ぼくのかたのうえのヒツジ…なかよくしてくれるのかなあ?ぼくはずっとひとりぼっちだったから、ちょっとうれしい。
「ただふみ。お前年はいくつなんだ。」
「ななさい、しょうがくいちねんせいです。」
もうじき、にねんせいになるんだ。…でも、ここってがっこう、あるのかな?ぼく、がっこう、もういけないよね?いいの・・・?
ぼくはがっこうがすごくすきだった。べんきょうもすごくたのしくて。もじをかいたり、えをかいたり、うたをうたったり。としょかんにまいにちいって、たくさんえほんをよんだりしてた。いえにもちかえっても、おじさんにすぐよびだされちゃうからよめないんだ。だから、やすみじかんにとしょかんにいってほんをかりて、よんで。…ほんがよめなくなるのは、ざんねんかも。でも、もう、おじさんのところになんか、いきたくない!
「ただふみは勉強は好きなのか?」
「すきです。」
ヒツジはべんきょうをおしえてくれるのかな?だったらせんせい?ヒツジってよんだらおこられちゃうよね、ヒツジさんってよぼう。
「お嬢様、ご安心ください。わたくしが、この子供を、世界一の執事に育て上げて見せます。」
ヒツジさんがおねえちゃんたちとおはなししてる。よくわかんないけど、ヒツジさんはぼくをそだててくれるみたい!かわいいみためだけど、こわくないかな、おこられたりしないかな、いやなこと、されないかな…。ぼくはちょっとだけしんぱいで、かたのヒツジさんをみた。
「ビビりすぎだ。食ったりしねえからしゃんとしとけ。男だろ。」
なんだろう、ことばはこわいけど、こわくないや。おじさんのほうがよっぽどこわかった。
「今、お前のことを話してるんだ。きついかもしれねえけど、ちゃんとしとけ。」
「うん、えっと…はいっ!」
ももたんおねえちゃんはにこにこしてるけど、エプロンたんおねえちゃんはちょっとこまってるみたい。ぼく、おねえちゃんをこまらせてるのかな。どうしよう、ぼくにできること、ちゃんとやらないと。むつかしいことやれっていわれたら、どうしよう。でも、がんばらないと、またおじさんのところにもどされちゃうかもしれない。がんばるけど、がんばれるかな…。
「はなたんはどうなの。がんばれそう?無理なら、断っても…」
ことわるのはだめ。ここにいたいから。でも、がんばれるなにかが、ほしい…そうだ!
「ぼく、がんばる!!がんばるから!!ごほうびが、ほしいの。…ダメかなあ…?」
ずうずうしいっておこられちゃうかな?おじさんはごほうびだよっていって、おじさんのおちんちんをさわらせてくれたけど、ぼくはさわりたくなかった。ぼくが、さわりたいのは。…おっぱいだったんだ!
「いいよ。なに、ほしい?」
「ねるまえに!おっぱいさわらせてほしい!」
おこる?エプロンたんおねえちゃん、おこっちゃう?ぼくのかたのヒツジさんが、なにもいわずにぼくをみつめているみたい。これって、あとでおこられるのかな、どうしよう…。
「わかった!じゃあ、がんばれ!」
エプロンたんおねえちゃんは、にっこりわらっていいよっていってくれた!よかった!おこられなかった!ぼくはうれしくなって、おおきなこえでへんじをした!
「うん!!!」
「ただふみ。返事は、「はい」だ。次から気を付けろ。」
ヒツジさんからさっそくおこられちゃった。そうだね、ぼくおねえちゃんよりもとししただし、へんじをするときはきをつけないとね!
「わかりました。」
「よし。」
ヒツジさんはぼくのかたのうえですわって…あれ。ヒツジさんがきえた?
―――右耳。
ヒツジさんのこえは、きこえるけど、すがたがきえちゃった?
ぼくはみぎみみをそっとさわった…あれ、もこもこしてるものが!!
