結成したなら、いずれ解散するときがくる。でしょう?
ノートパソコンから一旦離れて、ぐったりと、椅子の背もたれに全体重をあずけた。
首を動かすと、強張った筋肉や関節がごきりときしむ。とても生き物の体内から聞こえてくるような音とは思えない。ロボットにでもなったみたいだ。
手持ちトリオが寝静まった後も、僕だけは、未だこうして宵っ張りを続けていた。いくら身体が悲鳴をあげようと、こればかりは仕方ない。リーグ制覇に向けて準備することは膨大をきわめる。そのくせ、差し迫るばかりで時間がいくらあっても足りないから、おちおち眠ってもいられないのだった。
当然、バッジを八個取得したのは僕だけではないので、つまり、競合相手は大勢いる。まずはチャンピオンロードでふるいにかけられ、次には険しい道のりを突破してきた者たちのみを対象とするトーナメントバトルの開催…そこを一位通過しないことには、四天王戦にもチャンピオン戦にも挑戦権が与えられない。
公式ホームページに掲載されていた今年の全バッジ取得者数は五〇強。例年並みだ。
チャンピオンロード内を移動する際の規則や制限、禁止事項が幾つかあり(抵触したとみなされた時点で失格である)、登頂を厳しいものにしているとはいえ、ここでトレーナー数が大幅に削れることはないはず。その後のトーナメントを勝ち上がるためには六、七戦くらいは想定しておいた方がいいだろう。自分の試合は一日一回。言うまでもなく、機械同士がぶつかり合うわけじゃない、血の通う生き物が戦場に出るため、負傷もすれば疲弊もするし、実力のある対戦者とあたるなら尚のこと激しいバトルになる。一日のうちで連戦するには無理があるので、そのあたりは配慮のなされた日程になっていた。
要するに、勝ち続けたらほぼ一週間は毎日バトルをすることになって、めでたく優勝できたなら、次週からは四天王戦が始まっていく。まあ、そのくらいハードなものを乗り越えないと「チャンピオン」なんて軽々しく口にも出せないわけだが。
バトル漬けとなる日々、この間、可能な限り被弾を抑え無駄なく攻撃を仕掛けていくためにはどんな立ち回りが必要か。彼らに託す道具をどう選別するか。技構成も組み直して、事前に公開されている各種フィールドの特性を生かした戦術を練って……。
――こんなにも。
自分が持てる時間も金銭も労力も知識も総動員するのは、ひとえに「君」を想えばこそ。
「でも、…達成したら、…彼らのことはどうしましょうかね…」
旅の目的も自分の過去も明かさないトレーナーに、特に不平を言うでもなくついてきてくれている手持ち諸君。言うなれば、僕の願いを叶えるための「駒」…そんなふうに解釈されたって文句は言えないし、残念ながら、その指摘はおおよそ正しい。それでも、一聞すれば正気を疑う無謀なこの歩みが破綻もせずに成立している。無論、彼らの寛大に支えられているおかげだ。
彼らにも彼らなりの理屈や思惑があるだろう。損得勘定もあろう。だが、何も聞かずに寄り添い、力を貸してくれる彼らがいないことには、僕の満願成就は叶わないのだ。ここまで来たからには、共に頂を目指したい。
全てに勝つ心算でいる。
そのために万全を期す。
前だけひたと見据えて、チャンピオンの座を獲りにいくのだ…けれど。そこが、ある意味で一つのゴールになっている。「その後」のことにまで彼らを巻き込む予定ではないし……等々、脳みそは脱線してグダグダ考え出すのだけれど、――それはまた、別のお話なのであります。
「…ふつーに、…お別れってことになるのかな」
エンディングの形を思い描きながら口にした眠気覚ましのコーヒーは、よぎった感傷の所為もあってか随分と苦みが強かった。