「そういえば智也くんって妹さんがいるんだったよね」
真奈美の問いかけに、智也はああ、と軽く相槌をうった。
夕方。補習が終わった智也は真奈美と共に飲食店が立ち並ぶ街中を歩いていた。智也の家は街中で真奈美の家は住宅街のはずれとだいぶ離れているが、学校からの方角は同じだ。
もともと勉強会の日は一緒に帰っていたが、付き合いだしてからは毎日になった。おかげで智也が真奈美と付き合っていることはすぐに友人にバレて、からかわれる日々が続いている。
「二つ下だから今ウチの一年にいるけど。それがどうかしたのか?」
「妹がいるってどんな感じなのかなぁって思って。私一人っ子だから」
「別にいいことなんかないぞ。生意気だしわがままだし言うこと聞かねぇし。俺からすれば一人っ子の真奈美がうらやましいよ」
「そうなの? 私はそういうのも可愛いなって思うけど」
なんで、と不思議そうに智也は言った。
「んー、生意気ってことはそれで失敗とかしちゃったりするじゃない。それを見守ったり色々教えてあげたりしてあげたいなぁって私は思うな」
「ふーん、俺にはわかんねーな。めんどくさいし」
「智也くんは意地っ張りだからね」
くすくすと笑う真奈美に、「ほっといてくれ」と智也はそっぽを向いた。
「それに、妹さんからすれば困ったときに助けてくれるお兄さんがいるのってすごく安心するんじゃないかな」
「……そうかもな」
思い起こされるあの夜のこと。傷ついた唯に慰めてと迫られて、兄妹でありながら交わった夜。それは決して正しい兄妹の助け合いではなかった。
「私にはそういう人はいなかったから。ちょっとうらやましい」
珍しく少し暗い顔をして真奈美は言った。智也はそれにうまく言葉が見つからなくて、そうか、と一言だけ口にした。
話が途切れてふと前を見ると、もう智也のマンションが見えてきていた。そろそろお別れかと考えていると、敷地内の駐車場から一台のセダンが出ていくのが見えた。
特に目立った特徴はない普通の自動車。だが、それを見た智也の顔は一瞬でこわばった。それはあの日妹を犯していた男の車だった。
「真奈美。悪い、俺先帰るから」
「えっ? あ、う、うん、わかった」
突然のことに困惑する真奈美にじゃあな、と言い残して、智也は急いで自宅に向かった。
「唯!」
玄関を勢いよく開ける。妹が何かされたなんて確証はないが、イヤな胸騒ぎがしていた。
「なに? 兄貴どうかしたの?」
だが、智也の心配とは裏腹に、なんでもない顔をした唯が奥から出てきた。
「あ……いや、なんでもない……」
急に身体の力が抜けて、安堵の息が漏れる。
「ふーん。まあどうでもいいけど。……てか、ただいまくらい言わないの?」
「あ、悪い……ただいま」
「おかえり。ご飯できてるから早くカバン置いてきてくれる?」
「え?」
普段の藤崎家はこの時間はまだ夕飯時ではない。母親の帰りがいつも遅いからだ。
ぽかんとした顔をしている智也に、唯は呆れた顔で言う。
「忘れたの? 今日母さん仕事で帰れないって言ってたじゃん」
そういえば、と朝食の時に言っていたのを思い出す。
「じゃあ飯ってお前が作ったのか?」
「あたし以外にいないでしょ」
何当たり前のことをとでも言いたげな表情で唯は言った。気付けば唯は制服の上にエプロンを着けていた。
「だからほら、いつまでも玄関に突っ立ってないで早く食べてよ」
「カレーか」
テーブルの上に置かれた皿を見て、智也は少し呆れた顔で言った。
「なに、なんか文句ある?」
向かい側に座った唯がむすっとした様子で答える。
「いや別に。まあ普段料理しないお前ならこんなもんだよな」
「うっさい。せっかく作ってあげたんだからつべこべ言わないで食べて」
「はいはい」
