※この作品はR-18です。

貴族令嬢の恋は前途多難、だからメイドも周りも苦労する   作:木桜 春雨

1 / 7
お嬢様は乞食になって散策 そして出会ったらしいです

 ジュスティーナ・フランヴァル、貴族の家に三女として生まれたが、子供は自由に伸びやかに大らかに育てようという家風の為か、彼女は遠方の親戚に預けられた。

 手紙で近状を知らせてくるし、会いたくなったら転移魔法で、いつでも帰ってくることができるので何かあっても安心だ、それに家族仲はもともと良好なのでジュスティーナが寂しがることはなかった。

 それに彼女には優秀なロベルタという専属のメイドがついているのだ。

 

 

 「侯爵様、お手紙です」

 

 入ってきた執事の言葉に書類に向かっていた当主のアンダーソンは手を止めて受け取った。

 

 ジュスティーナ様からですといわれて男の顔がわずかに破顔する、手紙を受け取り、封を切ろうとしたが、執事を見るとどうした、出て行けと言わんばかりの顔になる、だが、が執事は、ふっと唇を緩ませた。

 

 「私にはないのでしょうか、お嬢様からの言づては」

 

 「いや、これは、父である私に」

 

 手紙を取り出し分厚い数枚の便せんを見る、お父様へと書かれた文字、だが、よく見ると二枚目からは執事のクレイブへと書かれている、自分には最初の一枚だけだ。

 

 実の父には便せん一枚、残りの分厚いのは全て執事って、どういうことなんだと思いつつ、アンダーソンは執事に渡した。

 

 「何が書いてあるんだ」

 

 「自室で読ませて頂きます」

 

 「いや、私は当主として知っておかねば」

 

 仕方ないですねと執事は読み始めた。

 

 メイドや奉公人達は元気ですか、都会の帝都の方では今、風邪に似た病気が流行っているので年寄り達は体調に気をつけて、今こちらでの流行の作物、流行のドレスや宝石、偽物が出回っているらしく、商人達が。

 

 「家人だけでなく、私どもの事を心配して、ご立派です」

 

 私の娘だからなとアンダーソンの鼻は高い、だが、執事は黙っていた。

 

 「長男のカイザー、次男のフェルナンド様の学校の事も気にしておられます、卒業できそうかと」

 

 「あ、あー、それは大丈夫だ」

 

 「旦那様、学校を辞めてもいいのでは、今から職人にでも何だってなれます」

 

 自分の息子が家督、家を継がせなければならない事に当主は固執していない、できるならジュスティーナに継がせたいと思っているのではないかとグレイブは思っていた、たが、それも数年前までのことだ。

 

 「他には何か」

 

 「ロベルタから、お嬢様の近状が」

 

 「そうか、どんなことが、なんと」

 

 「いえ、これは個人的書簡ですので」

 

 たとえ旦那様でもと言われて、アンダーソンはむっとなった。

 

 ティーナ、娘は父を軽んじているのではないか、執事のグレイブの方に手紙の量が多いとは寂しい限りだと、だが、そんな当主の思いなど執事は気づいてもいないそぶりで自室に戻った。

 

 

 手紙を読み終わった執事は自分の気持ちを落ち着かせようと水を飲んだ、ロベルタからの手紙はいつも通りだった、ジュスティーナお嬢様の近状、毎日、元気にしていると、だが、最後の一行にクレイブは目頭が熱くなった。

 

 「平民遊びに拍車がかかりました、今は乞食の恰好をして街を出歩いています」

 

 目眩がした、多分、彼女のことだ、生半可な変装ではない、本物の乞食そっくりの恰好で街を歩き回っているのだろう。

 そんな事をして役人や警察、ギルドの人間に捕まって正体がばれたらどうなるかと思ったが。

 私が護衛をしておりますという追記にほっとした。

 

 自由な家風というものが子供の教育にどんな影響を与えるのか、これは彼女の曾祖父達の影響だと思っていた、金のある、地位のある者は奢り高ぶってはいけない、力があるからといって慢心はいけない、困っている者がいれば助けてあげなさい。

 だが、ギブアンドテイクの精神は大切だ、報酬はきちんと受け取りなさい、沈黙は金、この言葉はフランヴァル家の人間なら、ゆめゆめ忘れるでない。

 貴族の娘だから媚びてきたり、お世辞を使って取り入ろうとする輩には注意しなさい。

 変装して街へ出歩き、人の本性を見ると面白いなどという遊びを教えたのは祖父らしい。

 最初はとんでもないと思っていた、だが、あの店は法律の目を盗んで、この店は、あそこの住人は病気で困っていると色々なことをジュスティーナは覚えて自分に忠告してきた。

 

