ぶぶぶ、と何かが振動するような音で目が覚めた。ベッドから気怠い身体を起こして窓の外を見てみると、青白く薄い光が差し込んでいる。まだ早朝のようだった。
ふと横を見ると、可愛い寝息を立てて眠っている智也の顔があった。おまけに布団の上に散らかった使用済みの避妊具も。惚けた頭でも、その様子を見て昨晩の記憶が蘇ってきた。
荒い吐息と温かい身体の感触、それと熱い白濁。昨日は真奈美のわがままで、ゴムが切れるまでずっと交わっていたのだった。
真奈美としてはもっとしたかったのだが、ゴム無しはまずいと言う智也に従った。その時の自分の乱れようを思い出したのか、真奈美は一人で勝手に赤くなった。
「ん」
と、先ほどから真奈美の耳に聞こえていた音を思い出す。その音源は、床に落ちていた智也のスマホの着信バイブレーションだった。
拾い上げて着信元を確認する。「藤崎唯」。智也の妹の名前だった。
「智也くん、妹さんから電話だよ」
こんな早朝に智也を起こすのは気が引けたが、急用かもしれないと思いその肩をゆすった。
「んー……」
しかし彼は不快そうに寝言を漏らすだけで、起きる気配はまったくない。昨晩はかなり疲れたはずだから仕方ないと思い真奈美は諦めた。
だが電話を放置するのも忍びなかった彼女は、ぶるぶると震えるスマホの電話に出ることにした。
が。
「あ……切れちゃった」
画面に指を伸ばそうとした瞬間に着信が切れてしまった。しょうがないか、と思い智也の枕元に置こうとしたとき、もう一度バイブレーションが鳴った。
だが今度は着信ではなく、SNSの通知だった。送信されてきたメッセージがロック画面上に表示される。
差出人の名前は「ゆい」。先ほどの電話と同じく、智也の妹の唯だろう。
『帰ってきて』
ただ一言。だがどこか切迫したものを感じる。
続けてメッセージが届く。
『母さんが仕事入って出てっちゃって』
『さっきまでずっとあいつにされてた』
核心的な言葉は何一つないメッセージ。
だが真奈美はそれだけで唯が意味するところを理解した。自分が過去にそういうことをされた経験があったから。
そこまで悟ったところで、それ以上見てはいけないと頭が警鐘を鳴らす。だが、そこにもう一件の通知が届いた。
『早く帰ってきて』
『あたしのこと抱いて』
その文字列を見た瞬間、真奈美は息を呑んだ。そのメッセージは、藤崎兄妹の関係を示すのにあまりに決定的だった。
そして聡明な真奈美は、その背景にある事情もおおまかに理解した。いや、してしまった。
「ん……」
背後から智也の声。振り向くと、今すぐにでも起きそうな様子だ。
真奈美は慌ててスマホをもとあった床に戻して寝たふりをした。
ややあって、後ろからごそごそと音がし始める。目が覚めたのだ。
「ん、いま何時だ……? スマホスマホ……」
智也の手が枕元をまさぐっている。だが近くにないことに気付くと、身体を起こしてあたりを見回した。
「あ……そこか」
床に落ちているのを見つけると、ベッドから降りてそれを手に取った。そのすぐ後だ。智也の身体がぴたりと固まった。
それからすぐに真奈美の身体をゆさゆさとゆすって起こしてくる。
「真奈美! 起きてくれ!」
「ん……あ、おはよ、智也くん」
知らないふりをして返事をする。
「悪い、すぐに帰らないといけなくなった」
「え、何か用事?」
「えっとその、家でちょっとあったみたいで……とにかく行かないとなんだ」
本当に焦っているのだろう。智也は必死な表情を真奈美に向けている。
「あ、そうなんだ。私は大丈夫だからいいよ、行って」
「本当にすまん。それじゃあ失礼する!」
智也は急いで服を着ると、乱雑に荷物をまとめて部屋から出ていった。
一人部屋に残された真奈美は、ずきん、と胸の奥が痛むのを感じた。
「……なんだろ、この気持ち」
マンションの階段を駆け上る。走り続けているせいで脚が痛むが、そんなことに構っている場合じゃなかった。
玄関の前まで着くとポケットから鍵を取り出し、乱暴に鍵穴に突っ込む。ガチャガチャとでたらめに回して開錠したらすぐにドアを開けた。
「唯!」
妹の名前を叫ぶ。静まり返った家の中に智也の声だけがこだまする。だが唯からの返事はない。焦った智也は急いで唯の部屋に向かった。
「ゆい」と書かれたプレートがかけられた妹の部屋の前に立つ。中から音はしない。
少し躊躇ったが、思い切ってそのドアを開けた。
そこで智也の目に映ったのは、避妊具と唯の下着が散らかった部屋だった。その様子から、妹が何度も慰みものにされていたことは明白だった。
カーテンがしめきられて電気も点けていない、真っ暗な部屋の中。ベッドの上に唯はうずくまっていた。脱がされたものを着る気力もないのか、身に着けているものは寝巻の上着だけだった。
「おい、唯! 大丈夫か!?」.