いただきます、と二人で言ってスプーンを口に運ぶ。ぱく、と口に含んだカレーライスは、智也の予想に反してなかなか美味だった。
「どう? おいしいでしょ」
一口食べ終えた智也に、唯は期待のこもったまなざしで聞いてきた。
「ん……うん、まあフツーにうまい」
「もー、なにその言いかたー。おいしいなら素直においしいって言ってよ」
「う……わかったよ。おいしい、おいしいです」
「よろしい」
兄の返答に、唯は満足そうに笑った。それは久しく見ていなかった唯の純粋な笑顔だった。そもそもこうして二人でご飯を食べるなんていつぶりだろうか。
「ていうかお前料理とか作れたんだな。てっきりそういうのはからっきしと思ってたよ」
「ん、まあね。兄貴も母さんも帰りが遅いときとかにちょくちょく自分で作ってたから」
「じゃあ他にどんなもん作ってたんだ?」
純粋な興味で智也は聞いたのだが、「えっと……」と唯は気まずそうに視線を泳がせる。
「カレーだけか」
「う、うっさい! 別にいーじゃん、あたしカレー好きなの!」
「別に俺はどーでもいいけど。唯は子供舌だからな」
「それなら兄貴だって同じでしょ。小さい時からずっとハンバーグ大好きじゃん」
「お前と一緒にすんな。確かに好きだけどそればっかじゃねーよ」
カレーをぱくつきながら、唯は「例えば」と問いかける。
「例えば……そうだな、ラーメンとかハンバーガーとか」
「子供が好きなのばっかじゃん」
「うるせーな。唯だってよく一緒に食ってただろ」
「昔の話でしょそれ」
くだらない話をしながら二人で唯の作った料理を食べる。それはギクシャクした関係が続いていた最近はほとんどなくなっていた光景だった。変わらず唯は生意気な態度だが、どことなく棘が抜けたようなその様子に智也は少しの安心感を覚えていた。
「ごちそうさまでした」
二人そろって、ぱん、と両手を合わせて挨拶をする。延々と続いていた言い合いも食べ終わるころには疲れてやめていた。
「片付けは俺がやるよ」
「ん」
食器をまとめて流しに持っていく。蛇口を捻って洗い始めると、後ろでごそごそと唯がエプロンを脱ぐ音が聞こえる。
「ふー、あっついあっつい。辛口ってこんな辛かったっけ」
「いつも中辛か甘口だからな。なんで辛口にしたんだよ」
「兄貴そっちのほうが好きでしょ」
「別に無理して俺に合わせなくてもいいんだぞ」
洗い終わった皿をかごに入れるついでに振り向いて答える。唯の方を見ると、よほど暑いのかブラウスの胸元を外してぱたぱたとあおいでいた。ちらりと鎖骨のあたりが見える。
「唯。お前なんだそれ」
その僅かに見える胸元の肌。そこに一つのあざのようなものを智也の目は見逃さなかった。
「は? え、なに」
気付いていないのか、唯はきょとんとした様子だ。智也はそんな唯にすたすたと近づいて胸元を掴んだ。そして少しの躊躇はあったものの、ぐい、とはだけさせる。
「えっ、ちょっと、バカ! 兄貴なにすんの!」
唯がわめくが、そんなことに構っている場合じゃない。開いた胸元を確認すると、確かに赤い跡がある。
「お前、今日あいつにされただろ」
「は、はぁ? なんでそんなこと言えるわけ?」
強気で言い返してくる唯だが、動揺を隠しきれていない。
「だってこれキスマークだろ。それに今日あいつの車が駐車場から出てくるのを見た」
「えっ……」
智也にそう言われて、唯はようやく自分の胸元を見た。今まで本当に気付いていなかったようで、その跡を見つけた唯は唖然としていた。
「お前もしかしていつもこんなことされてたのか」
「……別に兄貴には関係ないでしょ」
「んな訳あるか。俺はお前の兄貴なんだぞ」
言葉を荒らげる智也にたじろいたのか、唯は少し考えた後にぽつりと言った。