 「今度、新しい店ができたでしょう、家に出入りするなら気をつけた方がいいと思うの」

 「あの通りに住んでいる住人の税って、おかしくない」

 「クレイブ、畑を作りたいの、野菜だけでなく、薬草を育ててみたいの、手伝ってくれる人を村から雇って」

 

 そんな事は家の召使いにやらせればと思ったが、村の人を雇って賃金を払いたい、家が出せないなら自分の小遣いから出してくれて構わないからといわれたときは驚いた。

 募集をかけると集まってきたのはスラムの子供、年寄り、怪我をしてまともに歩けない退役軍人もいた、働けない、だが食べなければ生きてはいけない、貧困にあえいでいる人間だ。

 

 子供が、いや、当主の祖父達の教育の賜だ、フランヴァル家は決して貧しくはない、だが、彼女が家督を継げば近隣の村など、暮らしはもっとよくなる筈だと思った時。

 

 

 「奇病といってもいいですな」

 

 「治るんでしょう、娘は妻の忘れ形見なんです、お願いです、先生」

 

 当主のアンダーソンの言葉に医者は首を振った、薬がない、治療法も分かっていないのだといわれて当主は彼女の療養の為と祖父が好きだった田舎町に彼女を住まわせることにした。

 

 「あちらでの生活はお嬢様にあっているのだ」

 

 クレイブはほっとした、平民遊びも元気になってきた証拠だ、乞食の恰好をしているということは。

 あちらは首都からの商人だけでなく、外国からの出入り、貴族も多いと聞く。

 ロベルタには警護を万全に、万が一、相手が貴族、高官、役人で忙殺、瞬殺でも後始末はこちらでする、もみ消しは任せろと伝えておかなくてはいけな

いな、だが、手紙はそれだけではなかった。

 

 

 

 「お嬢様、何かいいことがありましたか」

 

 十日ぶりの湯浴みでバスタブの湯は黒い、泥や靴墨などを体に塗りたくって、腕や足には本物にそっくりな傷跡まで作っている、調合した腐臭の香りも鼻が曲がりそうなくらいで、念には念を入れてと一週間も湯浴みをしていなかったので時々痒いと体をかきまくっているのも見ていて関心するほどだ。

 

 「うーん、さっぱりした、しばらくは、お休みするわ」

 「それがよろしいです、今回のは少し長かったですもの、旦那様に手紙を書かれますか」

 「三日前に書いたけど」

 「お嬢様が心配なのです、病気の事も心配しておられましたもの」

 「ロベルタ、新しい眼鏡、欲しくない」

 

 今ので十分ですわというと少女は首を振った、街で物乞いだと思われて金持ちの男が金貨をくれたのだという。

 

 「この金貨、よく見て」

 

 「見たところ、ですが」

 

 手のひらに置かれ、その重さにロベルタの目が細くなった、軽いのだ、金貨の重さではない、これを渡したのが貴族は乞食の娘なら騙せると思ったのだろうか、それとも本人も知らなかったのか。

 

 お城に泊まっている貴族なのと言われてロベルタは考えた。

 

 「クレイブに連絡を」

 

 「この街だけなら放っておいてもよくない」

 

 「そうですね、ですが」

 

 「ところで、お茶会とか出なくていいのかしら」

 

 まさか、そんな言葉が出てくるとは思わなかったとロベルタは驚いた。

 

 だが、顔には出さず尋ねた。

 

 「何かありましたか、ご心配な事でも、お話しください」

 

 「ロベルタは結婚はしたことあるのよね」

 

 はっ、今なんて、結婚、自分が結婚したのは、もう随分と前の屋敷に奉公していたときだ、まさかと思い、尋ねる、もしかして、いや、こんな時が来てもおかしくはないのだ、だが。

 

 「お嬢様、もしかして気になる方でも」

 

 返事はない、だが、大当たり、顔を見れば分かる、ビーンゴッ、ロベルタは自分の心臓に言い聞かせた、落ち着けと。

 

 (どうしたら、旦那様にお知らせ、いや、頼りにならないのは目に見えてる、ここはクレイブに)

 

 まさか、その男を(○せっ)なんてことはいわないだろうけど、でも、そうだ、まず、相手を確認しなければ。

 

 「名前は、どこにお住まいなのでしょうか」

 

 だが、首を振られて撃沈した。

 

 




ギャグのつもりで書きました。
二、三回で終わらせるつもりです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。