染められて 望みのままに/GARNiDELiA『桃源恋歌』
月灯りのみを用いて撮影するという稀代の写真家───以前、カロスで彼の作品を目にする機会があった。仕方なしにあのクソ野郎と同伴し、生徒を引率し、大して興味もない美術館へ赴いたときのことだ。
夜とは黒衣をまとうものとばかり思っていたが、展示された写真には一切の墨色が見当たらず、代わりに、いずれも深い藍色に満たされており、それらは何だか、職人の丁寧な手仕事による上等な染物みたいだった。眺めているだけで周囲から音が退き、自身が研ぎ澄まされていくような感覚になったことを覚えている。
…そんなかつてを思い起こさせる、藍染めの夜。
月影のもとで世界が青みがかっている。その中に於いて一際、光を帯びる一郭があった。
冴え冴えと浮かび上がるのは、白無垢に身を包む乙女がごとき月下美人。
アローラの森には、植物を活性化させる能力を持ったポケモンが多く住み着いていると聞く。彼らの恩恵にあやかっているのだろう月下美人は、成程、通常のものよりも大きく立派な花を咲かせていた。
一般には儚さの象徴にされやすい花だというのに、この場に生えるものたちは皆一様に力強く、また、凛々しさを兼ね備えている。
ゲッコウガがゴースト勢へ聞き込みを行っていた当時、偶然にも発見した群生地だった。その幻想的な美しさたるや、乾いた心の持ち主であるゲッコウガすらも暫し立ち止まってしまったほど───この自然の芸術をルチャブルとふたりで鑑賞したいと夢想したことが、今夜、現実にできて嬉しい。
『真夜中なのに…』
目の前で咲く花が織り成す素晴らしさは、どうやらルチャブルの想像を遥かに超えていたようで、彼は先ほどからしきりと感心している。
湿り気を含む暖かな夜風が通り抜けたことで、花の芳香がいっそう膨らみ、ふわりとふたりを包んだ。
『夜間に開花して、明け方に萎む花でござる。だから、御主のもとへと摘んでいくことができなかった』
『それで、…ここに連れてきてくれたのか』
『御主の快気祝いにと思って』
喜んでくれただろうかと横顔を見た折、ゲッコウガは息をのむ。月下美人の花を見つめるルチャブルの目から、はらはらと雫が零れ落ちている最中だった。
涙に濡れて潤い、月光を反射させる瞳の
嗚呼、我が最愛は泣く様までも美しい。
身を屈め、静かに流涕するルチャブルの目元を拭うために指先を伸ばした。
何と声をかけたものか。涙の理由を問うのは無粋だろうか。安易に慰めることも躊躇われて忙しなく考えを巡らせていると、ルチャブルはゲッコウガへと向き直り、そのまま胸元へと身を寄せてきた。
『ずっと、怖かった』
ルチャブルの両腕が背に回され、縋るように抱きついてくる。
『霊界も、ジュナイパーも、天秤も。全部、怖かった』
でも、おまえがいたから。
心の中におまえがいたから頑張れた、と、震える声で囁かれた内容に、ゲッコウガの心臓はきゅうと縮んだ。その収縮に、痛みを覚える。
こうして痛みを伴う、切なさと愛しさが混ざったこの感情を、何と呼べばいいのだろう。
ルチャブルには霊界に連れ去られた「二回目」までの記憶しか残っておらず、保護施設で世話になったことも、三度目の霊界も、そこで繰り広げられたはずのジュナイパーとの遣り取りも、何も覚えていなかった。だから実質、記憶が奪われることに恐怖しながら意識を手放して以降、次に目覚めたときには全てが解決したことになっていて、その極端な落差に気持ちの整理が追いついていないのも無理はなかった。
それが今、涙と共に氷解し、本音を吐き出してつかえがとれたのなら、逢瀬の甲斐もあったというものだろう。
もう何にも怯えなくて済むことが、おまえとこういう時間を持てたことが嬉しいと、そう言って泣く小鳥をゲッコウガは抱き返す。挙げ句、『おまえと番になれてよかった』などと、儚げな美声でさえずって胸を衝くものだから、腕に込める力がいや増していく。
こんなに好きになった相手も、自分のことをこんなに好きになってくれた相手も、ルチャブルだけだ。