「……いつもじゃないけど、たまに」
「いつからだ」
「なんでそこまで言わなきゃいけないわけ?」
「いいから教えろ」
怒りと苛立ちを含んだ声。唯とはよく喧嘩をする智也だが、ここまで怒りを露にしたのは初めてだった。
「わかった、教えるからそんな怒んないで。……その、あたしが高校入ったくらいから」
唯のその言葉を聞いた智也は、一瞬で頭に血が上った。そしてポケットからスマホを取り出して電話をかけようとする。
「ちょ、ちょっと、兄貴! なにしてんの!」
「母さんに電話する。今すぐあいつとは縁切ってもらう」
低い声で智也はそう口にして母に着信を入れる。だが唯はその腕にしがみついてきた。
「おい、唯! 何すんだ、離せ!」
「電話切って! お願い!」
もみあいになる二人。仕事が忙しいのか、母はなかなか電話に出ない。
そして、智也の体がテーブルにぶつかった拍子にスマホが床に落下した。唯はそれを急いで奪い取ると、すかさず電話を切った。
「お願いだから母さんには言わないで」
息を切らしながら、唯は切実な表情をして言った。
「妹が半年以上もそんな目に遭って黙ってるわけいくか!」
「事情があるの! 前言ったでしょ」
「お前の身体が好き放題されていい事情なんかねーだろ!」
どん、とテーブルに拳を叩きつけて智也は怒鳴った。初めて見せる兄のそんな姿に、唯はびく、と畏縮してしまう。それで諦めたのか、観念した様子で唯は口にする。
「……お金」
「──は? じゃあお前あいつに身体売ってるってのか」
「違う、そうじゃないよ」
じゃあなんだ、と詰め寄る智也に、唯は決心した顔で答えた。
「あたしと兄貴の学費。抱かせてくれたら払ってやるって、そう言われたの」
リビングじゃ落ち着かないと言う唯にしたがって、彼女の部屋に移動した。カーテンの隙間から見える窓には、いつの間にか降り出していた雨粒が叩きつけられている。その音は、電灯が落とされた部屋にやけに鮮明に響いている。
寝巻が脱ぎ散らかされているベッドに二人並んで腰掛ける。それはいつかの夜に似ていた。
「黙ってないでなんか言ってよ、兄貴」
どこかいたたまれない空気の中、唯がそう口にする。
「俺が話すことなんかないだろ。あっちじゃ話したくないって言うからこっち連れてきたんだろーが」
「……わかったよ」
はあ、と唯は深呼吸を一つすると、唯はぽつりぽつりと話し始めた。
元々藤崎家は裕福な家庭ではなかった。以前はかなり古い安アパートに住んでいたくらいだ。だが今のそこそこ上等な家に越してきたのは、ちょうど母が件の彼氏と付き合い始めた頃だった。
唯が体の関係を持ちかけられたのはそれからすぐだったという。最初は当然拒否したそうだが、自分と兄の学費を理由に渋々了承したそうだ。それから今まで、誰にも言わずに関係を続けられている。
「──そういう事情。これで満足したでしょ、兄貴」
話し終えた唯は、ふう、と息を吐いた。
「お前……今までずっとそんなこと隠してたのか」
「言えるわけないじゃん、こんなこと」
お互いに顔を見せられず、そっぽを向いたまま言葉を交わす。
「だったら今からでも俺がバイトでもなんでもして金はなんとかする」
「受験は? バイトなんかしてたら勉強する暇なくなるでしょ」
「別に大学なんかいかなくても──」
「やめて」
兄の言葉をさえぎって唯は制止した。引き留めるように兄の手を握って。
「お願いだからそれはやめて。あたし、兄貴があたしのために将来犠牲にするなんて耐えられないよ」
掴んだ手をぎゅっと握りしめて、唯は泣きそうな声で言った。
その様子を見て、智也はどうしようもなく惨めな気持ちを感じていた。今まで気付いてやれなかったことや、自分にしてやれることがないことが悔しくて仕方ない。
