放課後、唯は夕日が差し込む廊下を歩いていた。補習でいつもより遅くなってしまったせいで、生徒の数は少ない。
「あれ」
ふと、視線の先に見慣れた後ろ姿が映った。それは兄である智也だった。
自由登校期間の智也だが、今日は所用で来ると朝言っていたのを思い出す。
「あに──」
兄貴、と呼び止めようとしたとき、その隣に一人の女子生徒が一緒にいることに気が付いた。肩まで伸ばした黒髪と、横顔からは眼鏡をかけているのが見える。
智也と手を繋いでとても親密そうな様子だ。それが、智也が付き合っているという彼女だということは容易に想像できた。
二人は空き教室に入ると、すぐに出てきた。荷物を置きに来ただけらしい。そのまま階段を降りてどこかへ行ってしまった。
唯が二人がいた教室を覗いてみると、中には誰もいない。窓際の机に二人のバッグが置いてあるだけ。
なんとなく教室に入って、そのバッグに近づく。別に何かを盗ろうと思ったわけではない。ただ、兄と付き合っている相手がどんな人なのかを知りたかっただけ。
バッグのポケットから定期入れが見えている。それを手に取って中を見ると、学生証が入っていた。
「佐倉真奈美……」
聞いた名前だった。成績優秀者という理由で表彰されているのを見たことがある。
頭の出来はあまりいいとは言えない兄が、そんな秀才と付き合っていることは唯にとって意外だった。
と。そこまで考えたところで、唯は自分がしていることの間違いに気付き、バッグにそれを戻した。そのまま、二人が帰ってくる前に教室を後にしようとしたが
「思ったより早く終わってよかったね」
「ああ、そうだな」
外から智也たちの声が聞こえてきた。今出ていったら確実に鉢合わせする。
焦った唯は、急いで教卓の下に隠れた。別に物を盗ったわけでもないから鉢合わせても問題はないが、智也の恋人と顔を合わせるのはなんとなく気まずかった。
がらりと音を立ててドアを開ける。教室の中は当然ながら誰もいなかった。
「悪いな、付き合ってもらって」
「ううん、私も久しぶりに後輩に会えてよかったから」
今日は智也だけですむ用事だったのだが、以前所属していた部活に顔を出したいということで真奈美も一緒に学校に来ていた。
「それじゃあ暗くなる前に帰ろうぜ」
智也は机の上に置いてあったバッグを肩にかけて言った。まだ日は見えているが、三十分もすれば真っ暗になるだろう。
「うん。──あ、今日私の家って寄ってく?」
「あー、いや、今日は遠慮しておくよ」
別に特別な用事があるわけではないが、あまり妹を一人にさせたくなかった。
「そっか。わかった」
真奈美はそう言って頷くと、少し考えるような素振りを見せた。帰ろうとするでもなく、特別何かするわけでもないその様子に、智也は首を傾げた。
そんな智也には構わず、真奈美は窓の外に目を向けた。外では部活をしている生徒たちの様子が見える。真奈美はそれを見ながら口を開いた。
「ねぇ、智也くん。ちょっとだけおしゃべりしてもいいかな」
「え? ああ、別に構わないけど」
真奈美はありがとう、と礼を言うと、智也の方に向き直った。
「単刀直入に言うね。──妹さんとのこと、聞かせてほしいな」
思いもよらない真奈美の言葉に、智也は絶句した。
真奈美は直接的なことは言っていないが、それが智也と唯の肉体関係を指していることは明らかだった。
「ごめんね、びっくりしたよね。突然こんなこと聞いて」
真奈美は柔らかな口調のまま続けた。表情も、いつも通り優しげな微笑を浮かべている。
それが智也には不思議だった。普通なら怒鳴りつけられても文句の言えない状況だ。それなのに真奈美はごめん、とすら口にしている。
「すまなかった!」
