貴族令嬢の恋は前途多難、だからメイドも周りも苦労する 作:木桜 春雨
決して大袈裟な集まりではないから、普段通りの恰好で来てくれて構わないんだと息子にいわれて、仕方ない、参加を決めたのはよかった、ところが、いざ足を運んでみれば商人だけでなく、貴族(成金)だけでなく、王族関係もいる、話が違うと思ったが、今更、退席などできない。
「おお、おまえさんも来ていたのか」
「息子に誘われて仕方なくだ」
「そうか、大変だな」
顔見知りの商人仲間がいた、多分、地固めをしているのだろう、相変わらずだ。
「父さん、ここにいたのか、紹介したい人がいるんだ」
いかにも金持ちの女性が息子の隣に立っている。
「彼女はマクギャリティ婦人、実は店を立ち上げようかと思っているんだ、それで資金を出してくれる事になっているんだ」
紹介された女性は明らかに息子より年上だが、一目で分かった(できている)と、相手が高位の貴族なら正妻も文句はいわないだろう。
しかし、本当に自分の息子ではないんだなということを改めて実感した。
正直、居心地が良くないというか、少しでも早く帰りたかった、ところが。
「失礼ですが、ヴァージル様ではありませんか」
突然、呼ばれて思わず振り返ると数日前に出会ったメイドだ、深々と頭を下げる、何故、こんな集まりに来ているのかと思ったが、彼女の表情が初めて会った時と同じ事に気づいた。
「実は私の女主人が庭を散歩していたのですが、具合が、できれば男の方に手を貸して頂けると、ですが、頼みたくても殆ど知り合いもいなくて」
「私でよければ手を貸そう」
「本当ですか、感謝いたします」
庭のベンチに腰掛けている紺色のドレスを着た婦人はベールをかぶっていて顔が見えない。
「奥様、ヴァージル様です、先日、街で難儀していた私を助けてくださった方です」
「まあ、それは、ロベルタは私に長く仕えてくれている大切な、家族同然のメイド、ありがとうございます」
「いえ、それより足は大丈夫ですか」
「奥様、ベールを外して挨拶なさっては」
ゆっくりとベールを取った女性は男の顔を見ると、息をのむように見つめた。
女性が目を見開き、驚いた顔で男を見る、まるで恋愛ドラマのワンシーンのような出会いにロベルタは内心、ガッッポーズをした(ロマンティーックな出会い、第一段階成功)
「おい、誰だ、あの女性、ここらでは見たことがないぞ」
「貴族、商人、着ているものからして金持ちみたいだな」
「メイドの服装もだ、上流階級の出身みたいだな」
「おい、あの男はアンダーソン商会の、知り合いなのか」
「腕なんか組んで、どういう関係だ」
ひそひそ声で話しているつもりだろうが、しっかりと聞こえている、正直、ヴァージルは早くここから逃げ出したいと思っていた、だが、自分の腕に掴
まって軽く引きずるように歩く女性の歩調に合わせなければと思って、なかなかだ。
「お父さん、どうしたんです」
人混みをかき分けて近づいてきたのは息子だ。
(くっ、あんたは呼んでない、あっち行け、邪魔だ)
付き添っていたロベルタは内心、舌打ちしそうになった、こんなところでなかったら瞬殺、忙殺、地獄へ行けと始末したかもしれない。
その時、奥様ーっと、主催者が近寄ってきた。
「よろしければ別室でお休みください、ヴァージル様、お願いできますか」
少し短いです、次回で色々とお嬢様の準備の様子を書こうと思います。