「じゃあどうしろってんだよ……」
吐き捨てるように智也は言った。それは唯に向けてというよりも、何もできない自分に対してだった。
「ねぇ、兄貴」
ただ掴んでいた手にその細い指を絡めて、唯は一つ呟いた。
「またあたしとセックスしてよ」
顔はまだ反対を向いたまま、けれど繋いだ手を強く握って唯は口にする。そこには懇願の色があった。
「唯、それは──」
「いいでしょ。前だって一回したじゃん」
「一回だけって言ったの忘れたのかよ」
「そんなの知らない」
どうでもいいとばかりに唯は吐き捨てた。
「……あたし、兄貴に抱かれてるときさ、すごく幸せだったんだ。他のこと全部忘れて兄貴のことだけでいっぱいにされて──」
唯はあの夜のことを思い浮かべながら、幸せそうな声で言う。そしてようやく智也の顔を見て続けた。
「あいつにされるのはすごくイヤだけど、兄貴にシてもらえたらきっとそんなことどうでもよくなるから。──だから、また抱いて。兄貴……」
唯は寂しげな笑みを浮かべてそう言うと、智也の首に腕を回して顔を寄せてきた。兄に心も身体も捧げるように。
そして瞼を閉じて湿り気を帯びた唇を軽く開ける。それは明らかに口付けを求めていた。
「……ダメだ。唯」
しかし智也は唯の肩を掴んで制した。
「え……なんで、兄貴」
閉じていた目を開けて、唯は泣きそうな顔をした。その表情にずきん、と胸が痛むが、智也は唯の目を見て答えた。
「その……彼女、できたんだ。だからお前とそういうことは──うおっ!」
智也のその言葉を聞くや否や、唯は突然兄の体をベッドに突き飛ばした。寝台にどす、と背中を叩きつけられて、軽い痛みが走る。
妹の行動に驚いている智也に唯は馬乗りになった。下から見上げた唯の顔は、きっ、と口を一文字に結んで、瞳には涙が浮かんでいた。
「知らない。そんなの。あたしは兄貴じゃないとだめなの──」
唯は智也の右手を掴むと、自らの胸に押し当てた。掌に伝わる乳房の柔らかさと唯の体温。制服越しでもひしひしと伝わるそれに、智也の心臓がドクンと高鳴る。
火照ったその顔は、悲しみの奥に発情した女の色香が隠れていた。それが想起させるあの夜の交わり。そのせいで、智也の意思とは無関係に股間に血が集まってしまう。
「ほら……兄貴だってここおっきくしてる。兄貴だってシたいんでしょ……?」
くい、と腰を動かされて、敏感になった膨らみを擦られる。びくん、と身体が跳ねてしまう。
「唯──でもダメ、だ。それは聞いてやれない」
それでも、残っていた自制心がそう答えさせた。
それを聞いた唯は、少しの間動揺するそぶりを見せたが、やがて悟ったような声で答えた。
「──そっか……うん、そう、だよね。ごめん、兄貴……」
掴んだ智也の右手を握りしめて唯は震えた声でそう言った。そして智也を見下ろす唯の表情は、見捨てられた子猫のような色をしていた。
その表情が智也の胸をぎりぎりと締め付ける。妹にそんな顔をさせてはいけないと、兄として妹を想う気持ちが否応なしに湧き上がってくる。それが智也の口を開かせた。
「──いや、待った、唯! ……その、わかったからそんな顔しないでくれ」
体を起こして唯の身体を抱きしめる。腕の中におさまった唯は寂しさに体を震わせていた。
「え……兄貴、いい、の……?」
「……お前のそんな泣きそうな顔見せられたらこう言うしかないだろ」
顔を上げた唯の瞳から、一筋の雫が頬を伝った。だがそれを悟らせないように、すぐに智也の胸に顔をうずめた。
「……ごめん、兄貴」
くぐもった声で唯は呟いた。
「……今さら謝んなよ」
「うん……でも、ごめん」
震えた声で謝る唯。その表情は見えない。