やっと口からその言葉が出てきた。がばり、と深々と頭を下げて、智也は真奈美に謝罪した。そんなことで許されるはずはないが、そうせずにはいられなかった。
「顔上げて、智也くん。私怒ってるわけじゃないよ」
だが真奈美は、あくまでも穏やかな態度を崩さずそう言うのだった。
「え?」
思わず顔を上げて、まじまじと真奈美の顔を見てしまう。
「私は本当のことが知りたいだけ」
真奈美はそう口にして、一度深呼吸をすると再び口を開いた。
「智也くん、この前私の家に泊まったときのこと覚えてるかな」
「あ、ああ。覚えてるけど」
「私ね、あの日の朝、本当は智也くんより先に起きてたんだよ」
真奈美は少し申し訳なさそうに目を伏せた。
「だから……見ちゃったんだ。妹さんからのメッセージ」
あの朝唯から「帰ってきて」と送られてきたメッセージ。そこには智也と唯の関係や、唯がされたことが、大まかではあるが書かれていた。
真奈美がそれらを見て事情を察したことは想像に難くなかった。
「そう、か。じゃあもう全部わかってるんだな」
「なんとなくはね。でも全部じゃない」
だからね、と真奈美は一呼吸おいて続けた。
「教えてほしいんだ。どうして智也くんと妹さんがそんな関係になったのかを。……こんなこと聞くの、すごく傲慢だけど」
「傲慢なわけない。真奈美に黙ってたのは俺だ。だったら真奈美には知る権利があるだろ」
それから智也はゆっくりと妹との関係を告白し始めた。きっかけとなった出来事から、関係が日常化してから今までのことを、全部。
非難されて当然のその話を、真奈美は静かに聞いていた。うん、うん、と頷きながら、最後まで智也の言葉を受け止めていた。
「──そっか。ありがとう、全部話してくれて」
智也が話し終えると、真奈美はそう誠意をこめて礼を言った。
「本当に悪かった。……こんなこと隠してたなんて最低だよな」
真奈美の顔を見れず、智也はうつむいた。だが、真奈美はそんな彼にううん、と首を横に振った。
「だって智也くんは妹さんのことを想ってしたことなんでしょ?」
「そうだけど……。でも兄妹でそういうコトするなんて間違ってる。真奈美ならわかるだろ」
「もちろんわかってるよ。世間一般的に見れば非難されることかもしれないね」
真奈美は自らの胸に手を当てて続ける。
「でも、私はそれを責めようとは思わないよ。妹さんが智也くんにそうやって慰めて欲しいと思う気持ちは私には痛いくらいわかる」
そう口にして真奈美は目を伏せた。自らの過去を思い出すように。
元父親にレイプされたことがあるという彼女には、唯の境遇に共感するところがあったのだろう。
「……だとしても、唯と関係を持った時点でお前とは別れるべきだったはずだ。浮気と変わんねぇだろ、こんなこと。……だから今からでもお前と──」
「それは私が困っちゃうな」
「え?」
思わず智也は顔を上げた。
「私ね、智也くんの恋人でいられることがすごく嬉しいの。きっと智也くんが思ってる以上に」
真奈美の目は真剣な色をしている。先ほど智也の告白を聞いているときは表情をほとんど変えなかったのに、今は明らかに感情が表に出ている。
そこにはどこか必死ささえ感じられた。
「お父さんに体を汚されて、お母さんにもひどいこと言われて──だから、智也くんと一緒に過ごして、優しく抱いてもらえることが私はすごく幸せ。……それがないとダメになっちゃうくらい」
真奈美はそう言うと、智也の体に抱きついてきた。
唐突な真奈美の行動に智也が戸惑っていると、彼女はさらに言葉を続けた。
「……だから、別れるなんて言わないで。都合のいい女でもいいから、私を智也くんの彼女でいさせて──」
すがるように真奈美は懇願する。智也の胸に顔を埋めて、温もりを求めるように彼を抱きしめていた。
