※この作品はR-18です。

雨風奇譚   作:はたた

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【 概要 】
 被告は「ここで食わねば漢が廃ると思った」などと供述しており。


進捗80%:②★

 あの野郎に言われるまでもない。相手が何の抵抗もしないのをいいことに、都合よく拐(かどわ)かした自覚はある。…無論、それを反省するかどうかは別問題だが。

 

 森の中にルチャブルを連れ込んでいる理由に美しいものや綺麗なものは一つたりとてなく、心を逆さまに振ってみれば「ヤりたいから」という実に下衆らしい赤裸々で爛れた発想だけが落っこちてくることだろう。もはや下半身で物を考えてる感がある。

 

 だって。

 ふわふわの羽毛に包まれた小鳥が胸元に身を寄せてくる温もりを想像してみろ。とろんとした目で見つめられてみろ。しかも惚れてる相手だぞ!番だぞ!これで我慢できるわけないだろいい加減にしろ !!!

 可愛いなあ無防備だなあ襲ってくれってことだよね大丈夫理解してる…と、脳内は完全に春爛漫のお花畑になっている。

 

『…げっこうが…?』

 なにもしないのか?――と。ルチャブルは、本当に、なされるがままここにいるだけなのだということが、こんな質問からも分かってしまう。野外の暗がりに拉致された目的も動機も一切を分かっていない様子で、こてんと首をかしげ、舌っ足らずに(おそらくは何の含みもない単なる疑問として)尋ねてくる。つらい(反転語)。赤いほっぺ引っ提げての疑問符いっぱい顔、それ反則だからな。でも可愛いから許す。

 こんな愛くるしい小鳥が今まで貞操守れてたのマジ奇跡じゃない?処女もらえたなんて心の底から光栄だわホントもう一生大事にしよ。

 割と重要な箇所を司っていただろう頭のネジを何本かとばした気がするけど、回収は後回しだ。自分にとっては、あまりに無垢な彼の両手を、迷いなく秒で握りしめる方が優先なので。

『 します 』

 一緒に、はずかしくてやらしーこと、沢山したいです。

 下心満載のバカなことをバカ丁寧にバカな顔で言ってのけ、その小さな体躯をとさりと草地の上に横たえた。

 一方、押し倒されている状況をまるで意に介さずふやふやと笑顔を見せるルチャブルは、ぽやぁっと和んだ雰囲気のままこちらの首元に腕を回して、幸せそうにぎゅうとしがみついてくる。

 …、…こんなこと、されたら。全身で、好きって、言われてるみたいで――瞬間、己の呼吸と鼓動が停止した。

 

 ッあ"ー…満点…可愛いが過ぎる…もうルチャブルしか勝たん…

 

 自分(オタク)は最愛(推し)に命を握られていると、そのことを「言葉」でなく「心」で理解できた感じ。手を出す前から早速語彙力も情緒も破壊され『待って 無理 しんどい』の無限ループに陥りつつも、家出しかける素行不良の正気を何とか引きとめ、最愛を抱き返した。

『ルチャブル』

 呼べば、彼の動きがゆるりと止まる。

 じっと耳をすましている気配があったので、そのまま、そっと囁きかけた。

『拙者と過ごすこの一夜を、ちゃんと覚えておいてほしい』

『…おぼえる…?』

『そう。…共にどんな夜を過ごしたか、そのことを』

『…おぼえてたら、うれしいのか』

『勿論。…すごく、嬉しい』

『…わかった。わすれない。やくそくする』

『約束でござる』と返す傍ら、「おまえが喜ぶなら覚えておく」という彼の中における因果関係が知れたゆえに胸の中できゅんと甘酸っぱい音が鳴り響いた。瞬く間に展開される「愛しい」の無●空処。危うく天に召されかける。こんなにも心揺さぶる相手が大人しく腕の中におさまっている現状――早く相手の内側で命諸共果ててしまいたい思いが募ってかとっくに自分の雄茎は育ちきっているし、何ならルチャブルがあと一言でもこちらの琴線に触れたら最悪暴発しかねないのだが、さすがにそれは己の沽券に関わる…ので、このあたりでナカに招いてもらうとしよう。

 

『う、ぁ、──ッ…!』

 