内なる恐怖を認め、それでも己を叱咤し、鼓舞し、挫けず立ち向かうルチャブルの真っ直ぐな芯の強さを尊敬している。しかし一方、彼にとって、『怖かった』と怯えを口にするのは気が進まなかったはず。それなのに、脆い部分を自分にだけはさらしてくれる。繊細な部分に触れることを自分にだけは許してくれる。その特別感はゲッコウガにとって抗いがたく甘美なもので、つい、酔いしれてしまう。
『拙者が少しでも御主の支えとなれたのなら、これほど誇らしいこともない』
今回の件では情けなさが目立ち、大して役に立てなかった。しかし、後悔に囚われ自嘲してばかりもいられない。ルチャブルはこんな己をも信じてくれたのだから。その信頼に応えられる存在であり続けるためにも、前を向かねば漢が廃る。
これからだって、何度でも、ルチャブルが見せる弱さごと愛していこう───決意を新たにした折、顔に柔らかな羽毛の感触を捉えた。
それが頬擦りだと気付いた瞬間、ルチャブルが素直に甘えてきた事実に一驚を喫し、自身の瞳孔が最大限に開いたことを自覚する。
愛らしい仕草に拍動の勢いが増したわけだが、直後、まさか追い討ちをかけられようとは思わなかった。
曰く『抱いてくれ』───
思考回路を直に爆撃され、手加減なく心を揺さぶられ、息が止まった。唐突な呼吸困難の傍らで、極めて短い一言に詰め込まれた色気がゲッコウガの中へと浸透し、瞬く間に膨れ上がっていく。
胸の内で湧き、胸の内で沸く多幸感は、もはや致死量。
行為に及ぶ前から早くも瀕死にさしかかっているゲッコウガなのだが、対するルチャブルは気付かぬ様子で、引き続き思いを吐露した。
おまえが認めてくれるなら、黒い羽も受け入れようと思っていた。だが、元の姿を取り戻せた今となっては話は別だ…と、言う。一度は失ったものだからこそ痛感したことがある、と。
『やっぱり、好きな相手には、一番綺麗だと思っている自分を見てほしい』
壊滅だ。
陥落だ。
頬を赤く染めてうかがってくる悩ましげなルチャブルを前にしては、理性など薄っぺらい紙きれ同然だった。それを呆気なく破り捨て、ぞろりと這い出てくるのは獣の本性───…今夜くらいは、自重しようと、思っていたのに。
穏やかなひとときを過ごせたら、それで構わないと考えていた。…隙あらばルチャブルのことを快楽責めにしてどろどろに犯したいと煩悩を巣くわせていることは否定しないが、一方、傷つけたくないという思いだって紛れもなく本物だ。ルチャブルのことを無理矢理暴くようなことだけはすまいという、一握りの良心は、ちゃんと持っている。…持って、いた。
が、しかし。
たった今、駄目押しの一撃をくらってしまったわけで。
こうなってくると、おしまいである。
だってさあ、心底惚れてる相手からこんなこと言われたらさあ、野郎なら勃起不可避じゃん?
残念ながら「今夜くらいは、自重しようと、思っていたのに」とか何とか言ってたはずのゲッコウガは現刻を以て開き直り、早々に堕落する。自制心などというお上品なものは、立ち所に消え失せてしまった。
さてさて…、どうしてくれよう。
純度の高い快感だけをじっくりじっくりと内側に塗りこんで、脳みそをぐずぐずに溶かして、思考力を奪って、悦びに溺れ喘ぐ一羽に仕立ててみようか。他ならぬ当のルチャブルから言質をとったのだから、尚のこと怖いものなしだった。この機に乗じて、今までは遠慮していたあれもこれもルチャブルに施したとして、いったい、どんな姿を拝めるだろう。それは絶対にこちらの子種を搾り取って枯渇させるだけの威力を持ったあられもない痴態であるのはまず間違いないし…あー、……想像するだけでそそられて垂涎……、……、…ゲッコウガは、既のところでいかんいかんと首を振る。泣く泣く、
抱くのは決定だ。即決だ。しかし自分本意には組み敷かない。今夜は、ただ、徹頭徹尾、全身全霊で、ルチャブルを甘やかすことだけに集中するとしよう。
++++++++++
カロスで旅をしていたとき、例の手帳に書いてあるからとトレーナーに連れられ、遊園地に立ち寄ったことがある。
そこでは、自分を取り巻くあらゆるものがカラフルで、華やかだった。園内を流れる音楽も、はしゃいで駆ける子どもの笑顔も、遊具に施された塗装も。夢みたいな非日常の空間は、居るだけで十分に楽しかったけれど、感覚の鋭いルチャブルには五感を情報の洪水で塞がれるようで、…少しばかり疲れてしまって。甘いものでも食べて休憩しようと提案したトレーナーは、ルチャブルに、ふわふわとした不思議な甘味を買ってくれたのだった。
