キノの旅 Girls' journey 作:わしはトマトが嫌いじゃ
「ごめんねキノ……風邪ひいちゃって」
ホテルで借りたパジャマ姿で、カエデがベッドの上で頭痛のする頭を下げて謝っていた。
昨日入国し、その時点では少々頭痛がする程度だったのが、一夜明けたら見事なまでの病人へと変貌していた。さすがにこの状態ではモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけをさす)の運転も危なくてさせられないので、予定していた観光は取りやめとなった。
「謝らなくていいから、とりあえずちゃんと毛布の中に入って」
「はーい」
ふらつく体をベッドの中に押し込んだカエデ。頬は赤く染まり、額にはじっとりと汗がにじんでいた。
「国の中でよかったよ。外だったら命の危険もあったからね」
「そーそー。しかも国によっては医学技術が発達していないところもあるから、カエデは運がいいね」
「病気なんだから運がいいとは言えないよ……」
普段より弱弱しい返ししかできないカエデは、時折体を震わせる。
「寒い?」
「そう感じるだけだから……病気の時に体温が高くなるのは、体の中のばい菌をやっつけようとしているって聞いたことがあるわ。だから正しい反応なのよ、これ」
「解熱剤は逆効果か……今日は買い物だけ行くけど、ボクがカエデの分も済ませてくるよ」
「うん、ありがと」
「あと場合によっては、滞在期間を延長するかもしれない。そのことは理解してほしい」
「ご迷惑をおかけします……三日ルール、守れなくてごめんね」
「なるべくそうしたいけど、絶対ってわけじゃないから。じゃあエルメス、しばらくカエデの面倒をよろしく」
「ほいほい。何もできないけど、まあ話し相手にはなるよ」
「あっ……まって、キノ」
「?」
扉に手をかけようとしたキノが振り返る。
「行ってらっしゃいのキス……」
「病人は寝てね」
カエデがベッドから這いずり出る前に、キノは買い物に行った。
「むう、ちょっとぐらい優しくしてくれたっていいのに」
「病人だからってあんまり図に乗ると、後が怖いよ」
「そんなことはないよ、キノは優しいもん」
「こっちのほうが付き合い長いんだから、おとなしく聞いといたほうがいいって」
宣言通りに話し相手になるエルメス。状況が状況なだけに、必要なことも質問する。
「喉は痛い? 頭痛の程度は? おなかの調子はどう?」
「うん……どれもそこまでひどくないしお腹下している感じもないから……」
「水分補給は定期的にね、汗かいているから。冷たいのはお腹壊すからなるべくぬるいやつを飲むんだよ」
「うん……わかったわ」
「食欲がないときに無理に食事はとらなくていいからね、エネルギーをなるべく節約するんだ」
「うん……」
キノがいなくなってだんだん寂しくなってきたカエデは、次第にエルメスへの応対も適当なものに変わっていく
「キノ、早く帰ってこないかな……」
「まだ買い出しに行ったばかりじゃん」
「おしゃべりなだけのエルメス君は頼りないし……」
「否定はしないけど理不尽!」
「私……このまま死ぬのかな……」
「すごいネガティブになってるんだけど。いぞんしょーっていうより禁断症状?」
そうして寂しがること約一時間、買い物袋を持ったキノが帰ってきた。
「ただいま。ついでに薬も買ってきたよ」
「ぎの~ざびじがっだよぉ~」
半泣きになりながらベッドから出ようとするカエデ。当然それをキノは空いた左手で制した。
「キノ、お願いだからできるだけカエデから離れないようにして。少なくとも寝込んでいる
間は」
「? わかった」
エルメスが早口でまくし立て、キノは疑問を感じつつも頷いた。
「お腹すいたー」
「そういうと思って、バナナ」
袋から取り出した人房丸々のバナナを、一本ちぎって差し出すキノ。
「リンゴもあるよ」
「ん、ありがと」
カエデは受け取ったバナナの皮をむいてほおばる。その間キノは慣れた手つきでリンゴの皮をナイフで剥き、六つに切り分ける。
「キノのご飯は? ホテルのレストランで何か食べていったら?」
