※この作品はR-18です。

闇の中のユーラシア   作:まあエロい

3 / 7
その3

あの、恐ろしい、おぞましい出来事が、私の中に、思い出される。

恐怖、混乱、戦慄、身の毛もよだつような、拷問。

私の闇が、どこまでも広がる、この上ない、畏怖。

 

「僕は、褥を、完了できない、不能者なんだよ。」

 

声が、震える。

あのおぞましい時間を、僕は今から、エティに語らなければならない。

エティ。

僕は。

 

消えてしまいたいとさえ、願ってしまう。

 

「詳しく、お話していただけますか。」

 

エティの、やさしい目が、僕をまっすぐ、とらえている。

こんなにも、エティは、僕にまっすぐな目を、向けてくれている。

僕は、語らなければ、ならない。

 

「…二年ほど前に、隣国の姫との縁談ががあった。だが、その褥で、私は、一切たぎることがなく、姫は侮辱を受けたと、たいそうお怒りになってね。破談となってしまったのだよ。」

 

隣国の姫は。

とても派手な、王女だった。

 

物言いがとても苛烈で、初対面から僕のことを見下していたようにも、思えた。

僕は、石像のエターナル・プリティ・ロリータのような、微笑みを絶やさない、やさしい女性を、心から望んでいたのだが、それは叶わず、人当たりのきつい姫が僕の伴侶として選ばれ、やってきた。

 

姫は、僕のどこが気に入ったのかわからないが、婚姻を了承した。

二人で過ごす時間が、増えていく。

いつまでたっても、僕の話を、聞き入れる気配が、ない。

 

「ユーラシア殿下!もっと私をおほめなさい?あなた女性を悦ばせるのがへたくそすぎますわ?!」

「何をしていらっしゃるのかしら!私が一人でここにいるというのに!」

「気の利かない王子が、王になるというのですか?無理ですわ!」

 

何を言っても、すべて僕を否定する言葉で終わる。

なぜ、縁談を断らなかったのか、いまだに不思議に思う。

 

そして。

 

いよいよ婚姻するという前日。

寝屋を共にすることとなった。

 

ユーラシア(この国)では、婚姻を結ぶ際、寝屋を共にし、朝日の中で愛を誓うという儀式がある。

誓ったとき、朝陽が輝いていれば、永遠にその愛が輝くという伝説も、残っている。

 

寝屋を共にすることについて、僕は不安しか感じていなかった。

 

なぜなら。

僕は。

 

あのおぞましい日から、一度も滾ることなく、生きていたから。

女性に欲を感じることなど、一度もなかったのだ。

ただでさえ、僕は姫に対し、良い印象を持っていない。

 

できるはずが、なかったのだ。

 

姫は、僕の陰茎を散々触り、自らの素肌をこすりつけ、憎まれ口をたたくその唇を僕の体中に這わせた。

しかし、僕は滾ることはなく、ただ、なすがままで、夜が明けた。

 

外は、土砂降りの雨で、雷が鳴り響いていた。

 

姫の怒号が飛び、僕は宮殿から追い出されることとなった。

姫は、この国よりも少しだけ大きな国から来ていた。

 

肌をさらしたというのに、滾ることもできない不能者に、王の資格はないと、王をはじめとする国の代表者が集まる席で、大々的に公言された。

姫を糾弾する者はいない。

僕は、直ちに、追放された。

 

「僕は、姫に恥をかかせた、出来損ないとして、王子の名を奪われ、ここにいる。」

 

僕には、弟がいる。

第二王子だ。

ユーラシア(この国)の名は、僕がもらってしまったが、王の血を引く、まぎれもない、由緒正しき、王の血筋。

弟は、奔放な性格で、女性を常に横に置いている。

血筋は、弟に任せておけば良いのだ。

王家の堅苦しいしきたりなど。

 

出来損ないの僕など、不要なものなのだ。

 

「みじめだろう?」

 

何もできない、ただの、出来損ない。

 

「ぜんぜん。」

 

エティは、僕の言葉に、即答した。

思わず、見つめてしまう。

この出来損ないの僕を、認めてくれると、言うのだろうか。

誰も、誰一人として、僕を擁護するものなど、いなかったというのに!