「都合のいい女なんてそんなこと言わないでくれ、真奈美。今さら信じられるわけないと思うけど、俺は真奈美のこと好きだ。だからお前のことそんな風には思えないよ」
智也は真奈美の肩を掴んで、真っすぐに瞳を見つめて言った。今まで隠し事をしていた分、せめて今からは誠意をもって向き合おうと。
「──じゃあ証明、して」
真奈美はそう口にすると、智也の首に手を回して後ろに倒れこんだ。がたん、と音を立てて机の上に二人の体が重なる。結果的に智也が真奈美を押し倒した形になった。
「お願い……。シてくれないと、私不安でどうにかなっちゃいそうだから……」
そう震えた口調で言う真奈美の顔は、既に赤く上気していた。その表情は、興奮と不安が綯い交ぜになっていた。それを窓から差し込む夕日が美しく彩っている。
そんな彼女を目の前にして、智也は何も考えられなくなり、気付けばその唇を奪っていた。
「ん……っ!」
粘膜同士が触れあう音。そのほんのわずかな音を合図にして、二人の中のスイッチが切り替わった。
二人とも浅いキスをするつもりなど毛頭なくて、最初からお互いの口の中に舌を突っ込んだ。深いところで絡め合う濃厚なキスは、一瞬で二人の理性を消し飛ばした。
「んっ……! ちゅ、ンっ……ぁ、んんっ! は、ん……っあ、ふ、ぅ──!」
ここが学校の教室の中であることなどすでに頭の中から消えていた。
べちゃべちゃと淫らな水音を立てて、唾液を交換し合う。ごくん、と飲み干したそれは、まるで蜂蜜みたいに甘かった。それがべっとりと塗りたくられた舌の味も、ぬるりとした感触と合わさって、極上の味だった。
「ん、あっ! ぁんっ、ン、っはぁっ……! ともや、く……んむっ……は、ぁ、ん……!」
たまらず、片手で真奈美の胸を鷲掴みにした。手に余る大きさと柔らかい感触は、それだけで脳内のブレーキを壊す。
もう片方の手で真奈美の制服とブラウスを脱がす。ぷちぷちとそれを外して、ばさ、とはだけさせた。
「ん、は……っ」
一度唇を離して身体を起こす。お互いの口の間から伸びた唾液。それがぷつ、と切れると、真奈美はそれを嬉しそうに飲み下した。
キスで完全に火が付いたようで、真奈美は荒い吐息を吐いていた。その動きで、白い下着に包まれた豊満な乳房がふるふると揺れている。
「触って、智也くん……。私のカラダ、好きなように犯してほしいな……」
智也の脳内で、ぷつりと何かが切れた。
ぐい、と強引に真奈美のブラを上にずらして、その素肌を晒す。膨らみの頂点の乳首は、快感を欲しがるように勃起していた。
その誘惑に誘われるがまま、両方の突起を指でつまんだ。
「ひゃんっ!」
がた、と机が揺れるほどの反応をする真奈美。
それにはお構いなしに、智也はつまんだものを弄び始める。きゅっ、と強くつまんでみたり、ころころと指先で転がしたりすると、真奈美はそのたびに違った反応を見せてくれる。
「あっ、ン、はぁんっ……! あっ、ちく、びっ、きもちっ、いいっ、アっ、あんっ……! や、んっ、あっ、イっちゃい、そうっ……!」
智也の愛撫に、真奈美はびくびくと身体を痙攣させる。教室という普段しない場所だからか、真奈美の感度はいつもより上がっているようだった。
「真奈美っ──!」
そんな彼女をもっと狂わせてしまいたくて、片方の乳首にしゃぶりついた。そして、口の中に含んだ突起を舌でぺろぺろと舐めまわす。
「ぁあんっ! それ、だめぇっ……! すぐ、気持ちよく、なっちゃう、アっ、ふぁあんっ……!」
とどめとばかりに、お留守になっていた片手をスカートの中に突っ込んだ。ショーツはもうぐしょぐしょに濡れている。その下に指を入れて、真奈美の一番感じるところに人差し指を差し込んだ。
そのままくいくいと軽く指を動かしてみる。すると、きゅうん、と一気にそれを締め付けられた。
「あっ──! ん、ぁ、んっ、イクっ、イクっ! んあっ!」