―――俺のこの体は変化が可能なのさ。
「え、えっと、ええっと…。」
―――念話の練習から始めるぞ。声を出さずに、考えをまとめて、飛ばす練習からだ。
「は、はいっ。」
―――声に出すな。
―ええっとええええっと、ひつじのかたちのもこもこごねんふわふわ、みみっ・・・
―――初めからうまくいかねえって知ってる。落ち着け。お前はまだできなくて当然なんだ。
「はッ…。」
―はい!!!
―――よし、その調子。余計なことを考えず、伝えたい言葉に集中しろ。
―わかりました。
ぼくがヒツジさんとねんわ?をれんしゅうしていたら、おにいちゃんがやってきて、ごはんをたべるばしょにいどうすることになった。いどうしながら、ぼくはねんわのれんしゅうをする。
―――おにいちゃんはまずいな、あいつはご主人様と呼ぶんだ、いいな。
―ご主人様?わかりました。
おに‥ご主人様のあとをついていくと、すごくひろいろうかがでてきた!ふかふかのじゅうたんが、ちょっとあるきにくい。いまいたへやのすぐよこがかいだんで、そのまましたにおりたんだけど、おくのほうすごくひろくて、びっくりしちゃった。なんへやあるんだろう、おしろ?
―――階段、手すりをきちんと持って降りろよ。
―はい、ありがとうございます。
かいだんをおりると、にかいとおなじくらいひろいろうかがずーっとおくのほうまでつづいてた。いちばんおくがよくみえない。とちゅうにすごくおおきなドアがあって、そこをあけるとたいいくかんみたいにひろいへやだった。へやのおくにもドアがあって、そこをあけてなかにはいると、おいしそうなごはんがいっぱいならんでた!
「え、うわぁああああ!!」
エプロンたんおねえちゃんがこえをあげてる。すごくかわいいこえしてるんだよね、おねえちゃん。
「すごい!すごいですおじさま!おじさまが、作ったの?」
ぴょんぴょんとんでおおよろこびしてる。ドレスがゆれて、すごくかわいい。
―エプロンたんおねえちゃん、かわいいです。
―――ちょ!お嬢様と呼ぶんだ。お姉ちゃんは今後使ったらだめだ、いいな。
―お嬢様、かわいいです。
そっか、ぼくはこれからおね・・・お嬢様のしつじ?になるんだもんね。いつまでもエプロンたんおねえちゃんってよんでたらだめだった。ちゃんとべんきょうしていかないと!!
たくさんおかずがならんでいるおおきなテーブルにすわって、みんなでごはんをたべる。ぼくのよこにはももたんお嬢様、そのとなりにお嬢様。…?お嬢様が二人?
―ももたんおねえちゃんはなんとよんだらいいのですか。
―――ももたん殿は…あとで伺ってみるか。あの人は特別だからな。
とくべつ?よくわかんないや。そのうちわかるかな?
おいしそうなごはんがいっぱいあるけど、どれからたべたらいいのかよくわかんないや。ぼくすききらいはあまりないけど、なまやさいはちょっとすきじゃないかも。とりざらにハンバーグをとって、たべてみる。おいしいけど、なんだろう、ちょっとかたい?いっしょうけんめいかまないとたべられないや。
―ヒツジさん、りょうりがよくわかりません。
―――お前の今食べているものはワームだ。歯ごたえがあるのは仕方がない。向こうのサンドパンはワームペーストだからまあまあやわらかいな。ワームフライの方が香ばしくてうまい。野菜もしっかり食え。
ワーム?なんだろう。おにくとはちょっとちがうみたいだけど。ここはぼくのしらないものがいっぱいあるみたいだ。いっぱいべんきょうしないといけないよね。がんばろう。
「闇よ。ここへ。」
やさいもがんばってたくさんたべて、コーンスープ?をのんでたら、いきなりくらくなった!!
―ひ、ヒツジさん!!