 舌を伸ばすと、ひくりと彼が身じろぎをする。

『どこ、なめて…っ』

『…御主に苦しい思いをさせたくない。必要なことでござる』

『で、も、…ッん…』

 揺らぐ体がどこにも逃げないよう両腕に力を込めて、舌の先で後孔を撫で、濡らして、唾液を馴染ませほぐしていく。

『や、…ッやだ、あ!』

 いやだと言われてハイそうですかと中断してやれる善性は、己の中にはない。せっかく、とろりと蕩けてきた声だ。これが悲痛な泣き声にでも変わらない限り手を緩めることはない。

 少し拡げて粘膜を直に舐めると、ひゅっと息を呑んで取り縋ってくる。『痛むか』と訊けば、熱を帯びた息遣いで『へいき』と小さく耳元に返ってきて、たったこれだけの遣り取りが胸に刺さって腰にクる。自分がいかに末期であるのかを今更のように思い知るのだった。

 ルチャブルは一羽の立派な雄で、だから、同じ雄を相手に身体を明け渡すことも、ましてや異物を逆流させる行為に及ぶ予定なんて絶対になかったはずで、拙者ゆえに許されたのだという事実が改めて興奮を喚起する。

『…このまま挿れていいか』

 あまり確認の意味をなしていない発言だった。正常位より負担のない体位は他にあるが、正直、体勢を変える暇すら惜しいほど切羽詰まっている。なりふり構わず穿ってしまいたい独りよがりを反省する余裕もない。

 呼気を荒げて問うこちらとは対照的に、ルチャブルはふわりと目を細めた。了承を示す微かな頷きと共に『おまえのかおがみえないと、さびしい』と――ただでさえなけなしの理性で踏ん張っていたところへ核弾頭級の殺し文句を放ってきたので見事に更地になった。暫くはぺんぺん草も生えてこないと思う。更に、これで終わらないのが酔いの入ったルチャブルの恐ろしいところで、向かい合わせを望む理由を容赦なく上乗せしてくる。

『それに、…まだ、…きす、してない』

『…は、…』

 今まで生きてきた中で、間違いなく、いちばん間抜けな音が、声帯を無駄に震わせた。

 まだ。キス、してない。

 一字一句繰り返して、ようやく意味を飲み込んで――目が、眩んだ。何だか耳鳴りすらしてくるほどの強大な激情がのたうち回って、神経を焼く。

 二撃決殺だ。尽●螫殺ですか。

『……御主は…ほんッと、……』

 お望みとあらば、いくらでも。

 かなり色んなところを舐めまわした後なのだが口付けていいのだろうか、と、少なからず気遣おうとしたけれど――結局は自分もしたいことなので、易々と遠慮を捨て去った。当たり前だよなあ?昔も今も変わらず、拙者の辞書にその二文字は載っていないんだし。

 

 

***

 

 

 人間と比べればよほど気楽な立場にいるはずだが、時も場所も選ばずに好いた相手を抱く…という節操のなさを発揮するには至らない。会えなかった分の空白を埋めるようにとにかくずっと一緒にいたいと願っても、それが容易く叶うわけでもない。

 日々何かしらの予定が入っているので、ルチャブルは、翌日に障るような過度な行為を望まなかった。元より、幾度かの性交を通じて、快楽に滅法弱いことを自覚せざるを得なかったためか、未だに恥じらいの方が色濃い。なればこそ自ずと積極的ではなくなり、今のところ彼から誘われたこともない。ただ、「抱きたい」と求めたら(回数や時間を考慮する条件付きで)拒絶されたことなんてなかったし、信頼して身を委ねてくれていることは分かるから、これ以上を欲せば罰当たりというものなのだろう。

 そもそも、容姿も性格も好みどストライクな相手が、自分に組み敷かれ、いいように翻弄され、快感に震えて必死に声を押し殺そうとする健気な姿を見られるだけでも十分満足している。

 満足している、が。

『おく、…あつい、…ぁ、あ…っ』

『…そうか。なら、…いっそ、もっと溶けていけばいい』

 たまには、…こうして。

 酒に酔ってストッパーがない状態の彼と戯れることもまた愉悦の一つ。

 ルチャブルが鳴くたびに、声が振動となって内部に響いてくる。それに伴い、熱気をはらむ壁がうごめいてきゅうと締め付けて、己の一部が相手の体内に侵入していることをまざまざと感じさせた。

