お嬢様のへやのはんぶんくらいのおおきさかなあ。ベッドと、たなと、つくえがある。はいってきたドアとはべつに、ドアがふたつ。ドアについてるまどからそとがみえてるドア、ドアについてるまどからべつのへやがみえるドア。でんきはないけど、なんかへやのなかがあかるくて、まどがなくて…。
「ただふみ。ここは…時空間ルームになっている。今のお前では、この部屋の仕組みを理解することは難しい。」
いつか、ぼくにもわかるひがくるのかな。
「理解できるようになるまで、知識を付けなければいけないという事はわかるな?」
「はい、べんきょう、がんばります、やりたいです!」
いっぱいべんきょうして、ぼくのしらないことをいっぱいしりたい!お嬢様のおせわしながらでたいへんかもしれないけど、ねるじかんをへらしてべんきょうしたらなんとかなるかもしれない。
「まずは、この部屋の仕組みを理解するために、小学校卒業程度まで、勉強をする。」
「そつぎょう?ろくねんかんここでべんきょうするってことですか。」
ぼく、このへやからろくねんかんでられないってこと?ちょっとこわくなって…したをむいちゃった。
「この部屋は、時間というものがない空間なんだ。ここにいる間は外の…時間が進まないと言ったら、理解できるか?」
じかんがないって、どういうことだろ?よくわかんない。ここにいたら、じかんがすすまない?
「よく、わかりません。ごめんなさい。」
わからないことを、ヒツジさんにいう。うそはついたらだめだから。
「そうだな、今のお前には、難しいかもしれない。とりあえず、勉強を始めよう。学んでいくうちに理解できることも増えていくはずだ。」
ぼくがこのへやのことをわかるひは、いつになるんだろう。すごく、しんぱいだけど。でも。
ヒツジさんはしんせつだし、がんばれるって、おもう!
ヒツジさんは、くもくもをだして、そのなかからももたんお姉ちゃんがつかってたパソコン?したじきのおおきいやつをとりだして、ぼくにわたしてくれた。
「このタブレットは、今からお前が受けるはずだった授業がすべて記録されている。このボタンが画面ストップ、もう一度見たいと思ったらこのボタン。まず、このタブレットになれるところまでやるぞ。眠くなったら…言うように。」
「わかりました。」
ぼくは、いっしょうけんめい、タブレットをみて、べんきょうした。
ねむくなったら、ベッドでねむらせてもらった。おきたら、ヒツジさんがそらがみえるドアをあけて、そこからそとにつれていってくれた。
「ここは精霊界だ。少し…運動をしましょう!」
うんどうじょうくらいのおおきなばしょで、思いっきり追いかけっこをした。ヒツジさん、はやい!!ぜんぜんおいつけないよ!!
「よし、戻るぞ。勉強の続き、できるか?」
「はい!」
ぼくは、なんどもなんども、べんきょうして、ねむって、そとではしった。
「ヒツジさん、小学生の卒業式が流れてきました!」
僕は卒業式の画像の流れるタブレットをヒツジさんに差し出した。
「よし、六年生まで行けたか。ずいぶん…理解が進んだな?」
勉強はとても楽しかった。わからないところは何度でも繰り返し授業を聞いた。ヒツジさんからノートをもらって、一生懸命文字を書いたり、計算したり絵をかいたりした。工作も楽しくて、いろいろ作ってはベッド横の棚に飾ったりした。調理実習の時はヒツジさんがくもくもで調理室を出してくれたんだ!料理って楽しい!
「はい、中学校の授業も受けたいです!」
「そうだな、それもいいが、まずは一度、この部屋について説明をしようか。そろそろ、仕組みを理解できるはずだからな。」
ヒツジさんは、僕のタブレットを机の上に置いた。机の上には、鉛筆削りと消しゴム、使いかけのノート。使い終わったノートは机の引き出しにみっちりと入っている。満点のテストは捨てちゃったけど。
「じゃあ、もう一度初めからこの部屋の仕組みを説明するぞ。この部屋は、時間というものがない空間なんだ。ここにいる間は外の…時間が進まないと言ったら、理解できるか?」
「はい、この部屋にいるうちは、時間が進まないんですね。だから、僕のおなかが空いていないのです。」
不思議だなって思ったのは、一年生の授業を終えた時だった。そういえばおなかが空いていないなって、気が付いた。そんなに時間がたってないのかなって思いながら、二年生の授業を終えた。国語の教科書に食べ物が出てきたときに、おかしいなって思ったんだ。三年生の授業が終わった時に、ヒツジさんが言った時間が進まないって言葉が分かった気がした。だから僕は、このおなかが空かない空間で、どこまで頑張れるのか、試したくなったんだ。そしたら、小学校を卒業する画面になってしまった。
「そう。ここは時空間と言って、時間が流れない空間なんだ。この部屋に入った時から、外の世界との時間の流れが遮断される。入り口ドアから出ると、お嬢様の部屋に戻る。」
ヒツジさんが運動するために開けたドアの前に立つ。
「このドアは異空間につながるドアだ。このドアは様々な世界とつながっている。今までは運動するために精霊界に直接つないでいたが、もう少し違う使い方ができる。ただふみが魔法を使えるようになったら、また説明する。…次にこの部屋に入ったら、魔法を教えるから。」
魔法が、いよいよ教えてもらえる!何ができるんだろう、ワクワクしてきた!!