びくびくと身体を痙攣させて、大きくのけぞる真奈美。学校だというのに、淫らな嬌声を思い切り上げて真奈美は絶頂した。
「ん、ぁ、あ──、はぁ、気持ち、よかったぁ……」
惚けた口調で真奈美はそう口にした。
だがその顔を覗き込むと、まだ満足していない、そんな顔をしていた。その証拠に、中に突き入れている指を引き抜こうとすると、名残惜しそうに膣肉が絡みついてくる。
「真奈美、俺もう我慢できないから……」
「うん、いいよ……智也くんの気が済むまで好きなだけおまんこしてほしいな……」
発情していることを隠そうともしない真奈美の言葉に、歯止めなんか効かなかった。
真奈美のスカートの下に手を入れて、ショーツを脱がせる。片方の足にそれをひっかけてから、そのスカートをめくりあげた。
むっちりと肉付きのいい太ももと、その間の生殖器。物欲しそうにひくつく割れ目からは愛液がどろどろと零れ出ていた。
スカートまで濡らすそれにごくりと唾を飲み込みながら、自分のズボンとパンツも脱いだ。
「真奈美、脚開いてもらえるか?」
「うん……これでいいかな……?」
智也に言われるがまま、床から足を浮かせてM字に脚を開く真奈美。
雄のものを待ち望むようなその姿に、ぞくぞくと征服感がこみ上げる。智也は開かれた太ももをつかむと、性器の先端を真奈美の秘部に触れさせた。
「あっ……智也くんのおちんちん、あっつい……ねぇ、早く挿れて──?」
挿入をねだる真奈美の目は、完全に発情した女の顔をしていた。
それに誘われるまま、ずぷ、と真奈美の陰部に押し入る。少しも抵抗のないそれに甘えて、体重をかけて一気に奥まで挿入した。
「は、ぁあンっ……! あっ、おく、ぁ、おちんちん、きて、ぁんっ、アっ、ん……あたま、しびれ、る……っ」
入れただけで軽く果てたようで、中の肉棒がぎゅっと締め付けられる。
その締め付けを感じながら、ぱん、と一突き。びくんっと真奈美の体が跳ねる。
そのまま抜き差しを始める。がっしりとつかんだ脚で真奈美の体を押さえつけて、そこへぱんぱんと腰を叩きつける。
「あんっ! あっ、はぁ、うっ、アっ、おっ、すごっ──! あっ、ふかいとこ、えぐって、あんっ、や、アっ……!」
興奮ですでに限界まで膨張しきった生殖器。その先端で真奈美の膣奥を犯すのがたまらなく気持ちがいい。真奈美もそれに応えるみたいに、きゅぽ、と子宮口が吸いついてくる。
ぐっ、と思い切り体重をかけても、真奈美はそれを受け止めてくれる。弾力のある太ももと、生殖器を包んで圧迫してくる膣壁。それがあまりにも心地よくて、夢中で腰を振ってしまう。
「あっ、ア、ぁ、ん、あっ! はげし、いっ、ひあぁっ、んっ、おっ……! もっと、シてっ、あっ、ン、もっと犯してっ……智也くん──っ!」
いくら乱暴に智也が性器を抜き差ししても、真奈美は際限なく求めてくる。愛欲と情欲に飢えるみたいに。
そんな真奈美を、彼女の望み通りもっと犯したくなる。智也は一回腰を止めて性器を引き抜くと、真奈美に後ろを向くように促した。
「あ──後ろからシてくれるんだ……」
そう嬉しそうに言うと、真奈美は机に体をうつぶせに寝かせて尻をこちらに向けた。
めくれ上がったスカート。外気にさらされている尻は、愛液と汗で艶やかな色気をはらんでいる。
そして、さっきまで交わっていた蜜壺からは、真奈美の情欲がぽたぽたと床に滴り落ちていた。
「智也くん……挿れて──。 わたしもう、切なくて仕方ないんだ……」
こちらにうるんだ瞳を向けて真奈美はそう口にした。
智也はああ、と頷くと、尻をつかんで一気に挿入した。
「ぁんっ!」
そのままさっきよりも激しく真奈美に腰を叩きつける。ナカは先走りと愛液でぐちょぐちょになっていて、腰を振るたびに水音が響く。すると共鳴するように真奈美の口からも甘い声がこぼれ出てくる。