 この小鳥は自分のものだと白濁を塗りつければ、腸内で飲み干しきれずに垂れてくる分がぐちゅぐちゅと結合部で泡立って、そのだらしない音が、彼と交尾をしている現実を鮮明な形にしていく。脳内麻薬キめて多幸感がヤバいことになっているのでこちらの感度もだいぶ馬鹿になっており、腰が止まらない。劣情を吐き出した回数さえ、とうに分からなくなっていた。

『…っ、…そ、こ、…だめ、…ッ』

『…ダメか?好きだろう?』

『ひ、ぅ…、――…っ…♡』

 あー、…いかん。語尾のハートが目に見えるようだ。さっきからルチャブルに対して「可愛い」しか言ってない気がする。ていうか冒頭以降もう何回この形容詞を口にしてきたかしれない(たぶん、この後も百万回は言うと思う)。仕方ない。どうしようもない。蜂蜜やらジャムやらに匹敵する糖度の嬌声を聞くと、己の雄がすぐに硬さを取り戻してしまう。このさえずりを聞き続けるためには自分が頑張らねばならないのだと愚息なりに分かっているらしく、こういうときにだけやたらと仕事熱心なのだからどこまでも欲に忠直というか。このままだと抜かずに何発いけるのか記録更新しかねない。

 与える刺激全てに対して、相手が恍惚とした反応を返してくるから、自分がたいそうな床上手であるかのように勘違いを起こすほどだが…変な自信をつけさせないでくれルチャブル。「もっと」が加速してしまう。どうせ性悪のすることだ、…艶やかに喘いでほしいと、際限のない欲が膨らんで制御できなくなるのがオチに決まってる。現に、これほど心も体も開いてくれているのなら、今夜はもう少し深い所まで押し開いて貫けるんじゃないかとか、さっきから、そんなことばかりを考えている。

 ルチャブルがふるりと身体を震わせた拍子に各所の羽が波打って、鮮烈な色彩が一斉に揺らぐ。輝く蝶の翅色さながらで、その華麗な姿態に見蕩れて生唾を呑んだ。美しさに惹かれて上体を寄せると、つれないことに、彼からは弱々しく腕を立てられる。

『げっこ、が、…も、…ゃだ…ッ、こわ、ぃ、…』

『…どうした、ルチャブル』

 こんなにぐずぐずになっておきながら、今更、嫌悪も戦慄もないはず……なるほど、何度もイくのが怖いのか、と合点がいった刹那、悪寒にも似た興奮がぶわりと全身を駆け巡っていった。

 これが本音なのだろうか。いつも。素面(しらふ)のときも。口に出して言うことはないにせよ、普段から度重なる快感に恐怖していたのだとしたら――それは、なんて、…甘美な。

 もがこうとする小鳥の儚げな姿がたまらなくて、助けてやろうと憐れむよりも先に、己の経験全てを使って溺れるような快楽の中に沈めてしまいたいという思いに駆られた。

『怖いなら、拙者のことだけを考えろ。すがりついて、…歯形でも爪痕でも何でも残してくれていい』

 怖いと言うのだから止めてやればいいものを、平然と続行するからこその悪タイプだ。可哀想だと思うより、それでもなお強制的に絶頂させたらどんな顔を見せてくれるのか知りたいと思うからこその悪タイプだ。

 今もそう――閉ざされた瞼の隙間から滲み、生理的な反応として否応なくはらはらと流れる雫を、ただ、美味しそうだと感じてしまう。勿体なくて口をつけると、その感触に呼応してかルチャブルが緩々と目を開けてこちらを見た。

 瞳の中では悦と熱と涙がどろどろに混ざり合っていて、うっとりするほど淫靡な眺めだ。眼球そのものが液体で出来ているみたいで、嗚呼、…自分がその甘露を全て啜ってたいらげてしまえたらいいのに。

『ほら、…気張れ。拙者の打ち止めは未だ先だぞ』

『いや、って、…いって、る、のに、…ン……あ、っぁ…!』

『…ん?…そうでござるな…、むしろ…御主が嫌だと言うから、つい』

 前立腺をざらりとこすりあげれば色香にまみれた悲鳴が上がり、発声した程度ではいなせもしなかった快感で彼がぞくぞくと痙攣するのがこちらにも伝わってくる。『そんなに気持ちがいいのか』と意地悪く問えば、嬌態をさらして息も絶え絶えながら、しかし、こくりと首肯された。