「こっちのドアは、図書室になっている。」
ヒツジさんが今まで一度も開けたことのないドアをひらく。ドアの向こうには、たくさんの棚が並んでいて、本がギュウギュウに並べられている。ずいぶん大きな部屋だ。棚がたくさんありすぎて、端が見えない。
「この部屋は時間が流れている。気を付けるように。この部屋にいたら腹も減るし排泄もしたくなるし…成長する。」
「どうしてこの部屋は時間が流れているんですか。」
ヒツジさんは棚から一冊の本を取り出して、ぱらぱらとめくると、また元の棚に戻した。あれ、本の場所がちょっとずれてる。なんで同じ位置に戻さないんだろう。
「本というのは、常に新しいものが発行されている。時間を止めてしまうと、新しい本がここに入ってくることができなくなってしまうのさ。古くなった本に時の流れを遮断する処理をすることはあるが、部屋自体は外と同じように…時間が流れているんだ。」
「ちょっと!!ヒューゼン様!!勝手に本の位置を入れ替えないでくださいまし!!」
僕の目の前に、いきなり黒猫が現れた。しっぽが長い大きな猫。…しゃべってる!!猫が立ち上がった!!僕と同じくらい…いや、ちょっと大きいくらい。ヒツジさんの友達?猫はヒツジさんが適当に戻した本をきっちり元の場所に戻した。
「ただふみ、この猫は図書館の管理をしている…。」
「リブラリと申します、ただふみ君。どうぞ、よろしく。」
リブラリさんの目を見て、挨拶しないと。左右の目の色が違うのが、ちょっとだけ、びっくりした。でもびっくりしたら傷ついちゃうかも、僕はにっこり笑って、黄色い目と茶色い目を見てお辞儀をした。
「初めまして、ただふみです。よろしくお願いします。」
「ずいぶん礼儀正しいですねえ、君、本当にヒューゼン様の弟子なの?」
「俺が主に学ばせているから。…極力、あわせていないつもりでは、ある。まあですね!ちょっとおかしいなって思ってるとは思いますけどね!!」
?…なんか、ヒツジさんちょっとへんじゃない??そうなんだ、ヒツジさん、走ってるといきなりおかしな話し方になったりして気になるときがあったんだよね。追いつくのに必死で何となく聞きそびれてきちゃったけど。
「ああ、まだ説明はしてないんですね。」
「説明は次回、魔法取得後だ。今回は部屋の説明をするだけだからな。この部屋の説明をしてやってくれないか。」
「ただふみ君、ここは図書室です。ここには、世界中の本が集まっています。この場合の世界というのは、すべての世界を指します。君のいた国の本もありますよ。君の今いる国の本もありますよ。君のために作られた図書館ですので、君が読むべき本が集まっています。できれば、この部屋の本はすべて見ていただきたいです。」
「はい。」
僕は本を読むのは嫌いじゃないから、すごく楽しみだ!
「この部屋の中で読むと時間が動いていますから、十冊ほど持って、あちらの部屋に行かれるといいですね。そうすれば疲れることなく知識を身につけることが可能です。本をお探しの時は私に声をかけてください。私はいつもこの部屋におります。」
「わかりました。」
そうだよね、こんな広い部屋の中じゃ、どこにどんな本があるかわからないや。どれから読んでいいのかもわかんないなあ…。
「最初のうちは、たくさんある本の中から読みたいものを探すのは大変でしょうから、私がただふみ君に必要と思われる本を選んでお渡しします。読み終わったら、こちらの部屋にお越しください。…じゃあ、まず、十冊お渡ししますね、はいどうぞ。」
僕はリブラリさんから本の山を受け取った。う、ずっしり重い!でも、読み応えありそう!!
「さっそく読んできます。」
本の山で両手が塞がっているので、リブラリさんがドアを開けてくれた。
「ありがとうございます。」
「いえいえ。ではまた。」
バタン。
ドアが閉まった。僕は時間のとまった部屋に帰ってきたという事だね。今から本を読んでしまおう。
「読めない文字や分からないことがあったら聞け。…遠慮はするな、いいな?」
「わかりました。」
僕は、一冊づつ、タイトルを確認しながら机の上に本を並べ始め…。
「漫画で読む楽しい性教育~ぶっちゃけ版~」
「完全無修正~まぐわい~」
「人体解剖学」
「性愛のすべて」
「礼儀作法のすべて」
「BOMMM」
「めざめの時」
「畳」
「実践イケる自慰ベスト100」
「女性器百科」
ねえ?!これ!!!全部、全部恥ずかしい本じゃないの…?!
「ひ、ヒツジさん!!これ、この本っ!!!」
「ああ、お嬢様にお仕えするにあたって…一番重要なことだからな。覚悟して読めよ?」
僕は、感じたことのない不安を胸に…「漫画で読む楽しい性教育~ぶっちゃけ版~」の1ページ目を、めくった。