そんな彼女をこれ以上見たくなかった智也は、腕を緩めてその顔と向かい合った。そして小さな輪郭の顎をくい、と上げると、その唇を塞いだ。
「ん……っ」
涙で少し濡れた唯の唇。そのせいか、触れあったところから溶けてしまいそうな感触が二人に伝わる。その一体感があまりにも幸せで、より強く唇を押し付け合った。
深まる接吻は、唇以外の感触も伝えてくる。唇を合わせなおす度に響く水音や、鼻腔をくすぐる唯のにおい。
「んっ……兄貴、あっ……、ぁふ……」
それで我慢できなくなって、唯の唇の間に舌を軽く差し込んだ。すると唯はさして驚いた様子もなく、自らの口腔を差し出すように二つの唇を開けてきた。
当然そんなことをされたら躊躇する気なんて起きず、唯の濡れた口内に自らの舌を差し込んだ。すぐにぶつかる唯の舌。それを絡めとって思うがままに味わう。
「は……っ、ぁ、んんっ……あに、き……ンっ、は、ぁ……」
絡め合う度にべちょべちょといやらしい音が口内に響く。それは骨を伝って脳内に直接届いているみたいだった。
その音に合わせるように唯の口から漏れる可愛らしい声。軽く喘ぐみたいなそれに欲望を刺激されて、より強くその体を抱きしめた。
「ん──兄貴……っ、ん、は、ぁ、ン……っ」
智也がそうして抱き寄せると、それに応えるみたいに唯も両手を兄の首の後ろに回した。密着する二つの躰。唯の柔らかい胸や脚に感じる締まった太ももの感触が情欲を煽る。
「んひゃっ……! あにき──んむっ……!」
たまらず、両手で唯の尻を鷲掴みにした。びくん、と唯の身体が反り返って唇が離れるが、すぐに奪い取った。
そして再び舌同士の愛撫を始めるとともに、掴んだ尻の肉を揉みしだく。肉付きのいい唯の臀部は、力を入れるほど強く弾力が返ってくる。そんなに柔らかいのにも関わらず、張りがあって全くたるんでいないそれはずっと触っていたいほどの感触だった。
「ぁ、ン、あっ……ん、む……はぁ、んっ……」
唯もそうされるのが気持ちいいのか、ぐにゅん、と揉むたびに甘い吐息を漏らしていた。キスの合間に聞こえるそれはとても切なそうで、もっといやらしい行為を望んでいるようだった。
「っ──はぁ、兄貴、ねぇ、もっとシて……? あたしの身体、ぜんぶさわって……兄貴」
顔を火照らせて、唯は甘えるような声で言った。離した唇からは名残惜しさを代弁するかのように唾液の橋がかかっていた。
智也は唯の懇願にああ、と頷くと、その制服に手をかけた。ブレザーとブラウスのボタンをやや乱暴な手つきで外してはだけさせる。
「……今日はブラしてるんだな」
露になる唯の素肌。前にしたときと違って女たる特徴の胸の膨らみはピンク色の下着に覆われていた。
「あ、当たり前でしょ。今日学校あったんだから。……兄貴はノーブラのほうが好きなの?」
「いや別にそういうわけじゃねぇけどさ。似合ってるって思っただけだよ」
兄の言葉に、唯の顔はわかりやすく赤くなった。
「う、うっさい、ヘンタイ! バカなこと言ってないで早くさわって!」
わめきたてる唯に「わかったよ」と返事をして両手で胸を包む。ブラジャー越しなのにやけに緊張する。いや、だからこそというべきか。
覆った双丘を優しく愛撫する。軽く撫でるだけから始めて、少しずつ指に力を入れていく。
「んっ……ぁん、あっ……ん……」
大した刺激ではないが、ブラの中で乳首が擦れているのか、唯は小さく声を漏らしている。そこへ少し強く胸に指を食い込ませてやると、唯はベッドが軋むほど身体を跳ねさせた。
「ぁんっ……!」
それが恥ずかしかったのか、唯はぷく、とむくれた顔をすると、智也の制服に手を伸ばしてきた。