「エルメスに頼み込まれたからね……今日のところは、バナナとリンゴとこれだ」
そう言って荷物の中から携帯食料を取り出すキノ。それを見てカエデは今日何度目かの申し訳なさそうな表情を作った。
「ほんとはこの国名物の『スパイシーシーフードフライ』を食べたかったよね。わざわざ寒い海沿いを走ってまで来たんだもん」
「たぶんそれが原因で季節外れの風邪にさせたから、これは自分への戒めだ。治ったら二人で食べに行こう」
「うん……でもなんで私だけ体調崩したんだろう? ほとんど同じ格好だったのに」
「それはわからない」
「よし、それじゃあ薬を飲んでもらうよ」
「苦いの嫌だなぁ」
「おやおや、今更薬が嫌いだなんて、お子様なことを言うねえ」
「だって苦いし変な味がするからいやだもん。エルメス君はいいよね、風邪ひかないから」
「粉薬じゃないから、一気に飲めば味はしないよ」
そう言って袋から小さな箱を取り出し――その時点でキノはあっと声を上げた。
「ん、どうしたのキノ?」
「その、錠剤だと思って、薬局で買ったんだけど……」
キノの顔がやや険しい。カエデは本人から箱を取り上げて、パッケージを見る。確かに描かれた絵はやや長い、片方の先端がややとがった形状の、いうなれば弾丸のような形の錠剤だ。そこは問題ない。そして今度は裏を見た。
「えーっと……本製品は腸内部で直接吸収させることで効果がある成分であるため、肛門より固形錠を挿入して――えっ」
カエデが自ら読み上げたその一文を遅まきながら理解して、固まる。
「ありゃ、もしかして座薬を買ったの? 確かにすぐに効果は出るらしいけど、抵抗なかったの?」
「知っていたら当然別のやつにしていたよ……。しまった、店員に『普通に使われている風邪薬』って聞いてこれが出たから……」
「お尻から入れる薬が一般的なんだね、この国では。どうするの? 今から別のやつ買ってくる?」
「そ、そんなのだめよ、お金がもったいないじゃない」
箱を手に、即座にカエデが否定する。薬の使用者となる彼女の意見は、この場では最も尊重されるべきものだった。
「じゃあ……その薬を使う?」
「……」
迷うそぶりを見せるカエデであったが、やがて決心がついたのか面構えを固くして。
「き、キノがやってくれるなら……私、頑張る」
「……わかった」
ただの風邪薬一つに、妙に緊張感が高まる二人だった。
「でもよかったじゃん、口から飲まずに済んで。苦いの気にしなくていいもん、イテッ」
場違いなセリフをこぼすエルメスに、キノはタイヤを蹴った。
「ああは言ったけど……やっぱり恥ずかしいよ」
ベッドの上でうつぶせになり、同じベッドで座るキノに自らのお尻を突き上げた形で向けるカエデ。キノやエルメスからは見えてはいないが、体温が上がったことにより赤く染まった頬が、さらに真っ赤になっていた。
「君が時々行ってくるセクハラに比べたら、なんてことはないと思うけどね」
「そ、それはキノがかわいいから……ひゃん」
ぺちんとパジャマの下半分を脱いで下着のみとなったカエデのお尻を叩いたキノ。
「うう、私、まだお尻は誰にもされたことないのに、これからキノにされちゃうんだぁ……」
「意味深に言わないでもらいたいね。薬を入れるだけなのに」
「そもそもカエデが別の薬にするって聞いて嫌がったからじゃん」
「だってぇ……」
できる限り余計な出費を抑えたい根無し草の二人からすれば、使えるものを使わずして別のものを購入するという事態は避けたいところ。その辺はキノもよく理解しているので、概ねカエデの判断は肯定的だった。もっとも、間違えて買ったのは自分であるため、罪悪感がないわけではなかったが。
「長引くと余計にごねそうだから、さっさと終わらせよう」
「お願いします……」
キノはカエデのパンツを下す。といっても完全にではなく、肛門がギリギリ見える位置まで、である。
「恥ずかしい……」
「思うんだけど、二人って一緒にお風呂に入ることもあるのに、どうして今更恥ずかしがるのさ」
「それとこれとは別問題なの!」
