※この作品はR-18です。

雨風奇譚   作:はたた

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第七章/和:架空
春のかたみ:①


 時の経過にあわせて何度もお色直しをする空は、現在、その身に朱色を纏っている。夕暮れが迫ってきたことを知らせる色だが、その色合いがどこか柔らく感じられるのは、春が到来した証だろう。これが冬場ならとうに日没を迎えている頃だが、こうして日が長くなってきたため、鍛錬に割ける時間も増えた。酷使した身体を労わるようにうんと伸びをして、手足についた砂を払ったあと、キノガッサは隣のルチャブルを見遣る。格闘タイプを複合する者同士、彼女は一緒になって修業に励む仲間だ。森に棲む格闘タイプのポケモンたちが好んで集う岩場があり、そこにいけば誰かしら稽古相手になってくれるのだが、中でもキノガッサはルチャブルとよく行動を共にしていた。ひたむきに格闘技と向き合うルチャブルの姿や集中力は、キノガッサにとって見習うべきものであったし、ルチャブルの傍にいるときが最も修業に打ち込めると感じていた。色彩に富んだ羽を持ち、いかにも煌びやかな見た目をしている鳥なのに、ルチャブル自身は控えめな性格で気配りの上手なポケモンだったから、一緒にいて心地よかったというのもある。

 今し方本日の鍛錬を終えたばかりなのでルチャブルは汗ばんでおり、その汗と混ざった土埃が彼女の羽毛に茶色くこびりついていた。だが、淡い夕陽を受けるルチャブルは美しい。たとえ土汚れが目立とうと、佇まいには品があり、研鑽を摘んだ格闘家としての凛々しさがある。

 

『明日はモモンの宴だね!』

 

 お互いにいい相手を見つけようねと意気込むキノガッサに、ルチャブルは静かに微笑みを返してくれた。笑うと雰囲気が一転し、ルチャブルを可憐に見せる。あたしが雄だったら、ルチャブルと番うのにな。一番近くでこの子を見てきたから、しなやかで強い肉体の持ち主だと知っているし、元気なヒナを産むことだろう。あるいは逆にルチャブルが雄だったら、さぞや雄(おとこ)ぶりのいいポケモンだったに違いない。あたし、絶対好きになってた。キノガッサは、そんなことを思う。この場で番うだ何だという発想が殊更に意識されるのは、明日に控えた特別な催しの所為だろう。

 ――モモンの宴。安産や多産の象徴であるモモンの実から名付けられたこの宴は年に一度の繁殖期に合わせて開かれ、その内容を端的に表すならば「お見合い」である。女帝キュウコンが治めるこの「麗(うらら)の森」において、ポケモンたちが最も活気づくひとときとなる。聞いたところによると、キュウコンが春の吉日をいくつか選び、空模様を見ながら最終的な開催日を決めているらしい。その後、開催の三日前に、彼女の腹心の部下であるバクオングが自慢の音色を響かせて森全体に知らせるのが恒例となっていた。

 キュウコンは、同性ということもあるのか雌に優しく、森の将来を担う子どもらも慈しんでくれる。その気質ゆえ、キュウコンは雌や幼子が惨い目に遭うことを嫌悪していた。たとえば、交尾を拒否した雌を殺す。幼い雌をかどわかして成熟するまで幽閉し我が物とする。子連れでは求愛に応じてくれないので先に子を始末し、残された母親に交尾を迫る。…野生界でなら珍しくない雄の行動を忌み嫌い、それらを戦略として位置付けることをよしとしない。キュウコンの怒りを買ったポケモンは、見せしめとして、業火によって消し炭になるまで焼き尽くされる憂き目に遭う。よって、少なくとも麗の森で雌に手荒なことをする雄はいなかった。そうしたキュウコンの庇護を求めて麗の森には多くの雌が居ついており、だからこそ、モモンの宴には他所の森からも雄が駆けつけ、嫁探しに血眼になるのだった。大盛況を通り越して、雌を奪い合う大乱闘が発生するのも、まあ、例年のことである。そして、争う雄たちを雌たちがじっと観察するのだ。雌はあくまでも、どこまでも、選ぶ側であるからして。

