僕は階段を下りて、一階の食堂へと向かった。食事の準備をせねばならない。…どうする、食事に一服盛って…いやダメだ!!まだエティから絶対の信頼を得ていない!!急ぐな、早まるな!!今はまだ…時期尚早だ!!!
だん!!
僕は心の迷いを振り払うかの如く勢いよく食堂のドアを開けた。誰もいない、広い食堂。白いテーブルクロスのかかった、長いテーブルの上には花が飾られ、ろうそくの灯が揺れている。ビーは本当に仕事に抜かりがない。使われることのない部屋をこんなに飾って、何が楽しいというのか。…まあ、今日からエティが一緒に食事をしてくれるから、このクオリティは保ってもらわないと困るけれども。
…いつも僕はここで一人でワームエキスを飲んでいたんだ…。王宮の僕の世話役がいつも食事を用意してくれるけど、ほとんど手を付けずにいつもビーに処理を頼んでいて。無駄なことしてるなあと思ってずっと生きてきた。
今日からエティがこの屋敷に来ることは向こうも知っているはず。いつも通りならば夕食の時間に一人分の食事が勝手に送られてくるのだが、今日はどうなっているのだろう。エティの呼び出した邪魔者たちの分も用意すると先ほど約束してしまった。その分も追加してもらうのが良いだろう。…王宮の世話役に連絡をしなければならない。正直、気が重い。
僕は椅子に座り、ふうとため息を一つつくと、目を閉じる。…闇が広がる。暗い、暗い闇が広がり、僕の魔法空間が広がったところで、王宮の世話役と意識をつなぐ。
「…私だ。チング、応えよ。」
闇に僕の声が響く。反応がないな。どういうことだ。どんどん闇が濃くなっていくじゃないか。これでは闇に囚われてしまうかも…!!!ヤバイ!エティ、エティを思い浮かべてっ!!!
『エティ?誰ですそれ。ありゃ今日の闇はえらく濃いな、なんかあったんですかユーラシア様!!』
闇の向こうに、世話役の姿が見えた。奥にはかつての執事の姿も見える、おおかた会議の最中だったんだろう。
「本日こちらに尋ねてきた少女の分の食事は手配ができているのだろうか。」
『ああ、今から調理に取り掛かって、そちらに転送する予定でしたけど、何かあったんですかね?』
「少女が友人を招いたのだ、二人分追加を頼みたい。」
本当ならば毒を盛りたいところだが、それは、またいずれ…ふふ。フフフ。
『友人を招く?あの少女にそのような力が?』
執事が割り込んできた。…こいつは冷酷非道な切れ者であると同時にかなりの女性愛好家…いや違うな女性加虐の性癖があるので、エティに近づけてはならない。
「少女は私の元で暮らすものと決定されている。今さら手放す気は毛頭ない。」
『…一度お話を伺いたいですね。今からそちらに「来てはならん。」』
今にも乗り込んできそうな執事に、闇を飛ばす。闇が執事をがんじがらめにし始めた。これでしばらくは動けまい。僕の闇魔法が久しぶりに牙をむいたので世話役が少し驚いているようだ。
『っ、それでは少し多めに皿盛料理を作りそちらに送ります。』
「頼んだぞ。」
目を開け、通信を切り始める。目を開けても、まだ闇が残っている。闇の向こうに執事の目が光っている。何か言っているな…。
『…明日そちらに伺いますよ…昼…。少女…。』
通信が完全に切れて、言葉が届かなくなった。
まずいな。明日執事が来る?!…王宮に乗り込むしかない。正直なところ、王宮にはいきたくないが、エティの身に何かあってからでは遅い!くそう!!ぬかった!!腹が減っているから大量に作れとでも言っておけば…!!!
怒りの感情が、闇を払い始めた。目の前が少しづつ明るくなってくる。
明日はあさイチで王宮に乗り込んで、執事をとっちめてエティとの接触をフルパワーで阻止せねばなるまい。移動魔法は相当闇を纏ってしまうから使いたくはないが…この際仕方がない。幸い僕にはエティロールがある。あれさえあれば闇を払うことなど容易にできるはずっ…!!
エティロールの威力はすごいな。
ズクン!!!
はっ!!!!
ほんの少し思い出しただけなのにまたしても僕の陰茎がっ!!!
っ、ぅううっ!!!ちょ、ちょっとだけ、コシコシ、しても、よろしいでしょうか…?
