!!あんた何言ってんだ!!イケメンは黙れ!!」

 

偉い人に言う言葉じゃないけどそんなん気にしてられんわ!!

さっき感じた違和感の正体はこれかっ!!

何のためらいもなくシックスナインとか言いやがって…これだからイケメン(ド変態)はっ!!!

 

「防犯ロック足りなくてさあ、俺の使ったはいいけど番号がエロいから教えにくくてさあ。

こっそり交換しようと思って売り場行ったら春山さんが解錠しててびっくりしたってわけよ。春山さん、性欲強いの?俺と一緒じゃん!」

 

なんか一気にまくし立ててキター!

何言ってんのこの人。

 

「完全ドセクハラなんですけど!!!」

「大丈夫大丈夫!同志でしょ!!!」

 

馬鹿なの?ねえ、このイケメン馬鹿だよね?馬鹿には言っちゃってもいいよね?

 

「お前なんぞ絶倫巨根の外人にローションなしでぶっこまれて血だらけになってこいやーーー!!!」

「いやいや、外人さんはだな、意外と柔らかいからそこまで裂けたりしないのよ、マジで。」

 

ゲイカミングアウトキター!!

酒井さーん!腐女子連盟代表の酒井さーん!!ここに、ここにあなたの求めたシリアナがいますよー!!!

 

「まあぶっちゃけ俺は男はあんま好きじゃないけどさ!!!」

「じゃあゲイ疑惑は。」

「ない。」

 

酒井さーん!!1000部完売した新刊総ウケスペシャルは完全空想上のものだったみたいだよーっ!!!

現実って世知辛い。

 

ん?あんま好きじゃないってことは、ちょっとは好きなのか?

だめだ、ここで好奇心のかけらを少しでも見せようものなら、それこそハゲタカのように貪られるに違いない!越谷さんシリーズの薄い本26冊まとめて見せたところで全然ダメージを受けていない姿がありありと目に浮かぶ…!!!

ここはスルーだ、スルーしておかねばっ…!

 

「セクハラ発言はここまででお願いしますね。」

 

にっこり作り笑いでイケメンに微笑んでみた。

 

「セクハラとかいうけどね、そもそも人間の欲ってのは食欲、睡眠欲、性欲ってあるんだよ。俺はあんま寝なくてもいい分、性欲と食欲が同等なわけ。人の三大欲を、春山さんは否定すんの?」

 

だめだ、全然聞いてねえ!!

所詮普通顔の三十路女子の微笑みなんぞ、イケメンにとっては鼻くそみたいなもんなんだな?!くっそー!!!

もっともらしいこと言ってるけど、完全ドセクハラやん!!!

 

「わたしは食欲と睡眠欲が二大巨塔です。もうおなかがすいてすいて。眠くて眠くて。だから性欲は「なんだ、腹減ってんの?」」

 

ああー、また人のセリフにかぶせてきたよこのイケメン。

性欲はないからこの話はすんなっていうつもりだったのに!!!

 

「それはいかんなー、よし、俺が飯おごってやるよ!!」

「え、マジですか!」

 

給料日前の私に救世主、キター!

いやあ、今月整体行ってちょっときついんだよね、お財布。

昨日はもやしポン酢だったから食べた気がしなくてねえ…。

 

さっきまでの不信感と不満が一瞬で爆散した。

ご飯食べさせてくれるなら、この人、いい人かもしんない!!

 

「俺今日ここでラストなんだよ。明日は休みだしさ。まあ、今までほっといたわびも入れたいし、今後の売り場つくりの話も詰めたいし…。今日、この後ご飯いこ!行こ!」

「私、めっちゃ食べますけど、いいんですか?いいんですね?ヒャッホウ!」

 

 

……………………

 

 

タダ飯食べられてラッキー!…そう思ってた時がありました。

 

イケメンと一緒に会社を出て、駐車場に止まっている車に乗り込もうとして見えたナンバーがっ…!!!

1919だと…?

いやな予感しか…しない!!!

 

「春山さんも明日は公休でしょ、がっつり行っても大丈夫だよね!!」

 

ちょっと郊外の、七輪で焼くタイプの焼き肉屋に連れてこられました。

う、ものすごい煙、これは明日までにおいが残るな。

まあいっか!今日はとことんタダ飯頂いちゃお!!!

 

 

 

分厚い牛タンにかぶりつく私に、イケメンがいろいろとぶっこんでくる。

 

「だからさあ、俺は春山さんのことめっちゃ買ってんだって!」

 

あ、ここのごはん地味においしい。

もぐもぐするのに忙しい私を目の前に、イケメンは持論展開中。

 

「売り場そのまんまにして帰るなんてほかの店舗じゃ絶対できないことなんですよ!!」

 

なんでそこで急に敬語とか使うんだ。まったくイケメンの考えてることはよくわからんなあ。

 

「アーユーオーケー?」

 

インチキアメリカ人がここにいるよ!!

 

「HA!HA!!!」

 

違った!!陽気なアメリカ人だ!!

 

「ははは。」

 

陽気な笑いに対して、乾いた笑いで答えた私は、追加でホルモンセットを注文した。

 

 

 

ひとしきり食べに食べまくって、最後にデザートのソフトクリームを食べ終わるころには、目の前の七輪の煙も消え、曇る視界の向こうにいたイケメンのご尊顔がはっきりと見えた。

 

「おなか一杯になった?」

「はい、ごちそうさまです!!」

 

なんかめっちゃいい笑顔で聞かれたから、こっちもつられていい顔で返事してしまった。

なんか餌付けされてる気分…。

 

「じゃあ食欲満たされた後は、性欲、行くか!!」

「はあ?!」

 

何言ってんだこのイケメン(ド変態)!!!

 

「まあまあ、いいじゃん!一緒に気持ち良くなろーぜ!!」

 

手早く会計を済ませたイケメンは私の手を取り、がっしり掴んで離さず。

車に乗せられ、逃げることもできず。

 

1919号は、華麗にラブホテルの駐車場にインしてしまった。

 

うおおー!!マジすか!!

勘弁してぇえぇぇぇぇえ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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