数日後、アジトの大広間に黒の騎士団の団員達が集合した。前には幹部達が並び、ゼロが一歩進み出た。
「さて、諸君。本日はある二人から重大な発表がある。公にせずとも、いずれ発覚した内容ではあるが、変に噂になるより先に意思表明をしたいとの、申し出があってな。それでは、発表したまえ」
ゼロに促され、ライとカレンは前に出た。
「集まってもらい、感謝する。私的な事だったんだが、最初から伝えておこうと思ったんだ。実は、僕は隣にいるカレンと…結婚する事にした」
実はまだ内容を知らされていなかった幹部達をはじめ、全員からどよめきが起きる。
「まっ、マジかよ!?スゲエじゃねーか、祝杯だ祝杯!」
「落ち着いてくれ、玉城。それと、話には続きがある」
みんなを落ち着かせ、ライは続けた。
「結婚の時期は、まだ決まっていない。それと結婚しても、僕達は変わらず騎士団の一員として、特区の発展に尽くすつもりだ。今日はそれだけを伝えたかった、以後、よろしく頼む」
ライとカレンが頭を下げると、大きな拍手が沸き起こった。
「おめでとう、お前ら!宴やろうぜ、宴!」
自分の事のように喜ぶ者。
「ぐすっ…聞いたか、ナオト。カレンの奴、結婚するってさ。ずっと頑張ってきたからなあ、報われて良かった…」
これまでの苦労を思い、感涙する者。
「はぁ…隊長が結婚なんて…でもお似合いです、おめでとうございます!」
二人にはファンが多かったため、結婚にショックを受けつつ、祝福する者が、一番多かった。
「では解散!」
最後はゼロが締めたが、しばらくの間、二人への祝福の声が相次いだ。
その翌日、二人は生徒会室にいた。他のメンバーも集まっており、まずはミレイが切り出した。
「さて。集まってもらったのは、他でもないわ。今日はライとカレンから、重大な発表があるの。では、よろしく!」
「どうも。実はかなり驚く内容ばかりになるんだが、まず…僕とカレンは結婚する事にした」
「はあ!?けっ、結婚ってマジかよ!?」
リヴァルが目を丸くし、他のメンバーもあ然としている。すると、シャーリーが食い付いてきた。
「すっごーい、おめでとう!お似合いだと思っていたけど、一気に決めたんだね!」
「ええ、ありがとう。確かに展開が早かったのは、自分でも感じるわ」
「えっ、で…でも、その…ライ君ってIDとかなかったんじゃあ?その辺は、ご家族は何て?」
「やはり、ニーナは鋭いな。本当に重大なのは、ここからなんだ。君達にも、協力してもらう必要がある内容だ」
ライは全員を近くまで手招きすると、声のトーンを落とした。
「僕の記憶は戻ってなくて、IDもない。いわば、どこの馬の骨ともわからない男だ。当然、シュタットフェルト家の当主たる、カレンの父親には猛反対されている。
しかし、僕達の決意は揺るがない。たとえどんな障害があろうと、一緒に歩むつもりだ」
「おー、ライ君カッコいい!それで、どうするの?」
目を輝かせるシャーリーや他のメンバーに対し、ライは言った。
「駆け落ちしかない、追手が来ない所を探して逃げる」
「おぉ…何だかドラマみたいだね、現実でもあるんだー」
「しかしよー、俺達で協力できる事って何だ?」
「表向きは、カレンが病気療養、僕が記憶の手掛かりを探すために学園を去った事にしたい。もしシュタットフェルト家の人間が探しに来ても、口裏を合わせて欲しいんだ」
すると、ルルーシュが口を開いた。
「追手が来た場合もそうだが、カレンの親衛隊をはじめ、お前達に関心や憧れを抱く人間は少なくない。彼らに質問された場合にも、今の表向きの理由しか聞いていないと、言い切るべきだな」
「そうだね。下手に濁しちゃうと、そこからどうシュタットフェルト側に伝わるか、わからないからね。そこは僕達が、二人を守るために意思統一しておこうよ。
僕の方でも、軍のルートから探りを入れられないよう、気を付けるよ」
ルルーシュに相槌を打つ形で、スザクがみんなに呼び掛けた。するとニーナが、おずおずと口を開いた。
「で、でも…どうしてそんな大事な話を私達に?何も話さずに駆け落ちした方が、私達が情報を漏らしてしまうリスクは減らせると思うけど」
「確かにリスクもあるし、みんなに大変な物を背負わせる事になるから、申し訳ないと思ってる。でも…」
カレンが一度言葉を切り、続けた。