チルットが身につける白雲みたいなお菓子。それを、今、思い出す。
『…は、ッ、……ン……』
額から、瞼の上、頬、鼻の先、そして口に。順を辿って寄越される口付けは、まるでわたあめのよう。ふわりと、しゅわりと、とけてしまいそうな触れ方だったのに、それでも確かに、ゲッコウガから口付けられたところには、温みや甘さが余韻として残っている。
いまや口の中はゲッコウガの舌でいっぱいになっているのだけれど、息苦しくはない。舌と舌が触れ合い接触しているところから湿った熱を分け合うのが心地よくて、つい、ひざに乗り上げるようなかたちになってまで、せがんでしまう。
からかうこともせず、ゲッコウガは、こちらがねだれば全てに応じてくれた。キスだけで一夜を明かしたっていいと思えるほどに、何度も何度も交わし合うこの時間が幸せだった。
互いに成熟した雄だ。しかし大抵の場合、先に欲情するのはゲッコウガで、ルチャブルを問答無用で巻き込んでくるから、そんな彼のなされるがままに行為に臨んでいた。
こちらは炙られる側だ。火力を調整できない。とろ火で煮詰められるのか、強火で焼かれるのか、全てはゲッコウガの裁量次第。元より己の方が性的なことにやや疎く、いつでも消極的であったことは否めない。ゲッコウガに身を委ねていれば間違いないからと、受け身でいる楽をさせてもらってばかりだった。
でも、今夜は、自分からちゃんと言えた。するりと言葉が滑り落ちた。無性に
誰しもが見惚れる、この端麗な蛙を独り占めできる特権を、たまには使ってみたくなったのだ。
早くその気になってくれと焚きつけて煽り、こちらの性欲を否応なく引きずり出すような、いつもの官能的な口付け。それはそれで好きだった。けれど、今夜のように温かくて穏やかなやり方なら、自分もついていける。のめりこんでいく。
…どうしよう。
キスをするたびに、ゲッコウガが好きだという気持ちが後から後からとめどなく溢れてしまって、心臓がうるさくなる。
『ッん、…ぁ…』
夢中、だったから、ひやりとしたゲッコウガの手のひらに握りこまれて初めて、己のものが屹立していることに気がついた。
何か言い訳をする暇も与えられず、既に愛撫が始まっている。徐々にゲッコウガの冷えた手が熱っぽくなっていくのは、他ならぬ自分の体温が移った所為なのだということがまざまざと感じられて、羞恥がつのった。
『…ぅ、ァあ、…!』
的確にしごかれて、雄根の固さが急激に増していく。積み上げられる刺激はいとも容易くこちらの許容量をこえていき、この身がわなないてしまう。
『───ッ…』
刹那の、力み。
せりあがってくるものを素直に出すだけで快感が得られると、身体はとうに学習している。そのうえ耳元で『御主のイくところが見たい』と掠れた声で吹き込まれては、尚更、吐精を我慢できるはずもなかった。
『ひ、…ッァ!』
息つく間もない。
びくりと反射的に仰け反ってしまったのは、絶頂の波が引かぬうちから舌先で後孔の縁をなぞられた為。塗布された唾液、のみならず、排出されたばかりで未だ熱を持つルチャブルの粘液を指先に絡め、ゲッコウガは、くちくちと水音を伴いながら浅い抜き差しを繰り返してくる。
『や、…やめ、ッ、ダメだ、いま、イ、っ…ぅぁ、あ!』
『だが、弛緩しているうちに解した方が負担もなかろう?』
あくまで優しい声音で諭されるから、これ以上の反論もままならない。
この行為を通じて寄越される刺激には、何度抱かれようとも全く慣れない。他者由来の刺激は、その強弱も、触れ方も、正しく予測することはできないから、常に新鮮であり続け、翻弄されるしかなかった。
ゲッコウガの指使いは丁寧だ。手間を惜しまず、欠片さえ痛まぬようにという配慮はありがたい。だけど、ゆっくり進められると、その分だけ意識が局所的に集中する。
意識するから、敏感になる。
勝手に感度が上がっていく。
ゲッコウガの胸元に顔をうずめている自分からは後ろの様なんて確認しようもないのだけれど、紳士的な振る舞いを以て卑猥なことが行われている実感に、それを願ったのは他でもない自分なのだという事実に、脳が熔けゆくほどの興奮が芽生えて、全身を支配していく。
