に出てくる、おじさまことユー君の物語です。
闇多めですが、途中からド変態の扉が開きますので注意してください。
目を、閉じれば。
目の前に広がる、闇。
闇に包まれ、私は私をなくす。
闇が、怖い。
闇が、恐ろしい。
目を、閉じるのが、怖い。
毎日、気を失うようにして、眠りにつく私は。
夢を見ない。
夢など、必要ない。
誰か、誰か。
私を救い出してくれ。
この孤独な私を、助けてくれ。
願いは、今日も、叶わない。
私はただ一人、ロッキングチェアに凭れ掛かったまま、意識を失った。
私のもとに、少女が来ることになった。
この、役立たずの、我が身。
王家から排除された、汚点の極みである私のもとに、何も知らぬ少女が来るのだ。
地方の領主が快楽に染まり、ハーレムでその身を窶した挙句、存続に失敗し、暴動の果てにすべてを失ったと聞いている。
その領主の、一人娘。
娼館へと売られる手筈が整っていたが、王家が買い取った。
何も知らぬ、少女を、出来損ないの不能者である私に、充てがう為に。
娘の身の上を、不憫に思う。
名を奪われ、身一つで、この出来損ないの元へと、来るのだ。
憐れな、少女。
私は、少女に、エターナル・プリティ・ロリータの名を、与えようと決めた。
この世界で、一番の慈愛に溢れる、女神の名前。
幼い日に、私が心奪われ、恋慕した、女神の名前。
少女は、何を思って、私の元へ、来るのだろうか。
父親の、放蕩な様子を、目の当たりにして、私に何を、思うのだろうか。
…快楽に、染まるなど。
ハーレムを、存続するなど。
震えあがるほどの、嫌悪感が私を、包む。
吐き気が、する。
孤独な私に、水を差し出すものは、いない。
私は、吐き気をこらえて、水を飲むため、食堂へ向かった。
広い食堂には、大きなテーブルと、たくさんの椅子が並んでいる。
こんなにも、私は、孤独だというのに。
椅子に掛けて、水差しを呼ぶ。
闇の中から、水差しが現れた。
ぬるい水が、さらに吐き気を、呼ぶ。
今日は、特に調子が悪い。
通信を行ったら、闇に包まれて、身動きが取れなくなってしまうかもしれない。
今日の食事は、必要ない。
また、気分の良い時に、取り寄せればいいだろう。
今日、少女が私のもとに来る。
私は、少女を、どのように扱っていいのか、わからない。
出来損ないの、欠陥品である私のために、王家がよこしてくれた、少女。
少女で褥を理解し、褥を学べと、王よりお言葉を、頂いた。
褥など。
必要ないというのに。
弟は、すでに二人目の姫を迎えたではないか。
私など、必要ないのだ。
必要ないものが、褥を学ぶなど。
やりきれない、私の気持ちが、闇を呼びそうだ。
少しでも、気持ちの緊張の糸が振れてしまったら。
私の闇が、私の中からあふれ出し、混沌を生み出すに違いない。
少女が、私に何をもたらすのか。
私は、底知れぬ恐怖を抱えたまま、少女の元へ、急いだ。
初めて見る、少女。
薄い色彩の、長い髪が、風になびいている。
…エターナル・プリティ・ロリータの、面影を感じる。
幼き日の、女神への心酔を、思い出した。
噴水で、ただ微笑みを浮かべ、私の前に立っていた、エターナル・プリティ・ロリータ像。
動かぬ、石の肌を持つ女神に、心を奪われていた、あの頃。
この少女は、私の目の前で、震えて、いる。
「震えているのか…?かわいそうに。」
たった一人で。
こんな場所に。
出来損ないの慰めのために。
憐れな少女を目の前にして、私の心が、痛む。
「おいで、私の、エターナル・プリティ・ロリータ…。」
声を、恐る恐るかけると、少女が…!!
この、僕に!!
「ふふ、ふふふふっ!はじめまして、おじさ、ま!!」
少女は、こんな
思わず、気が、緩む。
僕は、私という仮面を、投げ捨てた。
今まで、貫き通してきた、自分の矜持。
子供じみた、僕という表現を、かなぐり捨てたあの時。
あの時から。
無理やり
ああ、僕だなんて。
威厳がなくなるから使うなと、いつも怒られていたあの頃の記憶が、私を包み始めた。
まずい。
闇が、少し、出てきそうだ。
少女は、無邪気に私に笑顔を向ける。
私とともに、過ごすことになる少女。
少女は、かなり、幼い。
幼いならば。
威厳を表す、必要は、ないだろう。
「はじめまして、私は、ユーラシアというんだよ。」
「なんとお呼びしたら、よろしいですか。」
ああ、目線が、遠い。
心地よい、かわいらしい声が、少し、遠い、
僕は、少女の目の高さに、自分の目線を合わせる。
空の色をした、美しい、瞳が、僕の目を、じっと見つめる。
ああ、僕の闇が、晴れ渡って、ゆく。
「そうだね、おじさまと呼んでもらって、いいよ…。僕と君は、ずいぶん、年が離れているから。」
この、僕よりも幼い少女が。
僕の闇を、払ってくれた。
そっと、手を取る。
温かい、華奢な、手。
僕のそばに、いてくれるだろうか。
僕とともに、いてくれるだろうか。
少し、手が震えているようだ。
僕のことを、怖がっているの、かもしれない。
「怖がらなくていいよ。さあ、屋敷へ行こう。少し歩くから、馬に乗せてあげよう。」
ハイセイコ号の、背中に少女をのせる。
この馬は、とてもやさしいから。
君の恐怖を、きっと吸い取ってくれる。
なにも、怖がらなくて、いいんだよ。
「うわぁー!あったかーい!たかーい!!ふさふさー!!!」
少女は、とてもいい笑顔で、ハイセイコ号に、揺られている。
良かった。
エターナル・プリティ・ロリータの笑顔が、僕に降ってくる。
この笑顔があれば。
僕は、自分の闇に、立ち向かえるようになれるかも、知れない。