 

驚愕する僕を、そっとエティが、なでてくれた。

ポン、ポン、ポン…。

 

幼き日に見た、母上の面影を、感じた。

泣き止まない僕を、宥める時、いつも母上が、こうしてくれていた…。

 

「同情、してくれるというのか…。こんな、幼子が…。」

 

胸がいっぱいになる。

僕よりもかなり小さい、エティ。

なのに、こんなに愛溢れる、やさしい手を、惜しげもなく、差し伸べてくれている…。

 

「何か、昔、褥でいやなこととか、あったんじゃないですか?」

 

エティが、僕の傷に、触れようとしている。

未だ乾くことのない、グロテスクな、生傷。

触れようとするたびに、おぞましさが闇を呼び。

今まで触れようとすらしなかった、僕の最大級の、心的外傷。

 

「昔…。そう、昔の話だよ…。」

 

話してしまって、いいのだろうか。

話して、僕は、どうなるというのだろうか。

何も変わらず、ただ生傷を深くするだけなのではないか。

血が噴出して、止まらずに、このまま息絶えてしまうのではないか。

 

エティ。

僕の、エティ。

僕は、君に、話してしまっても、いいのだろうか。

 

涙が、零れる。

あの日、あの時の、恐怖の涙は、未だ乾いてなど、いないのだ。

むしろ、溢れんばかりだ。

 

「お話、して下さい。」

 

エティの、私を見つめる目が、とても真剣だから。

話しても、いい、だろうか?

 

話を、聞いて、くれるのだろうか。

あの日以来、声に出せず、一人胸の内に閉じ込めてきた、僕の、思い。

 

「あれは、僕が、16の歳になったころ、だ。」

 

意を決して、話を、始める。

心の奥底に、押しやって、忘れたふりをしていた感情が、今、僕の外へと、出る。

エティは、聞いてくれるだろうか。

 

「すでに精通のあった僕は、性交と、いうものに、興味、津々、だった。」

 

自らの経験を、すべて話して。

 

「宮殿の噴水に設置されている、エターナルプリティロリータの石像で、毎日懸想をしていたころだ…。」

 

エティは。呆れてしまうかもしれない。

 

「僕は、褥の教育の日を、心から、楽しみにしていた。」

 

けれど。

エティなら。

 

「そして、その、実施、の…日。」

 

聞いてくれると、思えるから。

愛情深い、、エティ。

 

「てだれの、褥、教育、係の、女性が、僕の、寝、室、に、来た。」

 

僕に差し伸べてくれた手が。

 

「僕のッ…陰、茎を、刺激し、大きく…育て、上げると、係の…女性は、衣服を…脱いだ。」

 

震える僕の手を、包んでくれているから。

 

「そして、せいきをなめるようしじをだした。」

 

おぞましい記憶を今。

 

「僕は、とても、そこを、どう、しても、舐める、気、に、なれず、」

 

外に吐き出し…

 

「…う、ッ…グ…。」

 

ダメだ、強烈な、吐き気がっ…!!

 

「ここ、ここに吐いてください!!」

 

エティが、何やら器のようなものを呼び寄せた。

僕は、その器の中に、激しくえずいた。

 

「う、っうぇぇえええ・・・・・・・。」

 

ほとんど食事をしていない僕の胃液が、吐き出される。

さっき飲んだ、ぬるい水が、吐き出されたのだな。

…飲まなければ、よかった。

 

「さ、お口をこれで、潤して下さいませ。」

 

吐くのに必死だった僕に、エティが何かを差し出した。

さわやかな香り…。香りに気を取られていると、柔らかな布で、口元を拭われた。

…温かい。

エティの、温かさが、染み入る。

 

不快さの消えた僕の唇に、冷たい器があてられた。

自分で出す、ぬるい水とはまるで違う、冷たくて、さわやかな、水。

 

これは…いったい?

 

「あ、ありがとう、この、飲み物は…?」

 

「魔法のお水です。」

 

「魔法の、水・・・。」

 

冷たい水が、僕の喉を通ってゆく。

冷たさが喉を通り抜ける心地良さに、驚いた。

 

「おじ様が、ご自身を取り戻すための、魔法がかかったお水、です。」

 

「僕が…?自分を、取り戻す・・・。」

 

僕は、自分を、失くしてしまっていたという事なのか…?

それを、エティは、再び、与えてくれるという事なのか…?

 

「続き、お話、できますか?」

 

僕は、変われるというのだろうか。

こんなにも、過去に囚われて、みじめに孤独な毎日を過ごしている僕が。

 

「女性の性器は、血をすったヒルのようでしたか?不快なにおいがしましたか?毛むくじゃらでしたか?」

 

あの夜の、僕の恐怖の対象。

あの恐ろしさを、エティは、共有してくれるというのか…?

あの恐ろしさを、エティは、知っているというのか…?

エティ!

君は、君は…!