智也が声をかけると、唯はゆっくりと顔を上げた。智也を見上げる唯の瞳は虚ろで、生気を灯していない。
だが兄が見ていることに気付いたのか、それが見開かれた。
「ゆ──」
その瞬間、唯は立ち上がって智也の身体に抱きついてきた。ぎゅ、と兄の首の後ろに腕を回して、首元に顔をうずめる。
はだけられた上着一枚しか着ていない唯のひんやりとした素肌の感触が伝わる。その体は怯えるように震えていた。
智也はそんな唯を安心させようと、背中に手を回して抱き寄せた。びく、と震える唯の体。
そして唯はおずおずと顔を上げた。潤んだ瞳を向けてその口を開く。
「兄貴……」
唯は震えた声で智也を呼ぶと、寄りすがるように顔を近づけてきた。智也は、そんな唯を拒むことなどできなかった。
「ん……む……っ」
唯の柔らかい唇が押し付けられる。そのまま唯は兄に身体を預けてきた。智也は後ろ手でドアを閉めて寄りかかった。
唯は合わせた唇を二度三度と啄むと、強引に舌を突き入れてきた。兄の温もりや感触をもっと欲しがるような行為。智也はそんな唯の行為を少しも拒まず、唇を開いて受け入れた。
にゅるん、と絡まる兄と妹の舌。唯は淫らな水音が響くのも構わず舌を求めてくる。その快感で、密着している唯の太ももに熱いものを押し付けてしまう。
「んは……っ、兄貴──」
ちゅぽん、と弾けるような水音を立てて舌を引き抜かれる。
ほんの少しの間の口付けだったが、よほど夢中になっていたのか唯ははぁはぁと息を切らしている。そして、呼吸もろくに落ち着かないまま唯は口を開いた。
「抱いて──兄貴……」
余計な言葉はいらないとばかりに唯はそう一言だけ呟いた。
「ああ、わかった。じゃあベッドに──」
「やだ……今すぐシて。早く兄貴に犯されて全部忘れたいよ……」
泣きそうなほど切実な表情で唯はそう口にした。そこには、いつものような興奮の色はほとんど見えず、かわりに痛ましいほどの渇望があった。
智也は唯を抱きしめたままくるりと反転して、さっきとは反対に唯の体をドアに押し付ける。そして自分の下に履いているものを落として性器を露出させた。
ぐっと腰を突き出して、晒されている唯の生殖器と触れ合わせる。そのまま力を入れて一思いに挿入した。
「あっ……! ぁ、あん、あ……兄貴、ん、んっ……」
唯はそれだけで軽くイったようで、びくびくと身体を痙攣させた。
「ん、んんっ……ぁ、あに、き……早くうごいてっ……激しくして、いいから……っ」
その絶頂が冷めやらぬまま唯は熱い吐息とともに言った。智也はそれに頷くと同時に、ゴムを着けていないことに気付く。だが、昨晩の真奈美とのセックスで手持ちは使い切っていて、こんな状態の唯を放っておいて買いに行くなんてのも無理だった。
智也は唯の腰をがっちりと掴むと、ナマのまま腰を振り始めた。
「あっ! あっ、はあっ、あんっ、ア、ぁんっ! あっ、すご……っ、あ、おっ……ぁあんっ……! 兄貴の、こすれてっ、あっ、ンっ、はぁんっ、あっ! もっとっ、もっとしてっ、んっ、あっ、あ、ぁ、あんっ!」
唯は智也の瞳を見つめたまま、甘えるような喘ぎ声をあげる。兄を求める気持ちをありのままさらけ出すように。
それに誘われるがまま腰を打ち付ける。その動きで唯の髪がふわりと乱れ、押し付けられている胸がふるん、と揺れる。
勃起したものを包む唯の膣肉は、引き抜こうとするたびにぎゅう、と締め付けてきて危うく射精してしまいそうになる。そして一番奥まで入れると反対に優しい圧迫に包まれて、いつまでも挿れていたいほど気持ちがいい。
「唯っ! ゆいっ──!」
「あにきっ、アっ、あんっ! すきっ、あにきのちんぽ、おっ、ンっ、は、あん、好きっ……!」
二人の股がぱん、とぶつかるたびに、唯は甘い声をあげてよがる。それをもっと聞きたくて、腰の動きは遅くなるどころがどんどん速くなっていく。まるで唯の身体を全て自分の感覚で塗りつぶすように。
唯もそんな兄の激しいピストンにされるがままにしていた。くた、と力を抜いて、智也からの衝撃を全身で感じているようだった。
その身をすべて智也に委ねている唯に、智也の興奮はますます高まっていく。唯の身体が自分のものになったような感覚。
「んっ、あっ、あんっ……おっ! あにき、やば、いっ、あっ、ぁうっ、んっ……ちんぽ、おく、ごりごりって、はぁっ、あん、おっ、ンっ……あんっ!」
性器を突き入れると同時に、唯の腰をぐっと引き寄せる。すると、唯の子宮口を先端が犯すようにえぐって腰が抜けそうなほど気持ちいい。