 

***

 

 すっきりと晴れた空は、まるでヤチェの実のような清々しい色に染め抜かれている。春の陽気が肌を優しく包んでくれるおかげで、心地がいい。キノココ時は、木陰や落ち葉の下に身を潜め、もぐもぐと腐葉土を食べながらひっそりと生活していたが、キノガッサに進化してからは適度な日光浴も悪くないと思うようになった。

 だって、明るい場所にいた方が、あたしって別嬪に見えると思うのよね。

 陽射しを受けながら、キノガッサは改めて自分の姿を確認する。磨き上げた手足の爪は真紅に輝き、尾の先端にくっついている種の色つやもいい。うん、我ながら素敵だ。水鏡に映してまで念入りに身だしなみを整えたので、生きてきた中で今日が一番綺麗だと自信を持ってモモンの宴にやってくることができた。

 本当は、おめかしをしなくたっていい。手を抜こうと思えばどこまでも手を抜ける。雌であるというだけで雄から選んでもらえることは確定しているのだから。

 でもさ、そこはホラ、あたしにも雌としての意地があるわけで。

「おまえでいい」のではなく、雄から是非「おまえが(・)いい」と乞われたい。あたしだって、雄なら誰でもいいわけじゃないわ。強い雄に見初められたいのが雌ってもんでしょ。気合くらい入れるわよ。

 水浴びをしてきたというルチャブルも、いつも以上に魅力が増している。塵一つ付いていない羽の麗しさ、鮮やかさ、艶やかさは、キノガッサがほうと見惚れるほどだった。

 

『あら、あなたもこういうときくらいは流石に羽の手入れをするのね』

 

 すれ違いざまにルチャブルに絡んできたのは、フォクスライ。鼓膜に忍び寄ってくるような甘い声で毒を吐く彼女のことは、森の住民なら誰もが知っている。

 フォクスライは美しい。それは認めなければならない。たとえ、どんなに性格ブスであろうとも(おっと失礼)。妖艶と呼ぶに相応しい目元に、すらりと長い四肢。絹糸のように滑らかで真っ白な胸毛や光沢ある赤蘇芳の体毛、ふっさりとした尻尾は、いずれもたっぷりと豊かな毛量があり、思わず手を伸ばしたくなる(フォクスライは自慢の毛並みを乱されることをひどく嫌がるが)。どんな手入れをしているのか皆目見当がつかない。生まれつき素晴らしい手触りの体毛を有するチラチーノやプクリンも、あのフォクスライの毛は「本物」だと太鼓判を押すのだから悔しいところである。

 自分の美貌に対する絶対的な自信と、森の主(キュウコン)と同じ狐であるという見当違いな誇りを以て、周囲のポケモンを見下す悪癖がある残念なポケモン。それが、キノガッサが抱いている印象だった。

 

『私、心配してたのよ。いつもみたいに土臭いままだったら、あなたが恥をかいてしまうし。時と場をわきまえる感性が備わっていたようで何よりだわ』

『…ありがとう、気遣ってくれて。優(・)し(・)い(・)ん(・)だ(・)ね(・)』

 

 ルチャブルは、ムキになって言い返したりはしない。くよくよと泣き寝入りすることもない。相手にしない方がいいと判断して、いなすことを選ぶ。いちいち取り合ってたら疲れるもんね。でも、横で聞いてたあたしだって不快に感じる言い様だった。当たり障りない返答で済ませるだけじゃなくて引っ搔いてやればいいのに。そう思うのだけれど、むやみに戦わないところもまた格闘家らしいというか。…そのルチャブルにしては、先程はなかなかの皮肉を返したといっていい。キノガッサは『やるじゃん!』と心の中で称賛を送るが、当のフォクスライは言うだけ言って満足したのかはたまたルチャブルからの痛烈な皮肉には気付かなかったのか、嘲笑を浮かべたまま通り過ぎていった。

