突破に4日かかりました。現在、資源回復の真っ最中です。
そんな邀撃作戦成功の勲章とも言える、彼女の話。
※R-18ではありません。次回があればそうなるため、こちらに掲載です。
「邀撃作戦完遂お疲れ様でしたーっ!」
AL/MI作戦で各鎮守府の主力が出払う中、本土への攻撃を仕掛けてきた戦艦棲艦率いる深海棲艦の大部隊。多くの資材や高速修復剤、緊急補修装置が闇に飲まれていったものの、AL/MI作戦部隊の間もなくの帰還を察した敵艦隊が撤退に至り、邀撃作戦は辛うじて終了したのである。
かの小泊地でも、合同邀撃作戦成功の祝賀会が開催される運びとなっていた。
「明日からも必死にオリョクルクルージングでち……」
「レディは……休み無しの遠征続きでも、へこたれない、のよ……」
一部、AL作戦中から既に働き詰めの艦娘達からは魂が抜け落ちそうになっている。
日本最(南)西端の小泊地を管轄する、安倍司令。彼の元では、設立当初の実験部隊の要素を今も引き継ぐ中で、開発の資材投入割合の解析等、ある程度狙った装備が造り易い環境が整っていることもあるから、装備と資材の交換など、事務方も出来る手は次々と打ち続けていた。
邀撃作戦海域が近い彼らは、資材の消費においても若干緩やかだったものの、邀撃に大和型の姉妹が出ずっぱりとなっていたから、他鎮守府と比べて、と前置詞がつくような状況には変わりない。作戦前を100%とするなら、資材は残り15%程度になっていた。
「あと二週程度で通常運用には戻せますから。暁ちゃん、頼りにしています」
「じ、神通さんにそう言われちゃ、し、仕方ないわね。この暁に任せて!」
「私も精一杯現場での補給作業頑張りますから、ね、ゴーヤちゃん」
「大鯨は唯一の癒しでち……」
なお、この大鯨、実際には龍鳳への改装を終えている。ただ、潜水部隊への思い入れも強く、両方の艤装を状況に応じて使い分ける、多忙を極める艦娘の一人であった。
「浦風たちもご苦労だった。支援艦隊の護衛でそちらも休みが無かっただろうに」
「保護できたばかりの清霜ちゃんを抑える方が苦労した感じじゃねぇ。出撃したい言うて、練度が足りん言うても納得できなくて仕方なかったみたいやね」
小泊地側と共同作戦を取った、横須賀司令部兼鎮守府所属の浦風が、武蔵の言葉に答える。武蔵は仕方のない奴だと苦笑いを見せながらも、どこか嬉しそうにしている。
「本土防衛に武蔵さん達が残ったというんは、あちらの筋からの知らせ?」
「ああ。永遠(とわ)の奴が、おっと、港湾の事だ。必ず攻勢に出てくると強く申告してきたのでな。リコリスも同意していたし、私の直感もここに残れと言っていたしな」
「ビックリしたわ、主力邀撃部隊が超一線級じゃもん。大和型と長門型が交互に出撃していくって、どれだけ余力を残しているんじゃろって思うたよ」
「『登録上』の空母は殆ど出払っていたがな」
空母の殆どがALかMI作戦に従事していたのは事実だが、武蔵が口にした港湾棲姫、飛行場姫、さらに隠し玉的存在の神通──浦風と同じく、深海棲艦からの戻り組がいた。ヲ級としての力を行使出来る彼女が残っていたという。全力邀撃といって差し支えない戦力が残っていた。
「あくまで登録上じゃろうに……向こうが可愛そうになってくるわぁ……」
港湾棲姫は戦闘意欲が異常に薄く、あちら側でも変り種と認識されていた。敗北したまま深海に帰れば命を奪われる可能性も高く、撃破時に保護を持ちかけたところ、是非にと乗ってきた経緯がある。
なお、交渉時に非常時以外は引きこもっていたいと要望し、話し合いの結果、近海での演習時や、長期作戦時の母艦(母島?)としての仕事を請け負う以外は、悠々自適の生活を送っていた。なお、性質的に気が合う初雪と、お互いの蔵書を持ち寄ってはコレクションに勤しんでいたり、泊地では日々の生活を満喫している。
