キノの旅 Girls' journey 作:わしはトマトが嫌いじゃ
あっ、ちなみに今回はエッチなシーンとかはないです。期待していた人はごめんなさい。普通のお話が多数を占めるスタイル。ホラ、F〇teとかも原作じゃあストーリー重視だったし、多少はね? えっ? 薄っぺらい内容なのにエッチがないとは何事だって? ……反省してます。
第二話 墓地の国
そこはかなり狭い国で、多少の起伏はあれ、ほとんどが平坦な地形で構成された、荒れ地の真ん中にあるわずかな草原地帯を利用してつくられた国でした。
城壁に囲まれたその国の中央の市街地以外の場所は、つるりと磨かれた四角い灰色の石で作られた、大人の身長の大体半分程度の大きさの墓で埋め尽くされていました。元々は牧場や畑だったと思われる場所にも、今やお墓とそれらの間を縫うように作られた石畳の道からなる墓地になっていました。
周囲には“入国”したキノとモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)のエルメス、そしてカエデと喋らないモトラドが一台しかいません。それどころか、最も人が居たであろう街にも、生き物の気配すらありません。
「この国の人はみんな、この墓石の下なのかな」
カエデが、その墓石のうちの一つに花をささげました。花は道端で咲いていた小さな黄色いタンポポです。この国で唯一見かけた花でした。
「かも、ね。ひょっとしたら、墓を作り終えた後に別の国へ逃げた人たちもいるかもしれないけど……」
「どのみち、国としてはもう死んでいるね。仮にどこかの人たちが空っぽになったこの国に移住してきたとして、国として運営させていくにはまず墓をどかさなきゃ。人が生きるためにもね」
キノとエルメスが、それぞれ思ったことを口にしました。
「国として死んだのはいつなんだろう。住民が死に絶えてから? 墓石が立てられてから?」
カエデがつぶやきました。答えは返ってきません。
「この人たちは、いつ死んだのかな」
灰色の海の中で、カエデは墓に祈りを捧げました。
第三話 いない国・a
ある荒野の真ん中を、二人の旅人が二台のモトラドに跨って縦に並んで走っていた。前を走るのは短い黒い髪を持った、精悍な顔立ちの若い人間。後ろを走るのは茶髪をアップにまとめ首に赤いスカーフを巻いた、前を走る旅人よりもやや背が高い、同年代とわかる少女だった。
「キノさあ、次に行く国の話なんだけど、確か全然情報がないんだって?」
キノと呼ばれた黒髪の旅人は、モトラドのエルメスからそのような質問を受けた。
「うん、行った人も、その国から来た人もほとんどいない。そこに国があるっていうことさえ、最近まで知られていなかったそうだよ」
「そんなところに行くなんて、そのほとんどない情報をつかんだからこそ、行く気になったってわけだよね?」
「まあね、もしかしたら初めて訪れた旅人として盛大に歓迎を受けるかもしれないし」
「あるいは「よそ者はお断りだ! 出ていけ!」って石を投げられるかもしれないよね。大変だ、そうなったらキノの銃撃戦が始まる!」
「ならないよ。もし排他的な国だったら、石を投げられる前にさっさと立ち去ることにするよ」
「キノーっ! たとえ石を投げられても、私は絶対にキノの味方だからねー!」
後ろからエンジン音に負けないぐらいの大声で、カエデが宣言した。
しばらく走っていると、道の真ん中に急に木製の看板が現れた。普通看板が立っているにしても道の脇とか邪魔にならない場所にあるはずなので、物凄く違和感を覚えた二人と一台。
「なんだろうこれ?」
「えっと……『入国を希望される方は、しばらくの間待ってください』だって」
キノと共に停車したカエデがその看板の内容を読み上げる。あたりを見渡しても城壁どころか家の一軒すら見当たらない。起伏もない平坦な平原なので、見逃すはずもなかった。
「誰かの悪戯?」
「にしてはだいぶ古い看板だよ。ここに建てられてから相当月日が経っているみたいだね。こんな邪魔になる場所で、ほったらかしにするかな?」
「まあ、もともとこっちに来る人は少なかったようだけど……」
各々が考察、あるいは予想を立てる。そんなわずかな時間が過ぎて。
『こんにちは、旅人さん。入国を希望されますか?』
「!」
「えっ、どこ?」
「そこの草むらからだね。キノの右、道から一メートルぐらい離れた場所」
唯一エルメスだけが驚かずに声の発信源を伝えてくれた。
そこにはいつのまにか、地面から人の頭ほどの大きさの鉄の箱が、草むらからニョキッと生えていた。箱の上部には丸形レンズとマイクとスピーカーが突き出ていて、こちらの姿と言葉をしっかりととらえるようになっていた。
「はい、そうです。ボクたち二人とモトラド二台。今日を含めた三日間の入国を求めます」
『分かりました。今入り口を出しますので、動かずにお願いしますね』
「出す……? きゃっ」
地面が揺れたので慌てて自分のモトラドを支えるカエデ。だが、どうやら地震ではないようだ。
看板を中心とした円形状に地面がせりあがり、その下から元の地面を金属の柱で支えられたエレベーターパネルが現れた。
「おおー」
「こんな場所に国があるなんて……」
「看板を見落とさなくてよかった……したくてもできないか」
随分と高い位置になってしまった看板を見て、キノはそうつぶやいた。