ゲッコウガの体臭と、己が放った白濁の精臭と、いっそ場違いなほどに清らかな月下美人の香りとが濃厚に混ざり合って、目が回る。
『…げっこぉ、が、…はやく、…ぃ、挿れ…』
切羽詰まった挙げ句の果てに、ひどく大胆でとんでもないことを口走った気がしたけれど、もう、深く考えるだけの余裕はどこにもない。
だって、入り口が、物欲しげにひくついている。
そこが柔らかくなればなるほど、拡がれば拡がるほど、まだ弄られていない箇所が疼いた。押し潰してほしいところも、擦ってほしいところも、突いてほしいところも、もっと、もっと、深い場所にある。待ち遠しく焦がれる奥がぬかるんで、熟れていくのが分かる。
自慰行為ではもう満足できない体に成り果てている事実が、ある意味、恐ろしかった。
だからといって、先程の要求は、…あまりに端ない。
明け透けに媚びたこちらを、彼は幻滅するだろうか。
興醒めだと中断されるかもしれない。おそるおそるゲッコウガの様子を確認すると、途端に、直前までの心配が不要だったことを知った。それどころか、ひゅうと息を呑んでしまった。
ゲッコウガは、笑み崩れている。
弧を描く口が、やけに不穏に見えるのは何故なのだろう。
視線で犯される、という錯覚。爛々とした眼からは絶えず煮えたぎるような熱視線が送られてくるので、このままでは自分の皮膚が爛れてしまうのではないかと危ぶむルチャブルである。
『よもや、…御主から蕩け顔で催促される日がこようとはなあ…』
後ろから指を引き抜かれ、代わりに、怒張して脈打つものがわざとらしく押し当てられた。ルチャブルのナカに入りたくてこんなふうになっているのだということを認めざるを得ず、いやでも、これから先のことを想像してしまう。
凶悪なくらいに
『それほどまでに心を焦がしてくれるのなら光栄だ。
拙者のものを、ルチャブルの「此処」で可愛がってくれ』
挿れられる際の、刹那の緊張や羞恥が自動で法悦に置きかわる。じゅわりと熱が全身に広がって、甘やかな痺れに思考が鈍くなる。
『あ、…あっ、ぁ…ッん、…』
易々と受け入れる。何度も入ってきたことがあるから大丈夫だと、何の警戒もしない無防備な心身。招いた後は、ゲッコウガのものを離さぬようにうごめく媚肉で包み込み、もてなすよう仕込まれている。
凹凸が隙間なく噛み合って生じる、この圧迫感すら、恋しい。
併せて首筋をねっとりと舐められ、たまらず、上擦った鳴き声がこぼれ落ちた。
『ほら、お待ちかねのものだぞルチャブル』
お気に召していただけただろうか、と、問われ、思わずこくりと首肯してしまう。
『……、…本当に、御主は愛い奴でござるな…』
ゆさり、と、揺すられ。
とちゅ、と、つつかれ。
す、ごい。はらの、なかが、…みっちり、かきまわされて、…こんな、の、…ッ。
『げ、こが、…っあ、ぁ"、…』
嬌声が止まないルチャブルを眺め、ゲッコウガは、やけに嬉しそうに目を細めている。
『…これほど彩りにあふれた華麗な馳走を提供されるとは、贅沢に過ぎる…が、…』
一欠片とて残さずたいらげるから心づもりをしておけよ、とは、なんと甘い囁きなのだろう。
『ふたりで、いっぱい、気持ちよくなろうな』
全ての要素を強調するように、ゲッコウガはゆっくりと区切って言い含めてくる。
月下美人の花が眠るまで付き合ってほしいと、…それは、長丁場の示唆。この「気持ちいいこと」に延々と興じるなんて、きっとどこかで自分ははち切れてしまう、けれど、…元はと言えば自分から切り出したのだ。喜んでと答えるのが筋だろう。
それに、性感帯を撫でられながら、背筋が震えるような妖艶な声音で誘われては、…拒むことなど───…
++++++++++
…───もはや声にならなず、息を詰めるルチャブル。時を同じくして、肉壁が蠱惑的にうねった。
『果てる間隔が短くなってきてるな』
ゲッコウガの杭で穿たれており、尚且、ルチャブル自身の自重でどうしようもなく沈み込むため、奥への刺激は避けられない。逃げ出すこともできず、腹の裏側に溜まる熱にさらされ続けるしかないのだった。結果、こんなにも美味しそうに、ルチャブルは色付いている。