『よく冷静でいられたね』とルチャブルに声をかけると、彼女は何でもないように『通り雨みたいなものだから』と肩をすくめてみせた。多少のことでは動じない、ルチャブルらしい例え方だと思う。というか、アレだ、フォクスライもルチャブルが可愛いことに驚いて出鼻挫こうとしてきた感じじゃない?ライバルだからと虐めるなんて、雌の敵は雌とはよく言ったものだ。…あんな奴にかまけてるのは勿体ない、せっかくのモモンの宴なのだから楽しまなければ。キノガッサは、気を取り直して会場を見渡した。

 モモンの宴は合図と共に始まり、それ以前の抜け駆けは許されていない。湖に沼地、森の木々、光の差さない洞窟、更には上空…複数に分けられた会場で雌たちが待っており、雄は自分が理想とする雌の居場所を探し当てる必要がある。キノガッサが眺める此処は第一会場とでもいうべき最も広大な場所で、丘になっている。そこに大勢の雄が詰めかけるのだからまさに壮観の一言であった。各所に散らばる雌とは異なり、(陸に上がれない水棲ポケモン以外の)雄はこの丘に集められる。合図の直後に一斉スタートを切らせるわけだが、これには「雄の選別」という目的があった(抜け駆けや勝手な遡流が禁じられているのも同様の理由である)。優秀な能力を持った個体であれば、集団からいち早く抜け出して雌と番える。当然、弱い個体は脱落して子孫を残せない。繁栄を目指すなら、純粋な身体能力あるいは知略を駆使して競り勝たねばならないのだ。

 丘の上部では、雌たちが思い思いに誘惑している。早い者勝ちよ、強い者勝ちよ、と、不敵な笑みを伴って。下方の離れた場所には雄たちが群れ、宴の開始を今か今かと待ちわびているところだ。丘の勾配はそれなりに急であるため、雌たちからは、雄たちの興奮した様がよく見える。いっそ殺気立っていると言っていい。目を血走らせ、鼻息を荒くしている彼らのうち、どんな雄が自分を口説きにくるのか楽しみだ。

 キノガッサもルチャブルも、モモンの宴には今年から初めて参加する。交尾や妊娠、産卵の負担が大きくならないよう身体がしっかりと成熟していることが参加条件であり、初参加の雌に関しては特にキュウコンが自ら足を運んで検め、彼女から許可をもらって初めて参加資格を持てる仕組みとなっていた。

 一度モモンの宴に参加すれば、以降は卵を産める限り毎年参加できる。誰の手垢もついていない処女であろうと、産卵や子育てに慣れている雌であろうと、等しく雄からの需要があり、この需要の高さこそが雌たちの自尊を更に高めているのだった。

 この丘は広いだけでなく、岩壁と融合するような地形をしている。目立つところに陣取って強い雄の目にとまろうと、強気な雌たちほど崖の上で待機していた。数多の競争相手を押しのけて崖の上まで辿り着けるような雄ならば相応の才があろう。つまりは、ここでもまたふるいにかける算段なのだった。先ほど嫌味ったらしいことを言ってきたフォクスライも、当然のように、崖の上に寝そべっている。

 キノガッサも、倣って崖のてっぺんに…というわけにはいかなかったが、中腹にちょうど突き出た岩場があったので、そこに腰掛けることにした。『私のことは気にしないで』と遠慮するルチャブルの手を引っ張ってきたので、彼女も一緒に座っている。ふたりして、まずまずの場所を確保できたのではないだろうか。ルチャブルの赤い羽の色は雄たちからもよく見えているはずだし、いい目印になる。ルチャブルを利用するような格好になるのはやや後ろめたいものの、キノガッサにとっても、目立つルチャブルの近くにいれば、岩壁を登ってこれるほどの力量がある雄、登るだけの労苦を厭わない執念を持った雄と出会えるチャンスだ。ルチャブルには、内心で『ごめんね』と謝っておく。

