僕の屋敷に、エターナル・プリティ・ロリータが、入る。
僕しかいない、孤独な屋敷に、人が、入る。
僕ではない、誰かが、ともに、暮らしてくれる。
僕の、少女。
僕の孤独を、この少女が、救ってくれる。
幼い少女に、多大な期待をしてしまっていると、思う。
けれども、僕は、どうしても、期待してしまう。
この少女の笑顔。
僕の中に確かに感じた、闇を払ってくれる、予感。
エターナル・プリティ・ロリータ。
女神の名を持つ、少女。
…僕の心の中でだけ。
エティと呼んでも、いいだろうか。
女神は神々しすぎるから。
神々しすぎる女神を思わせるエティ。
けれど、女神は偉大過ぎるから。
僕の心の中でだけ。
エティと呼ばせては、もらえないだろうか。
みじめな僕が横にいても、神々しさを感じなくていいように。
こんな僕なんかの横に並んでくれる、女神の化身を、身近に感じたいから。
エティは、初めて入る僕の屋敷に、少し戸惑っているようだ。
長い廊下の絨毯に足を踏み込むことすら、躊躇している。
前にいたところは、ずいぶんよくない環境だったと、聞いている。
バスシステムもなく、スライムもいなかったと、聞く。
できるだけ、寄り添って、ここで快適な暮らしを知って、僕とともに、生きていってほしいと、切に願う。
扉を開けると、無駄なダンスホールがある。
この扉を開けるのも、ずいぶん久しぶりだ。
部屋の状態は、悪くない。
清掃魔法が、まだ効いているのだろう。
孤独な僕には必要なかった、このダンスホール。
エティなら、いつか一緒に踊ってくれるかも、知れない。
その日を楽しみに思ってしまった、自分に少し、驚いた。
無駄にたくさんある部屋を、エティに見せながら、邸内を歩く。
「部屋がたくさんあるから、覚えられなかったら僕に言って、ね。」
エティは少々、疲れてしまったように、見える。
すべての部屋を見せるのは、やめた方がよかっただろうか。
…初めて来た大きな屋敷。
初めて会う、得体のしれない、大人の男。
エティの心の重みになっていることに、ひどく僕の心が痛む。
「KAMIと、ENPITSUを頂けますか。」
「カミ…?エンピツ…?」
聞いたことがない単語?がエティの口から発せられた。
いったい何のことだろう?
想像が、つかない。
「えっと、つるつるしてて、白くて、薄いものに、文字を書く、黒い、えーっと…。」
何やらエティは考え込んで、指で宙をなぞった。
すると、僕の目に、信じられない光景が!!
「こういう感じの…っ!!!???」
白い、薄手の…これはアントシートか…?
そして、おそらく…ビートルポイント、のような、もの。
何もない空間に、魔法をなぞり、呼びよせている。
僕の魔法とは、かなり勝手が違うようだ。
闇を呼び、闇の中から呼び寄せる、僕の、魔法。
強大な闇であるがゆえに、自分すらも飲み込まれてしまう、僕の情けない、魔法。
「エターナル・プリティ・ロリータ、君は、魔法が使えるんだね。」
呼び出したアイテムを拾うこともせずに呆然としているエティ。
…ずいぶん、無理をさせてしまったみたいだ。
もう、休ませた方がいいかもしれない。
「ここまでの超越呼び寄せ能力は、僕も初めて見たかな。君は、心に、思い浮かべる力があるんだね。」
自分の魔法領域を使って、ものを呼び寄せる、能力。
宙をなぞるだけで、二つのアイテムを呼び出すなど、聞いたことがない。
よほどの魔法の、使い手なのだろうか。
エティに二つのアイテムを拾って渡す。
一心不乱に、記録をしているようだ。
何が書かれているのか、全然わからない。
「それは、記号?呼起し記録印?すごいね、あとで、お話、聞かせてもらおうかな。」
エティの、隠された能力に、僕の心が少しだけ、ざわめく。
僕の知らない知識が、エティにある。
エティは、僕を、超越しているのではないか。
女神の存在が、僕にちらつく。
神々しい存在。
エティ、どうか、君は、神々しい手の届かない存在などではなくて。
情けない僕に、そっと寄り添う、ただの少女で、あってほしい。
記録をしながら、屋敷全体を回ることになった。
休もうかと聞いたら、大丈夫と、笑顔を返されたのだ。
ああ、エティ。
君の笑顔が、とても、僕を、明るくしてくれる。
僕は、まだ出会ったばかりだというのに。
こんなにも、エティに、夢中になっている。
エティ。
僕の、エティ。
僕の募る思いを、外に出すわけには、行かない。
まだ、ここに来たばかりなのに。
気持ちを、押し付けてしまうことなど。
テラスに、出た。
今はチェリービーの季節。
柔らかなチェリー色が、宙を舞っている。
この時期は、空が色づき、見ごろだ。
エティを見ると、チェリービーの集落に手を入れようとしている。
ああ、エティは、虫が好きなんだね。
今度バザーに行って、いろんな虫を買ってこよう。
「君は、虫が、好きなのかい?」
「虫?」
どこのバザーがいいだろう。
羽系なら、西。
甲殻系なら、南、
ワーム系なら、どこでもいいか。
ともにめぐる日を思い浮かべ、少しだけ気分が、高揚、した時。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「エティ!!!!」
エティ、エティが!!!