そしてさっき智也がしたようにそのボタンを外していく。ブレザーとワイシャツを外し終えると、隙間から手を突っ込んで智也の胸板に触れた。
「ちょ……唯、なにする気だよ」
「あたしだって兄貴のカラダ触りたいの……いいでしょ──?」
はぁ、と興奮した様子の息遣いに、智也は仕方ないなと頷くしかなかった。
それを確認した唯はさわさわと智也の胸板を撫でまわし出した。少し冷たいけれどすべすべとした感触の唯の手指は、触れられているだけでも心地よかった。
それに負けじと智也も唯の身体をまさぐる。下着の下から手を滑り込ませて勃起した乳首をつまむと、唯はよがるような声を上げる。
そのままくにくにとこねくり回すと、もどかしそうに身体をくねらせて反応する。
「あっ、んんっ……! ん、ぁん、あにき、あっ、きもち、い、あっ……!」
だんだんと熱を帯びていく唯の嬌声。そうして興奮が高まっていくのに合わせるように、唯の智也への愛撫も激しくなっていく。
ただ胸板を優しく撫でまわすだけだった手の動きが、上体すべてを舐めるように触るようなものに変わっていた。それは智也の身体の感触を貪るような愛撫だった。
「ねえ……兄貴、もう挿れたい……兄貴とひとつになりたいよ……」
お互いの身体をまさぐりあっているうちに我慢ができなくなったのか、荒い吐息を吐きながら唯は口にした。頬は情欲で朱に染まり、宝石のような瞳は切なさで潤んでいた。
「ああ……わかった」
その様子に、もうこれ以上は我慢できないと悟った智也はそう答えた。
「じゃあ兄貴の、脱がすね……」
唯は兄の返答に微笑むと、下に履いているものを脱がしてきた。ベルトを外され、制服を下着を一緒にずらされる。
そうすると必然的に露になる勃起した智也の生殖器。
「あは……相変わらずデカいね、兄貴の……」
ぴん、と悪戯するみたいにそれを指ではじいて唯は笑った。
そのまま彼女は腰を上げて股布をずらして挿入しようとするが、智也は待て、とそれを止めた。
「え、どしたの、兄貴……?」
「さすがに今日はゴムつけないとだろ。前みたいなのはダメだ」
唯はその言葉に少しだけ残念そうな顔をしたが、「そうだね」と大人しく従った。
ブレザーの内ポケットに入れてあった財布からゴムを取り出す。少し四苦八苦しながらもそれを装着した。
「よし……これでいいぞ」
智也のその言葉を聞くなり、唯は智也のものを掴んで自らの濡れたトコロに触れさせた。
「じゃあ……兄貴、入れるから……」
陶酔するような声でそう言うと、唯は腰を下ろし始めた。先端から少しずつずぶずぶと唯の蜜壺に飲み込まれていく。
一度したからなのか、唯の蜜穴はさして抵抗なく異物を受け入れていく。それが、まるで唯の身体が自分に順応しているみたいで、智也の征服欲を満たす。
「はぁっ……ぁ、兄貴、の、はいった……っ、あ、すご……っ、い……」
はあはあと息を切らして、唯は智也の身体に寄りかかってきた。その顔は満ち足りた表情をしていた。智也は肩で息をするその身体をそっと抱きしめた。
しばらくそうしていると、耳元で唯が囁く。
「ねぇ……あのさ、兄貴……あたし力入んなくて──だから、好きにあたしの身体動かしていいよ……」
熱い吐息を孕んだその声は、智也の抑えていた情欲を解き放つには十分だった。智也は唯のスカートをめくりあげてその下の素肌を鷲掴みにすると、上下に動かし始めた。
唯の温かい膣の感触を早く味わいたかった智也は、ぱんぱんと激しくそれを揺さぶる。すると中の肉棒が無数の襞に擦られて気持ちがいい。
「あっ……! ぁ、んっ、ア、あ、ヤバ、んんっ……兄貴、はげ、しっ……ん、あんっ……!」
その動きに、唯は熱い嬌声を上げて兄の身体に抱きついてきた。むにゅ、とその二つの胸が身体に当たって、さらに興奮が高まってしまう。