 

 刹那、現場に沈黙がおりる。

 ぶわりと一気に緊張が膨らんだのは、丘に集ったポケモン全員が遠くに姿を現したキュウコンに気付いたためだ。主催者(キュウコン)は、宴の参加者が思いきり動けるよう、過干渉を避けて遠くから見物することになっているのだが、遠影だけでこの存在感だ。圧倒されてしまう。太陽を御身に宿しているかのようなキュウコンの輝きは、その場にいる者から一様に音を奪う。

 威風堂々たるキュウコンの傍らに、バクオングがいる。開催を告げるためだ。静まりかえった丘の上でバクオングが発した合図は、異様なほどに響き渡った。

 

 

『 はじめ! 』

 

 

 堰を切ったかのように駆け出す雄たちが、全てを吞み込まんとする濁流に見えた。彼らの移動に合わせ、恐ろしいほどの地響きがした。耳をつんざくような咆哮もひっきりなしに聞こえてくる。雄たちの死力を尽くした嫁取りの火蓋が切られたのだ、この迫力は当然だろう。表皮がびりびりと痺れて、全身を揺さぶられているみたいだった。必死の形相を見せる雄たちのベクトルが雌である自分たちに向いているのだと思うだけで、宴の当事者としての実感が強まり、キノガッサは高揚する。

 彼らの動向を観察していると、一塊の先行集団に気付いた。押し合い圧し合いして反目し合っているくせに、大声で喚き散らすその内容は、実に見事に一致していた。

 

『『『 ルチャブル!俺を選んでくれ!』』』

 

 あらまあ!

 盛り上がってきたじゃないの!と胸を弾ませてキノガッサはルチャブルを振り返ったが、彼女にとっては完全なる予想外であったらしく、目を丸くして唖然としている。頬を染めるでもなく、誇らしげでさえない、ただ無防備な表情を晒すだけというところにルチャブルの味が出ていた。キノガッサにとっては、想定の範囲内だったというのに。

 だって、普段から通っていたあの鍛錬場でルチャブルを熱っぽく見つめていた雄は大勢いたもの。鍛錬第一で気付いていなかったのは当のルチャブルだけなんじゃないかな。

 キノガッサの心の中に、嫉妬は欠片も生じない。大事な友の幸せを願うがゆえである。似合いの伴侶が見つかるのならめでたい限りだ。現に、迫りくる集団の中には、キノガッサがルチャブルに『強いうえに真面目で誠実だからものにしておけ』と推薦したいバシャーモやルカリオの姿もあり、どちらかがルチャブルと連れ添ってくれたならあたしも友だちとして安心だなあなどと考えていた。あいつらはいい奴よ。でも、あたしの好みと被ってないから遠慮なく持っていってね。あたしなら大丈夫、もっと植物寄りの奴を選ぶつもりだから。

 ところが、である。

 次第に、ルチャブルに向かって突進していた集団が乱れ始めた。集団の内側から崩壊しだしたとでも言おうか、固まって動いていたはずの雄たちが、また一体、また一体と投げ出されていく。まるで、誰かが、前方を遮る邪魔なものを力任せに掻き分けているかのように。

 

『 退(ど)けぇぇえッ!!! 』

 

 ひときわ大きな怒声。

 次の瞬間、声の主が先頭に現れた。紺の表皮。痩身のなかで際立っている両脚の筋肉。長い舌。見たことのない種族だが、おそらく蛙だ。青く光る流れ星のように蛙は疾走し、遂には脚力自慢のバシャーモやルカリオをあっさりと抜き去って、ひとっとび、高々と跳躍した。