こえをあげなかったぼく、えらい?!ちょっとこわい!でも、こえあげたらしかられる!ぼくはおじさんにこえをだすなってよくおこられることがおおかったから、こえをだしておどろいたり、しないんだ。
―――大丈夫だ。俺は見えてるから。何かあったらお前を守ることができる。安心しろ。動かないで、そのままでいるんだ。…叫ばなかったな、偉いぞ。
ヒツジさんにほめられた!ぼくは、あまりほめてもらったことがないから…すごく、すごくうれしい!
ぴっかーーーーーーーーーーーー!!!
あ、あかるくなった。なにがあったんだろう。なんかお嬢様とご主人様がいっぱいしゃべってたけど…。となりをみると、ももたんおねえちゃんがサラダをバリバリたべてた。やさいすきなんだね、えらいなあ…。
「ちゃんと食べてる…かwはなたんはなんでも食べれるんだねwwwエライエライwww」
ぼくのこと、あたまぽんぽん、してくれた!!!わあ…ママにもずっとしてもらえなかったのに…!!!なんか、すごく、しあわせ…。
「えへへ…」
―――よかったな。…これからもっと、いいことがいっぱいあるから。
―いいこと?ありがとうございます!
いいこと、いっぱいあるんだ!すごく、わくわくしてきた!ぼく、いっぱいがまんしてきたから、すごくうれしい。いいなっておもうこと、あんまりなかったから。ぼく、ここにきて、よかった。
お嬢様が、ご主人様とだきしめあってる。なかよしなんだね。いいなあ、すごく、しあわせそう。おじさんとママはこんなふうになかよくしてるところ、あんまりみなかった。しあわせじゃ、なかったのかな?…ぼくにはよくわからないや。
「あの、おじさま、この子たちのことなんですけど。」
「あ、ああ、どうするんだい?」
お嬢様が、ご主人様とぼくのこと、はなしてる。
「ももたんは、たまに遊びに来てもらう感じで、この子は、私の執事にしたいと思ってるの。」
「執事…?ああ、そうだね、執事!それがいい!そうしよう!」
しつじ…そういえば、しつじってなんなんだろう。
―しつじってなんですか。ぼくはなにをするんですか。
―――お嬢様の係ってことだ。お嬢様の希望を全て叶えないといけないんだ。お嬢様の願いを全て叶えるのが俺たちの仕事ってわけだ。お嬢様は…慎み深い。心の奥底の望みも叶えなければ、一流の執事とは言えねえな。ただふみは、一流になるんだ。そのために俺がいる。お前は、俺のもとで育てばいい、それでだけの話だ。
ぽよん!
あれ、ヒツジさんがぼくのみみからはずれて…ヒツジすがたになった。
『俺の姿はご主人様からは見えてないから安心しろ。』
―はい。
『お嬢様とご主人様の会談が間もなく終わる。ただふみ、ご主人様の目をきちんと見て、ありがとうございますご主人様と、きちんといえるか?…言うんだ。言わないとお前の命がないかもしれない。』
―わ、わかりました!
ぼくはすこしだけきんちょうしてるけど!!がんばるってきめたから!!
「それでは、マイスウィートの隣の部屋を、使ってもらおう。そこであれば、何かあっても、すぐに駆け付けることができるからね。」
「ありがとうございます!」
いまだ!!
「ありがとうございます、ご主人様。」
よし!!ちゃんといえた!!いえたよね?!
『よくやった、ただふみ。合格。今日の夜、ご褒美だ。』
ヒツジさんはぼくのかたにちょこんととびのると、ぼくのほっぺたをつんとはじいた。ごほうび?なんかくれるのかな?おかし?えほん?それともなんかおはなししてくれるのかな?
ぼくがわくわくしていると。
ばたん!!!
えっ!!おじょうさま!!!
お嬢様がたおれちゃったよ!!!
『落ち着け、まず待機だ、ご主人様がお嬢様を介抱するから。その邪魔をしたら…命がない。動くなよ。』
ぼくは、ひざのうえにてをおいて、ふかくいすにすわったまま、うごかないことにした。