そのせいで中に入れている生殖器にさらに血が集まり、大きさを増していく。さっきまでは突き入れる時にこつん、と子宮口を突いていた先端が、常にそこに当たるようになった。
ずぷ、と唯の腰を引き下ろすと、子宮の入り口をえぐるように先端が突き刺さる。
「あぅ、あ、あに、き……っ、あっ、ちんぽ、おっき、すぎ……! おっ、あ、ぁんっ、そこ……っ、いい、あっ、ん、やっ、はぁ、ん……!」
恥じらいも忘れて乱れる唯。兄のもので奥をえぐられるたびに身体を痙攣させ、智也の耳元で淫らな声を上げる。
そんな唯の姿をもっと見たくなった智也は、頭をその豊満な胸に埋めてぺろ、と舐めた。
「ひゃあっ! ちょ、あに、き……っ、だめ……っ!」
別に乳首を舐めたわけでもないのに、大きく体をのけぞらせて唯の体が反応した。そんな反応を見せられたら、もっといじめたくなってしまう。
一度尻から手を放して、ブラウスの下からブラのホックを外した。抜き取るのが煩わしかった智也は、胸を覆っているところを上にずらした。
そして露出した乳首に舌を這わせる。「んっ……」と必死に抑えたであろう声が唯の口から漏れる。だが、そのまま再び唯の尻を動かすと、途端に抑えていた声があふれ出てきた。
「あっ、ん、ア、あんっ、あにき、ちくび、だめっ……! は、あ、おっ、きもち、よすぎ、ぁ、んっ、あっ! やば、あっ、おかしく、なる……っ!」
一層激しくなる唯の嬌声。それに共鳴するように、中のものを射精させようと強く締め付けてくる。
その唯の欲望に抗うように、強くお互いの腰を叩きつける。でもそれで急激に射精感が昇ってきた。睾丸の中で煮えたぎったものが、尿道をどくどくと昇ってくる感覚が全身に伝わる。
「唯……っ、出る──!」
「うんっ、出してっ……あたしの中でイって、あにきっ──!」
唯のその言葉が最後の引き金になった。ぎゅう、と唯の腰を逃がすまいと自分の腰に押し付けて、膣の一番奥で射精した。
それと同時に唯も絶頂を迎えたようで、二人で身体をのけぞらせて果てた。
「あ……ぁ、んっ、お……ア、あ、ぁ……っ、すご、どくどくいって……んっ、あ、せーし、いっぱい……」
唯は惚けた顔で軽く身体を痙攣させ続けている。その唯の奥で遠慮なく精液を吐き出す。まだ締め付けてくる唯の膣内に、ゴムを突き破ってしまいそうな勢いで射精が続く。
「は、ぁ……唯、抜くぞ……」
「ん……うん」
唯の体を持ち上げて、射精し終わったものを引き抜く。
「うわ……兄貴、こんな出したんだ……すけべ」
たぷたぷになったゴムをつつきながら、どこか嬉しそうに唯は言った。
「いや、最近溜まってたから……」
ばつの悪そうな顔をする智也。唯はそんな彼をからわうことはせず、「そっか」と一言だけ口にした。
「……ねぇ、兄貴」
「ん、なんだよ」
「また……してくれる?」
少し迷った後に、唯は遠慮がちにそう言った。恋人がいる智也にそんなことを頼むのは間違っていると、彼女自身もわかっているのだろう。
「唯、それは……」
言い淀む智也。頷けば、真奈美を裏切ることになる上に、兄妹で肉体関係を持つなんてダメだと、もちろん智也もわかっている。だが、唯を拒絶したときに見せた寂しげな顔が智也の脳内にこびりついて離れなかった。
「……あいつにされるのがどうしても耐えられなくなったら、その時は考える」
ダメだと思いながら、智也はそう口にした。
「うん……ごめんね、兄貴……」
智也のその気持ちを察したのか、唯は兄の胸に顔をうずめてそう言った。
「……別にお前が悪いわけじゃないだろ」
「……そうかな」
ぽつりと呟いた唯に智也は言葉を返さない。代わりにさら、と唯の柔らかい髪を撫でた。その身体は少しだけ震えていた。