 

『ずっと、おまえで、…いっぱい、だから』

 

 ……、……なぜ。

 そんなことを言う。真に受けるぞ。

 

 まさか煽った分をきっちりカウンターで反撃されるとは予想だにしない。…元より、惚れたが負けか。端から敵うはずもない。

 

 狂おしいほどに心を占める我が最愛は、やはり天下無双の一羽だ。

 

『明日、御主の足腰が使いものにならなくなっていたらすまん。先に謝る』

 よーしこうなったら夜通しブチ犯すぞー次の日の予定なんざ知らねー、と開き直っている以上、全ッ然すまないとは思っていないし、謝るもクソもないわけだが、せめて言葉だけでもと事前に一言詫びておく。

 

 ろくでなしに見初められたのが運の尽きだったな。

 少しだけルチャブルに同情したが、それもすぐに、興奮で高鳴る拍動の中にかき消えていった。

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 マジで一晩中部屋に戻ってこなかったな…と、辟易しながら何気なくホテルの窓を開けた、ら。

 目の覚めるような色鮮やかな鳥が、慌ただしく舞い込んでくる。

「ルチャさん!」

 いつになく葉っぱやら小枝やらを大量にくっつけているが、気にも留めていない様子だ。そんなものを纏わせるほど身体がベタベタになっている理由は絶対に聞きたくないし尋ねることもしないのだが、一体どうしたんだろうと目で追いかけているうちに、彼はこちらに一瞥さえもくれぬままで自らボールの中に入ってしまう。

 へー、…めっずらし。

(僕が全然使ってなかったので)ほとんどあってないようなものだったのに。

 鳥が来たならあとはお察しだよなあと思いつつ再び窓の方へ視線を向けると、想定通りに、血相を変えた蛙が跳躍してくる。

『ルチャブル!』

「…一応、教えといてあげますけど。彼、モンボに避難しちゃいましたよ」

『 !!! 』

 絶句。

 せわしなく部屋を見渡していたコウガくんが、ピタッと動きを止める。次いで、ざっと血の気を失う音が聞こえてくるほど一気に顔面蒼白になった。

 そりゃァもう、ざッまぁぁアwwwってな感じで、腹の中では絶賛爆笑中の僕である。

 いやー…朝から面白いもん見れました。グラスフィールドばりに大草原だわ。

 そうだな…たとえるなら、溺愛する嫁からの「実家に帰らせていただきます」メモを発見して絶望してる夫の顔…かな?だから言ったでしょうが。酔ってるときにシない方がいいですよって。ルチャさんの性格考えれば分かりそうなもんですけどねえ…おまえそれでもパートナーなんかクソ蛙。

 焦りを露わに見境なくひと暴れしそうな気配を醸したコウガくんを見かね、「君もちょっと頭を冷やしなさい」とボールに押し込みロックをかける。当然、ボールはがったがたと振動し、挙句の果てにはホテルドレッサーから転げ落ちたので、カーペット上で未だに動き回るそいつをてしっと姫が前足で押さえてくれた。ナイスアシスト。

「ルチャさん、聞こえてます?」

 ボールの中でうずくまっている姿に向かって、声をかける。

「今から浴槽にお湯を張りますね。…ひとまず、体を洗ってはいかがです?何か手伝いましょうか?」

 全力で首を横に振られた。だーよねー。手伝う申し出は建前の提案なの。本音を言うと僕も遠慮したかった、断ってくれてありがとう。生々しい事後の痕跡なんぞ見たくないしさ。

 

 その日はずっとルチャさんがコウガくんを避けまくっていたので、僕はトレーナーとして適切に介入しなければと奮起し、一周まわって炎上するまである…ってくらいに張りきった。しょんぼりモードの蛙を見るたびニヤニヤとした嘲笑いに勤しんで奴の苛立ちを煽ってはからかうことに全力を注いでいたわけだが……、うーん、……見たとこ、ルチャさん、怒ってるわけじゃなさそうなんだよなあ。じゃあ何があったのって、…それは知りたくないので勝手にふたりで解決してくれたらそれでいいや、って感じなんだけどね。

 

 所詮、こいつらのことだ。数日経つ頃には、背景にふわふわトーンが貼られた感じの仲直りをする流れなんでしょ?ホント、犬も食わぬ、って言葉の通りだよなあ。爆発しろ。

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