僕は時空間クローゼットにしまってあるエティロールを引っ張り出して、クンカクンカしながら一発抜かせて、いただいた。イク寸前に、天井の隙間がスウと開いてビーがタオルを投げてきたので、その中に、発射した。…ああ、エティ!!いいよ、すごく、いいよおおおおおお!!!
思いのほか大量に射精してしまい、タオルから精液が垂れる。天井の隙間がスウと開いて、二匹のビーが追加のタオルを持ってきてくれた。それできっちり受け止めて…二枚の湿ったタオルはそのままビーが持って…行けずに応援のビーが四匹やってきて…また追加が来た、ひいふうみい…よくわからないけどたくさんのビーがまとめて持って行ってくれた。
エティロールを異空間クローゼットに丁寧にしまっていると、テーブルの上に渦巻きが現れた。空間が揺れて、料理がテーブルに並び始める。サラダ、スープ、ワーム料理が二つと野菜のサンドパンなど。これだけあれば十分だろう。
エティの部屋に食事ができたことを伝えに行き、邪魔者二人も一緒に一階へと下りて食堂の扉を開けると。
「え、うわぁああああ!!」
エティが空色の目を丸くしている。机いっぱいに並ぶ料理に喜んでいるようだ。
「すごい!すごいですおじさま!おじさまが、作ったの?」
…こんなにも、かわいいエティ。
「これはね、お城の調理人たちが作ってくれたんだよ。さっき、召喚したんだ。通信魔法でね。」
「通信魔法?」
通信魔法すら、知らないというのに君は友達を呼び出してしまったというのか?!エティの底知れぬ魔力と、あまりにも足りない知識に改めて驚愕する。これは…ある意味とても危険なんじゃないのか?…僕がエティを守らねば!!!
「席に着こうか。食べながら、お話、するね?」
エティは僕の目の前に。エティの横に邪魔者が二人並んで着席する。取り皿に好きなものを取って、食事を始める。エティはスープが気に入ったようだ。小さなお口に運ばれて飲み干されてゆくスープ。フフフ、たくさん飲んで、たくさん聖水を…いかんいかん!!!気を取り直して、そうそう、エティは通信魔法が知りたいと言っていたじゃないか。
「通信魔法はね、遠くにいる人と、話をする魔法なんだよ。集中して、思いを伝える。すると、それに応えてくれるんだよ。」
「わたしにも、使える?」
エティは僕と通信してくれるってことなのか?…いや、僕はこんなに近くにいるじゃないか。通信の必要性はない。ちょっと待て、エティは誰と通信するために通信魔法を使いたいと願っているんだ?!エティと通信するのは僕だけでいいじゃないか!!!必要ない、必要ないぞぉおおおおお?!
「練習したら、使える、かもね…。僕はあまり、得意じゃないから、疲れてしまうんだよ。闇に、飲まれてしまうことも、あるんだよ。」
「闇?」
なるべくエティが通信魔法に興味を持たないよう、話を持っていくしかないな。
「見たい、見たいです!みせて?おじさま!」
「…くらいの、怖く、ない?」
「だいじょうぶ!見せて?おじさま!」
どうしよう、話がおかしなことになってきたぞ…。闇を呼ぶのはいいけど、抜け出せなくなる可能性も高い。しかも闇が晴れるまで一面真っ暗になる。食事中に?怖がらせて通信魔法をあきらめさせるにはいいかもしれないが…。呼ぶか…?恐怖で泣き叫んでしまうかもしれないじゃないか。いやしかし、エティは興味津々だ。…呼ぶか。
「闇よ。ここへ。」
僕は目を閉じ、闇を呼んだ。僕の中から闇があふれだして、今頃真っ暗闇になっているはず…。エティは怖がってはいないだろうか。どうせ闇で見えないだろうけど、目を開けて、闇が晴れるのを待とうと…。
ぴっかーーーーーーーーーーーー!!!
「・・・!!!!これは・・・?!」
明るい!!僕の。僕の闇が。一瞬で晴れた…だとぉおおおおおおおお?!
「ご、ごめんなさい!おじさま!!スープがこぼれそうになっちゃったから、電気…じゃない、明かりを呼んでしまいました…。」
「!!!っ、君は…!!君がっ!この、闇を!かき消して、くれたと、言うのか…?」
僕がずっとずっと怯え続けてきた闇。闇が深すぎて魔法領域がなかなか僕から離れてくれず、いつも独りで闇の中で震えてきた、僕。溢れる闇の深さに底知れぬ恐怖を覚えながら恐る恐る魔法を使ってきた僕。何もできずにただ闇の晴れるのを待っていた僕だったのに。
エティがいたら!!僕はもう、恐怖を感じなくてもいいんじゃないのか?!