「女の子ってわからないねー」
「……」
キノは無言で薬を箱から取り出し、包んでいた包装を破って中身を出した。
「じゃあ、入れるよ」
「こ、こい!」
観念して気合を入れたカエデ。そのお尻にキノの左手が置かれる。すでに丸見えのすぼまりに右手の指先で持った先端がとがった座薬が向けられ――。
「……」
「……あっ」
カエデのお尻の穴に細長い錠剤が、まるでバレルに銃弾を詰めるかの如く押し込められた。
「んくううううっ!?」
突如訪れた異物感に腹部に力を入れ、排せつしようとするカエデ。しかしキノの指は充てられたままで、それを阻止した。
「駄目だよ、まだ奥まで入れてないから」
「はあ……はあ……お、奥?」
「えっと……エルメス、何センチだっけ?」
「五センチだね。キノの親指が根元まで埋まるまで」
「うま……っ!?」
細い座薬でさえあの異物感だったのに今度は親指――恐怖とカエデにもよくわからない感情できゅうっとすぼまりがより小さくなる。が、キノは無理やり当てられたままの親指を押し込んでこじ開ける。
「んにゅううううっ!?」
「カエデの中……熱いな」
体の奥に行けば行くほど当然体温は高くなる。その熱さにキノは火傷しそうな錯覚を覚えつつ、ずぶずぷと座薬を奥へ奥へと挿入していった。
「よし……奥まで届いたよ」
「ふーっふーっ……」
全身から汗を噴き出すカエデは、自分を落ち着かせるために呼吸を整える。
「あとは抜くだけだ、苦しそうだから一気に行くよ」
「えっ、そんな、まっ――」
無情にも止める間もなく、キノは一息に指をカエデの肛門から引き抜いた。
「んはああああっ!?」
カエデに訪れたのは今までとはまた違った感覚――快感だった。排せつ時のそれに似た、苦しさから解き放たれたあの感じ。
「よし、終わったよカエデ」
濡れた布巾で手を拭くキノ。しかし、すぐに旅の同行者の様子がおかしいことに気づく。
「カエデ、パンツが……」
キノが気付いた異変とは、本人がいま最も目に付くカエデのお尻――その少し下にずらされたパンツだった。股の間が濡れている。
「なんか、へんなの。入れられて引き抜かれて……その瞬間が気持ちよくって……」
「……」
風邪の熱に浮かされたのか、カエデは肛門を抜き差しされたことによって発情してしまっていた。
「あーあ。こういうのもキノの責任? なのかねえ」
「やれやれ……しょうがない」
キノはカエデを仰向けにさせて、押し倒した。
「キノ……」
「最初に言ったとおり、一連の出来事はボクに責任がある。だから今日は特別に、カエデのしてほしいことは、可能な限りしてあげるよ」
その言葉の意味を理解するのに数秒かかったカエデは、理解したいしたとたん感極まってキノに抱き着いた。
「やったぁ……偶然だけどキノがようやく私を受け入れてくれた……」
「受け入れたというのとは違う気が……まあカエデとは、付き合いはそこそこあるし。仲がいいとは我ながら思っているし。こういう、その……性的なこととかは、時々君から受けているし……」
「フヒヒ、日ごろの行いが功を奏したってところかしら?」
「どこが」
エルメスが軽くツッコミを入れる。
「じゃあ、まず何をしてほしい?」
「えーっとね……優しいやさしいキノからの……チューかな?」
「……」
「えっと……だめ、かな?」
「わかった」
そう言ってキノは、カエデの額に口づけをした。
「……むー」
「いわれた通り、だ」
「ま、風邪移ったら大変だしね」
「それはそうだけどー……」
カエデは不満げであったが、キノとエルメスの言うことはもっともだった。
「まあ、このまま性欲を抑えられないとカエデも苦しいだろうから、そこはちゃんと手伝ってあげるよ」
「……ありがと」
なるべく平静を装っていたが、じゅわりとカエデの股から滲み出る蜜の量が増えていた。
エッチな描写はありましたが、本番は後編で。そっちはちゃんとエロエロです、たぶん。今書いている途中なのです。そういえばまだ二人が同時にネチョネチョになるお話は書いていなかったですね。そのうちやろうかなぁ……。