 

「!!!・・・ああ、そう、そうだったんだ。」

 

あの日の出来事が、僕の中に、よみがえってくる。

恐ろしく醜悪で、不快な、肉の暴力。暴虐。

 

「僕の毎日見ていた、エターナルプリティロリータの、果実のような、桃色の、閉じられた蜜肉は、どこにも、見当たらなかったんだ、…どこにも。」

 

僕の思い懸想したものはどこにもなく、ただ、凶暴な、醜い肉の攻撃を受け続けた、あの日。

 

「褥係は、僕の子種を、採取してくるよう厳命されていた、のだよ。」

 

石像で、あれほどまでに滾り、解放していた僕の熱が嘘のように静まり返り。

 

「めちゃくちゃに、陰茎を、なぶられた、よ。」

 

変化の無い陰茎は、ただ乱暴に、刺激を通り越した打撃を与えられた。

 

「顔の上に、無理やり、座られて、無理やり、舐めさせられてっ・・・。」

 

倒れ込む僕の上に、肉の攻撃は勢いを緩めることなく、追撃を重ねる。

 

「僕は、吐きながら、泣きながらっ・・・」

 

出せ、出すのだと、怒号の中、僕は怯え続け。

 

「失禁してしまって・・・。」

 

出るものが違うと、さらにひどい加虐が始まり。

 

「逆上、した、褥係、に、朝、まで、虐遇を、受けて…。」

 

意識を失わんとしていたところに、執事が来て。

 

「朝、僕の様子を見に来た、執事が、僕の目の前で、褥係を、拷問、して…。」

 

褥がどういうものなのか、知ることができなかった僕に、手本を見せた執事。

 

「ぼろぼろになった、褥係を、そのまま、陵辱して、殿下、これが褥ですよと…。」

 

僕をあれほどまでに痛めつけた、醜い肉が、執事の陰茎で穢されてゆくさまをまざまざと見せつけられて。

 

「血だらけの、褥係が、白く染め上げられていくのを、僕は、僕は…。」

 

赤い血と、執事の放った白い精液が、混ざり合っていくのを目の当たりにした僕は。

性の在り方に、激しい嫌悪を抱くようになり。

今の今まで、一切滾ることなく、過ごしてきたのだ。

 

たった一人で。

誰とも、触れ合わずに。

 

「おじさま…かわいそう…。」

 

エティは、こんな僕のために、涙を、流している。

大きな空色の目が、涙で揺れている。

ああ、エティ。

君の涙が、僕のために、流されているなんて。

 

「…こんな、不出来な、僕を、かわいそうだと、言ってくれる…の、か…。」

 

こんな、僕を、憐れんでくれると、言うのかい?

 

「おじ様は、何も悪くありません!!!」

 

エティの泣きぬれた笑顔が、僕に突き刺さる。

 

こんなにも、真心が伝わってくる。

 

こんなにも、僕を見つめてくれる。

 

こんなに情けない僕を、まっすぐ見つめてくれる。

 

涙にぬれる、エティの美しさに、陶酔した。

 

エティが、尊くて、もう、何も考えられない。

 

エティしか、見えない。

 

エティしか、見たくない。

 

エティ、エティ、エティ!!!

 

僕は、君を、君を。

 

本当に、本当に!!

 

愛してしまった、みたいだ…!!

 

「あのね、おじさま、わたしは、こんなに小さいから、まだ、いろいろとできないことも多いけど、できることを毎日続けていったら、できることの幅が広がっていくのよ。一緒に、褥、やろ?できないことがある者同士、いっぱい試行錯誤して、いっぱいできること、増やしていこ?そして、幸せなセックス、いっぱい、しよ?一緒に、喜びを、追及、しよ?ね、お願い。」

 

エティが、僕に言葉を投げかける。

エティは、これから、きっと僕に、たくさんの言葉をくれるはずだ。

 

エティがいてくれたら、きっと僕は生きていける。

エティがいるだけで、こんなにも僕は、胸がいっぱいじゃないか。

 

エティ。

 

僕のもとに来てくれて、本当にありがとう。

 

エターナル・プリティ・ロリータ、あなたは確かに、存在した。

僕のもとに、こんなにも素晴らしい少女を、使わしてくださった。

 

この少女がいたら、僕はきっと。

 

大切なエティを、そっと抱きしめる。

…ああ。

 

だめだ、もっと、抱きしめたい。

 

エティを抱きしめる、手に力がこもる。

 

僕の、エティ。

 

僕だけの、エティ。

 

 

エティが、僕を抱きしめ返してくれた。

 

僕は、うれしくて、また少しだけ、涙をこぼした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。