やっぱり、無理をさせ過ぎたんだ!!
いきなり、エティが気を失ってしまった!!!!
顔色が、真っ白だ。
本当に、本当に申し訳ない。
ともに屋敷の中を巡る楽しさに夢中になって、エティの疲労に、気付けなかった。
自分の愚かさに、涙が出そうになった。
エティを、そっと抱きかかえる。
ああ、こんなにも、軽い。
こんなにも儚い少女に、僕は、僕は何をしているんだ!!!
僕は深い後悔の念に包まれながら、エティを部屋に運んだ。
一番、日当たりの良い、部屋。
エティが、これから、過ごす、部屋。
窓から明るい、日が射している。
白い肌が日に焼けるといけない。
ヴェールをかけて、直射日光を遮る。
ああ、このベッドは、エティには、少々、大きすぎる。
僕が共に横になったとしても、ずいぶん余裕が、あるじゃないか。
…。
共に…?
!!!!!!!!!
と、ともにベッドに、入る?!
僕に!!僕にそんな資格はないと!
そんなことができるはずないじゃないか!
…僕に!
…僕に。
できるはず、ない。
エティの顔を見るのが、つらくなった。
僕に、エティの横に入る、資格など。
僕は、悲しみに包まれた。
まずい。闇が、出てくるかもしれない。
ここにいたら、僕からあふれ出す闇が、エティを包んでしまうかもしれない。
部屋の探知魔法をオンにして、僕は、あわてて自分の部屋に、行った。
エティが目覚めたら、羽音がなって僕に知らせてくれるはずだ。
それまで僕は。
闇を出さないよう、ロッキングチェアに、もたれていよう。
…大丈夫。
エティが、僕のところに、来てくれたから。
闇を出すことなく、持ちこたえることが、できる、はず。
パパパパパタタタタ!!!
ああ、エティの目が、覚めたみたいだ。
「目は覚めたかい、私のスウィートロリータ。」
倒れた時、思わずエティと叫んでしまった。
ダメだ、いきなり勝手な愛称で呼んでしまって、引かれることは、目に見えている。
エティ呼びは、僕の心の中だけにとどめておかねば。
少しだけ、敬意をこめて、いろいろ呼んでみて、エティが一番いい顔をしてくれた呼び方で、呼ぶように、しようと、思う。
「はい、ご迷惑をおかけしました、すみませんでした。」
迷惑?!
エティ、君は何を言っているんだ!
僕が、僕が無理をさせてしまったからだというのに。
「!!君は…大丈夫、なのかい?」
そんなにも、僕に、気を使っているのだろうか。
そんなに、身構えないで、欲しい。
「ええ、大丈夫なので、お話、しませんか。」
話。
そうだね。
僕は、家の案内ばかりで。
君に、伝えなければならないことを、まだ、伝えていなかった。
エティ。
僕は、君に、現実を、言わなければ、ならない。
何のためにここに来たのか。
僕が望む、孤独を分かち合ってくれる相手としてのエティ。
それは、僕の望みであるだけで。
現実は。
「そうだね、君は、ここに来た理由を、知らなければ、ならない、から。」
王家の、愚かな、しきたりを重んじるが故の傲慢な理由で、君はここに来たんだよ。
「君は、僕の、褥を共にする相手、なんだよ。」
「はい。」
エティは、私の言葉に、まるで、動揺していない。
褥、褥という、行為なのに。
…もしかして、褥の知識もないまま、ここに連れてこられた可能性はないか。
「君は、褥の知識、あるの?」
「えっと、あります。SEX?MAGUWAI?SEIKOU?ETCHI?そういうものですよね?」
あるというわりには、よくわからない言葉を使っている。
「詳しく、知ってるの?」
「そうですね、一通り。」
一通り…?
「…怖く、ない?」
「いやべつに。いつします?」
褥の在り方を、どこまで知っているんだろう。
そもそも、僕は、おそらく。
「それが、できないんだ。」
恐怖が、僕をの体を、ふるわせる。
あの、恐ろしい、出来事。
あれから、滾ることのない、私の陰茎。
「僕は、性的不能者、だから。」
僕をまっすぐ見つめる、エティの顔を見ることができない。
僕は、エティを、見ることが、できない。
こんなにも。
こんなにも、僕は。
エティ…。
アントシート…蟻酸を凝縮したつるつるのシート
ビートルポイント…カブトムシの角を加工した、線を引く道具
超越呼び寄せ能力…自分の魔法域に魔力をのせてそこに望むものを呼び出す
呼起し記録印…魔法を起動するときに関連付ける印(印鑑になってることが多い)
探知魔法:ベッドサイドにあるスイッチ。動きがあると特定の信号を出す。
エプロンたんは日本語をしゃべってる気になってますが、実はユーラシアと同じ言葉をしゃべってます。
聞き取り慣れてないこともあって、エプロンたんは知らない言葉を※※変換しちゃってますが、ユーラシアはなんとなく単語として聞き取れています。
ただ、意味は分からないので、聞こえてはいるけど、理解はしてない感じです。