唯もその感覚に快感を感じているようで、奥に入れるたびにがくん、と身体を痙攣させている。もう唯は他のことなどすべて忘れて快楽に乱れていた。
だがそんな唯をもっと狂わせてしまいたくて、その体を思い切りドアに押し付けて腰を振る。
「んっ、あっ、おっ、ぁンっ! あに、きっ、あん、っはぁん、だめっ、アっ! そんな、したらっ……んっ、お、ぁん、しんじゃうっ……っ、あっ、しんじゃうよぉっ!」
いっそう乱れる唯。一度腰を打ち付けるたびに、びくん、と顔をのけ反らせて、その口からはだらしなく唾液が垂れている。
もう絶頂が近いようで、びくびくと膣肉が痙攣し始める。それに共鳴するように、智也の中からもどろどろとした欲望が昇ってきた。
「あにきっ、んっ、あたしっ、もうイっちゃうっ! ん、あっ、ん、んっ、あ、ア、ぁあっ──! イク、イク……っ、イっく、ぅうっ!」
きゅん、と唯の奥がすぼまる感覚。それに押し出されて、一気に精液がせり上がってきた。
そのあまりの快感に、引き抜くことを忘れて精を解き放った。
「あっ……ん、ぁ、あは……兄貴、中出し……してくれたんだ、ん、あっ、うれし、い……な……」
「ゆい……」
唯は智也の射精を受け止めながら顔をほころばせた。それが心底嬉しそうで、智也は唯と繋がったまま精液を吐き出し続けた。
射精が終わった後、ゆっくりと肉棒を引き抜いた。顔を出した亀頭からは愛液と精液が混ざったものが糸を引いていてひどく淫らな様子だ。
「あにき──っ」
どさ、と唯が寄りかかってきた。その表情はとても満たされた様子だった。
智也はその体に腕を回して抱き上げると、ベッドに移動した。そしてそっと布団の上に唯の体を寝かせ、自身もその隣に寝た。
「兄貴……キスして……」
すると唯はすぐに顔を寄せて接吻をねだってきた。そこにはいつもの生意気さはなく、ただ純粋に兄に甘える妹の顔をしていた。
「ああ……いいよ、唯」
智也もそんな妹に感化されたのか、優しくそう答えた。二人のその様子は、仲の良い兄妹だったころと変わりない。交わし合う行為が男女のそれだとしても。
「んっ……あに、き……ン、む……っ」
二人は首の後ろに手を回すと、お互いに引き寄せ合って唇を重ねた。ぴちゃぴちゃと音をたてて唇を求めあう。まるで傷を舐めあうかのように。
「ねぇ──兄貴……」
しばらくその接吻を続けていると、唯はふと唇を離してきた。
「あたし……あたしさ──」
まだ互いの吐息を直に感じるほどの距離。唯はその先の言葉を言おうか言うまいか迷っているそぶりを見せた。
だがやがて智也の目を真っすぐに見つめて口にした。
「あたし──兄貴のこと……好き、なんだ──」
「え……唯──」
唯はそう一言告白すると、兄の胸に顔を埋めた。智也のシャツをぎゅう、と握りしめて小刻みに震えていた。自分が拒絶されることを恐れるように。
「唯、俺は──」
「わかってる。……兄妹なのにこんなこと言っちゃいけないってことも、兄貴に好きな人がいることもちゃんとわかってる」
唯は自らの感情を抑えるように言葉を紡ぐ。
「──でもあたし兄貴がいないとダメなの……それくらい、兄貴のことが好き……」
すがるような唯の言葉。それは、真に心から思っていることなのだろうと訴えかけてくるものがあった。
「兄貴の恋人になりたいなんて言わない。あたしのものになってなんて言わない。……でも、せめて二人の時だけは──あたしを兄貴のものにして欲しいの……」
唯はそう口にして顔を上げると、再び口付けを求めてきた。
一瞬、それを受け入れるか拒むか迷う。普通に考えれば、受け入れることは許されない。
だが、潤んだ瞳で懇願する妹を拒絶したら、と想像すると胸が締め付けられる。十数年を共に過ごしてきた唯にそこまで悲しい思いをさせたくなかった。
「唯──っ!」
だから、智也の方からその唇を奪った。それは智也が唯の気持ちを受け入れたことの紛れもない証だった。
「んっ……あに、き……すき、ん、ふ……好きっ……!」
唯は智也がそうして自分を受け入れてくれたことでたがが外れたように、兄への気持ちを口にする。遠慮などなく舌を口内に侵入させて、智也の口腔を思う存分味わっている。
そして智也もまた唯の身体を強く抱きしめて、その気持ちに応えた。
そうして二人は兄妹であることを忘れて唇を交わし合った。いつの間にか日が昇っていることを気にも留めず。薄暗い部屋のベッドの上で、ただお互いの気持ちを確かめ合う行為に没頭した。