 誰の目にも明らかな「強い雄」の登場に雌たちは色めき立ったが、キノガッサには分かっていた。周りにどれほど多くの雌がいようと、あの蛙の目標は揺るがない。両目は常に、ルチャブルだけを映している。だから、当然、すぐ傍にいたキノガッサに一瞥もせず、蛙は岩場に跳び移ってから間髪入れずに勢いよくルチャブルを抱きすくめた。

 

 キノガッサはきちんと空気を読んで端に寄ったが、そのまま立ち去ったりはしなかった。目の前で展開している恋のドラマを見届けたい気持ちの方が大きい。ときめきに胸を押さえて、(図々しくも)その場に居座っていたのだが、そういうときに限ってキノガッサの足にしゅるりと何かが巻きついてくる。

 これからがいいところなのに!

 舌打ちしながら急いで状況を確認すると、巻きついていたのは触手だった。岩壁を登ってきたらしいナットレイが、すぐそこまで迫っている。普段から洞窟の天井に張りついているような奴だ、こんな崖の攻略なぞわけもなかったことだろう。

『あの、是非、自分と…』と拙く口説こうとするナットレイに向かって、キノガッサは自慢の尻尾を鞭のようにしならせ、強かに打ち据えた。容赦のない一撃である。『ふぐっ!』という情けない声を共に、足元の触手が緩む。

 

『今日のハイライトなの!邪魔すんじゃないわよ!』

 

 ナットレイに攻撃したときの振動で、尻尾の先端についている種からは毒の胞子がばらまかれている。直に触れたであろうナットレイは一溜りもないはずだ。

 無粋な雄を排除したあと、決定的な瞬間を見逃したくなくてキノガッサは再び顔を上げるが、キノガッサたちの騒動がまるでなかったみたいに、蛙とルチャブルはふたりきりの世界に没入している。ルチャブルは時が止まったかのように蛙を見つめ続けているし、蛙の方も、周囲には構うことなく求愛を開始した。

 

『一目惚れしたあの日からずっと、そなたを娶りたいと思っていた。どうか番ってくれ、麗しの彩鷹』

 

 無意識のうちにも『きゃー!』とはしゃいでしまいそうな、赤面不可避の美声、美辞。そして、ルチャブルに差し出される木の実。それは偶然にも*1、ルチャブルが好きなゴスの実だ。求愛給餌も抜かりない。

 ルチャブルは何も言わない。言えないのかもしれない。まさしく絶句だ。それでも、思わずというふうに、蛙から木の実を受け取った。それが何を意味するのか、繁殖期に入っている者なら皆が承知している。証拠に、強い雄に選ばれなかった雌、狙っていた雌をかすめ盗られた雄、双方から恨みがましい呻きが漏れてきた。ただひとり、キノガッサだけが、ささやかながら祝福の拍手を贈る。

 

 

*1:
偶然なわけないんだなコレが




【 その後 】
 強い雄と巡り会えてよかったね、ルチャブル。
 我がことのように嬉しくて顔をほころばせていると、…再び、足に巻きついてくるものが。

『……、ふーん…。あんた、意外とタフなのね』
『姐さんみたいないい雌(おんな)にしばかれるなら本望ッス…』
『毒も効いてないみたいだし?』
『自分、鋼複合ッスから…。あの、姐さん、…おいらに一撃入れたとき、尻尾、怪我しなかったスか』
『ちゃんと棘と棘の間を狙ったに決まってるでしょ、バカね』

 でも、きっとあたしはこのバカの卵を産むことになるんだわ。そんな予感を抱いたことに驚くものの、思いのほか、満更でもない自分がいる。キノガッサという種族の生態とは切っても切り離せない毒胞子のこともあるし、その点では、いちいち相手の解毒を心配しなくていいのは楽なのではないか。
 案外、拾い物かもね。そう思えたからこそ、今度は、ナットレイの触手を振りほどかなかった。
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