「エターナル・プリティ・ロリータ。食事の途中で申し訳ないけどっ…!君を、抱きしめても、いいだろうかっ!!!」
魔法を使うことを躊躇せざるを得なかった僕。恐怖を乗り越えることができず、使いこなせなかった莫大な魔力。常にまとわりつく闇から逃れられない運命だと思っていたのに…!!!
「僕の、闇を、払ってくれた…光の、女神…!!ありがとう…ありが、とうっ…!!」
みっともない!マナーがなっていない!それがどうした!!!僕は食事の最中だというのに立ち上がって椅子に座るエティを抱きしめた。涙があふれる。ああ、泣いていいんだ。僕は悲しかったんだ、そうか、悲しかったんだ、膨大な魔力があるのに使うことに憶病で、恐怖に飲まれて。恐怖を乗り越えたらなんだってできるはずなのに、恐怖に包まれて一歩も動けず。あふれだす闇が晴れるのを待つ間に恐怖心が闇を呼んで抜け出せないという混沌のスパイラルの中。たった一人で、僕は…。
「おじさまが、闇に囚われそうになったら!今みたいに、私が闇を、吹き飛ばしてあげるわ?ね!だから安心してね?安心して、泣かないで。ね?お願い。」
一人ぼっちの僕に、舞い降りた天使。闇を光で照らしてくれた女神。
「…ああ、ああ、そうして、おくれ、エターナル・プリティ・ロリータ!!」
もう…絶対に離すものか!!!!
エティは僕だけの、ものぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
「ラブラブだな!!もうお前ら今すぐやっちゃえよwww」
「!!!!!!」
この邪魔者…もしや僕とエティの褥を推奨しているのか?!もしや、味方?やっちゃえってのは、やっぱりそのっ…し、褥っ…!!僕がエティとっ!!!褥、褥、褥っ…!!いやいや、もともとそのために来たんでしょ?!褥ってことは僕の陰茎がエティの蜜肉にめり込んで…え、ちょっと待って、めり込ませたら溢れんばかりの聖水はどこに行っちゃうの?ねえねえねえねえ?!
「ちょ!!ももたん!」
僕は最大にして最重要な大問題に気が付いてしまったような。この滾りまくる僕の陰茎ってのはさ、もしかして、ひょっとしてなんだけどええとええとぉおおおおおおおお?!
「あの、おじさま、この子たちのことなんですけど。」
「あ、ああ、どうするんだい?」
混乱しまくる僕の心のうちなど全く気が付かないエティ。
「ももたんは、たまに遊びに来てもらう感じで、この子は、私の執事にしたいと思ってるの。」
「執事…?ああ、そうだね、執事!それがいい!そうしよう!」
ああ、執事、執事ね!!そうか、執事にしてしまえば、主に手は出さないはず、しかも執事であれば何かやらかした時に首をはねることだって可能じゃないか。そうだ、明日執事に会いに行ったときにこいつのことを相談するのも手だ。執事の常識を叩きこんで、使えなさそうならば執事に始末を頼んでもいい。
「それでは、マイスウィートの隣の部屋を、使ってもらおう。そこであれば、何かあっても、すぐに駆け付けることができるからね。」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます、ご主人様。」
僕の黒い考えなどまるで気づかず、エティと執事見習いが笑顔を向けてきた。ご主人様?ああ、僕も主人とみなしてくれるという事か。それならなおさら、ふ、フフフ…!!!
「ねえ!おじさま!このスープ、とても、おいしいわ?」
「これ?チップワームのスープだよ。とろとろしてて、おいしいでしょ」
ああ、さっきからとてもおいしそうに口にしていたね、気に入ったのなら、この宮殿の裏にでもチップワーム牧場を作ってもいいな。エティの喜ぶ顔が、見たいからね。
「チップ…ワーム…?」
え、エティが!!!!急に倒れて、しまったああアアアアアアアアアア!!!!!!
ちょっと待って、たくさんスープ飲んでたよねえ?!
もしかして気を失ったと同時に失禁とかしてないかなあああああああああああああ?!
ハアハアハアハアハアハアハアハア…………!
僕はっ!!おかしな息遣いのままっ!!
エティを抱えて二階のベッドまで運ばせていただいたああアアアアアアアアアア!!!
…おもらしは、してませんでした。
うう…。