「そもそも看板がなければ今まで訪れた国の中で、かくれんぼが一番上手だよ。国ごと隠れるなんて」
エルメスが押されながら言い、キノたちは円形のパネルの上まで歩き、全員乗ると地面ごとパネルが下がる。
数十秒後には、また看板が一つ道の真ん中に取り残されるだけとなった。
「みなさん、我が国へようこそ! ここで入国審査を行いますが、まあ形式的なものなので身構えないでくださいね!」
スーツ姿の若い男性が、さわやかな笑顔を浮かべてパネルが下りた先で待っていた。天井までの高さは四メートルほど、右へ視線を走らせてみれば左手にはゆるく弧を描いた石の城壁が、右手には鉄板で造られた同じく弧を描いた壁が見えた。そしてキノたちが下りた場所の目の前に、はよく目にする城門のサイズを小さくしたような門があり、その横に入国審査官の詰め所があった。
「横に伸びている壁って、円になって国を囲んでいるってこと?」
「そうですよモトラドさん。正確には城壁そのものが地盤の崩落を防ぐための防護壁であり、ここは見えている城壁の一番上の部分です。国は門をくぐってすぐのエレベーターでまた降ってもらいます。国内は三層構造になっており、国民は主に中間の層で生活しています。最上層には軍事施設が、最下層には生産にかかわる施設が多いですね!」
エルメスの質問に対する返答と、質問以外のことも教えてもらい、エルメスの代わりにカエデはへーと素直に驚嘆する。
「地下で生活とか、不便を感じたりしないんですか?」
「いえいえ、むしろ快適そのものですよ。ここだけの話、外に出る国民はまれで、一生を国の中で終える人がほとんどです。……あっ、失礼しました。一応規則なので質問とお手持ちの荷物を検査した後、入国となります。それではまず――」
そのあと、本当に簡単な質問や荷物検査の後に、二人と二台は門をくぐってエレベーターに乗った。
「いやあ、国外からの商人が時々訪れる程度でして、観光と休息目的の旅人さんがいらっしゃるのは建国して以来今回が初めてなんですよねー!」
受付の手続きを行った入国審査官が、エレベーターの外まで案内するという事で一緒のエレベーターに乗り合わせ、その興奮を抑えきれずに嬉々として話す。
「建国して以来……ですか。いったいいつから?」
「大体七十年は経過していると言われています。他の国がどうかは分かりませんが、国の歴史としてはかなり浅いかと」
「建国当初から地下での暮らしを?」
「そうですね。建国に携わった当時の科学者たちが、ある一つの理由により埋没式の国を築いたと言われています」
「その理由とは」
「教えて教えてー!」
エルメスが子供のようにはしゃぎながら続きを促す。
「それはですねぇ……いないフリをするためです!」
「?」「?」「?」
二人と一台の頭上にクエスチョンマーク。その反応を予想していたと言わんばかりに審査官は説明を始める。
「我が国はもともと科学技術がとても発達していた国の末裔が建国したとされています。かなりの強硬政策をとっていたようで、それが原因で昔ある大国との間で大きな戦争があり、双方ほとんど共倒れの形で滅亡したと。その生き残りが遠く離れた――つまりこの地で国を興したわけです」
「なるほど! だからこれだけ高度な土木技術でこういう不思議な構造の国が出来たんだね!」
「そうです。そして先人たちは、ある教訓を得ました。曰く、『力をひけらかし、技術で脅し、人々はそれにより怠惰におぼれ滅亡した。そのような愚行は、繰り返してはならない』と。その言葉が、この国に伝わっています。学校の教科書にも載るほどにまで浸透していますよ」
エレベーターが全体の半分まで下りる。
「そして、今後は謙虚に暮らすために、そして強国に目をつけられないために、我々は地下にこのような国を作りました」
「それがこの国の成り立ち……と」
「実際その考えは正しかったと思いますよ。戦争に巻き込まれず、他国から目をつけられていませんし。我々の存在はあくまで噂程度に済まされていますしね。商人たちも我々の事情を察してあんまり公にしないでくれますし、助かります」
「その噂を聞きつけて私たちが来たんですけど、よかったんですか?」
「あくまでいないフリをするのは、国とのやり取りですから。戦争をしないための地下国家ですし。旅人さんなら大歓迎ですよ! いらしてくれたのは今日が初めてですけどね」
そうして話していると、エレベーターの速度が弱まり、やがて止まった。
「それでは旅人さんたち、滞在の間ゆっくりとおくつろぎくださいね!」
キノたちがエレベーターから降りて、審査官に見送られた後目の前の扉が開き――。
「キャー旅人さんよーっ! 初めて見たわーっ!」
「隣のお嬢ちゃん美人だねぇ。彼女さんかな?」
「わあ、モトラドだ! しかも二台! いいなぁ、かっこいいなぁ」
歓待の言葉と共に、大勢の国の住民たちから色とりどりの大量の花びらが投げられた。
「これは……」
「なんというか……」
「石じゃなくて、花を投げられたね。二人とも」
歓迎の雨あられを受けた二人と一台は、さてこれからどうするかと悩むのだった。
各話見切り発車で書いているので、ちゃんとしたオチがない場合がほとんど、というか全部そうなるかもです、ハイ。次回は出来ればネチョネチョにしたいなぁ……という希望的観測。強い女の子は好きです。そういう子がエッチなことに翻弄されるのはなおよし!