飛行場姫は姉・港湾棲姫の説得で、総司令指揮下に所属しているが、行動指針として、美味しいご飯が食べられることを重視していた。鳳翔や間宮、その手ほどきを受けた艦娘が多数いる泊地に所属するには十分な理由だったようだ。
「まぁ、そのお陰で資材だけの犠牲で済んだわけだ。それに今回の戦果で、そちらの提督殿もいよいよ公にもそう呼べるようになるのではないか?」
邀撃作戦の核を為した小泊地の総司令は中佐から大佐へ。それを統括する立ち位置にあった、浦風の指揮官はいよいよ大佐から少将へ昇進するものと見られていた。
「提督さんは提督さんじゃけぇ……ただ、うん、堂々と呼べるようになるのは、嬉しいもんじゃね」
『提督さん』と夫婦の誓いを立ててから、もう10年になるだろうか。小泊地の総司令の協力の元、浦風は艦娘でありながら、子を育むことが出来る身体となり、通常の人と比べれば半分程度の早さであるが、ゆっくりと年を取るように変わった。
既に一児の母となった浦風の容貌は、女学生のそれではなく、若き母親としての色香や佇まいを身に着けていた。伴侶となる彼女の提督も、浦風の艦娘の力を吸収したことで、実年齢が四十代とは思えぬ、若き青年将校の姿を保っている。
「……そういえば、いつからかレギンスを履くようになったのだな」
「ほんとはパンツの方が動きやすいし、屈んだりした時も安心なんやけどね。私服は殆どそっちに変わっとるし。ただ、この艦娘の服装も艤装の一部みたいで、このマイクロミニスカートをパンツに履き替えたことがあるんじゃけど、動力部とか装備が重くて動けなくなったことがあったんじゃ……」
「なるほど、下着が見えるからと着替えては駄目なのか」
「ほいで、艦娘の服装に足す形にしたら、問題なく行けたからこうなったんじゃ」
「しかし、姿がそれほど変わったわけではないのだから、肌着や素肌を晒すのがそんなに苦痛なのか?」
「うちはもう夫も子供もいる身じゃて、旦那様以外にスカートの中身を簡単に見られるわけにいけんよ」
変に恥ずかしがるわけでもなく、それが当然のことだと普段通りの様子で、からっとそう言ってのける浦風に、武蔵は逆に10年が経過してなお、彼女が夫に深い愛情を注いでいると感じ取れた。
「妬けることだ。まぁ、早く大和にもその領域まで達してほしいものだが。未だに他の妻達と寵愛の奪い合いをしている始末なのでな」
総司令の妻は正妻格の神通と扶桑を始めとして七名。三番手の座を大和は他のケッコン勢と鍔迫り合いを日々演じていた。
支えることに喜びを覚えろと武蔵は言いたい様子だが、それに達する過程の安心感を得るための戦いなのだろうと、浦風は推測できてしまい、苦笑いで返すしかできなかった。
「お母さん~!」
「夏帆(かほ)、どうしたんじゃ?」
浦風とよく似た髪色の小さな少女が、お揃いのベレー帽を吹き飛ばす勢いで、彼女目掛けて駆け寄ってくる。膝を屈め、飛び込んでくる娘を受け止め、そのまま抱き上げる。その後ろからは正装のまま、ゆっくりと歩み寄ってくる『夫』の姿が映っていた。
「だって、お仕事ばっかじゃけぇ、寂しか!」
お仕事=出撃、であるが、戦場に行くと幼子に全てを話すには早過ぎるため、お仕事で数日間の遠出と伝えている。
「すまんかったのぅ。もう落ち着いたから、しばらくは一緒にいられるけぇ」
「お父さんも?」
「もちろんじゃて。なぁ、お父さん」
勿論だと頷いて、艦娘である母に抱かれた娘の髪を撫でる、指揮官の父を瞳に写し、武蔵は大きな戦いが終わった安心感と、戦場に身を置き続ける艦娘の性を思い、何とも言えない表情を浮かべるのだった。