たまにはこういう抱き方もいい。ゲッコウガは気をよくし、悦に浸る。通常であれば、敏感なルチャブルの体質を知った上で、強めの刺激を寄越す。ルチャブルが絶え間なく押し寄せてくる快楽を捌ききれずに埋もれてしまい、甘く甘く叫んで、怯えたような目でゲッコウガを見てくる、あの瞬間に興奮していた。
しかし今宵、最愛は、ゲッコウガの「甘やかし」が功を奏して幾ばくかの余力を残せているようだ。交尾の悦楽を味わうという、余力が。
激しく突かなくても、ルチャブルは健気に快楽を吸い上げて、幾度となく絶頂を咲かせていた。
こちらにしなだれかかりながら、つと、ルチャブルが見上げてくる。潤う彼の目はいつも以上にとろりとしていて、前後不覚になることへの恐れは感じられない。いかにも「好いた相手と情を交わしている」といった風情の色香に、くらりと酩酊した。
『 ゲッコウガ 』
息を荒げたままで呼ぶわりに、その声は優しい。まるで『愛している』と言われているような温かさが滲んでいて、そのことが殊更に愛おしくて、ゲッコウガはルチャブルの小さな口を己が舌で割り開く。すすりあげた相手の唾液に微かな甘みを感じ、それが興奮に拍車をかけ、愚息が更に膨張した。ナカで直に感知しているルチャブルは、当然のようにその変化を拾い、艶やかに背をしならせている。
質量が増えたモノでそのまま抽送しルチャブルを揺さぶれば、彼の粘膜は益々濡れそぼり、密着して、絡みつきを強めた。その扱きは鮮烈な快感の波としてゲッコウガに伝わり、遠慮なく精液をぶちまけるトリガーとなる。射精なんて、即だ。
は、と息をついた刹那が互いに重なる。
出したところで未だ衰える気配のない疲れ知らずの己にある意味で呆れつつも、まあルチャブル自身がオレの媚薬みたいなもんだからしゃーねぇなと自己完結をして、動きを再開させていく。
すると、ルチャブルが不意に呟いた。
───もったいない。
…たぶん、聞き違いではなかったはず。それにしても、もったいない、とは?
ゲッコウガは真意を探ろうとしてルチャブルを見遣ったが、当の小鳥は吐精を受けとめた余韻で瞳を揺らめせ、ぼうとしている。おそらくは今、自分の言葉に無自覚な状態なのだろうが、こういうときに限って爆弾が投下されることが多いというのは経験則で、今回も例に漏れなかった。
『動い、たら、…おまえ、の、が、…こぼれる…』
……、……はい?
こぼれ、…え、何だそれ。は?
ふたりしてどうにか意味を理解する頃には、ルチャブルは我にかえって自分自身に絶句し、対するゲッコウガはいよいよ限界オタクとしての情緒がおしまいになってクソザコナメクジと化していた。
『これは、…また…随分な殺し文句でござるな…』
今では羞恥に羞恥を上塗りしてはくはくと口を開閉するだけのルチャブルを見て、答えあわせをするまでもないことを悟る。
拙者の子種にまみれていたいのか、と。
自分に都合よく解釈しすぎたかもれないと懸念したが、どうやら杞憂だったらしい。
一物を引き抜き、とさりと仰向けに寝かせた。…そんなに寂しそうにしなくてもいい、安心しろ。一旦だ。またうずめて、栓をして、しかと腹を膨らませてやろうな。ゲッコウガは嬉々としてのしかかり、そして、ルチャブルを正面から見据えながら言い聞かせる。
『もったいない、か。そうかそうか。心得たでござる』
拙者は出し惜しみなどしない。存分に堪能して飲みほしてくれ。
ルチャブルの薄い腹を撫で、ルチャブルのためだけに紡ぐ調子で頼めば、彼の羽毛がぶわりと膨らんだ。素直な反応だな、被虐の悦びを露わにするなんて。骨抜きになるほどいやらしくて綺麗だ。
こぼさないことが肝要。と、なると次の体位は
さあ、踊り明かそう。
月夜の青、月下美人の白。ふたりを囲う
あつらえたような舞台じゃないか。
他をしめだす、ふたりきりの空間。
己は忍。字のごとく、背景にとけ込んで身を忍ばせる。この紺青の体表は容易に夜に紛れることだろう。
しかし、ルチャブルは明らかに異質だ。
橙、緑、赤、白、黄色と、いかにも生命力を感じさせ、月の輝く小夜にありながら、まるで太陽の化身が降臨したかのよう。
誰にでも光を投げかけるからこそ、誰からも好かれるこの小さな
───たまらないな。
何にも代え難い幸福を胸に抱きしめ、ゲッコウガは、獰猛に舌なめずりをした。