夕暮れの真っ赤な教室はその音だけで満たされていた。そこはもう教室ではなく、雄と雌が交尾するだけの世界だった。
その空気にあてられて、真奈美への征服欲がぐつぐつと沸き立ってくる。智也は片手で真奈美のうなじを掴むと、そのまま机に押し付けた。
「んあっ! ぁうっ、あんっ、ア、ん、それ、ぁ、好きっ、おっ、ン……! これ、あっ、あ、あっ、智也くんのものにされてるみたいで、あんっ、好きっ──!」
だが真奈美はそんな身勝手な行為にも嬉しそうにそう口にした。
さらに、智也を悦ばそうと尻を上下に揺すってきた。ぐにゅ、と膣の形が変動して一気に快感が膨れ上がる。
それと同時に締め付けが一気に増す。絶頂が近いことの合図だ。
まるで搾り取られるかのような感覚に、智也の射精感も強制的に上昇してくる。
「んっ、あっ、おちんちん、びくびくしてるっ、は、ぁ、んっ……! わたし、も、イク、から、中に出してっ──!」
精液を求めるようにぐりぐりと真奈美は尻を押し付けてくる。膣内の締め付けはてっぺんまで達していて、すぐにでも果ててしまいそうだ。
「まなみ、く、あ、でる、出るっ……!」
ぐつぐつと上ってくる熱い白濁。それが我慢できなくなった瞬間、真奈美の体に思い切り自らを押し付けて精液を撃ちだした。
「ん、ああぁっ、イクっ! ぁ、ア、ぁあ、ん、あっ……お、っあ……ナカ、あっつい……っ、ん、あっ、すごい、たくさん……」
真奈美の体に覆いかぶさったまま精子を吐き出す。体の力を全部抜いて、尿道をこすって白濁が出ていく快感をひたすらに感じる。
いくら出してもキリがなくて、真奈美の中がどろどろに満たされていく。真奈美はそうして智也で自らが染められていく喜びに震えていた。
「っ……は、ぁ、はあ、真奈美、もう出ない……」
「ん……うん、すっごいいっぱい中出し、されちゃった……」
絶頂が終わっても二人はつながったまま重なっていた。少しの倦怠感と、全身を包む甘い余韻が心底心地がいい。
繋がっているところからは入りきらなかった白濁がぼたぼたとだらしなくあふれているが、そんなことはどうでもよかった。
「ねぇ、智也くん、ちゅーして……」
甘えきった真奈美の声。その顔を覗き込むと、とろん、と酔ったような目をしていた。
「ああ、いいよ」
真奈美の望みのままその唇に智也は自らのものを近づける。そしてそれが触れ合う直前だった。
がたん。教室の中から音がした。
驚いて二人そろって音のほうに顔を向けた。教卓の陰からこちらを見ている人影があった。
その人影は驚いたように、がば、と立ち上がった。
「ゆ、唯……」
それは智也の妹の唯だった。しまった、と動揺した顔をしている。
「あ、いや……」
と唯は焦った様子でこちらを見ている。だがすぐに逃げるように教室を出て行った。
そのさまを智也と真奈美は呆然と見ていることしかできなかった。
「余計なこと、しちゃったね」
智也が脱がせた制服を着なおしながら真奈美は言った。
さっきの件で二人は気まずさに顔を合わせられずにいた。
「俺と唯のことをお前に話したことか?」
「うん、それ以外にもいろいろ、さ……」
智也たちが教室に戻ってきてから誰も教室には入っていない。唯が最初から聞いていたことは明らかだった。
「ごめんね、智也くん。私のせいで妹さんに余計なもの背負わせちゃった」
「唯がいるなんてわからなかったんだから仕方ないだろ。真奈美が謝る必要なんてない」
真奈美が何か言おうと口を開いたが、「それに」と制した。
「もともと俺のせいだ」
「そんなことない。……智也くんのせいじゃないよ」
真奈美は智也の手を握ってそう言った。
智也はただ、そうか、と口にすることしかできなかった。