「期間は短かったけど、ここにいる人達と一緒に生徒会を運営して、学園を盛り上げた。結構強引に巻き込まれた形だったけど、学園生活の大切な思い出を作れたし、有意義な時間を過ごせて、感謝してる。
だからね、せめて学園を去る前に、私達が決めた道をみんなにだけは伝えたかったの」
「記憶を失って倒れていた僕を救ってもらって、生徒会や学園で色々な経験をさせてもらって、君達には感謝しかない。最後まで迷惑を掛ける形になって申し訳ないが、それでも伝えたかったんだ。僕達の決意と、感謝を」
「そうなんだ…うん、わかった。気を付けてね、それと短い間だったけど、その…ありがとう」
ニーナが照れ笑いを浮かべ、シャーリーとリヴァルも続く。
「短い間だったけど、楽しかったよ!二人共、体には気を付けてね。連絡もらえると、嬉しいな」
「こっちは俺達に任せろ、二人は新しい人生に全力投球してくれよな。まっ、折を見て会いに来てくれたら嬉しいけどよ」
すると、静かに聞いていたナナリーが微笑みながら話し始めた。
「ライさん、カレンさん、ご結婚おめでとうございます。身近な方々の幸せなご報告に、私も自分の事のように嬉しく思います。
お話を伺った限りでは、大変な道のりになるかもしれませんね。でも、お二人なら大丈夫な気がします。くれぐれも健康にはお気を付けて、お過ごし下さい。
お二人の人生が幸せいっぱいになる事を、微力ながらお祈り申し上げます」
ライとカレンはナナリーの所へ歩み寄り、それぞれナナリーの手を取った。
「ありがとう、ナナリー。君も体に気を付けて、心安らかに過ごして欲しい」
「みんなと仲良くして、楽しく過ごしてね。ありがとうね、ナナリー」
そこでミレイが、口を開いた。
「そういう事だから、生徒会メンバーだけのトップシークレットになるわよ。責任は重いわよー」
「わかってますって、会長!」
「えー?本当にわかってるのー?」
リヴァルとシャーリーの軽妙なやり取りに笑みをこぼしつつ、ライは言った。
「すぐに学園を去るような空気になってしまっているが、実はまだもう少し時間はあるんだ。さらに言うと、具体的な時期も決まっていない」
「えっ、そうなの?じゃあ、まだ二人と一緒にいられるって事?」
「時間としては長くはないだろうが、数日や数週間という事もないと思う。それまでは、生徒会の一員として、貢献させてもらう」
「そういう事っ!だからみんな、残された時間、二人との思い出をたくさん作るわよー!」
「やれやれ…。会長、盛り上がるのはいいですけど、羽目を外し過ぎないで下さいよ」
新たな秘密を共有した生徒会メンバーの間に、優しく賑やかな風が流れていた。
「お互い、なかなかの名演技だったんじゃない?」
夕方、租界にある公園のベンチに腰掛け、カレンが言った。
「駆け落ちに関する話の事なら、それは当てはまるだろう。だがそれ以外は、本音だ。演技のしようもなかった」
「そうね。何だかんだ恩は感じていたから、私も本心を少しは言えたかな」
カレンがライの手に、自分の手を重ねる。
「結婚の報告、とうとうみんなにしちゃったね」
「ああ。騎士団でも生徒会でも、祝福の声が溢れていて嬉しかった」
「うん、みんなの声に応えて、ちゃんと幸せにならないとね。それにしても会長が張り切っていたし、残りの学園での時間、色々な企画が出てきそうね」
「また突拍子のない事を、考えているのかな。僕達が学園を去るまでに、どれだけイベントが発生するやら」
「ふふっ、本当ね」
二人は顔を見合わせ、笑い合う。
「私達が学園を離れるのは、タイミングの問題かしら」
「タイミング?」
「そう。新居の事もあるけど、一応アジトや宿舎もあるし、生活拠点の都合はやり繰りできるでしょ?ただ、その…」
カレンが顔を赤くして、自分の下腹部に手を当てる。
「流石に赤ちゃんができたら、学園にいられないでしょ?初期はまだいいとして、お腹が膨らんできたら、目立っちゃうから」
「確かにそうだな、その場合は先にカレンだけ学園を離れようか。生徒会には、新生活の準備と説明しておこう」
「そうね。療養と言ってしまったら、幸先が悪いと心配されそうだし」
「いつ本当にそうなるか、わからない。新居の方も、早めに進めよう」
「うん」
先々の事を考えながら、二人は夕日を眺めるのだった。