*****
「秘書艦たるもの、鎮守府を離れていても、役目はしっかりと果たす……!」
「そう言いながら、磯風。そのアテは誰が作ったんじゃろうなぁ?」
「ぐ、む……し、司令官の晩酌に付き添うのも立派な役目だ」
苦しい言い訳をするのは、この海戦で保護された陽炎型駆逐艦十二番艦、磯風である。第十七駆逐隊で同じ艦隊に所属していた姉妹艦であり、浦風とも縁が深い艦娘の一人であった。
祝勝会が終わり、寝室として割り当てられた和室で娘の寝かし付けを終えて、浦風夫婦がゆったりと晩酌の時間を楽しんでいた。
「まぁ、そうじゃな。じゃあ、もう一品作ってくるけぇ、提督さんの相手を頼むからの。飲み過ぎはいかんよ?」
「う、浦風!」
「声が大きい。夏帆が起きてしまうよ」
「す、すまん」
秘書艦業務に従事中の磯風は、フタサンマルマルまでは仕事だと、こうして私室にも付き添っているのであるが、小悪魔的な容姿に反して、質実剛健な性格に不器用、天然ボケの一面まであった。
それとなく、姉妹艦の浜風や谷風が私室への同行を止めようとしたのだが、逆に彼女のやる気に火を注ぐ結果となり、子供の寝かし付けを含めて、母親としての仕事に悪戦苦闘することとなっていた。もちろん最終的には浦風が交代し、寝かしつけを済ませている。
「はい、お待たせ。『保之(やすゆき)』さん、うちももらっていい?」
簡易的な炊事場で、もう一品つまみを手早く仕上げてきた浦風は、夫の隣へと腰を下ろし、彼の酌を受ける。そのやり取りがあまりに自然なものであったからか、磯風は指摘をするのが遅れてしまう。
「う、浦風……!? 司令に酌をさせるなどと、お前は何を考えているっ」
「今のうちは、保之さんの妻・夏海(なつみ)じゃ。プライベートでなければ、こんなことはとてもでけんよ」
艦娘は軍でも兵器の扱いであるため、戸籍等が存在しない。提督と浦風が手を打った結果、浦風は『夏海』という名を得たのである。
「公私は区別しているということか……? しかし、常日頃から節度ある態度を取らなければ、任務時に滲み出て……」
「はぁ、この喉ごしが最高じゃねぇ。……ところで、磯風? 考え事しとるのはいいけど、前屈み過ぎて、お胸が見えとるよー」
提督は早くに視線を外しているし、浦風もそれもなく視線を遮る位置に身体を割り込ませている。無骨な言動が目立つ磯風だが、自覚なしに男を惑わすような仕草を行っている辺りが何ともチクハグだ。危なっかしい、というのが浦風以下、姉妹艦の共通認識であった。
「用意したブラもつけとらんじゃろ、もう。丸見えじゃて、全く」
「あ、あんな締め付けの厳しいものをつけるなどど。私達は軍艦なのだから、女性の形で蘇ったからと、なぜ容姿に気を使う必要があるのだっ。お前こそ、軍装に勝手に余分な衣類を足しているではないかっ」
レギンスのことを磯風は指摘しているのだろう。提督と浦風は思わず、顔を見合わせた。『これはあ艦』。声にしなくても、互いの思いはしっかり通じていた。
「……飲もっか、保之さん」
ああ、と返事をした提督と浦風は、黙々とつまみと酒をあけていく。彼の『うん、旨い』という言葉で浦風は十分だったし、無視された形になった磯風が何かを言おうとしても、無理やりつまみを口に押し込んで、黙らせる。美味しいものは正義だ。
(うん……明日、浜風や谷風ももう一度相談せんと。神通さんにも時間もらえるかなぁ……)
大きな戦いが終わっても、浦風の日々の戦いは続いていく。
E-7(E-5)チャレンジで明石さんの艤装を捜索中。
清早霜の二人は無事保護しました。
イベに目処がついて、吸血姫も書き進めつつ、
さっとタイピングが入ったので、そのままうp。